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ジェイド・ヴェルンの幸福5

訪れていただいてありがとうございますm(_ _)m

俺は指摘された言葉に顔を赤くして黙ってしまった。

そんな俺を見て、カイオム団長は大笑いする。


「ハッハッハッ!若いのはいいな!初々しくて、こっちまで若返るようだ」


馬鹿にするでもない笑顔に、俺はおずおずとカイオム団長に問いかける。


「…あの、可笑しいとは思わないんですか?」

「何がだ?」

「いや、だって17歳と5歳ですよ?」


しどろもどろになりながら言葉を紡ぐと、カイオム団長はそんな考えの方が馬鹿らしいと鼻を鳴らす。


「お前は少女しか愛せないのか?」

「いえ、違います」

「アナスタシア殿下だから惚れたんだろ?」

「おそらく、そうですね…」

「中身が同じアナスタシア殿下なら、年齢がお前より50歳くらい上だったり、同性でも惚れたか?」

「たぶん…、惚れてました」

「だから俺はお前を馬鹿にしないんだよ。それは魂に惚れたんだ。理屈でどうこうなるもんじゃない」


カイオム団長の真剣で優しい瞳に射抜かれて、俺は自分を肯定した。


すると、乾いた土に水が浸透するように、やさぐれていた心が丸くなっていく。

あぁ、いつから俺は自分を信じていなかったんだろう…。


「まぁ、相手は王族で幼女だ。お前が(おおやけ)で理性を失わない限りは、温かく見守ってやるぞ」


そう言ってバシバシと背中を叩かれた。

めちゃくちゃ痛い…。ちょっと涙が出た。


「わかってます!自分の立場は(わきま)えていまますので!」


ご機嫌なカイオム団長に猛抗議すると、何故かキョトンとした顔をされる。

えっ?なんで?

しかし、オッサンのキョトン顔、怖っ…。


「何か勘違いしていないか?アナスタシア殿下もお前の事を憎からずは思っていると思うぞ。じゃなきゃ俺にこんな頼みはしないだろう?」

「……、えっ!??でも、一瞬しか会ってませんよ?」

「お前だって一瞬で恋に落ちただろうに…。それに、ヴェルン侯爵子息とは言われず、『ジェイド・ヴェルン』と言われただろ?」

「はい…」


確かに、思い出してみればマーカス公爵子息もヘイス侯爵子息もフルネームで呼ばれていない。


「良かったな。ファーストネームを覚えるに値すると思われたみたいで」


そう言ってカイオム団長はまたもやニヤリとする。


「それは、どういう…」

「後は自分で考えろ!上官に対して失礼な事を考えていたヤツには、こんなもんで十分だ!」

「いや、まだ上官ではないでしょう!?」


俺の心の内がバレてた!!

何で、どうして??


「ジェイド…、お前、けっこう顔に出るぞ。まぁ、内に入れた者限定かもしれないがな」


そう言って、カイオム団長は俺の頭をくしゃくしゃと雑に撫でる。頭を撫でられたのなんて、何年ぶりだろうか…。


「それで?卒業後は本当に第三(うち)に来るのか?」


真剣な問いに対する俺の答えは決まっていた。


「もちろんです!アナスタシア殿下が示してくれた道から外れるなど考えられません!」

「おぉ~、立派なことだな。しかし、卒業まであと1年あるぞ?それにお前は侯爵家の嫡男だ。そんなに簡単に決めていいのか?」

「カイオム団長だって伯爵家の嫡男ですよね?それに来年は最終学年です。自分が学生生活の中で打ち込んできたことの集大成を発表するのが卒業資格となる年ですよ?出席日数や試験もありません!だったら私は1年間従軍して、今の軍に必要な事などをレポートに纏めて提出してやりますよ!」


俺の啖呵に圧倒され、カイオム団長は閉口する。

学生なのに生意気だったか?と少し不安になったが、今さら口から出た言葉を覆すつもりもない。

暫く沈黙が続く。

ジトリと背中に嫌な汗が伝ったが、俺は黙ってカイオム団長の言葉を待った。


「親の庇護下にいる学生に危険な事はさせられん。だが、その心意気は買った!当面は安全な後方支援や、雑務、簡単な事務方の仕事でも任せるか。成績は優秀なようだしな。だが、訓練は同じものを受けてもらうぞ!それでもいいか?」

「もちろんです!!」

「決まりだな」


カイオム団長が右手を差し出す。俺はその手をガッチリと握った。


「俺はいい拾い物をしたのかもしれない。アナスタシア殿下に感謝だな」


そう言ってカイオム団長は握手を解く。

その瞬間、現実に引き戻されたように震えがきた。

現役の師団長との邂逅は、思った以上に精神的疲労が大きかったようだ。


「フッ…、先が思いやられるなジェイド。だが、上がれる所まで上がって来い!待っているからな!」


そう言って部屋を出たカイオム団長は最高にカッコいい大人だった。



―――――――――――――――――――――


あれから10年か…。

卒業後は本当に第三師団に入り、死物狂いでカイオム団長の後を追った。その過程で、あの人の見据える先には更に化物じみたミレン辺境伯がいる事を知り、気が遠くなったりもした。

戦場という戦場を駆け巡り、気づけば第三師団長になっており、王都への帰還命令が出たと思ったら騎士団副団長まで上り詰めていた。騎士団始まって以来の最短出世らしい。


若くして出世したが、あまり妬み嫉みの的になることも無かった。そこには、卒論として纏めた騎士団改革案の存在が大きく関係している。騎士団は、快適な仕事環境を整備した者を救世主として迎えてくれたのだ。

後は、単純に実力か…。


その渦中で、両親が亡くなり、悲しみにくれるまでもなく爵位を継ぐことになったのは想定外だった。が、無茶振りは騎士団で散々被っていたため、なんとかなった。


そして今、俺はずっと後回しにしてきた問題と直面している。


そう、アナスタシア殿下への恋心だ!

17歳のあの日から、ずっとブレないこの心に自分でも驚愕する。そして、意中の殿下からデートに誘われた…。

何のご褒美だ!むしろ罠か!?俺は今日、死ぬのか!?


待ち合わせ場所で、約束時間の2時間前からずっとソワソワしっぱなしである。

他の事に意識を向けようと思い出に浸ってみたが、全然緊張が解れない!どうしたらいいんだ!!


はぁ…。

殿下からは、今日はお忍びたから『アナ』と呼ぶように!とキツく言われている。

噛まずに言えるだろうか…。


また一つ大きな溜め息をつき、俺はこの先の緊張と幸福に思いを馳せる…。



アナスタシア殿下の到着まであと、15分…。

これでジェイド視点は終わりです。

少し置いて、アナスタシア視点を投稿予定です。


【余談】

ジェイドが学生生活を放りだして従軍したため、やはりそれは問題視されました。そのため、翌年からは最終学年も試験と出席日数が義務化されました。

けっこう問題児?(笑)


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


読んでみて面白かったなぁと思われた方は、よろしければブクマ評価もお願いしたいです!!

大変、励みになります(。>﹏<。)

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