100.ハッピーエンド
本編ラストです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
ホールの音楽が変わる。
ダンスの合図だ。
アレクシス陛下が、クロエを伴い中央に躍り出る。
息のあったダンスに、皆の目が集まった。
他者の視線をものともせず、二人共堂々としている。
時折り、目配せをしたり顔を寄せ合ったりしている。
仲の良さアピールが今日は一段と激しいな。
何よりもアレクシス陛下の蕩けるような顔が、クロエを如何に愛しているかを物語っている。
これを見て、側妃を夢見る令嬢達も少しは考え直してくれればいいが…。
フィニッシュを決め、二人がお辞儀をする。
拍手の波が会場を包み込んだ。
二人が場を譲ると、次々とダンスホールに男女が躍り出る。
皆、アレクシス陛下とクロエのダンスに触発されたようだった。
「レティ、俺たちも踊ろうか?」
「はい!ロイ様」
レティが満面の笑みで答えてくれる。
俺たちもホールに躍り出た。
周りを見ると、イスターク、クリストフ、ヨハンも踊っている。皆、それぞれの婚約者にとてつもなく甘い顔で微笑んでいた。
あぁ…、『シナリオ』という目に見えない敵を倒せたようで良かった。
仲間が幸福であることがこんなにも安心感を与えてくれるなんて。俺は意外と仲間思いだったんだな…。
クルクルと踊りながらそんな事を考えた。
曲が終わり、お互いに向き合って一礼する。顔をあげたレティの微笑みを見て、俺は何度目か分からない恋に落ちた。
仲間も大切だが、やはり俺はレティを一生かけて愛したい。
いや、例え生まれ変わったとしても、君を探し出して愛を囁きたい。
君はもう、俺に囚われてしまっている。
逃してやることはできない。
俺はそんなドロドロした執着心を隠し、レティの手を取る。
そして、絶え間なく愛していると伝える。
レティは恥ずかしがるが、こればかりは譲れない。
俺はこれから、最後の時まで君を溺愛するのだから。
――――数ヶ月後
「はぁぁぁ〜、疲れた…。癒やしが欲しい」
アレクシス陛下が執務室の机に上半身を投げ出す。
「陛下、これが終わらなければ結婚式なんて夢のまた夢ですよ?」
「わかってるんだけどさ〜。宰相!そろそろ休憩入れさせて!」
陛下が、父である宰相に泣き言をいう。
即位してから次の日には、もう陛下の仕事を振り分けられていた。
なまじ能力があるため、どんどん仕事を振られている。
もちろん、俺たちもそうだ。
馬車馬のように働かされている。
「ほらほら、そんな事を言わずに!もう少しで終わりますから」
「それ、1時間前にも聞いたんだが…」
「おや?そうでしたか?年を取ると、物忘れが激しくなりましてね」
ニコニコしながら、そんな事を言ってくる。
まったく、この人は…。
俺は、母から伝授されている奥の手を使う事にした。
「宰相。母上が、今日は早く帰ってきて欲しいと言っていましたよ?何か約束をしていたのでは?」
俺の言葉に、何やら考え込んでいる。
暫くすると、何か思い出したようだった。
「そうだ!今日は、ベビー用品を見に行こうと約束していたんだった!陛下、急ぎ帰らねばなりませんので、今日はこれくらいにしましょう」
「助かった…」
「それでは私は失礼します」
そう言って宰相は去って行った。
本当にブレないな、あの人は…。
「はぁ…。でも、まだまだ仕事があるんですよね?」
ヨハンがやつれたような顔で聞く。
それに対し、俺は答える。
「あるにはありますが、1ヶ月分は終わっていますよ」
『えっ?』
あれ?みんな気づいて無かったのか?
「なので、このまま解散しても大丈夫かと…」
俺の発言にクリストフとイスタークが反応する。
「何でそんな先の事まで仕事ふってきてるの、あの鬼宰相!」
「まったくだ!お陰でクタクタで帰るから、ギャビーとイチャイチャしててもすぐに寝落ちしてしまう!」
「兄貴も!?俺も何だけど…」
「僕もです…」
「私だってそうだ!」
皆、父に疲労を上手くコントロールされている。
まだまだ父から学ぶ事は多いな…。
そんな事をしみじみと思った。
クロエは陛下が即位してから、居を王宮に移した。
その為、陛下は仕事が終わると浮かれながら帰る。
毎日、クロエに会えて幸せのようだ。
イスタークは、俺たちの中で一番始めに結婚することが決まっている。ほぼ毎日、結婚式の打ち合わせがあり、それも大変なようだ。しかし仕事とは違い、幸せな疲労だとか。
クリストフも居をカイオム伯爵家に移している。
最近は滞っていた時期伯爵教育も本格化してきたらしく、こちらも嬉しい疲労のようだ。
ヨハンはこの中で一番大変そうだ。
実は製薬や免税店の実績が認められ、伯爵への陞爵が決まっている。爵位が上がることで上級貴族となるため、新しい教育が必要となってくる。
婚約者のシルヴィア嬢の生家、クインビー伯爵家に教わりながら、ベイカー子爵と共に目下勉強中だそうだ。
俺は別邸に移ったくらいで、特に日常に変化は無い。
毎日、レティと二人で甘い生活を堪能しているだけだ。
『今日こそは思う存分、イチャイチャするぞ!』
皆の心が一つになった
そそくさと仕事を片付け、帰路につく。
皆、顔は幸せで溢れていた。
俺は思う。
愛する者と過ごす幸せが、この先も続く事を。
おわり
これにて本編は終了です。
まだまだ書きたい事(側近ズのその後や、アナスタシアの恋など)がたくさんあるので、番外編を掲載予定です。
ただ、掲載時期は不定期になります。
皆様、このシリーズに長くお付き合いただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
m(_ _)m
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