ステータス①
時は少し遡り、侑人が木の天辺から周囲を見渡しバスに戻ってきた辺りからの話しである。
「侑人どうだった?」
バスの中てみんなを起こして廻っていた春乃が、バスを降りて侑人に近づいて来て声をかける。
「う~ん、正直かなりまずい状況だな。」
「そうなの?」
「ああ、あれの天辺まで登って見てきたが、周りは木ばっかりで、切れ目も見つかんないし、人の手が入った痕跡もなさそうだ。」
「それに、一番やばいのがこれだな。」
「うん?」侑人が何も無い空中に向かって指を指す、それを見た春乃は訳が分からず、何してんのコイツという目で侑人を見る。
「あ~なるほど、他人からは見えない仕様になってるのか。」と独り言を言い。
「春乃、騙されたと思ってステータスオープンって心の中で呟いてくれ。」
「はぁ!あんた本気で言ってんの?」
「ああ、本気で言ってる……。」
「……解ったわよ(ステータスオープン)」
「え!?何よこれ。」
春乃が心の中で呟いた直後、目の前に携帯のタブレット位のウインドウが開く。
名前 佐藤 春乃
職業 剣聖 LV:1
スキル 武器適性【剣】
固有スキル 異世界言語
「お、その様子だと見えてるみたいだな。」
「ねぇ、これってもしかして……」
「ゲームでよくあるステータスってやつだな。因みに職業とスキル欄をタップすると、説明もでてくるぞ。」
春乃はそれぞれ項目をタップしてみる。
・剣聖
剣を使った戦闘を得意とする。
・武器適性【剣】
剣を扱う適性を得る。
・異世界言語
自身と異なる世界の言語を使える。
「普通ステータスってHPとかSTRとか、数字で表示されるものが多いのに、この世界の仕様は最低限て感じだな、まぁそれでも説明文がでてくるあたり、若干親切な部分もあるけどな。」
「それとどうやら俺たち全員が、ラノベでよくある異世界転移ってやつに、巻き込まれたみたいだな。」
「そうなの。……ねぇ……私たち元の世界に帰れるのかな?」
「……春乃だから言うが、正直帰れる確率はかなり低いと思うぞ。」
「俺たちがどうやって来たのか、どうやって選ばれたのか、何の為に転移して来たのかまったくわからないからな、これが神様に頼まれたとか、どこかの国に召喚魔法で呼ばれたとかなら、まだ帰れる方法もあるかも知れないけどな。」
「あんたは何でそんなに冷静なの!私たちが元の世界に帰れないかもしれないのに。」
「まあ、そういう性格だから。」
侑人は春乃の言葉にたんたんと答える。
春乃は、そんな侑人に対してイラっとするがコイツはそういう性格だったなと諦める仕草をする。
そんな二人が話している所に、一人の男が近づいて来る。
侑人はその男が誰か、あらかじめ解っていたかように声をかける。
「文俊、起きたか。」
「侑人氏」と声にだし、顔をニマニマさせてこちらを見て近づいてくる文俊。その表情は、自分たちの置かれた訳の分からない状態に対しての表情ではなく、若干、歓喜のような表情をしている。
今の文俊を見ると大抵の人はキモイ!と思うだろうが、侑人は、オークがいたらこんな顔かなと思っていたりする。
オーク
異世界ラノベでは定番モンスターとされる一種、ブタが二足歩行で歩くモンスター。作品によって食料になったり、ならなかったりする。