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第三世界 《 白い人、黒い人 》

 (王よ……私は驚いている……とても驚いているよ……今までのものとは違った強いものに出会えたことを……王よ……あなたはこれからしようとすることはすべてのものに対しての宣戦布告になりえることだ……どうか……その力で私を救ってくれやしないだろうか……)




 暗がりの中一つのかすれた声が聞こえてくる。それは王に助けを求めるかのようなものであった。その聞こえてくる声を一掃するかのようにして彼はこう答える。




「俺は俺のやり方で進むだけだ。お前が俺に救いを求めようが、それが俺の邪魔となりえることであるのなら、つぶしていくだけだ。気を付けろ。俺はもう昔とは違う」




 彼は自分の昔の存在を殺し、新たなる自分を構築していた。それは過去の弱い自分を抹殺し、新しい強い自分を作り上げる他なかったのだ。暗闇の中から聞こえる声はそれに納得したかのようにして消えていく。




「ここは……」



 暗闇が消えるとそこは自分の昔いた部屋であった。懐かしいと感じるにおいや景色、外を見れば公園が見えていく。いつも見ていた光景にいつも見ていた自分の部屋。それらすべてが今の彼にとっては憎しみや怒りへと変換しえる素材でしかなかった。それらを見るなり、ため息をし、その記憶を捨てるかのようにして目をつむる。


 まだ静けさが続く夜の頃、彼は目を覚まし今を確認する。畳に敷かれた布団に入り寝ていたこと、自分の体の数か所に包帯が巻かれていること、なぜにこのようなことになっているのかを必死に思い出す。しかし、彼は先ほどの夢も含め、何もかもを失い、ただ記憶にあるのは目的と言う名の復讐という感情だけであった。なぜそれだけが残っているのかもわからなかったが、それを遂行するために、その部屋から出ていこうと扉を開ける。そこには待っていたといわんばかりに着物姿の女性が横に立っていた。




「どこかいくのですね。悲しいことです。お仲間には何か言わないのですか?」


「何も思い出せないのです。自分が何だったのかさっぱりでしてね。そんな状態で仲間と会っても意味がない気がします」


「ではそんな状態でどこへいくというのです?」


「薄れゆく記憶の中にある場所に行こうと思います。そこにいけば何かしらわかるのかと……」




 彼はそういうと、壁に手をつけ足を少し引きずりながら暗闇へと消えていく、それを見ていた着物姿の女性は何も言うことができず、助けることもできずにいた。なぜ手を貸さなかったのか? なぜ何も言えなかったのか? すべては女性の両目に映し出されている映像に答えがあった。




「禍々しい感情です。あなたは一体何に魂を売ったのですか?春風霧火君……」




 自身の思いがけないほどの傷の深さ、痛みによって体力がすり減っていくのがわかっていた春風霧火はやっとの思いでルークスローレにある墓地にやってきていた。まだ先は長い、まだまだ先は驚くほどに遠いと感じる彼は必死に前に進み続ける。しかし、途中で力なく倒れてしまう。それでも張って進もうとする彼は自分のその行動に疑問が生じていた。そこで頑張る理由は何なのか? そうまでしてその場所に行く理由は何なのか? 自身の記憶のためなのか? それとも仕組まれたものなのか? すべてにおいてわからないでいた彼の目の前に一人の何者かが歩いてくる。


 かすれる視界で必死に対象が何なのかを見つめる。だが、わからぬまま視界が暗闇に閉ざされてしまう。




「……!!」



 何かに驚き起き上がる春風霧火、そこに映し出されたのは、ロウソクの火がかすかにともるだけの部屋であった。部屋というよりかは秘密基地のような場所であり、周りが本棚で埋め尽くされ、その中でポツンと一人自分がベットで横になっているだけの空間。


 すると、本棚は横に動き出し誰かがやってくる。




「起きたのね?具合はどう?」



 そこに現れたのは、綺麗な赤色に染まっている長い髪の女性の姿であった。すぐさま霧火の容態を確認する。近くによって来るなり傷の方を確認しだす。近くで見ると、よりいっそう美しいと思えるような見た目に霧火は声が出せずにいた。どこかで見たことあるようなその見た目だったが、記憶がぼやけており何も思い出すことができず虚しさだけがやってくる。


 それを察知したのか女性は霧火に語り掛ける。




「君は色々な力を一気に自分のものにしすぎているね。だから、今起きている状況や記憶にまとまりがなく混乱することが起きている。そもそも君の能力を考えるとこの体中にある傷一瞬で治せるはずよ?」



 何も言えない霧火、というよりかは、何も考えることができない霧火の方が当たっていた。ゆっくりと時間をかけながら思い出すのが良いと話され、眉間部分を軽く人差し指で押され、そのまま眠りへと進んでいった。




(王よ……なぜしまうんだい?なぜあなたは拒絶するんだい?)




 暗闇の中のかすれた声はそう霧火に問いかけが、それを無視するかのようにしてこの暗闇から抜け出していく。

 今がいつなのか? 何時なのかさえわからない空間の中、彼は自分の手の平の傷を見ると同時に、力を入れ始める。その傷は一瞬にして癒え、何もなかったかのような綺麗な手の平になっていた。本棚を動かし、彼は外へとでていく、どこかで見たことあるような景色が一面に広がっていた。目の前には助けてくれたと思われる女性の姿がおり、霧火に一言告げる。



「もう大丈夫?なら、一安心ね。驚いたよ。まさか突然もとに戻るだなんて……」



 春風霧火は、気が付けばここに数か月も滞在していたと記憶にはあった。その間何をしていたのかは忘れてしまっていたが、確かにここにいたのだ。記憶が戻り古いものは消えていった。黒いローブを身に付け、いよいよ出発の準備をする。

 それを見ていた女性は霧火に一言告げる。




「あまり無茶はしないでね。君は自分で思ってる以上にか弱い子だからね」



 気が付けば霧火はそこからいなくなり、その言葉を聞いていたのかはまったくわからなかったが、女性は空を見るなりして、一呼吸した。


 どこかに向かう春風霧火、そのスピードにより周りの草木は吹き飛ぶほどであった。やがて雨が降り夜へと変わる。木々を間をすり抜け車道にでる。気が付けば一年以上もこの異世界にいる。車道もでき、道路が舗装されている場所がいくつもあった。

 これが普通なのかもしれない。しかし、この短い期間でこれだけの進歩は驚くことであり、この世界のスピードに感心していた。そうこうしているうちに何やら前方からやってくるのを感じ取る。



 茶色いローブ姿のものは霧火に向けて何かを話してくる。それは決闘の挑戦と言えるものでもあり、素直に聞き入れることが何より良い判断だと考える。




「君はまだ、その力の本当の意味や使い方を知らない」



 

 突然霧火は自身を否定されたようなことを言われる。何を知っているのかわからない目の前のもの。彼はすかさずこう答える。




「僕は君のその力を知っている。そして、今後も知っている。ようやく目覚めたんだ。その力を返してもらおうか? そして、僕が理想の世界を作る」


「何を言ってるのかわからないし、第一お前は誰だ。俺の何を知っている?」


「知ること、話すこと、無意味である。なぜならば、僕がここで君を殺すからだ」


「そうか、話の通じないものか……困ったな。ならここで倒す!!」



 霧火は腰に付けていた無双竜に手を相手に見えるようにして触れる。相手はそれを見るなりすぐさま行動を開始する。




「……!!」


「甘いんだよ!何もかもが!!」




 一瞬にして間合いを詰められ攻撃を食らう。間一髪のところで無双竜を引き抜き防御する。かなりのスピードで詰められてきた。だが、対応できないほどのものでもないと霧火は感じる。

 すぐさまブラッドを解放しだす。全身が熱く燃え滾る感覚に包まれ、やがて左目の白目が真っ赤へと変色する。それを見ていた茶色いローブ姿のものは、そのまま突っ込んでくる。なぜ目の前からとは思ったが、自分の首を下げるほどにまで詰められたと同時に、上空から無数の剣が落ちてくる。土煙と共に茶色いローブ姿のものは距離を取る。




「こんなもので倒れるはずもないですよね。あなたはそういう人だ」



 距離を取った茶色いローブ姿の上空から刃が落とされる。



「暗がりのところでも僕はあなたの攻撃が見えるのですよ。あなたはそもそも力を使いこなせていない」


「お前がそう思うならそうなんだろうな。だが、その距離は失敗だよ……はああ!!」


「ん!?」



ドガアアアアアアアン!!!



 地面に触れた刃は地面ごと砕きそのまま前方に向けて円を描き、赤いオーラと共に大きく噴火させるように赤色の水のような衝撃を繰り出す。それはとてつもなく強大な力の放出となり、たちまち茶色いローブ姿のものにダメージを与える。


 勢いよく後ろに後退し、足で威力を弱め止まる。少しの笑みをこぼし、驚いた表情になりながらも霧火を見つめるが、気が付いたときには遅かった。




「あははは……まさか、僕が自分の力に引っ掛かるとは……」


「お前の力ではない。俺の力だ」




 茶色いローブ姿のものが後退し着地した場所の後ろから赤い鎖が飛び出てくる。首という首にそれらが縛り付けられる。その後微笑みながらも霧火に話す。




「なんともまあ、驚くことばかりだ。君のしているのはただの真似事だ。君自身に正義なんてないし、これから僕がそれを証明してあげる」


「アハハハ……俺に正義か……笑わせるなよ。俺の望むものは……破壊だけだ……」


「使用者が変わると、そうもなりえるものなのかね。それまた驚いた」




 あざ笑うかのようにして、自分の体を縛っている鎖を難なく取り外す。いとも簡単にとられたことに少しながら驚きがあったが、相手の正体がこれで、相当絞られたのも理解した。

 茶色いローブ姿は、たちまち自分のローブを脱ぎ捨てる。そこから見えた姿は、銀色の髪をし、ピアスを付けていた青年の姿であった。昔であったイオリと言う少年と瓜二つだったその見た目に驚きを隠せないでいたが、相手は自身をこう呼んだ。




「いい機会だ。死後の世界へと持っていくがいいさ。僕の名は音無キセキ」




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