第十八世界 《 自分は何なのか・・・? 》
暗い空間の中、またしても同じようなところで春風霧火は一人立っていた。イオリという少年と会いその後にアヤトたちに保護される形で今ルークスローレのギルドの自室に来ていた。
気が付けば、一年という長い間が過ぎており、何もかもが変わっていたことにより驚きがあったのだが、それ以上に直哉やイオリ、白神から言われた言葉が妙に胸に突き刺さるものがあった。
イオリの変革者への道、白神の自分の思うような世界創り、直哉の自身の謎を先に説く方が先。何を優先すべきかわからない状態、今まで自分に力がないことに悲しみを抱き、なおかつ苦しんでいた霧火だったが、今は真逆であるにもかかわらず、その力の本質を理解していない。
このまま自分がどこにいくのかも謎のまま時間だけが過ぎていく、そんなときにこのような暗い空間の中に立つことになった。
「またここか……」
何度も同じような光景を見たこともあり、春風霧火には慣れというのが生じていた。破壊王の力のデス、ルミナス、様々なものたちと会ってきたこの空間。一体何なのかはわからない。しかし、自分の中の夢としての認識をした方が何かと納得するような場所ではあった。
ただ、この場所に来れば、確実に不幸に見舞われることは確信できる。久遠湊との出会いが一番最悪だったことだろう。そんな不安もあることはしたが、何やら自分自身に不可思議なことが起こっていると感じるようになっていた。それはいつからなのかはわからない。はっきりと言えず気が付いたらと言葉がやってくる。そんな悩んでいるときに前方から足音が、こちらに向かってやってきた。
「おはよう……悩んでいるのか?」
「うそだろ……」
そこに立っていたのは、自分と瓜二つの存在であった。なぜそのような存在が今ここに目の前にいるのかはわからない。しかし、それははっきり目の前に立っていた。
更なる謎が彼に襲い掛かってくると同時に、前方にいた自分と瓜二つの青年は語り掛けてくる。
「まさか自分と同じ見た目のものがやってきたことに驚いているのか?今更こんな世界にいる中でか?」
「誰だ……お前は……」
「まだそんなことで悩んでいたのかお前は、残念だな?」
「なんなんだよ!!俺が何で悩もうが関係ないだろ?わけわからないことが多すぎて把握しきれないんだよ……」
「お前の心には優しさがある証拠だな?」
「何をいってるんだ……?」
「この時点でルートは確立しすでにお前は暴走していたのだが、やはり今回ばかりはおかしいな?」
「聞いたぞ、ここが何回も同じようにループしてるって……!?まさか……」
「本人だからわかることか、お前が今そう思っていることこそあたりだよ」
「だとしたら、俺自身なのか……」
「もうすでにそこの理解は早いのな?じゃー本題に入ろうか?」
「何の本題だ……」
「これからのお前自身の未来に関することさ」
「未来……?」
「お前はこの時点ですでに俺とは別のルートの存在としている。無力の力を理解し解放したのが影響なのかもしれない。だから、ここで俺と一体一の勝負をしよう。勝てばお前は人としての存在を失うだろう。負ければ暴走し排除されるだろう。どうする?やるか?」
「どちらにしろ、俺の未来は最悪でしかないのか……?」
「現状のままで行けば、最悪でしかない。この俺がここにいるのは無力の力によるものであり、この時点でどちらかが消失する。これはどこのルートでも同じだった。俺も前に体験しているし、お前もこのままいけば体験することだ」
「だとしたらなぜ今なんだ……?時間の力を持つものはまだ先なはずじゃ……」
「解放したからだよ。俺はもう少し遅かったからな?お前は早すぎたんだよ。何もわからないまま解放し、今ここにいる。無力の力を解放した途端に自分が自分ではなくなると感じただろう?それが何よりの証拠だよ。時間がないすぐさま始めるぞ!……ブラッド解放!!」
ブラッドの解放により、凄まじいほどの力の波が押し寄せてくる。それは、今まで自分がしてきたことを上回ることでものであった。この先に自分がそのようなくらいに扱えるのかと内心驚きも隠せないでいた。
何もかもがわからないまま戦闘が開始する。すぐさま自らのブラッドも解放するが、力の差は歴然であった。一撃がとてつもなく重くのしかかる。防ぐだけで精一杯であることを理解したのか相手は止まり、怒り混じりの声を投げかけてくる。
「なるほど……これは厄介だな……悪いなけど、もうそこまで待っていられねーんだよ!壊せ破壊!!」
「ぐはぁ!!」
相手は右腕右手に呪印のようなものが浮き上がる。その後に霧火の心臓めがけて何かを発動させる。そのままガラスの割れた音のようなものがあたりに響き渡った。
倒れもがき苦しみ始める春風霧火、その目に映るものは戦った自分と瓜二つの者ではなく、今までの封印された記憶や痛みだった。必死に意識を取り戻しうつろな表情で相手の足元を見る。
「何をした……俺に何をした!!」
「お前にはいくつもの封印術が施されていた。たぶんルミナスや直哉、イフリート艦長、久遠湊によるものだろう。最後には破壊王の力ときた……ルートの変更がなされるのも当たり前だよな。過保護なのも本人にとって苦痛なんだけどな。今そのすべてを解いたんだ。お前は俺と戦いながら、お前自身と向き合わなくてはいけない。暴走は俺がなんとかするから、あとは自分のことだけ考えてろ?では、またあとでな」
そう言われると、春風霧火の視界はそのまま何かに包まれるようにして、暗くなっていく
「あ……あああああ゛ーーー!!!……ふふふ……あはははは……俺の人生って何なんだろうな~俺ってなんで生まれてきたんだろう~?なんで……?違う、そうじゃないのかー俺は俺自身を落としたものに復讐するために力を得たんだ。壊してやる。すべて壊してやる!!どんなになろうが終わらせてやる!!」
「さすが自分といったところかな。このルートで終わらせてくれよ……俺!!」
ドガーーーン!!
「あははは!!ぶっとんだぞ!!あははあはあ!!」
先ほどとは真逆の展開に落ちる。春風霧火は狂いだし、笑いながら殺しにかかってきていた。その目には破壊と殺戮でしか判断が付かないようなものとなっており、何を話しても通じない状態にいた。
「やっぱり実体じゃないから、きっついところあるなこれ……く……」
「死ね!!」
ドガアアアアアン!!
吹き飛ばされた過去の方は、額から血を流し意識朦朧としている状態であったが、目の前にいる自分自身が戻るまでと必死になって戦っていた。
一方暗闇に飲み込まれた本人は赤い部屋に黒い勉強机がおいてあった。自然と彼はそこに座る。何も言われていないのだが、自然とそこに座れと言われた気がしたのだ。
不気味な部屋であり、四角い部屋、両側には四方向に扉が付いており、勉強机に座って前方に白い扉、後ろに黒い扉、左に緑の扉、右に赤い扉があった。何が起こるのかはまったくわからない。ただ、その空間がそこにあるだけであった。すると、後ろの扉から音が聞こえ始める。
ノックをしているような音だったが、だんだんと大きく回数も多くなっていく、恐怖するあまりそちらに手を差し伸べるのさえ難しい状態であった。数分間なり続いたが次第に消えていく。
次は白い扉から声が聞こえてくる。その声は、優しさが伝わってくる女性の声であった。何を言っているのかはわからず小さいものであった。それも次第になくなる。
緑の扉から音がやってくる。風に吹かれている木々の音であった。今の状態から見ると黒が一番不気味であったが、他の白と緑は何もなくかえって安心するような感じであり、そのまま開けることも考えた。
気が付けば音がなくなり、赤い扉の方に変わっていく。
しかし、いくらまっても赤い扉からは何も聞こえない。耳を扉の近くに付けても聞こえなかった。その後黒い扉から音がしてくる。それが気が付けばループしていたのだ。
扉をよく見ると、すべてうち鍵になっておりこちらから開ける以外はできなかった。このままループすることとし、何かを行動しなければ何も始まらない状態であったがゆえに、何か一つの扉を選択すると考え始める。
四つの扉を聞き眺めていく、結果数十分がたち緑の扉からあけようと決心し行動をし始める。扉の取っ手部分に手を付け鍵をあけようとした途端その先から異様ともとれる音が聞こえ始めてきたのだ。
霧火は驚き尻餅をつく、そのままゆっくり扉に耳を付け音を聞き始める。そこから流れてくる音は自然や風といったものではなく、何かを引いている音、もしくは、袋のようなものに風を当てている音だった。一瞬にして、恐怖が増し他のところの音も聞き始める。
黒い扉からはノック音は変わらずだったが、妙にそちらは音が近く大きいはずなのに扉自体が動かない。おかしいとは思ったが白い扉の方に耳を傾ける。女性の優しそうな声から発せられていた言葉をよく聞くようにした。聞こえたのは衝撃的なものであり更なる恐怖に落とされるようなものであった。
「殺してやる、殺してやる……殺してやる……」
優しそうな女性の声から発せられるのは憎しみとも捉える言葉が聞こえてくるのだった。赤い扉にも近づくがそこは何も聞こえない。何がどうなっているのかさらにわからないのと同時に、恐怖さだけが増していく次第に霧火は頭を抱え始め大きな声を発する。
「俺が何をしたんだよ!!なんでこんな目になんで……俺だけがこんな目に会わなければならないんだよ……無力の力!!お前はお前は俺の人生にまた何かやってくるのか?どうしてそこまでのことをしてくるんだよ!!何か言えよ!!もう無理なんだよ!!俺は!!ああああああ!!」
ピタリと音が止む。それを待っていたといわんばかりに音がやんでいた。霧火は恐怖とともに涙を流し息が荒くなっていた。終わったのかと思ってたのもつかの間……
ドダドダドダドダ
黒、白、緑の三つの扉からノック音が鳴り響く、一番最初に流れた黒の扉を超えるほどであり、扉も揺れ動いていた。恐怖のあまり何も変化のない赤い扉の方の取っ手に手を伸ばす。触れた瞬間に何かが自分を止めていた。その扉は開けてはいけないと本能がそのように示したようにも思えた。しかし、周りの三つの扉は今すぐにでも扉を壊すほどの勢いであった。その場から逃げ出したい。そんな状態であり、鍵を開け扉を思いっきり開ける。
「マッテイタヨ……ハルカゼキリカクン……」
そこにいたのは目や口の中身が真っ黒な自分と瓜二つの姿がいた。そいつは霧火に待っていたと話し、そのまま野太い声とともに笑いながら彼を襲ってきたのだった。




