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異世界他力本願  作者: おたま
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2:新しい人生に 

2話目です。

ドキドキしてます。

お婆さんが作った夕飯はとても美味しかった。

食べ納めになるんだろうな、カレーライス。





現在、宛てがわれた部屋にいる。

寝間着も貸してもらったので助かった。外着で布団の中には入りたくない。

布団の中で、今日の事をいろいろ思い出す。


今日の昼頃までバイクで走っていたのに、車に撥ねられ死亡。

生死の境目で老夫婦に拾われ、輪廻転生することが決定。

僅か1日の話である。

随分と忙しい1日だった。



「結局、名前も教えてもらえなかったしなぁ」


あの後、名前を聞いても教えてはくれなかった。お婆さんも同様だ。


「輪廻転生か……どうなるんだろう」

お爺さんは大丈夫だというが、不安にならない訳が無い。


「まぁいいや。どうにかなるだろう」


もう死んだんだどうにでもなれと思ったら、気が楽になった。

そこで気がかりを1つ思い出した。

現代で死んだ後の自分のことだ。

自分が死んで両親はどうしてるだろうか。友達はどうしているだろうか。

バイクのローンもそうだ。バイト先にだって迷惑をかけただろう。

だが、確認する術はない。

不安も気がかりもあるものの、案外すんなり眠ることができた。

以外と肝が据わってたんだな…それとも冷めているのか俺……

いや、枕がいいやつなんだきっと…






…………





………









そして、夜が明けた。



目覚めがとてもよかった。

やはりいい枕を使っているのだろう。体も軽い。

寝間着から外着に着替え、昨日の部屋に行くと既にお爺さんとお婆さんがいた。


「おはよう。その様子を見ると昨日はよく眠れたようじゃな」


お婆さんもおはようと挨拶をくれる。



「おはようございます。眠れないだろうと思ってたら、案外すんなり眠れました

枕が良かったんですかね」


一瞬昨日の事を考えたが、切り替える。死んだ以上もう戻れないのだ。

ぐだぐだ尾を引くより、前向きに切り替えた方がいい。

お爺さんが「案外、肝が据わっておるな」とか言っていたが、俺の耳には届かなかった。




朝食は、ご飯、味噌汁、鮭の切り身、そして納豆だった。

ベタな日本食だった

正直、今後こういった食事が食えなくなると思うと、このメニューはすごく嬉しい。

存分に味わってたべよう。


あぁ…味噌汁が染みるなぁ…



そんな俺の気持ちを察したのか、おかわりをたくさん勧められた。





「はぁ~ごちそうさまでした」

お腹がパンパンだ。少し食べ過ぎた。美味しかったからしょうがない。





「さて、そろそろ頃合じゃな。行くとしようか」

お爺さんはそう言うと、おもむろに立ち上がり、縁側から庭に出て行った。


靴を取りに玄関に戻ろうと思ったら、既に沓脱石に俺の靴が置いてあった。


「準備いいなぁ…」

急いで靴を履き俺はお爺さんの後を追いかけた。



お爺さんは先に池の方で待っていた。

「来たようじゃな。心の準備は出来ておるか?」




「ちょっと待って下さい」

息を大きく吸い込み深呼吸をする。

4,5回程、深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。




「はぁ~……、よしっ出来ました」

頬をパンッと叩き気合を入れた。大丈夫!イケる!




「やっぱり、肝が据わっておるな」

お爺さんがボソッと呟く。


「それで、どうすればいいですか?」


「ふむ、その前に…」


お爺さんが急に、俺の腹に手を当てる。

すると、手が淡く光りだす。


「なっ!!」


「慌てるな。只の餞別じゃ」


「せ…餞別?」

しばらくして、光が収まった。



「…ちゃんと完了したようじゃな。……さて、尾長哲哉君」

急に、真剣な口調になる。


「これから輪廻転生を行う訳じゃが、それ自体はあっという間終わる。

夜寝て起きたら朝なっていたみたいな感覚じゃろう。

そして、目が覚めたら異世界という事になるが、まったく知らない世界に行くんじゃ。

当然、お前さんの常識などまったく通用しない事になる。」


たしかに、海外ですら日本の常識が通用しないとか言うからな、当然か…



「なに、お前さんの肝っ玉なら大丈夫じゃろう。

この家で、のんびりくつろぐ余裕があるんじゃすぐ慣れる」


褒められてる気がしない。



「後、これを…」


お爺さんは懐から、四つ折りにした紙切れを渡す。


「これを胸のポケットにでも入れておきなさい。

異世界に到着した時にでも見るといい」


俺はその紙を受け取り胸ポケットにしまう


お爺さんはそれを確認し、改めて言う

「…では、これより輪廻転生してもらう。この池に思い切り飛び込むといい」


ここに飛び込むのか……結構深そうだが…


では最後に…お爺さんの方を向き


「お爺さん、1日ではありますがお世話になりました」

そしていつの間にか来ていたお婆さんの方へ向きなおし

「お婆さんもお世話になりました。ご飯美味しかったです」


もう二度と会うこともないかもしれない。


お爺さんもお婆さんも笑顔だ。


「では、行って来ます」


俺は池の中に勢いよく飛び込んだ。






高いところからプールに飛び込んだ感覚

…というのが適切かは分からんが、そんな感じだ。


水の中。息ができない。上も下もわからない。

水面に上がろうともがいた瞬間、俺の意識は途絶えた。








…………………








…………








………







夢を見た。


葬式だった。

俺の写真の前で、両親が泣いている。

どうやら俺の葬式だったようだ。

両親にも、まだ小学校4年生の小さな弟にも寂しい想いをさせてしまったな。

俺の友達も泣いてくれている。

馬鹿だし、女のケツばっか追いかけているような奴らだが、なんだかんだでいい奴等だった。

バイト先の仲間も来てくれている。

スマンな。シフトに穴開けちまう。

みんな涙を流してくれている。

もう二度と会えることがないと思っていた人たちだ。



夢だとしても嬉しかった。

最後に一目顔を見たかったから。

不謹慎かもしれないが、俺の為に泣いてくれているのがたまらなく嬉しかった。

直接さよならを言えないのは、悔やまれるが構わない。

きっと神様か誰かが気を使ってくれたのだろう。


これで心置きなく、異世界とやらに行ける。



最後の気がかりも無くなって安心しきった俺は、再度意識を落とした。







………………………






……………






………









「あれ?これ2度目だな」


気がついたら見知らぬ場所に立っていた。



ここは森の中か…


「なんで森の中?他に場所あったろうに…異世界感がねぇよ」


いやそういう事じゃない。輪廻転生って生まれ変わることじゃなかったか?

そのままの17才が異世界に来てるけど、大丈夫なの?


「はぁ~……どうにかしないといけないのか……」


空を眺めると、小鳥が飛んでいるのが見えた。

せめて、人が近くにいる場所にしてくれよ。


「おっと、そういえば」


シャツのポケットから紙切れを取り出す。

お爺さんから別れる間際に渡された紙だ。


「異世界に着いたら見ろって言ってたな」


立ちながら見るのも面倒だな。どこか座れる場所を探す。

今いる場所から少し行ったところに開けた場所が見える。

そこに手頃な岩がゴロゴロ置いてあるのが見えた為そこに向かう。

こんな森の中で立ち往生するよりはいいだろう。



1分くらいで森を抜けた。どうやらここは森の入口の方だったのか。

それとも、森というほど、大きくないのか。

岩場から奥には平原が見える。



岩場に着いたところで落ち着ける場所を探す。

直径2mはあろうかと思われる、大きな岩があっちこっちに点在している。

その中で座りやすそうな岩を見つけ、そこに座った。

丁度、隣の大きな岩で日陰ができている。風が気持ちいいな。

改めて紙を見る。



お爺さんに渡された紙はどうやら手紙のようだ?


え~~っと……


『尾長哲哉 殿へ


これを見ているということは、ちゃんと異世界に転生できたようじゃな。

では、お主が新しく転生した世界について少しだけ、説明しよう。

お主が今いるこの世界は"地球"のような呼び名等は無い世界じゃ。

全部で8つの国からなる剣と魔法の世界になる。

別に勇者とか魔王とかもおらんから、安心するがいい。

ただファンタジーな生物が大小様々たくさん生息しておる。

お主がいた世界のような生活は困難じゃろう。

他にも他種族の亜人が生活しておるが、種族間の大きな争い事はない。まぁこちらも問題ない。

後は自分で考えて行動し自分が思うままに生きるがいい』



…要するに、剣と魔法の世界でファンタジーな生物はいるが、

魔王とか勇者とか特にないから好きに生きろって事か。

なんか投げっぱなしだな。

……まぁいいか。勇者とかに別になりたいわけじゃないし……

っていうかファンタジーな生物ってなんだ!

ドラゴンとか?後……なんだ?え~~…あの角がとか羽とか生えた馬とかか?



すげーーー!!なにそれ!見ていたい!!


なんだかワクワクしてきた。

よしっ!じゃあまず人のいるところ、もしくはドラゴンはいる所をを目指そう。

手紙の下の方に、まだ文字でなんか書いてあった。


『追伸、お主に渡した餞別について説明しよう』


餞別?なんかもらったっけ?


『お主はもう忘れていそうじゃが、お主にあてた光の事じゃな』



あ~すっかり忘れてた。…ってバレてんじゃん。

何で手紙と意思疎通してんだ俺!!なに?どっかから見てるの!?

ついつい周りを見渡してしまう。


『お主にはあの時に、異世界で生きていく為に1つ力を与えた。

その名も神憑(かみつき)と言う。

その力は、読んで字のごとく神様を自分に憑依させ、

その力を適切に使う事ができる能力じゃ。』



…なんか知らん間に俺、すごい力を手に入れてる!



『但し、位の高い神様であるほど、その神様について知識や明確なイメージいなければならん。

位の低い神様なら、簡単なイメージだけで大丈夫じゃ。

魔法なんかがある世界じゃ、生まれ変わったその日に死にたくはないじゃろう。

この力で身を守れるよう頑張りなさい』



え!?死んじゃう世界なの!?

魔王とかいないらしいから安心してた。

確かにドラゴンとか出くわしたらあっという間に死んでしまうな。

危なかった……自由気ままに歩き回って死ぬところだった。




手紙を…そっと閉じてズボンのポケットにしまう。



「よしっまずは…………どこに行こうかな」



いや、その前に………



「お爺さんにもらったなんか不思議な力を使ってみよう」

なんかとりあえず手を合わせてみる。


「………でどうやって使うんだ?」



もう一度手紙を読み返す。




「神様………知識……?明確なイメージ…?」


神様か……誰かいたか?………


あっ!!




「○リスト!!」

よしっイメージ、イメージ…


  












…………………














…………
















 

……















「だめだ。できない。」



違う神様にしよう。

え~と他には……………………いた!




「○ッダ」






………………………………












………………………












…………………















…………












………









「よくわからん!!」

なんもわからん!!なんだイメージって!?



手紙によれば、位の高い神様はちゃんとイメージしないとダメみたいだからな。

確かに、俺は○リストや○ッダについて主教の開祖ってことしか知らんしなぁ。

○リストなんてみんなで飯食ってる絵しか知らんし、○ッダも横に寝てる像しか知らない

これは確かにダメだな。


でも位が低い神様ならイメージだけでもいけるって書いてあったよな。






よし…………













……


















…だめだ。神様分からん。

だいたい位が低い神様って誰だよ!?

神様って皆偉いんじゃないのか!?



それに俺、そういう神話とか全然知らんわ。




……あれ?この力って神様とかに詳しい人じゃないと使えなくねーか………





………




………






「つっ…使えね~~~~~~~~……!!」

………お爺さんこの力は俺にはまったく使えないよ。


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