神隠し①
意識を覚ました侑人は辺りを見回すと、自信がバスの中にいる事を確認する。
ほかの者はまだ意識が戻っていないようで、グッタリしている中、侑人は隣の邪魔なやつを避けながらある人物の所に行く。
「春乃、春乃、起きてくれ!」と肩揺らし起こそうとしているのは、侑人の義姉なる佐藤春乃だ。
「ん、侑人?」と目を開ける。
「あぁ俺だ、とりあえず起きてくれ!今から外を確認するから、その間にみんなを起こしてくれ。」
「わかったわ。」意識をはっきりさせた春乃は侑人に返事をする。
佐藤 春乃 さとう はるの
侑人の義姉。真面目で勉強が出来、部活も剣道部に所属している。10歳の時に両親が亡くなり、佐藤家に養子に来る。
侑人はバスの出入り口には行かず、空いている席の窓を開け、そのまま飛び出した。
周囲には高さ20メートル級の大木がそこかしこに生えており、侑人はおもむろに1本の木に登り始める。
あっという間に天辺近くまで登った侑人は、見える範囲で周囲を見渡すが、そこから見えるのは切れ目のない森だった。
「うわぁ、マジか!何でいきなり森の中にいるのかわからねぇが……人の気配はしないし、ドッキリの類いではないな。もしかしてラノベ定番の異世界転移か?」
どこか楽しげな顔をした侑人は、木から降りバスに向かう。そこには、意識が戻ったクラスメイトや先生が、バスの中から降りてきていた。
「佐藤!ここはどこだ?」と担任教師の鈴木刀華が大きい声で話しかけてくる。
(いや、いきなりどこだ?と聞かれても、俺も被害者なんだからわかるはずないでしょう!)と口に出したいのを我慢して。
「すみません、わかりません。」と答える。
侑人は木に登った事はあえて伏せる事にした。
「そうか……これはテレビのドッキリとかではないのか?」と独り言を言う鈴木。
鈴木刀華
クラス担任。剣道部顧問で美人。男勝りな性格でなかなか恋人ができない。
「先生、此処ってどこなんですか?」とクラス一番のイケメン、一条彼方とクラスカーストトップの面々がバスを降り、歩きながら話しかけてくる。
「わからん、正直、神隠しにでもあったのかも知れん。」
「先生、神隠しってそんなことあるはず無いじゃないですか、ドッキリの仕掛人側ならもう少しまともな言い訳を言わないと、今時の高校生は騙せませんよ」と言う女子生徒。石川可憐
「すご~い、テレビってこんな大掛かりな事するんだね~。」のほほんと話す女子生徒。手嶌葵
「工場見学なんかよりこっちの方が全然おもしろそうだな。」楽しげ表情の男子生徒。緒方力
「お前達、悪いがこれはドッキリとかではないぞ、まずこんな所にバスを運ぶ事が無理だ、もし運んで来たならタイヤ痕が着いているはずだ。」
「ここでバスを組み立てて、その後意識の無い僕たちを運んで来たとか?」一条が言うが。
「それはない。時計を見たが意識を失っていたのは30分程度だ、時間的に無理がある。私たちは本当に神隠しあったのかもな。」と状況が理解出来ない事で刀華はため息つく。
一条 彼方 いちじょう かなた
イケメンでサッカー部のエース。誰に対しても優しく、女子生徒に告白される回数が、二桁を越える。
石川 可憐 いしかわ かれん
モデル体型の長身美人。葵の幼馴染み。自分の意見をはっきりと言い物怖じしないタイプ、オタクは嫌い。
手嶌 葵 てしま あおい
かわいい系。可憐の幼馴染み。マイペースな性格で誰からも愛されるキャラだか、たまにそれが原因でトラブルになる事もある。
緒方 力 おがた りき
長身で筋肉質。見た目は怖いが子供の頃から空手を習っており、以外に礼儀正しく、気配りも出来る。
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