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異世界他力本願  作者: おたま
3/37

3:初めての野宿

3話目です。

少し慣れてきました。

あれから数時間が経過したが、神様はまったく憑依しなかった。


俺がお爺さんからもらった餞別という名の不思議な力は

まったく使えなかった。(知識不足)


「まいったなぁ……」


ちなみに今は、能力が使えないことに困っているのではない。


「もう夕方だ…」


日が傾いてきている事に、困っているのだ。

近くに人が住んでそうな場所もわからないし、このままではここで野宿になってしまう。

何を隠そう俺は野宿はおろかキャンプすらした事がないのだ。


「とりあえず、寝る場所を先に探した方がいいのか?」


もしこのまま暗くなって、ファンタジーな生物にでも見つかったら殺られてしまうかもしれん。


「森は危ないかな?この岩場らへんで大丈夫か?」


くそぅ、こんなことになるなら、さっさと人がいる所を探せば良かった。


とりあえず今は寝る場所を探そう。

辺りをウロウロしながらふと思い出し考えてしまう。


「こんな時に伊藤のおじさんがいたらなぁ…」


子供の頃、近所に住んでたキャンプ好きでボーイスカウトの指導をしていた

おじさんを思い出す。

よくボーイスカウトに誘われては断ってたな……今更だが、やっときゃよかった。

ちなみにその伊藤のおじさんは俺が中学に上がった頃に、病気で亡くなった。


「今は神様の力じゃなくて、伊藤のおじさんの力が欲しいよ」


パァァァァアアア


「は?」


なんか、俺うっすら光ってんだけど?


「えっえっなにこれ?」


やだ何これ?怖い。

慌てて体をパンパンとはたく。

埃じゃないから光が収まるわけないんだけど……


テンパってたら、光はいつの間にか収まっていた。

びっくりした。なんだ今のは…


「あれ?」


なんか変だ?

なんだろう?この違和感?


「………まぁいいかその内気づくだろう」


とりあえず今は野宿の準備だ。主に寝床と火の確保だ。

俺はそのまま森の入口付近で薪に使えそうな木の枝を拾う。

寝床は岩場の影になっている所を薪拾いの時に見つけたのでそこに決めた。


後は、丈夫そうな木の棒と燃えやすい木の繊維を集めて火を付けよう。

キリモミ式でつけたいが紐は……ブーツの紐でいいか。

俺は今履いているバイク用のブーツの紐をほどく。


大体30分程だろうか。ようやく火が付いた。

これでなんとか夜も越せそうだ。

近くに川でもあれば魚とか獲りたかったが、もうすっかり夜になっている。

食料探しは困難だ。今夜はもう動かずに今後の事を考えてさっさと眠ろう。


とりあえず、明日からどうするか考える。


「明日、朝一で人がいる所を探そうか…そこでお金作らないとまた今日みたいになるしな」


しかしどうやってお金を作るか…

自分をが持っているものを確認する。

ズボンのポケットお爺さんがくれた手紙。以上。

シャツのポケットは、なにもない


「なんもねぇ…」


どうやら換金してお金を作るのは無理そうだ。


「後は…」


自分の服か。

緑のチェックシャツに下は普通の肌着、下はジーパン靴はブーツ

うん、ツーリング時の格好だ。

この服売って、代わりにこの世界の普通の服を買えば、お釣りでどうにかお金が作れるかな……

いや、でもたいした金にはならないかもしれない。そんな高い服でもないし。


「この格好って大丈夫なのかな?目立ったりしないか?」


でも服これしかないし買い叩かれたらいやだな。他に金を作る術もないがこの案は無し。


「死んだじいちゃんが作ってくれた変わった服とでも言うか」


という偽設定を作る、俺は近くに生えてた大きめの葉っぱを毛布と布団にする為簡単に編み込む。


「転生だから新しく赤ん坊からやり直すのかと思ったけど、そのまま送り込むんだなぁ」


これ、転生っていうのかなぁ?

いきなり子供というのもそれで嫌だが。

………っていうか記憶も消えてないし…

お爺さんが言ってた事が何1つ当てはまってない。


焚き火の火が小さくなってきた時にふと気がついた。


「あれ?なんで俺しっかり火を起こしてんの?」


今更気がついた。

しかも葉っぱを編み込んで何か布団っぽいのとか作ってるし。


「火起こしとかまったくしたことないのに…」


一体なぜ………あっ!


「まさか、さっき俺がうっすら光った時か?」

確かあの後すぐ野宿の準備を始めたな、俺。

まるで経験があるかのように…


「もしかして、これがお爺さんの餞別なのか」

なんだっけ、か…神…神つ?神の力?

手紙を読んで最確認する。


「あっ神憑(かみつき)か。これがそうなのか?」

だとしたら納得だ。急に俺が火起こしなんて出来る訳がない。


「でもなんで急に力が使えるようになったんだ」


あの時野宿とかしたことないから、伊藤のおじさんみたいなアウトドア技術がほしいなって思って………

まさか、そういうことなのか?でも神様を憑依させるっていってたしな。


「伊藤のおじさんは神様だったのか?」


アウトドアの神様なんて聞いたことないんだけど…

いや、でもだとしたら伊藤のおじさん大出世だな。

すげぇーよ伊藤のおじさん!

そう考えるとすごい偶然だな。亡くなった近所のおじさんが神様になってるなんて…………

でも何だっけ?なんか引っかかった。


「ん~なんだっけ?こういう話なんか聞いた事あるな。」


死んだ人が神に……?人は死んだら神に?

何かあったなぁ~こんな話。なんだっけか?

いろいろ考えていると、小さくなっていた焚き火が静かに消えっていった。


辺りが真っ暗になる。

もういいや、今日は寝よう。

仰向けになり、夜空を見上げる。


「すげぇ……」


思わず感嘆の声がもれる。

考え事のせいでちっとも気がつかなかったが、今まで見たことのない夜空がそこには写っていた。

地球ではこんな夜空は滅多にお目にかかれないだろう。

地球では大きな星は月以外見えなかった夜空だがここは違う。

他にも、月より少し小さいぐらいの星が2つある。

しかも大中小とわかりやすい。

しかし一体どれが月なんだ。


「改めてすごい世界に来たなぁ」


これからこんなファンタジーな風景をどれだけ見られるだろうか。

この先が楽しみになってきた。

それと同時に不安も出来た。なんせファンタジーな世界だ。

手紙にも書いてあった。危険があると……

だとすると、今ここで寝ることすら本当は危ないのではないだろうか。

しかしもう手遅れだ。

考え出したらどんどん怖くなってくる。

出会わないよう願うしかない。

名も知らぬ幸運の神様助けて下さい。と手を合わせ心の中で祈る。

さっきまで希望に満ちていた考えはすっかり抜け落ちた。


…が数分もしない内に俺は眠りにおちた。

相当疲れてたんだろう。




…………………




………………




変な夢をみた。


小さな船に1,2,3……

7人の人が乗ってやって来る夢だ。


1人だけ女の人がいる。

他にはおじいちゃんに恰幅のよいおじさん

強そうな人もいる。


なんだこれ?



あっでもこれどっかで見たな。

なんだっけ?

その7人は俺の周りをぐるぐると何周か回って

去っていく。


名前……もう少しで出そう。


7人……7人の…………さ、侍?



違う。それは違う。



そして小さな船は遥か彼方に消えていった。


なんだったんだ。




…あっ七福神だ。


いやぁ~良かった。思い出せた。




……………






………










翌朝、小鳥のさえずりで目を覚ます。



「ふぁ~あ~よく寝た」


案外、目覚めも良かった。布団も無い岩場での寝泊りだが体も痛くないし寝心地が良かった。

陽も出たばかり、旅立ちに絶好の天気だな。

なんか良い夢見れた気がするがなんも思い出せない。

ついでに昨日の不安も忘れていた。


「まぁいいや。よーし行くか」


軽くストレッチをし、焚き火の後や、葉っぱを片付ける。



岩場を離れ、平原にでる。どっかの道にでればラッキーだな。

そう考え俺は歩き出した。





……………





歩き初めて多分数時間、森も岩場もすっかり見えなくなって

太陽が真上に来たぐらいに幸運なことにとうとう道にぶつかった。


「おっ道だ!!」


車道一本分あるかくらいの細い砂利道だが、横一直に伸びている。

やっと人のいる痕跡を見つけた。


「右か左かどっちに行くべきか…」


左右どちらを見ても景色は変わらない。

完全に運任せである。


「どっちもどっちだな。それなら………」


俺は歩いている道中に拾った。杖がわりの木の棒を道の真ん中に真っ直ぐ立てる。

そしてゆっくりと手を離す。


カラン…


支えをなくした木の棒はそのまま地面に倒れた。


「右に倒れたか。じゃあ右に行くか」


木の棒を拾い上げ、右の方の道に向かって歩き出す。


「いい加減腹が減ったな。なんか木の実とか生えてねぇかな。

水でもいいんだ」


昨日から飲まず食わずの為、体力的にも辛くなってきた。

ヒーヒー言いながら、また数時間歩いているとなんか音が聞こえてきた。


「あれ?この音、もしかして」


この音自体にあまり聞き覚えはあまりないが、ただ知識【伊藤のおじさん】として俺既には知っていた。


「やっぱり!!川だ!!!」


超うれしい!!!

この世界で一番大きなリアクションだった。

川幅は5mもないだろう小さな川だった。

俺はすぐさま川辺に下り、手で水をすくう。

見た感じ、汚れた水には見えない。

まさに清流という感じだ。その水を少しだけ口に含んでみる。


「うっうめぇ!!水ってこんなに旨っかたっけ!?」


そう言って何度も何度も水を口に運ぶ。


喉を潤わせた俺は川辺に座る。

木陰もあり休憩するにはいい場所だ。


「川魚とか捕れねぇかな」



少し休憩をして、冷静になってみる。

水で喉が潤ったはいえ、昨日の朝から何も食べてない。

空腹はごまかせない。


改めて川辺に近づいてみる。

よく見ると、小さい川魚が泳いでいる。


「あの魚捕れるかな」


川辺に落ちている木の棒を拾い、それを石で削り、槍のように尖らせる。

そのまま川の魚に狙いを定め………投げる。


棒は見事に刺さった。


川底に……


「やっぱ当たんねぇよな」


元々当たるなんて思ってない。当たったらラッキーくらいだ。

釣具なんて作れないしどうしようか。

もう少し休憩してそのまま出発するか?



「どうしよう。ここで一泊するというのも手だしな」

どうせ急ぐ旅でもないし、なによりもう汗で体がべとべとだ。

出発するにしても一泊するにしてもせめて水浴びはしたい。


羞恥心があるため、その場で全裸になるのは気が引ける。

どこか着替えれるような場所を探す。

辺りを見渡していると向こう岸の方に何か気になる物がある。

森で覆われていてよくわからないが隙間から茶色の不自然な物体が見える。

こっからではよくわからない。


「なんだあれ?ちょっと見てくるか」


俺は川の浅いところを渡り、対岸に渡る。

そしてゆっくりと先程見えた茶色の物体のところへ向かう。


おそるおそる近づいて行くと、正体が分かった。


「あの茶色の物体は屋根だったのか」


森の中を進むと少し開けた場所に着いた。

そしてそこには朽ち果てた数件の家らしきものがあった。

捨てられてもう何年も経っているのだろう。

かつては村だったのだろうか。

さっき川の方から見えたのはその内1件の屋根の部分だった。


「とりあえず捨てられた村っぽいからいろいろ物色するか」


誰か住んでる雰囲気0だからな。

使えそうな物があれば頂こう。

すっかり文明人から盗賊へ変貌を遂げた俺は1件1件物色し始めた。



そして日が傾きかけた時に物色は終了した。


「全部で4件か…」


ここにある原形を辛うじてとどめた建物の数だ

後数件あったが土台から崩れていて家としての機能を放棄していた。


今、その4件の内比較的まともな家の中にいる。

囲炉裏のようなモノもあったのできちんと火を灯している。

宿泊の準備も出来たので改めて現状の確認をする。


「しかし銛があったのは助かったなぁ」


あれから色々物色して回った結果、大きな成果を上げることができた。

まずはナイフだ。刃が欠けてるしところどころ錆びているが、十分役に立つ。

それに鍬や斧、鉈、ノコギリまであった。

ナイフ同様欠けてるし、錆びているが、昨日まで手ぶらの俺には最高の武器だ。

そして銛だ。

これを見つけた時物色を中止して川に向かった。


大体、30分程で川魚を3匹仕留めた。

当然、銛漁なんてした事無い。だがここでまた不思議な事が起こった。

銛を投げる際に、思い浮かべたのは、小さい時テレビで見た。銛で大きな魚を取る漁師だ。

大分おじいちゃんだったが、かなりの達人っぷりだったのでよく覚えている。

そのおじいちゃんの達人めいた銛捌きを思い出しているとまた、

体が淡く光だし、まるで昨日まで銛漁をしていたかの様な感覚になった。

ボロボロの銛に苦戦しつつも、すぐに馴れあっという間に3匹仕留めた。

そして、そのまま熟れた手つきで魚の内臓を取り出し、串焼きにして、今に至る。

火を起こすのも、やはり【伊藤のおじさん】を思い浮かべて作業すると5分程で火が付いた。

今は串に刺した魚が焼きあがるのを待っている。



「やっぱり、俺の記憶じゃ只のおっさんなんだよなぁ~」

よく考えたらずっと変だった。俺が"神憑"で使えたのは、

【伊藤のおじさん】と、名も知らぬ【テレビでみた銛漁のおじいちゃん】

流石にどちらも神様という事はないだろう。

そんな事流石に頭の悪い俺でもわかる。


「まさかキャンプの神と銛漁の神というわけでもないだろうしなぁ」

流石にそんなに神様がいたらうちの国は神様ばかりになってしまう。

……まぁ最近ではなんにでも神って付けるからなぁ、別に珍しくはないのか。


「おっと魚そろそろいいんじゃないか」


いつの間にか、魚もいい感じに焼けている。

考えるの後だ。とにかく今は飯が優先。


「では、いただきます」

大きく一口。昨日ぶりの飯だ。


「うん!うまい!」


空腹は最高のスパイスって誰かが言ってたけど本当だな。

正直、調味料があればもっと美味くなったし、これよりもっと美味い飯なんて

これまで当たり前に食べてきた。

ただ昨日振りにたどり着いたこの食事はめちゃくちゃ美味かった。


「ふ~~食った食った」


魚はあっという間に俺の胃袋の収まった。

さてそれじゃ…


「もうやることないし、寝るか」


夜はやることが無いのだ。

暗いし遊ぶものもない。

とりあえず、寝る準備をする為、横になる場所の埃を手で軽く払う。

入口を廃材で塞ぐ。

終わり。


よしっ


「おやすみなさ~い」


1人の寂しさを紛らわす為、結構大きな声で言った。

なんか虚しかった。

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