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世界の終わりシリーズ

【読み切り】世界の終わりがやってきた!〜どうにもならないから猫と過ごす〜

その日は唐突にやってきた。


なんでも今日あたり、世界は終わるらしい。

豪速で飛んでくる彗星によって。

あまりに速いのと、あまりにど真ん中に向かって飛んでくるので、科学者達も今日まで観測できなかったのだとか。


まぁわからんでもない。

横移動なら捉えやすいけど、真っ直ぐだとちょっと見えにくいよね。


ネットのニュースでそれを知って、一瞬「今日って四月一日だっけ?」ってスマホの日付けを確認したけど違ってた。

それに、それを境にニュースがほぼ更新されなくなった。


SNSを確認してみたけど、その話題ばっかりで嫌になってアプリを閉じた。ボットがいつもの調子で毒吐いてたのにはちょっと笑ったけど。


「さて、どうしようか。ゴルペス」


同居の猫に話しかけた。

もちろん返事は


「ニャー」


だ。

終末局面だからって言葉を喋り出したらファンタジーが過ぎる。

ゴルペスさんは、それでいいのだ。


「やれやれだぜー」


今度は無視された。

ゴルペスさんが返事をくれるのは、五回に一回くらいだ。ツン多めなところがたまらない。

そして返事はしない癖に、脚の上に乗ってくる。もうたまらない。乗ったら乗ったで私を見上げて「撫でろ」と催促してくるのだ。本当にたまらない。


ゴルペスの要望通りぐわしぐわしと撫でる。ゴルペスは、手のひらで撫でられるより指の先で撫でられる方が好きだ。


「家に居よっかー」


ゴルペスは大きくあくびをした。


うん、そうしよう。

人生最後の日なら海を見に行きたい気もするけど、道が混んでるかもしれないし、事故でも起こったら撤去する人もいないだろう。渋滞した道路で立往生して車の中で最後を迎えるなんて絶対嫌だ。

それに外に出れば、気が立ってる人に絡まれるかもしれない。


「よし、家にいよう」


頷いて、ゴルペスをお腹に乗せて床に寝そべった。

今日は仕事は休みだし天気もいい。

この日当たりのよい部屋は絶好の昼寝スポットなのだ。

ぐー。




ゴルペスに身体を踏まれて目が覚めた。


「ニャー」


「ごはんか…」


のそりと起き上がる。


「もうお昼かー」


「ニャー」


ゴルペスは、ごはんの時はよく喋る。


「ちょっと待ってー」


ボーッとしながらカリカリと水を新しくして、でも思い直して猫缶を開けた。

最後の日なら、パーっといこう。



ゴルペスは ひさびさの ねこかんに とびついた!



美味しそうに食べるので、こっちまで嬉しくなってくる。


さて、私は何を食べよう?


冷蔵庫を開けると、割と色々入ってた。

ラッキー。

しばし考える。


よし、カレーにしよう


…いいじゃないか。

好きなんだよ、カレー。

それに夕飯にはいくつか揚げ物を作って、唐揚げトンカツエビフライカレーにするつもりなのだ。

超豪華だろう!


あ、因みに地球が終わるのは、早くて今日の深夜、遅くとも二、三日中らしいので、少なくとも今日の夕飯は食べられるのだ。


パソコンを立ち上げて、音楽をかけながら料理をする。なんか自然の音の入った環境音のやつ。色々ぶち込んであるプレイリストからランダムで流れてきたのは、波の音だった。

うん、悪くない。


フライパンでひき肉と玉ねぎとニンニクを炒めてトマトを入れる。アスパラもあったから軽く炒めて、目玉焼きも作った。これは仕上げに乗せるやつ。

適当にスパイスを振って煮込んで小麦粉を溶かす。

よし、完成ー。


お皿に盛って、アスパラと目玉焼きを乗せたらもう完璧。

自画自賛しながら平らげた。

え?サラダはつけないのかって?

つけないよ。面倒くさい。



味と量に満足してゴルペスを目で探すと、ひと足先に眠っていた。

心なしか、いつもより幸せそうだ。ゴルペスのお気に入りの猫缶だったからなー、あれ。

今夜も猫缶だぞー。ゴルペス。



食器を片づけて部屋に戻って、漫画でも読むことにした。こういう時、紙媒体持ってると助かる。

今日はもうネットに繋ぐ気はないから。

だってサービスやってないかもしれないし、やってても暗い内容なら見たくない。


どれ読もうかな?


本棚を指で辿りながら目で追って、まだ読んでなかった漫画があったことに気がついた。

最近ちょっと忙しかったからなー。通販で届いたのをそのまま本棚に突っ込んで忘れてた。


続きを読まずに死ねない。


いそいそと取り出して、読み始めた。




気づいたらゴルペスが膝の上に乗ってきたので撫でながら読み進める。

新しいのは読み終わったので、古いのを読み返そうかと思ったんだけど、ゴルペスが遊ぶ気満々なので計画を変更した。


「遊ぶか、ゴルペス」


立ち上がった私を、期待に満ちた目で見つめるゴルペス。

愛い奴め。


本棚の端に置いてた、長い紐付きの猫じゃらしを手に取った。




それから小一時間、ゴルペスと遊んだ。あっちへやりこっちへやり、グルグル回ってジャンプをさせ。

ちょっと疲れたので手を止めた。

ゴルペスはまだまだ遊びたそうだけど、私は休みたい。


「オヤツにしよう、ゴルペス」


ササミをレンチンして与える。



ゴルペスは ササミに むちゅうになった!



単純なゴルペス可愛い。


私もこの前パン屋で買ってきたクッキーとラスクを皿に盛って、お茶を淹れた。

今日はルイボスティーだ。


早々に食べ終わり毛づくろいをしているゴルペスを眺めながらクッキーを齧る。

ここのクッキーは、サクサクとした歯ざわりと程よい甘みがお気に入りなのだ。


「ゴルペスー。本当に今日、世界終わるのかなー?」


当然ゴルペスは答えない。

だって猫だもの。


そのことにほっとしつつ、クッキーを食べ終えた。

本当は最後だしもっと色々食べてもいいんだけど、お腹がいっぱいだと夕飯が美味しく食べれない。

だからあくまで適量で。

お皿とカップをサッと洗って、ちょっと考えた。


何しよう?


洗濯は洗っても着る日がこないから意味ないし、掃除も同様。


うーん、家事しなくていいと楽だな。



部屋に戻ってお気に入りの写真集を開いた。

各地の綺麗な景色の本。


ここもここもここも、行ってみたかったんだけどなー


ちょっとセンチメンタルになりかけたら、ゴルペスが擦り寄ってきた。

こういうとこ、本当可愛い。


そっと抱きしめる。

ゴルペスは大人しくしている。


「おまえがいてくれてよかったよ」


ゴルペスはグルグルと喉を鳴らしている。

ふわふわの毛があったかくて、そのまま寝てしまった。




ニャーニャー鳴くゴルペスに起こされた。

ごはんの催促の声だ。


「もうそんな時間?」


「ニャー」


「そっか」


ペタペタとキッチンに行って、猫缶を皿に出した。


「はい、どうぞ」



ゴルペスは おさらに かおを つっこんだ!



いい食べっぷりだ。

さて、私も夕飯を作ろう。


鶏肉と豚肉を解凍して衣をつける。

おっと、エビフライを忘れるところだったぜ。

そちらも解凍して衣をつけた。


折角なので、新しい油を入れて火にかける。シュワシュワと泡が立ってきたので先ずは唐揚げを投入する。

ちょっと気が向いたので、卵も隣で茹で始めた。タルタルっぽいの作ろう。



二度揚げして、とても美味しそうな揚げ物類が完成した。ゆで卵も潰してマヨネーズとあえていい感じだ。

カレーも温めなおしたし。


「よし、いただきます」


うむ、美味い。

油がちゃんときれてて、サクサクで揚げたてで美味しい。タルタルもどきとの相性もバッチリだ。

カレーをかけてもやはり美味い。


「幸せー」


ゴルペスが私を見上げる。


「ゴルペス、ダメだってば。身体に悪ーー」


…よく考えたら、もう健康も何もなかった。

それでも衣は外して、ちっちゃくちぎったのをあげてみた。


ゴルペスは おいしそうに たべている!


「油ものは太るぞー」


太る時間も、もうないけどなー。

ツッコミも自分でまかないつつ食事を終えた。





もう夜も、遅い。

遅いのだけれど、昼間寝過ぎた所為で眠れない。

なので窓際のテーブルで、ゴルペスとまったりタイムを続行中だ。


「ゴルペスー。今日もいい毛艶だねー」


褒め称えながらテーブルの上のゴルペスを撫でる。

その時。


いきなり空が明るくなった。

どんどんぐんぐん眩しくなる。

目を開けていられない。

それと凄い轟音。

ゴルペスをぎゅっと抱きしめる。


「っ…来たかっ!」


つい出来心でラノベの主人公っぽいセリフを呟いて、照れる間もなく私の意識と身体は閃光の中に砕け散った。



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― 新着の感想 ―
[一言] めっちゃ穏やかでほのぼのしてて好き、その分救いがない事は分かってるからくる物がある
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