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異世界他力本願  作者: おたま
4/37

4:順応と遭遇

4話目です

森の中に廃村を見つけて、大体20日くらいが経った。


その間ジワジワとこの世界に順応…いや野性化していく自分を存分に体感していた。


あれからまず手始めに原型を留めていない崩れた家の物色を開始した。

そこからは色々使えそうな物が出てきた。

例えば、小さい穴とかが空いてるが、45リットルのゴミ袋と同じサイズくらいの麻袋が三袋出てきた。

他には、木でできた皿やコップ等の食器類、数もそこそこあったので全部回収した。

そして俺は遂にファンタジーなアイテムを手に入れた。



剣である。



そうお爺さんも言っていた。

この世界は剣と魔法の世界だと、その剣と遭遇したのだ。



外に放置されて長い間手入れされていなかったせいで、傷んではいたが初めてのファンタジーアイテム。

鞘に収められていた剣を見つけたときはまさかと思ったが、実際に剣を抜いてみて興奮を隠せずにはいられなかった。

それからというもの、常に腰に剣を装備して出掛けるようになった。



銛漁も火おこしも大分馴れた。

魚も1日分の7,8匹は30分程度で捕れるようになった。

そういえば最近、神憑でイメージをする時に体が光らなくなった。

馴れた影響なのだろうか。一々光るのも面倒くさいので良しとしている。

もはや息をするかの如く力を使えているからな。その証拠だろうか。



それから森の散策をするようになった。

飯が川魚だけだから飽きたのだ。

おかげで食べれる木の実を見つけた。

食べれるかどうかは【伊藤のおじさん】がどうにか判断できた。

やはり【伊藤のおじさん】はサバイバルの神なのか。

というかこの木の実は地球にもあるのか?

俺の中で【伊藤のおじさん】に対する信仰心が上昇した。



そして6日前ぐらいだろうか、遂に不思議生物に遭遇した。


……ウサギだ。


但し、丸々としていて耳が短く目の上付近に小さな角が生えているウサギだ。

大きさで言ったらサッカーボールくらいだった。

それでも初めて出会ったファンタジーなウサギ、仕留めるのは気が引けたので

仲良くなろうと試みた。俺は屈むようにウサギにじっと見る。

ウサギはつぶらな瞳で俺の方をじっと見つめている。

次に俺はウサギの頭を撫でようと手を出してみる。

ウサギは俺の手を小さい鼻をあてヒクヒクさせている。

このまま頭を撫でようとした時、ウサギは俺の手に噛み付こうとして大きな口を開けた。


「あぶねぇ!!!」


咄嗟に手を引っ込めて数メートル距離をとる。

さっきまで愛嬌があったうさぎが今は牙を剥き出して唸っている。


「この…クソウサギ!今俺の手に噛み付こうとしたな」


可愛い容姿に騙され迂闊に手を出した俺が悪いが、あっちが殺る気ならこっちだって殺るしかない。


「俺に動物愛護の精神は欠片もないぞ」


俺がジリジリと間合いを少しずつ詰めていくと、ウサギは勢いよく飛びついてきた。


「はっ速ぇ!…けど」


こちらに向かって飛びついてきたうさぎを、


バシンッ!!


上からグーで叩き落とした。地面に叩きつけられたウサギをそのまま足で思いっきり蹴り飛ばした。

吹っ飛ばされたウサギはすぐに立ち上がったが、今の蹴りでどこか痛めたのかヨロヨロしている。


「喧嘩ふっかけてきたのはそっちだからな」


俺は腰に差していた剣を鞘から抜き、ウサギの元へ駆け出した。


「くたばれ!!」


そう言ってウサギの顔面に剣を突き立てた。

グシャっという感覚と飛び散った血を見て、我に返る。

剣を引き抜き自分が殺した獲物を見る。




「ハァ…ハァ…ハァ………悪いなこっちも生きるのに必死なんだ」



ただのウサギかと思ったら角が生えてあるだけある。なかなか凶暴な動物だった。

ウサギの血が付いた剣を払う。血が落ちない。

後で水洗いだな。

初めて魚以外の生き物を殺したが、気分が高揚している為なのか

特にこれといった罪悪感も沸かなかった。


「このウサギどうしよう」


生憎ウサギの捌き方は分からない。

このまま放置するのも、他の動物を寄せ付けるかもしれない。

それに食べるわけでもなくそのまま殺して放置というのもこのウサギに申し訳ない。


「こんな時の為の神憑だな」


豚や牛を解体する仕事の人…………なんてったっけ?

と…さつ…?

なんだっけか?

え~~………


「なんつったっけ?動物解体する仕事」


さつ……ちく………

と……さつ……とちく…?とちく

屠畜か!!

よかった思い出せた。


この前丁度授業でそんな事言ってたのを思い出せた。


「思い出したはいいが、内容までは分かんないな」


そもそも屠殺場の人の明確なイメージとか無い。


「だめだ!わからん。もう諦めて埋めるか」


とりあえず家から遠く離れた場所で埋めよう。

俺はウサギの死骸の尻尾の方を持ち上げる。

現代人にはちょっとグロい為、なかなかしんどい。

今いる場所から200m位離れた場所に大きめの木がありそこの根元にウサギを埋めた。

そして手を合わせ合掌する。


…………



よし、これでいいか。願わくばもう出会わない事を祈るよ。



俺はそのまま家に戻り、その日の散策を終えた。

だから俺はまったく気がつかなかった。

俺がウサギを埋めた場所がその数分後には掘り起こされている事を。








ウサギと初遭遇から5日がたった今日、昨日までに倒したウサギの数は2日前に20を超えてから数えていない。

俺の願いも届かず出会いまくりである。

それゆえ俺もなかなかの狩人になった。

そういえば昨日、他の不思議生物にも出会った。

羽が四枚の黒いニワトリだ。

こいつもどうせ襲ってくんでしょ?って思ってたら、きっちり襲いかかってきた。

だが所詮ニワトリ、羽が増えようと特に地球のニワトリと変わった行動はなかった。


飛びかかって来たニワトリに対し、そのまま俺は横に剣を振る。

本来なら首を切り落とす勢いなのだが、所詮傷んだ剣。

ニワトリの首を撥ねるに至らず、首半分位しか斬れなかった。

それでも命を奪うには十分で、首切り口から大量の血が噴き出した。

ゲェエェエェェと呻き声を上げ、体をブルブルと痙攣させた後、そのまま息絶えた。

ウサギで大分慣れてしまったのか、生き物を殺すということに抵抗が大分無くなっていた。

襲ってきたのはそっちでしょ?っていう感じで殺っている。

普通ならトラウマもんだったのに随分と逞しくなったな俺。



「さて、この鳥もどこかに捨ててこようか」


ウサギ同様、捌き方もわからんしな。


いや、待てよ………

いい加減、倒してどこかに捨てるのも良くないな。

神憑に頼らず、自分でやったほうがいいか…

よし、そうと決まれば!



「こいつは食べるか!」


ついに魚以外の解体に挑戦だ。

そうと決まればとニワトリの尾羽を掴み持ち上げる。


「ん?」


このニワトリは全体に黒い羽に覆われているのに尾羽の一本だけ、緑色だな。


「綺麗な羽だな。記念に持っていようかな」


後の羽は集めれば枕くらいは作れるだろうか。

とりあえず川の方に向かおうか。

俺はそのまま川に向かった。




川に着いた俺はとりあえず川辺に鳥を置き、どうしようか考える。


「まずどうしたらいいんだ?羽を毟って内臓とか取り出したらいいのか?」



俺はその場に腰掛け、鳥の羽を毟ってみる。

なかなか毟れない。正直もう面倒い。

ついでに明日の朝飯分の魚を捕る。

数分で魚三匹捕まえた。

やっぱり魚獲りは楽でいいなぁ。

羽を全部毟るだけで日が傾いてきた。


内臓処理とかはもう明日やるか。メンドくさい。


「家に戻るか」


明日腐って家の周りで悪臭がしたら嫌だからと、川辺に置いておいた。

川辺でウサギもニワトリも見たことないし、ここに置いてても取られないだろう。

毟った羽と、獲った魚を抱え家に戻る。

俺はそのまま家魚を食べ、その日の活動を終えた。




そして翌日すなわち今日、鳥を置きっぱなしにしてきた川辺に向かう。



「あれ?鳥がない」


昨日置きっぱなしにしてきた鳥が失くなっていた。


「盗まれたか?それとも…」


川に流されたか?いや、川の水位はここまで来ないしな。

そもそも昨日は天気も良かったし、水位変わるほど天気が荒れたりはしていない。

じゃあやっぱり盗られたか。一体誰が………



「まぁなんか他の動物が持っていったんだろな」



まぁそれが一番考えられる事だしな。


…でもあのニワトリを食べるって結構大きめの動物がいるって事になるな。

そうだとしたら結構やばいんじゃないか。

イノシシみたいなのが出て来たら折角ここまで来たのにゲームオーバーしちゃう。

ちょっと慎重になるか。


そう決めて行方不明になった鳥の代わりに新しく鳥を探そう。

肉自体はウサギでいいのだが、羽が欲しい。

昨日の分の羽では枕に足らないからだ。


いずれ布団とかも作りたいな。

などと考えながら森を散策する。


昼頃まで探し回ってニワトリを2匹手に入れた。

白色と茶色のニワトリだ。

そしてまた川の方へ向かう。


「今度こそ最後まで解体しよう」


そんで今日は鶏肉のステーキだ。

今晩の夕食が決まり、ウキウキ気分で川に向かう。






「さて、とりあえず羽をまた毟るか」


今度は2羽いるからな、さっさとやんなきゃまた日が暮れちまう。

気合を入れ俺は昨日より熟れた手つきで羽を毟る。

だが相変わらず羽が頑丈でなかなか抜けない。


「昨日と同じ鳥だよな?」


昨日狩った鳥を思い出すがやはり同じ鳥のはず……

色も違うしな。


「あの尾羽が無いな」


昨日、羽を毟った鳥は一本だけ違う色の尾羽があったはず。

だが、今日の2羽の鳥にはその尾羽が無い。


「オスとメスで違うのかな?」


そんなもんだろうと納得し、ひたすら羽を毟る。

大体1時間くらいかけ羽を毟りきった後、ようやく丸裸になった。


「よし、さっそく解体するか」



あっナイフ忘れた。


「やっべぇとってこなきゃ」


ナイフを忘れたため、急いで家に取りに行く。

ナイフを取って戻って来るまでに5分もかからなかったのに、戻ってきたら鳥は消えていた。


「は……………?」



2羽とも盗まれた。羽だけが辺りに散らばってなんか虚しい。


………おのれ謎の獣、見つけ次第ボコボコにするからな!


……デカい獣なら即逃げるがな。


「はぁしょうがね~なぁ」


もう取られてしまったのはしょうがない。

辺りに散らばった羽を回収して麻袋にしまう。




「しゃあないからウサギ狩りするか」



だが取られっぱなしは頭に来るので、犯人探しはしようと思う。



そのまま辺りに散らばっていた羽を麻袋にしまう。

枕用の羽が溜まったのは嬉しいな。

後、ついでに晩飯用に川で魚を3匹捕獲する。

そして急いで家に戻り、飯の支度をする。


昼飯をさっと食べて、森にウサギ狩りに出掛ける。

この時にしっかりと麻袋を置いていく。



今は時間的お昼を少し過ぎたぐらいだろうか。ウサギ1羽でも捕まえられたら、ラッキーくらいだろうか。

森の中を迷わない程度にウロウロする。そういえば結構長い間この森に住んでいるけど、

ウサギとニワトリ以外の生物にまだ、出会ってないな。

他にいないのか?

安全だから別にいいけども…




……………




………




しばらく探し回ってようやく見つけた。ウサギだ。

こちらにはまだ気づいておらず、呑気に日向ぼっこなんてしている。


「ここからじゃちょっと遠いな」


俺はゆっくりと背後から近づく。

するとウサギは気配を察知したのか、伏せていた顔を上げ、キョロキョロと辺りの警戒を始めた。

俺は慌てて木の陰に隠れた。


「やべぇな気づかれたか?」

普段あんまりバレないのにこんな時に限って………



…どうしようあんまり近づけないな。

どうする?こっから狙うような飛び道具とか無いしなぁ。

石でも投げるか?

大体15mくらいの距離がある。

いやっ!流石に当てれる気がしねぇ。



……野球選手でもあるまいし…………


「あっ…」


そう。思いついた。野球選手だ。

しかし誰がいる?コントロールの良いピッチャー。




…………




……




1人思いついた。

有名なピッチャーだ。確かベー○ルー○から三振を奪った選手だ。


名前は確か………



「沢○栄○!!」


すると体がうっすら光りだした。

木の陰からウサギを覗く。


うん。やっぱり、今なら当てられる。

俺は地面に落ちている石を1つ拾い、音を立てないようにしてウサギの背後に立つ。

そしてゆっくりと振りかぶって……




投げた。







石は真っ直ぐもの凄いスピードでウサギの後頭部に直撃した。

まるで豆腐の様に頭がグチャッと吹き飛んだ。

ウサギは呻き声を上げる事もできず、そのまま倒れた。

そしてウサギに当たった石はドンッと大きな音をたて地面に深くめり込んだ。


「えっ?」


まさかの威力に投げた俺が驚いている。

とりあえず俺は剣を抜きウサギの様子を見に行く。



…確かめるまでもなく即死だ。



「すげーな、沢○栄○……今何キロ出てたんだ?」

威力といいコントロールといい…沢○栄○ほんとに野球選手なの?

危ねぇ~な。これ…

使いどきを考えないと………



とりあえずウサギの亡骸を持ち、また川辺に向かう。




二回とも川辺で盗られたからな、川辺に置いとけばまた盗みに現れるかもしれない。



もうじき夕方になりそうだ。急ごう。







………………






川辺に着いた俺はウサギを地面に置いて、また魚を捕まえる。

2匹とったところで、辺りが暗くなってきたので漁を終わる。

火をおこし、魚をこの場で焼く。


さてと…一旦戻るか。


ウサギは置きっぱなしだ。


川辺が見えなくなったところで、回れ右をして忍び足で川辺に置いてきた魚が見える草陰に身を隠した。



「さて、どんなヤツが現れるか……」



草陰に身を隠して1時間くらいがたった。

空はすっかり暗くなった。



「今夜は満月か」


満月といっても3つあるうちの1つの星がだが…

それでも満月の夜らしく月明かりがとても明るい。

これで3つの星全部満月ならどれほど明るくなるというのか。



「まぁ満月のおかげで川辺の方はよく見えるが…」



月明かりのおかげで夜でも川辺はそれなりに明るい。

ウサギが置いてある場所に黒い影が見えるからまだ盗人は現れていないのだろう。




大体1時間ぐらいが経った頃、遂に動きがあった。


川辺にナニかいる。


なんだ?人みたいな形だ。



川辺で何かを探すように、ウロウロする人影のような物体。

でもそんなに大きくはない。この程度の大きさならなんとかなるか…


「ウサギを探してるのか?」


だったらウサギをとったところで捕まえるか…

出るタイミングを決めたところで、丁度その人影(?)はウサギを見つけたようだ。

そして人影(?)はウサギを持ち帰ろうとした。


…よしっ行くか




「てめぇぇぇええええ!!!!」


大声で怒鳴りながらダッシュで駆けていく。

人影(?)はびっくりしたようで躓いてしまったようだ。



「この肉泥棒がっ!!ぶっ殺す!!」



…まぁそんな気はないが、怒ってますアピールって大事だからね。

夜の為よく見えなかったが、近づいてみてようやく正体が分かった。



「えっ………」




肉泥棒の正体は子供だった。人間の…………

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