表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/73

また次に




 宿を出た夕刻。

 レイナルを置いて来た酒場で、エノクは喜びきれない複雑な宴の味を噛み締めていた。

 隣では酒に酔ったベルソートが食卓に伏してイビキを掻く。耳まで赤くなっていた。

 ベルソートが散らかした食器を片付けて、エノクは改めて試験結果に目を通す。


「これ、どう見るんだろ」




――――――――――――――――


 受験者名:エノク


 筆記試験…………61/100。

 体力測定…………96/100。

 魔力検査…………質『不明』・色『凪』・強『S/S』・量『測定不能』

 適正魔法――不明。


――――――――――――――――



 内容を見たが、エノクには理解不能だった。

 平均値すらも明記されていないので、成績の優劣が計りづらい。魔力の色が『凪』となっているのは、胎窟にちなんでいるのだろうか。

 筆記は予想を下回り、体力測定に関しては予想通り。

 魔力は……やはり推し量れない。

 エノクは諦めて鞄にしまった。


「ま、合格だし。どうでもいっか」


 思考を放棄して、自分の前にある料理に手を付ける。

 その日にエノクは牛肉を練った焼き物を食べていた。巷では『ハンバーグ』というらしく、これを大層気に入った。


「美味しい」

「いかがですか?」


 喜色満面で食べるエノクに、少し年上の給仕の女性が話しかけてきた。

 咀嚼しながら無言で何度も頷く。

 その様子だけで察して、女性は可笑しそうに口元を手で隠して笑う。


「レギューム学園生ですか?」

「いえ、これから入学するんです」

「大変ですね」

「ええ、本当に……」


 エノクは万感の思いを込めて返答した。

 いったい、誰に処刑覚悟で入学試験に挑む人間がいるだろうか。きっといない。

 女性はその苦辛を悟ってか、憐憫(れんびん)で目を潤ませる。


「そうですか……親と離ればなれでつらいんですね」

「え?いや、まあ、それは勿論ですが」

「頑張って下さいね!」

 


 なにか勘違いをした給仕が去っていく。

 釈然としない心持ちのまま、エノクは食事を再開した。

 口腔に広がる香りと舌を満足させる肉汁、混じった(ソース)との相性が抜群でエノクの味覚を翻弄する。

 切り分けた手応えから柔らかく、しかし口の中では充分な歯応えがあった。

 レイナルの視線をずっと受けているので、あまり食事に集中できない。


「本当に旨いな」


 次の機会に。

 レイナルを連れてこれたらと思う。


 また落ち着いて食べに来たい。

 その願いが叶ったのは、また随分と後の話。

 そうなった原因がこの試験結果であるとエノクが知ったのは、もうすぐである。






読んで頂き、誠に有り難うございます。


「面白い」、「続きが気になる」、「給仕ちゃんはまた出番ある?」、と思って頂けたらブックマークまたは下にスクロールしてポイント評価してくれると嬉しいです。


次回も宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ