第二十世界 《 蘇る記憶 》
「取引をしよう……カンナ・アルフォン・シーナ・レッドレイ」
「わらわに何を捧げる気だ?おぬしはこの先死に耐えるのであろう?」
「僕があなたに捧げるものはただ一つ。楽しく素晴らしい物語さ」
「楽しませてくれるのか?同じことは何度も楽しめないのだが、おぬしはそれができるのか?」
「あなたはループによって記憶を失わない選ばれたものだ。そして、この問題を回避するにはあなたの希望の力が必要なんだ。あなたはただ楽しければそれでいいと話す。なら僕はそれを見せる。次のルートで確実に勝利してみせる。僕は天才だからね?」
「ほぉ~?なら、期待しよう。おぬしには何やら作戦があるのだな?途中で投げ出せばわらわはおぬしを呪い殺すこととしよう。よかろうな?」
「負けたときのことなんて考えてない。必ずこれは成功する」
「……ふん……どうだかな~」
水戸アヤトはカンナという少女と約束をした。それは次のルートに備えての準備ともいえることだった。取引は必ず成功すると自信満々に答えることに疑心暗鬼だったが、彼の表情は一切揺るがなく仕方なくとして力を渡した。その力は「希望の力」であった。
それから、水戸アヤトは白神と会いアヴィスの使者の大柱を破壊したことを目撃する。高くそびえたつ大柱は倒壊し、大きな音を辺りに響かせていた。二人はそれを後目にある場所へと向かっていたが、突然目の前に何者かが現れる。
目の前の者は、黄金に輝く刀を構えこちらに歩いてくる。
「今は戦ってる場合じゃないんだ!目を覚ましてくれ!!結弦!!」
「悪いな。ここで決着をつける。アヤト……」
何としてもやりとげなければならないことがあった水戸アヤトだったが、目の前にいる結弦という青年に行く手を阻まれる。隣にいた白神も彼を見ては警戒をしていた。今までの敵とは全く違うオーラが目で見てわかるほどであるがゆえに回避不可能とさえ思っていた。
「ルートを変えなければ何も変わらない!このまま終わりにするぞ!アヤト!!」
「そんなことをしても何も解決にはならない!僕がここでやられ……」
「アヤト君!!」
腹部からは大量の血が流れ落ちる。一瞬の出来事であり、それに気づくことは白神でさえも不可能。どこからか現れすぐに刺される。すぐさま治療を施そうとしていたが、結弦という青年の力はそれを凌駕するほどのものであり、アヤトはそのまま目の前が暗くなっていった。
水戸アヤトは自分に起こっていた前の記憶が蘇り現在ここに存在している。春風霧火ではなく鹿目結弦という青年と何回も同じ時間軸をループしていた。しかし、今回はそうではない。不確定な点がいくつも存在しているのは確かであったが、それもすぐに知り得ることであった。
アヤトに知られその場に姿を現す二人の姿。拍手をしながら登場する。
「まさか一つ一つのループの力が弱まっているのは驚いたな」
「いつかはやられるとは思いましたけど、今更遅い話です」
「早速ご登場のようだぞ?水戸アヤト」
「何千何百とループをしてきたと直哉は話していた。だけど、実際は五回ほどで、僕らの首に何かを付けているというのもデマで、必要以上に世界のことや僕らのことを話さないのは一つに記憶の蘇りを恐れていたこと、そして、この世界のことを実はそんなに知らないということだよね?」
「お前のその脳の回転はやはり厄介なものだな。まさかアブソリュートのメンバーと取引するとは思ってなかったことだ」
「直哉の言うように、彼らアブソリュートはとてもじゃないけど、めんどくさいと思えるようなものたちばかりだ。そして、一回目~三回の次元と四回五回との次元はまったく違う。カンナさんと取引できたのは僕としても驚いてるよ。なぜこの世界なのかはそこの幻想君ならわかるんじゃないのかな?」
「僕のことをどれだけ知っているのかはわからないが、君はそれで勝ったと思うなよ?まだ僕らは有利な側にいる。現状春風霧火君も暴走し外で暴れているころだ。結果は変わらないのだよ。すべてね?」
「変わってる。俺も何もかもわからないが、さすがに必死に言われれば納得するさ」
どこからともなく声が聞こえる。そして、水戸アヤトの隣で空間が開き白神と春風霧火の二人がでてくる。それは最初から準備していたかのようにそこからでてきたのだ。
直哉と八雲惷の二名はそれを見て驚いていた。
「なぜだ……?なぜおまえが……」
「アヤト君君の考えは面白いものです。本来であれば、鹿目結弦君がこの世界にいるのですが、ノヴァとも取引をしていたということはとんでもないお方ですね」
「それは僕ではなく、結弦自身が決断したこと」
「しかし、霧火君を目覚めさせたのは君の力でしょう?」
「そうだけど、何も言わなくてごめん……もっと早くに気付いていれば……」
「いや……いい、本来ならあわない者同士なんだから、そんなに気にしなくていい。結弦という青年は無力を俺に与え、そのまま第三の力を解放させ、ループの邪魔をした。驚くよそんな話」
「結弦の意思は霧火に届いてるし、そもそも生まれ変わりとして見ているから……」
「霧火君の方が後生まれなのですね。それまた面白いお話です」
「私もいいように使われているみたいだな?こんな運命の力を自分を殺してまで使うとは、ただならぬものだな君は……」
水戸アヤトは三回目のループの時にすでにノヴァと取引をし、運命を変えるといった無謀をしていた。本当に変わっていたことに驚いていたが、時間が少ないとして、自分の運命を書き換えるといったことをし始めていた。自分自身にかかる負荷は計り知れない。しかし、それでも勝たなくてはいけないと考えていた。すべては直哉の計画を阻止するために。
鹿目結弦は自らの無力の力の第三を解放し、この異世界にすべてを転移させるといったことをしていたらしく、それすらも無謀と言えるもので、最後は未来に力を託し消滅した。
「他者に知られないように事柄を書き換えることは容易ではないです。鹿目結弦君の起こした行動は計り知れません。まさかそこまで大きなことをしていたなんて思いもよりませんでした」
「久遠湊でさえも知り得ない情報……」
「そこまで無力の力は強いということだね。霧火」
「しっくりこないところあるけど、アヤトはすごいんだな」
「僕自身もまだ混乱しているし、すべてを把握し切れてないよ。ただ……これが能力戦の本来の戦い方なんじゃないかな?」
ノヴァ、白神、水戸アヤト、春風霧火の四名は混乱しながらも理解していた。それはすべて目の前にいるものを倒すためということに……
直哉と八雲惷の二人は面白く思ってないのは誰が見ても明白であった。それもそのはず、まさか一番注意していた霧火ではなく、先に死ぬであろうアヤトを放置していたからだ。すべて失敗に終わったと考えざる負えない状態になっている。しかし、直哉はそれを見て笑い始める。
「ハハハ……面白い話だな。まさかアヴィスの使者を討伐する前にすべて解かれるとはな。思いもよらない作戦だな。しかし、ここからどうやって俺らを倒すんだ?何もないわけないだろうな?」
「何もないわけではないよ。ただここからは僕だけでは解決はしないってことだね」
「平気だよ。それこそアヤトが思う以上に俺もなんかしてる」
「霧火にしたことも失敗か……さすがにやりすぎたのか……」
「直哉!僕の幻想の力を使ってもあいつが落ちなかったのは逆に何かおかしいとは思わないかい?」
「黙れ……まさか、とっくにお前が人間やめてるとは思わなかったよ春風霧火。いやなんて言ったほうがいい?お前」
「俺の名前は春風霧火として今も存在している。ただ、久遠湊やうちに眠る過去の一人や四つの扉、すべてがあったからこそ、俺はこうしてここにいるんだ。あの時あったもう一人はその結弦という人だったのかもしれないな。まあ元の春風霧火は死んだのは言うまでもないがな!無双竜こい!」
「まさか、僕の幻想の力を逆に利用された……そんな……」
「遅いんだよ。お前の行動は!このルートが本来意図しないことがおき続けているのなら、最初からわかってたことだろ!俺には精神崩壊系は通用しない!なぜならば、死んでっからな!!」
そのまま勢いよく無双竜を地面に引きずらせながら、八雲惷めがけて突っ込んでいく。しかし、それは一瞬にして回避される。
「能力差では現段階では貴様には負けない!僕の方が力をうまく使いこなせているからな!!」
「なら平気だな!思いっきりやってもな!!」
ドガアアン!!
空中に移動した八雲惷は足元の空間から突然黒い手が伸びそのまま捕まれ吹き飛ばされる。
「これは分が悪い一旦引くぞ……」
「あ……うん」
それからすぐさま直哉と惷は去っていく。四人はあえて追わずにそのまま逃がした。これから何が起こるのかはわからないのだったが、別に構わなかった。記憶が蘇ったことの方が何よりよかったのだから……
その後蒼龍水無月の一室に行き状況説明を始めた。エリュシオンのメンバー含めリリアもそれに対して驚きを隠せないでいた。
「どこからどこまでが、一緒のルートにいてどこからが一緒にいないのかまったくわからないんだが?」
「そうだね……簡単に話すと、ここにいるメンバーのうち少数だけかな?」
「大きな次元が一度に転移したことだから、わからないのも無理ないな」
「(サトル……霧火の性格なんか変わったな?)」
「(俺も思った……なんか高校生デビューした感じが強い!!)」
「俺の左目の力はな?相手の心を見る力が備わっているんだ。変なことを考えてるとスケスケだぞ?気を付けろ?」
「「すいませんでした!!」」
「とりあえず、現状を整理するのが始めかな……」
これから途方もないことが起こることに億劫になっていた水戸アヤトだったが、直哉がこのまま終わるはずもないとして、別の作戦を立て始める。それは今まで考えたことのないものであり、今回はただ止めるを発言するだけのものであった。いざ止めるとすることは、正直何も出てきてない。
あのまま戦闘を続けていたら負けていたとさえ考えていた。あの後ノヴァと白神と別れる。彼ら二人も事故整理するといわれたからだ。
そんな中アヴィスの使者は刻一刻と浸蝕し始めていた。




