また次に
宿を出た夕刻。
レイナルを置いて来た酒場で、エノクは喜びきれない複雑な宴の味を噛み締めていた。
隣では酒に酔ったベルソートが食卓に伏してイビキを掻く。耳まで赤くなっていた。
ベルソートが散らかした食器を片付けて、エノクは改めて試験結果に目を通す。
「これ、どう見るんだろ」
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受験者名:エノク
筆記試験…………61/100。
体力測定…………96/100。
魔力検査…………質『不明』・色『凪』・強『S/S』・量『測定不能』
適正魔法――不明。
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内容を見たが、エノクには理解不能だった。
平均値すらも明記されていないので、成績の優劣が計りづらい。魔力の色が『凪』となっているのは、胎窟にちなんでいるのだろうか。
筆記は予想を下回り、体力測定に関しては予想通り。
魔力は……やはり推し量れない。
エノクは諦めて鞄にしまった。
「ま、合格だし。どうでもいっか」
思考を放棄して、自分の前にある料理に手を付ける。
その日にエノクは牛肉を練った焼き物を食べていた。巷では『ハンバーグ』というらしく、これを大層気に入った。
「美味しい」
「いかがですか?」
喜色満面で食べるエノクに、少し年上の給仕の女性が話しかけてきた。
咀嚼しながら無言で何度も頷く。
その様子だけで察して、女性は可笑しそうに口元を手で隠して笑う。
「レギューム学園生ですか?」
「いえ、これから入学するんです」
「大変ですね」
「ええ、本当に……」
エノクは万感の思いを込めて返答した。
いったい、誰に処刑覚悟で入学試験に挑む人間がいるだろうか。きっといない。
女性はその苦辛を悟ってか、憐憫で目を潤ませる。
「そうですか……親と離ればなれでつらいんですね」
「え?いや、まあ、それは勿論ですが」
「頑張って下さいね!」
なにか勘違いをした給仕が去っていく。
釈然としない心持ちのまま、エノクは食事を再開した。
口腔に広がる香りと舌を満足させる肉汁、混じった汁との相性が抜群でエノクの味覚を翻弄する。
切り分けた手応えから柔らかく、しかし口の中では充分な歯応えがあった。
レイナルの視線をずっと受けているので、あまり食事に集中できない。
「本当に旨いな」
次の機会に。
レイナルを連れてこれたらと思う。
また落ち着いて食べに来たい。
その願いが叶ったのは、また随分と後の話。
そうなった原因がこの試験結果であるとエノクが知ったのは、もうすぐである。
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