成りあがる決意
スキル――――それは、自身の才能を表すもの。
魔物が跋扈し、いつ死ぬかもわからないこの世界では、スキルが人生を左右すると言っても過言ではない。
そんな世界の辺境にある村で、主人公は生まれる。
これは、地道にスキルを鍛えた結果、最強になったある男の物語である。
☆☆☆
「ねーねー、どんなスキルが欲しい?」
「俺は魔物を倒せるスキルがいいな」
唐突だが、この世界には魔物がいる。
魔物は人間を襲い、人間の領土を奪っていく。
当然、人間は反抗したが、魔物達には歯が立たなかった。
結果、人間は神に頼った。
毎日毎日祈り続ければ神は振り向いてくれるだろうと信じて。
その思いは実を結び、神は人間にスキルとステータスを与えてくれたが、この力が差別を引き起こした。
強いスキルやステータスを持つ者が好き勝手に国を支配し、暴れまわった。
それに怒った神はルールを作った。
そのルールは――――後で話すとしよう。
「だーかーら!どんな魔物を倒せるスキルかって聞いてるの!」
15歳のかわいい少女は、頬を膨らませながら聞いてくる。
こいつの名前はシーラ。
俺もそうだが、15歳になると教会でスキルとステータスがもらえるようになるので、そのために協会に向かっている最中である。
ちなみに俺の名前はアキトである。
「やっぱり剣聖とか勇者とかかなー」
「じゃあ私は聖女だね!私がアキトをちゃーんと守ってあげるから!」
「普通逆じゃね?」
こんな他愛もない話をしながら教会へと向かっていく。
いいスキルを授かるといいなー。
☆☆☆
「あなたに与えられたスキルは―――『聖女』です」
そう神官に告げられたシーラは、信じられないような顔をしている。
「おおお!素晴らしい!ぜひともうちに来てください」
「え、えーーーっとーー」
シーラはめちゃくちゃ動揺している。
無理もない。スキルランクSSのスキルだしなー。
スキルランクというのは、そのスキルがどれだけ人間に貢献できるかを簡単に表したもので、今のところSSランクが最高である。
「つ、次の方どうぞー」
「は、はい」
俺は階段を上っていく。めちゃくちゃ緊張して、心臓がバクバク鳴ってる。
そして、俺に与えられたスキルは―――
「あなたに与えられたスキルは、『アイテム強化』です」
俺は絶望した。別に、このスキルがハズレというわけではない。
どちらかと言えばあたりの部類に入る。ではなぜ、絶望しているかというと、
「シーラと一緒に冒険できないじゃないか!」
俺の一番の夢。シーラと共に冒険し、苦楽を共にする。それができなくなってしまった。
俺はそのあと、ふらふらとよろめきながら家に帰った。
☆☆☆
あれから3日経った。シーラが王国に連れていかれる日だ。
でも、見送りに行く気分ではないそうやって一人でふてくされていると、
「アキト!親友との別れの日くらい顔出しなさい!」
母さんが叫んでいる。それでも、俺はいく気になれない。
もう2度と、シーラに合えなくなると思ったから。
それでも母さんは俺に行かせたいようで、
「絶対に後悔するわよ!」
と、言ってくる。
それでも俺は行きたくないんだ。
と、引きこもっていると、今度はシーラが扉の前までやってきた。
「アキト………私、もう行くね。でも、ひとつだけ言いたいことがあるの」
そう言ってシーラは大きく深呼吸する。
そして―――
「私、アキトが好き!大好き!絶対にアキトのところにまた来るから!それまでまってて」
そんなシーラの言葉に扉を開け、俺も口を開く。
「俺もシーラのことが好きだ!けどな、待っててなんかやるものか!俺は強くなって、必ずシーラのところに行く!それまで待つのはお前の方だ!」
俺は言った。言ってやった。俺はお前より弱いかもしれないけど、でも俺の気持ちは本物だから。
すると、シーラは泣いていた。
全く、女の子にここまでさせるなんて、男失格だな。
「うん、待ってる………ずっと待ってるから!」
そう言ってシーラは走っていく。遠くに走っていく。だが問題ない。
「絶対に強くなって、お前の隣に立つ!」
そう………決意したのだった。