ナオン・メディウム ➀
ついさっきまで肉大盛り野菜少なめ特製スープメンを食べようとしていた。
しかし、今は俺の目の前にはヨダレをだらだらと流している漆黒の化け物がいた。金色に光る眼がより一層不気味さを増させていた。
食事をしようとしていたのに、いつの間にか餌側の立場になっていた。辺りを見渡す限り、どうやら森の中のようだ。
普通ならわけのわからない状況ではあるが、俺にとってはこれが日常だ。
つまりは俺の仕事の時間ということだ。
「コトオさん! 来てくれたんですね」
後ろから女性の声が聞こえたので振り返った。俺の後ろには、純白の麻服を着た巨乳で小柄な少女が慌てた様子で立っていた。
推定Gカップ、いやHかⅠの可能性もある。彼女の服はピタッと着るタイプなので、着やせする可能性も捨てきれないからだ。
そして、彼女は可愛い。とにかくかわいい。ニキビ一つなく、さらに化粧をしていないのに艶のある頬をしている。金髪を肩まで伸ばし、少しぷっくらとした顔が愛らしい、17歳の女の子だ。
俺の自論だが、巨乳は美女に宿ってこその意味があると考えている。顔が悪ければ自然と性欲が落ちるわけで、巨乳というポイントが増えてもプラマイ0だ。巨乳の不細工か貧乳の美女なら、俺は迷わず貧乳の美女を行く。
と言いたいところだが、本音を言えば一番は巨乳の美女だ。だから、俺は彼女とやりたいのだ。
「来てくれたって、ナオンが呼んだんだろ」
俺は気だるそうに自分の短髪をかきながら、ナオンの全身をまごうことなき性的な目で舐めまわした。
たまに女性の体を見るのは失礼だとか恥ずかしいとかぬかす馬鹿がいるが、そんな奴は一生童貞のまま朽ち果てればいい。
芸術と一緒で誰かに評価されてこそ、女性の体は輝くのだ。
「……そうですけど」
軽く冷や汗を垂らしながらナオンは答えた。どうやら俺が変態的な目で見るから、照れているようだった。
普通の美女にこのような態度をとれば、気持ち悪がられて道端に広がった土砂物を見るような軽蔑的視線を向けられる。
男性諸君は覚えといたほうがいいが、男は女性にみつめられると「あれ、俺の事好きなんじゃね?」と感じるかもしれないが、女性が男性に見つめられても「こっち見てるわ」ということしか感じないのである。
それで失敗した俺がい言うのだから間違いない。
本来なら女性が見られて照れるのは、下着姿といった明らかに恥ずかしい恰好か、好意を持つ相手か、容姿の優れたイケメンに限る。
なのだが、ナオンは違う。
正確に言えば、彼女の種族である【ディップ族】だけは例外なのだ。
手短に言うとディップ族は俺たち人間よりも、美形が多く女性の場合は巨乳が多い。けれど、それは俺たち性の亡者からの意見であって、同族同士はそう感じないらしい。皆が皆、容姿と体形に優れているので、ずば抜けた美人がいなく、男性に持て囃される機会が少ないらしい。
なので、他の種族である俺みたいなやつの目線でも、単純に慣れていないという理由で照れてくれるのだ。ありがたい話である。
がっつり彼女を見つめていると、性欲が体の底から溢れてきて、今すぐにでもベッドにダイブしたいところだった。
しかし残念なことに、彼女は俺に抱かれたくてここに俺を召喚したわけではないようだ。
「グギャァァァァァッァァァアァアァア」
突然、黒い化け物が甲高い咆哮をあげた。俺が化け物を無視して、巨乳に見とれていたのが気に障ったのだろうか。
仕方がないので、目の保養から視線をずらして、見たくもない気色の悪い生物を見ることにした。
化け物の種族名は【クローバ】 蝙蝠の一種とされており全長3mもある。胴体は毛なのか皮膚なのか分かりにくい黒色で、俺とあまり違いのない大きさだ。(ちなみに俺は175cmだ)。
こいつの最大の特徴は、巨大な両翼だ。軽く動かすだけで強烈な風が巻き起こると言われている。
「変な奴に絡まれてんな。また迷子か?」
「す、すいません。また仲間とはぐれてしまいました」
彼女はディップ族の数人とチームを組んで、主に怪物退治をこなして生計を立てているらしい。が、仕事中に迷子になることが多く、その時に助け舟として契約している俺を呼ぶことが多い。
「ま、俺はいいんだけどさ。ナオンは、その、いいのか?」
今度は俺が照れてしまった。これから起きるハッピーなことを想像してしまうと、自然に鼻の下が伸びてしまう。
「……は、はい。覚悟は決まってますから」
今にも飛び掛かってきそうな巨大蝙蝠を見張っているため、ナオンの声しか聞こえなかった。けど、顔を見なくても彼女の決心がついたことは伝わってきた。
「よし、契約成立だな」
いよいよ、俺の仕事が始まる。俺はクローバに向かって戦闘態勢をとった。腰を低くし、突っ込まれても対応できるようにした。
「グギャララッラアア」
訳のわからない声を上げた食欲旺盛な蝙蝠ちゃんは、臨戦態勢をとった俺をみて攻撃を仕掛ける気になったようだ。
閉じていた両翼を限界まで広げた。ちっぽけな俺からすれば、それだけで充分な威嚇だった。
けれど、怯んでる場合ではない。俺にはこの仕事を終わらせて、彼女から依頼料を支払ってもらわなければならない。
肝心の依頼料とは、彼女の体を一晩好きにしていい権利である。あまりお金のないナオンは、体で支払うことを了承しているのだ。
くぅ、考えただけで興奮してくるが、おかげで全然仕事に集中できねぇぜ!
「いくぞ、蝙蝠野郎!」
この時の俺は、自分でも引くぐらいのスケベ顔をしていたと思う。