第二十二世界 《 もう一人はすぐそこにいる。 》
今更ながら悩みに悩んでいた春風霧火。
イオリと言う少年から、これ以上戦闘に参加するな! っといった言葉や、自分自身が今誰なのか? といったところまで、ありとあらゆることについて悩んでいた。前のルートに存在していた無力の力の保持者鹿目結弦、彼はこの状況をどのようにして打破したのか? それを聞きたくてしょうがなかったのだが、どのように会えばいいのかまったくわからない。それどころか、作戦開始の日時までもう少しに迫っていた。
この一週間無駄に考えてきた霧火だったが、最後の最後まで答えが見つからず今に至る。これ以上戦ってしまえば、おのずと自分がどのようになるのかはわからない。それならまだよいのかもしれない。なぜならば、戦わなければ先に進むことがないのだから。しかし、それ以上に何もしなくてもおのずと何かがやってくると恐怖しだす霧火は今まであってきた者たちや過去を思い出していた。
今まで何も力がなく、何も良いところがなかった自分にようやく力がやってきたのだ。だが、それは水戸アヤトのような色鮮やかなものではなく、禍々しいとさえ思うようなもので構成されており、使用者もろとも飲み込まれるのではないのか? そのように感じざるおえないような、そんな力が今彼自身に宿っている。そのような状態を後ろから見ていたアリスが霧火に対し助言を言い渡す。
「マスターお悩みのところ申し訳ございません。私にできそうなことを考えたときふと思ったことがあるのです」
「……」
「これはマスターに語るものなのですが、一人事のようなものとして聞いていただけると幸いでございます。これまでマターは様々なマスターに出会いました。私も様々なマスターに出会いました。やはりこのダークマターのみ他とは違い、力に溺れる者がばかりがマスターへとなっていくといったことが多かったです。私はマターの精霊であり、マスターの考えに従うよう努めていきました。人の感情というものに関しては、鈍いと思われるところが強いかもしれません。しかし、マスターのみなはどんな事情があろうとも、強くたくましく生きていきました。悪になったものもいます。光へと行こうとしたものもいます。みながみな同じ道に進むといったことは決してないのです。抗い苦しみながらも自分の思う道に進んでいくのが、少なくともダークマターを使っていた歴代のマスターたちでした」
「俺はこれからどうなってしまうのだろうか……?」
「それは私にもわかりません。そのまま闇の飲まれていくか、光へと進むかはマスター自身の選択なのです。申し訳ございません」
ベットに座り、両手で顔を覆う霧火は何かに疲れているような状態であった。誰かに相談する。このことは春風霧火自身とてもじゃないが、できない行動の一つであった。なぜそれができないのかは霧火自身もわかっておらず、ここまで長く異世界にいるにもかかわらず、いまだに他のメンバーとのコミュニケーションがそこまで取れていなかった。様々な問題を起こしていたからなおさら、相談することができずに苦しんでいた。辛く逃げ出したい。そんな気持ちが彼を襲っていたが、今ここから逃げ出しても根本的な解決にはならなかった。自分自身の持つ力が原因なため、何もかわらなかった。
今まで色々な決心や契約をしてきた彼だったが、それでも現状はさほど変わっておらず、返って悩みが増えていくだけであり、これ以上何がやってくるのかも想像するだけ恐怖だと考えていた。
アリスは横に座り、愚痴だけでも聞くといったようにこちらに手を差し伸べた。
「アリスに質問したい」
「何でしょうか?マスター」
「俺はうちに眠るループ前の自分自身のような見た目と会ったんだよ」
「もしかして、それは本当は鹿目結弦さんと?」
「あり得る話なのかなーと思ってね?今こんなことになっていることを素直にアヤトたちには話せないよ。なんか、できそうになくて……」
「その人ともう一度会いたいと申します? さすがにそれは……」
「できないことは知ってる。そうじゃないんだ。もう一つの方」
「もう一つ?」
「四つの扉があってさ……」
「……!!」
その話を聞いた途端アリスの表情が変わる。今まで狐の仮面をしており、表情が見えなかった精霊ではあったが、それでも驚いていると感じざる負えないような動きをしていた。
「どうかしたの……?」
「マスター、マターの精霊の具現化の意味を知っていますか?」
「確か、自分のうちに眠る心だっけ?」
「そうです。それでは、私が現在狐の仮面をしている理由もわかります?」
「その仮面はアリスが独自につけたものじゃないの?」
「違います。これ含めてマスターの心です。もしかして、マスターは拒んでいませんか?」
拒む……? アリスは確かにそういった。狐の仮面を出会ったときから付けていた少女は霧火に対してそのように言葉を発していた。仮面事意味があるそのようにも話したのだ。しかし、心の具現化による精霊誕生の意味がわからずにいた春風霧火は、アリスを見て何かのヒントが隠されているのではないのか? そのように考えていると、だんだんと仮面の下の素顔が気になり始めていた。
「アリス……その仮面取っ手もらっていいかい?」
「マスターが本当にそれを願うのなら、取ります」
「……いいよ」
アリスはゆっくりとその仮面を取り、マスターである春風霧火に素顔を見せ始めた。それを見るなり彼は自分の両手で顔を隠し下向きになり、何かに泣きながら謝っていたのだった。
それから、出発の日になり全員は蒼龍水無月に召集されいつもの一間にいた。
「何が起こるかはわかりません。しかし、近くにすでにアヴィスの使者の反応があるとの情報がありました。なので、くれぐれも無理なさらぬようお願いします」
「生きて帰ってくることは十分承知だよ。第一に僕は人一倍やらなくてはいけないしね」
「奏翔。それはお前だけではない。親友が敵であったそこのリリアという少年も同じ気持ちだぞ」
「一発ぶん殴るだけだ。それが俺様のやることだ!八雲惷には戻ってきてもらう」
「それでは検討を祈ります」
それから、三ギルドは一気にその場から去っていく。エリュシオンはアルフォンシーナおよびアヤトから作戦の流れを伝えられた。
「12人のメンバーで4人1チームとして活動をします。そうだね。メンバーはこちら参照!」
《第一チーム》
・水戸アヤト
・水戸ゆずは
・如月美音
・シロイ
《第二チーム》
・アルフォンシーナ
・春風霧火
・ブラッディーメアリー
・クロイ
《第三チーム》
・神代弥生
・黒芝悠雅
・周防和馬
・九頭竜サトル
そこに悠雅及び弥生の異議が唱えられる。
「なんで私がこんな男くっさいところにいないといけないわけ?」
「おいおい!まてよ!誰が男くさいチームだぁ?イケメンといいなさい!」
「そうだな。男くさいというよりかはイケメンの方が何かといいな!あはははは!!」
「周防なんで腕立てしながらそれ言ってるのかが俺にはちっとも理解できない」
「男はいつどこでもトレーニングできるようにならなければならぬ!」
「お前は最初に会った時からそうだよな……困るぜほんと……」
「いいメンバーじゃないか。それでお願いするよ。第三チーム」
「(ウェ~……マジカヨ……)」
第三チームのガヤガヤを見ながら笑う第一チームのメンバー、何も問題ないと思うアヤトであった。
その後ろで第二チーム同士で会話が始まっていた。
「君が春風霧火君だね?こうして会うのは初めてかもしれないかもね?よろしく」
「ハイ……」
「何か悩みでもあるのかい?いつでも聞いてやるよ」
「ありがとうございます」
「このチーム最強ですね!!まあ私がすべて狩りつくすので安心です」
「その自信はどこから湧いてくるものじゃ?メアリーは……」
「おっきなおっぱいからです!!」
「ほぅー(怒」
「面白いチームになるといいなこれ」
それから三チームは目的の紙を渡され、それぞれに散らばっていく。アルフォンシーナは最初から最後まで春風霧火の監視として自ら名乗りでていたこともあり、アヤトは託していたが、心配なことは変わりなかった。何もなければ、それが一番いい。しかし、それは確実にないと心のどこかで考えてはいた。
第二チームは水無月家から遠く離れた森に来ていた。やはり、いまだにこの異世界は森の面積の方が何分も大きく、気が付けば入っていることはよくある話であった。相当街から離れたということはあるが、それでもルークスローレ内にいることはアルフォンシーナから告げられる。それすら驚きなくらいに周りは閑散としていた。しばらく歩いていくと、朝なのに赤い空が広がっているところを発見する。
「まさかこんな早く浸蝕してきているとはな~驚いたな~」
「このまま吹き飛ばしにいきましょ!大柱はすぐそこです!!」
「おぬし本当に見えてるのか?大柱とやらが?」
「見えていません!野生の勘です!!」
「クロイ!メアリーの発する言葉を一字一句拾うのはよせ、疲れるだけだ」
「そのようじゃな……」
第二チーム一行は赤い空との境のところに来ていた。一歩前に出れば入る。そんなところにおり、何も考えず一行はそのまま進む入る。途端に春風霧火は頭痛がし始める。それはとてつもないものであり、頭が割れるほどのものであった。次第に膝をつきそれを見ていた周りはすぐさま、霧火に歩み寄る。
「どうした!霧火!」
「何か来る……何かが……」
春風霧火はその頭痛とともに何かがやってくるのがわかっていた。それは力によるものなのか、本能によるものなのかは定かではない。しかし、それはやってくると思い下を向いていたのを前に向き直すと……
「後ろ……!!」
「「え……」」
ズドドオオオオオン!!
ザワザワザワ……
周りにいた三人は吹き飛び、何かを感じ取ったのか森はざわめき始めた。頭痛が収まった霧火の前方には彼を待っていたといわんばかりに立っているものの姿がそこにはいた。
ピエロのような笑い仮面をしており、白をベースに赤いラインにところどころ黒い波模様がついているローブを着ていた。多く服を着ているような見た目なため、少し丸く見えるがちゃんと見た目はピエロであった。彼はこちらを見るなり首を横にし小声で霧火に発する。
「キミハ……キリカクンダネ……?」
「え……?」




