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異世界他力本願  作者: おたま
9/37

9:自身の価値

9話目


内容とサブタイトル一致しないなぁ

すっかり日も暮れて夜になった頃、私は家に到着した。

今回は疲れた……

身体的にではなく、精神的にだ。



「あ~…疲れたわ……」


家のソファーに座り、だらしなく足を放り投げる。


「エルマーナ様。湯浴みの準備が出来ました」


いつの間にかいた侍女らしき女性が声をかける。


「えぇありがとう…それと…明日シャルロット様に会いに行くわ」


「…畏まりました」


侍女は恭しくお辞儀をし退出した。


そして誰もいなくなった部屋で彼女は自身が身につけていた防具を外し始めた。


いつの間にか置かれていたお湯の入った木桶とタオル。

風呂に入りたい気分だったが、あれは贅沢な代物だ。たまにしか入らない。

だが今日は入っていいだろうとも思った。

それほど良い事があったのだ。風呂に入ってもお釣りが来るような出来事が…

しかし今日はもう遅い。日を改めて入ろう。



私は服を全て脱ぎタオルをお湯につける。

お湯を絞り体を拭く。


…………


体を拭きながら、ふと今日の買取所での出来事を思い出す。







………







……













私のコプシータから出されたイナト二デールの素材にミランダは驚いていた。


「あんた……これイナト二デールかい?」


ミランダはイナト二デールの牙、爪、骨、毛皮などを確認しながらテツヤに問う。


「そうですけど………」


それがなにか?とでも言いたげだった。


「後、肉もあります。」


テツヤは足元にあった麻袋1つをひっくり返す。


ボトボトボト……


麻袋から大量の肉が流れ落ちた。


「……あのイナト二デールの肉がこんなに沢山……」


ミランダが呆然とする。高級食材が山のようにあるのだ。しょうがない反応と言える。


「あの……こっちも肉です」


といいテツヤはもう1つの麻袋もひっくり返す。



ボトボトボト…………ボトン……


大量の肉が流れ落ち、最後に丸い石の様な物が落ちてきた。


ちょっ……それって!?


「そういえばミランダさんこれイナト二デールがくれたんですけどこれって何かわか「拳石」………え?」


「だからそれがイナト二デールの拳石よ!!」



「え!?そうなの?」


テツヤはミランダさんを見る。ミランダさんも首を縦に振る。



「そうだったんだ……じゃあはいこれ」


テツヤは私に拳石を差し出した。


「あげるって約束だったしな」



「いいの?……確かにくれるって約束だったけど……大金になるわよ?」


なんなら買い取ってもいい。


「いいよ。約束だからな」


彼は私の手を取り拳石を乗せた。



「……ありがとう」



「どういたしまして」


彼はニカっと笑ってみせた。

そして彼はまたミランダさんと会話を始めた。


良かった……彼に顔を見られずにすんだ。

きっと今私の顔は赤くなっている。


何はともあれ、探し物が1つ手に入ったんだ。

後もう1つ、それでようやく彼女は……


「そうだ。クァナの羽とかも買い取ってもらえますか?」


まだ売るものがあるらしい。

彼は小さめの麻袋を持ち上げた。

クァナか…イナト二デールに比べると、

たいした金額にはならないが、売れるに越したことはないのだろう。


彼は麻袋の中から白い羽毛を取り出した。


「うー…ん」


イナト二デールの後だからかミランダのリアクションは薄い。


「いや、クァナって言ったじゃん…何を期待してるんですか…」


テツヤが少し困ったように言う。


斯く言う私も余りの普通さに少し残念に感じてしまう。

旅をしていたというから色々期待してしまった。

……がそれも一瞬の事だった。


次に彼が取り出したのは茶色の羽毛だ。


「それってまさか……」


「ん?クァナの色違い…「ホッピークァナ!!」……なにそれ?」


ミランダが声をあげる。


「クァナの亜種よ。通常のクァナより珍しいわ」


イナトニデールには劣るけど…

と私が補足する。

どうやら何も分かっていないようだ。彼の中では鳥は全てクァナなのだろうか。


「へー知らんかった。…じゃあこれも?」


今度は黒い羽毛が出てきた。


「ま、まさか…これって………」


「さっきのなんとかクァ「パラティッシクァナ」………もうなにがなんだか……」


今度は私が声をあげる。

彼はもう考えるのをやめたようだ。


「イナト二デールが霞むくらい稀少よ!!一体どこでこれを……」


私もミランダも呆然とする。

ヘレナとアントンは何もわかっていないようだ。


そこでハッと気づく。


「テ、テツヤもしかして尾羽持っていない?緑色の!綺麗な尾羽!!」


私は彼の肩に手をかけ揺さぶる。


「ま、待ってあ、あるから」


テツヤはされるがまま揺さぶられている。


「あ、あるの?」


そこでようやく私は彼の肩を放す。


「ほら、尾羽」


彼は服の胸ポケットから尾羽を取り出す。


「ほ、本物………」


私は思わず目を奪われる。ミランダもだ。


「テツヤこれを「はい、あげる」……え?」


いいの?


「何となくだけどエルマが探してる物なんじゃない?」


そうだ。私は拳石とこの尾羽を探していた。

だけどそれをテツヤに言ったことはない。


「あんなに欲しそうにされたらな」


テツヤは苦笑する。

私はまた顔が赤くなった。


「いいのかい?簡単に譲ってしまって…」


ミランダが尋ねる。


「必要っぽいですし、俺には必要ないものですし…それにここまで世話になったから…だからほれ」


テツヤはまた私の手を取り尾羽を握らせる。


「金なら手に入れた。気にすんな」


……まったくこの男は…馬鹿なのか大物なのか……

おそらく後者ね。きっとそうだ。


この日私は6年かけて探していたものを2つ同時に手に入れた。

予期せぬ方法で……













その後、マルティナがギルドカードをを持ってきた。

イナト二デールの拳石とパラティッシクァナの尾羽に彼女も思わず卒倒しかけた。

カードを受け取り、買取を終えて、お金を受け取った。

結果としては結構な金額になった。

そこそこの宿に3人で泊まっても半年は暮らしていけるだろう。



買取所を出て彼らが泊まる宿探しに付き合った。

買取所を出る時にミランダとマルティナに口止めをしておいた。

騒がれると面倒になる。

テツヤにも口止めをしておいた。迂闊に言わない方がいいと。

幸い3人とも理解が早かった。いや、テツヤは遅かった。



宿探し中にテツヤが今回の報奨金について聞いてきた。

テツヤは自分が稼いだお金の価値を全然知らなかった。

道中、簡単にお金の価値を説明した。自分が結構な額を稼いだ事を知り驚いていた。

宿が決まって別れ際に彼に欲しいものを聞いた。

すると彼はコプシータが欲しいと言った。

確かにハンターをするならコプシータは必需品だ。

なるほど今度お礼にプレゼントしよう。

一先それまではという事で私が使っていたコプシータを渡した。

彼は自分で購入すると言っていたが半ば無理やり押し付けた。



「はぁ~~…大きな借りができたわね」


意識を戻し、小さく呟く。


私が6年前から探し求めていたものが2つとも見つかったのだ。

1つはイナト二デールの拳石だ。

もう1つはパラティッシクァナの尾羽。

6年も探したのだ。しかも何の情報も得られなかった。

今回はロビンに感謝しよう。

普段迷惑を掛けられているのだが遂に役に立った。

ロビンがイナト二デールの死骸を見つけなければ、彼に出会えなかった。

あの不思議な男、テツヤ・オナガに……


体を拭き終え、寝間着に着替える。


彼は今日自分がどれほどの事をしたのか理解していないだろう。

無知ゆえなのか、天然なのか……


もうしばらく彼と関わってもいいだろう。

用事を済ませ10日後といったところか………


ハンターとなって10日後の彼に会うのが楽しみだ。

普通ならまだまだ初心者。環境に慣れようと必死こいているはずだ。

だが彼なら何か面白い事をしでかしそうな予感がする。



「とりあえずは明日ね」



部屋の明りを消し、ベッドに潜り込む。

こんなに穏やかに寝れるのは何時ぶりだろうか。私は眠りに就いた。













翌朝




いつもより早く目覚めた私は荷物の確認もそこそこに飛び出すように家を出た。

お父様もお母様も呆然としていたが、説明は後だ。

行き先は王城近くの大きな屋敷。私が幼い頃からよく出入りしていた屋敷だ。

だが先に寄らねばならない場所もある。





………











用事を済ませ本来の目的地に着いた。

入口に立っている門番に声をかける。

既に話が通っているようで、すぐに中に案内された。

流石ウチの侍女。仕事が早い。


中に入ると、執事の方が迎えてくれた。

この執事とも長い付き合いになる。


「おはよう。シャルロット様は起きていますか?」


「おはようございます。エルマーナ様。シャルロット様は既に起きていらっしゃいます。

今朝エルマーナ様がお伺いされると聞いて大変喜んでおりましたよ」


「そうですか。突然で申し訳ありません。早速ですが会いに行っても?」


「はい。シャルロット様は部屋にいらっしゃいます。」


「では、案内してもらえるかしえら。」


「畏まりました。それではこちらに……」


エルマーナは執事の案内についていった。



執事はある部屋の扉の前で止まる。

そして扉をノックする。


「シャルロット様。エルマーナ様がお越しになられました」


どうぞ。


部屋の中から女性の声がする。



「ではエルマーナ様……」


執事はドアを開ける。


「ありがとう」


エルマーナはそのまま部屋の中に入っていく。


「いえ、とんでもございません」


部屋に入るエルマーナの背に小さく声をかけた。



……




「お久しぶりにございます。シャルロット様」



中にはベッドから上半身だけを起こしている少女の姿があった。

見たところ歳は10才くらいだろうか。

金髪のふわふわした長い髪がよく似合うお人形の様に愛らしい雰囲気の少女だ。


「久しぶりね。エルマ。大体1月ぶりくらいかしら?」


少女はクスクスと微笑みながらエルマに問う。


「はい。それぐらいになります。なかなか会いに来れず申し訳ありません」


エルマは膝を突き頭を垂れる。


「うふふ。あなたのそういう真面目なところは大好きよ。

でも今は公の場ではないから、そんなに畏まらないで?」



「はっ、申し訳ありません」



「謝る必要も無いし、そんな硬い言葉もいらないわ。

いつもの様に楽にして頂戴」


「畏ま……わかりました」


エルマはゆっくりと立ち上がる。


「それで突然会いに来てくれたのはどういった要件なの?」


シャルロットが尋ねる。


「急の訪問申し訳ありません。ですがすぐに耳に入れていただきたいご報告がありまして」


「何かしら?もしかして手に入ったのかしら?」


シャルロットはおどけた様に言うがエルマは表情を変えない。


「………」


エルマの表情で察したのか、先程まで笑顔が消え真面目な顔つきになる。



「何?…まさか、もしかして………」



「はい。そのまさかです。遂に手に入れました」


エルマはポーチの中から木箱を取り出す。


「開けて確認して見てください」


木箱をシャルロットに渡す。

シャルロットは恐る恐る木箱を受け取る。


「滅多に手に入らない代物よ。私でさえ手に入れるのを半ば諦めていたわ……」


シャルロットは木箱を抱えシャルロットを睨むように見つめる。


「これだけ期待させ偽物でした。なんて笑えない冗談はないでしょうね」


実際、偽物を持ってきた輩は何人もいた。

その者等がどうなったかは言わずもがなだ。


「ご安心を。既に確認はとれております」


実際、エルマはイナトニデールの実物を見ている。

パラティッシクァナも獲物は見ていないが他の羽毛やトサカ等を確認できた。

なにより手に入れた本人に確認したのだから間違いない。



「あなたを疑う訳じゃないけど、……偽物だったらひどいわよ…」


彼女が嘘をつくはずがないのは知っているが、不安は隠せない。

それでも他ならぬ彼女が言うのだ。

シャルロットは期待を込めた表情で木箱を開けた。


「あ…………」


実際、シャルロットは拳石も尾羽も実物を見たことがない。

それでも解った。これは本物だと。

偽物と明らかに違う。輝きが?高級感?言葉に上手く出来ないがそれでも理解できる。

これが本物だという事は。



「……どこでこれを?」



彼女が拳石と尾羽を手に入れると言いだしたのは6年前。

その為ハンターとなったエルマだが,

たった6年でこれを手に入れるのは不可能に近い。というかほぼ不可能だ。

2つの内1つでも世に出れば騒がれる代物なのだ。

すぐさまオークションにかけられとんでもない値段がつく。

そんなお金をエルマが持っているとは思えない。


「まさか盗んだんだじゃないでしょうね?」


彼女がそんな事するわけがないとわかっているが、他に方法が思いつかない。



「そんな事しませんよ。譲ってもらったんですよ」


「はぁ?…これだけの物を譲る人間がいるの?」


「いましたよ。価値を知ってなお譲る馬鹿が……」


だからここにあるんです。とエルマが遠くを見ながら言う。


「へぇ……そんな人間がいるのね………是非会ってみたいわその馬鹿に」



「会えますよ。シャルロット様の治療が完了すればですが……」



「……そうね。治療が終わったら会わせてもらおうかしら……お礼もしなきゃいけないしね」



するとドアがノックされた。



「あら?誰かしら?」



「どうぞ」



何故かエルマが答える。



「失礼しますよ」


入ってきたのは、見た目50代位の男性だった。



「何故アラン先生が?……」


シャルロットは驚いている。

中に入ってきたのは、アラン・ラムジー。宮廷薬師の筆頭の男だ。

私の診察をしている先生でもある。


「お忙しい中無理にお呼び立てして申し訳ありません」



エルマが頭を下げ謝罪をする。

どうやら彼女が呼び寄せたらしい。



「血相を変えここに呼び出しだすから姫様に何かあったのだと思い来たのだが………」


アランはシャルロットを一瞥した。


「姫様もお体に特に変わったところは見当たらないし……エルマ嬢、説明はしてもらえるのだろうね?」


アランはエルマを問い出す。


「実は確認して欲しい物があるんです」



エルマはシャルロットから木箱を受け取ると、それをアランに渡す。



「なんだこれは?………こ、これは…」


中のものを確認し、アランは驚愕する。



「なんと!?遂に手に入ったのか!」


アランは大声を上げる。

表情も驚愕から喜びに変わっていた。



「なるほど、だから私をわざわざ呼び寄せたのか……」


なるほど……とアランは急に思案する様な顔つきになりやがて小さな声で呟く。


「3日ですかな……」



するとアランはおもむろに膝を突き、シャルロットに向かい


「姫様、このアラン・ラムジーきっと姫様の病を完治するポーションを作ってみせましょう」



それでは、とアランは急ぐ様に部屋を出ようとするが、ドアの前で立ち止まる。



「姫様、3日後にはポーションは出来上がるはずです。

お父様には私の方から連絡をさせていただきましょう」



すると突然アランはエルマに視線をやる。



「エルマ嬢も3日後に来るがよい。そしてこれらを入手した経緯を我々に説明せよ。」


「そうね。それは私もきちんと聞きたいわ」


シャルロットが同意する。

エルマは内心冷や汗を掻く。

説明するのは容易いが、あの男の事をどこまで言っていいのか?

今回恩があるとは言え彼の見た目はなかなか怪しい。。

常識もないし、変わった服を来ている。

顔つきもこの国の者ではないだろう。

出自に関してはもっと怪しい。


「わかりました」


とりあえずは3日ある。

3日の内で彼と口裏合わせをしておこう。それと彼から怪しさを無くさせる必要がある。

もしかしたら彼に害が及ぶかも知れない。もしかしたらだが……

譲ってもらったとシャルロットに説明してしまった。

今更私が手に入れたなんて言っても誤魔化せないだろう


「では、私はこれにて」


そしてアランは退出した。



「これで私の体も治るのね……」



シャルロット様は感慨深げに言うが、私は内心の不安を隠しながら……


「そうですね」


そう返すので精一杯だ。

いや、折角彼女の病が治るというのだ。

ここは素直に喜ぼう。



その後は彼女が病気治ったら何処に行きたいだの、

あれが食べたいだのとお喋りをしながら1日を過ごした。



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