第三世界 《 銀髪の少年 》
「俺に何かようか?」
「別に……?」
黒騎士殲滅後春風霧火は暗闇の中で目を覚まし、周りを見渡す。誰もいないということを知り、彷徨い始めると、前方には見たことがない人物がおり、ほほ笑みながら霧火を見つめていた。
不気味悪いその行動に悪寒すら抱くのであったが、身なりから察するに何もしてこないだろうとそう思い霧火自身の警戒を完全ではないが、解いていた。
「ようやく会えたね。春風霧火君」
「なぜ俺を知っている?何者なんだお前……」
「僕は君に会いたかった、それはとてつもなく会いたかった。会える日がいつかは来るとして待っていたんだよ。僕を忘れたとは言わせないよ?」
「俺はお前を知らないし、第一に会ったことないだろう。リアルの世界は引きこもってたし」
「やはり覚えてないか~これは、一大事だね?」
「俺は何も知らないし、聞かされてもない。聞こうにも口を開かないやつらばかりだからな?お前もそうだろどうせ」
「悲しいことを言わないでくれよ。僕は君が思うほど悪い存在じゃないよ?そうだね。ここまで来たんだ。僕が知っていることを洗いざらい話すことをしようか?」
前方にいた少年らしき人は、そういうと同時に指で音を鳴らすと、あたり一面は空ともいえるような場所に変わっていた。空中浮遊しているようではあるが、浮遊しているといった感覚はない。
次第に自分たちの場所から下に降りていくように映像が流れ始めた。無力の力に犯されたときと同じ現象が今起きている。目の前の銀髪の茶色い瞳の制服姿の少年は何を知っているのか? これから何が起こるのか? 春風霧火は何もわからないまま促されるようにして、映像が始まる。
「君は地球と呼ばれる場所に生まれる。そして、運悪く無力と破壊王の力がやってくる。ここまではよかった。普通の生活ならここで運悪い少年として、生き続けるのだから、別に問題なかった。しかし、後ろにいるルミナスが邪魔をしたのだよ」
「ルミナス……?」
「君にはまだ見えてないみたいだね。黒騎士のイヴェラトールとの戦いでも剣を投げた本人のことを、それもすべてここでわかるさ」
銀髪の少年は、黒騎士アレクロアス一世の語った話を始める。当然内容は同じものであった。ルミナスと星破壊者と呼ばれる二つの存在が、無力を持つ春風霧火と希望を持つ水戸アヤトの力とが衝突し合って、別の空間に移動される。何も力ないままあの空間にいれば、自分らも同じような化け物になる。そして、星破壊者はそれを察知して、確実に殺しに来る。ルミナスはクロイとシロイとルミナスの三つに力を分け、強制的に異世界転移を行った。
春風霧火と水戸アヤトの両名が異世界に飛ばされた理由。そして、別の者たちはノヴァの神の化計画や、その他の力によって、転移されたということ。直哉やシーナなどの人達は自らこの世界にやってきたが、この世界はある存在によって内側から外側にでることが不可能となった。
同時に、この世界に住む人々がなぜ外の世界を目指さないのか?っといった話に変わる。
「その話は、その通りじゃないのか?内側から外側にでれないのなら、仕方なく住むしかない」
「君は人生の中で考えたことないかい?死後の世界というものを」
「まさか……この世界が死後だと?そんなのおかしい!第一にみなちゃんと……」
「自分から見えている映像や記憶なんて、不確かなことでしかない。人や生物なんて、そんなにも簡単に作られているのだよ?いくらでも改ざんが可能だし、作ることだって可能さ。君はこの世界の何を知っているんだい?」
「何も知らない……が!お前もその話通りなら、同じじゃないのか?」
「そう!同じことさ。僕も同じ存在さ!君たちと同じ存在であり、死んでいる者の一人だよ。だからこんな現実にはない魔法の世界が広がってるんだ。実世界で一度も見たことないだろう?こんないくらやられようが死なない。何かを唱えれば魔術が発動する。普通ではない!そう思わないかい?」
「普通じゃないから……死後の世界なのか……」
「創造なんていうものは適当な存在だよ。誰しもがやったことあるだろう。寝る前やつまらない時に何かを妄想すること。そこにあるのは、超人とされた自分が存在し、無双というなの力を持ち活躍する自分の姿が存在する。実際の世界からは、ちやほやされないが、このような妄想の世界なら、どんなに惨めな存在だろうと、自分を大きくし、強くでき、ハーレムを作り出すことができる。いわば無限の可能性があるということ」
「今の俺は……じゃー……」
「妄想の一つとして存在する君自身の創造だね?もしかしたら、もうすでに君はトラックにひかれて死んでいるのかもしれない。死んだときの原因なんて誰もがわからないだろう?気が付けば死んでいるんだよ。結果無力という君の創造の力を持ち、君は君自身の考えで暴走し、今現在に至るってわけさ」
「その話なら、ルミナスや星破壊者のことはどういう説明すればいいんだよ……」
「それも妄想の一つさ。君は実世界では、引きこもりで辛い人生を送ってきた。なら、何か別の世界にいって大きく変わりたい!そう思えるのが人という存在じゃないのかな?」
銀髪の少年が言うことは至極真っ当な意見だった。実際夢物語のような世界であり、自分が生きていた実世界とは違い、比較的運が良く進んでいる。仲間も離れず、一緒になって考えたり話したりしている。好意を寄せている子すら現れてくれた。親友と呼べるような存在もできた。実際の世界以上に戦闘面ではつらいが、それ以上に楽しさはこちらの方が強かった。
これがすべて、自分や他者による絵空事であり、死後の世界というのなら説明がつくほどにまで充実した生活を送っているのだった。いつ死ぬかわからないところではあるが、それでも必死になって互いに手を取り合って生きていける。ゲームなどでよくある仲間と壁を乗り越えるといったシーンにそっくりであった。
同時に霧火は自分の手を見てグーパーと今自分がここにいるのを確かめるようにしていると、銀髪の少年がそれを見て話し始める。
「実感はわかないだろうね?死後なんてそういうものさ。一生に一度しか体験できないことだし、それが正解なのかはわからない。誰に聞いてもわからないことばかりで、もしかすれば、自分の答えが正解なのかもしれない。君はそんな世界を生きているんだよ。今の自分を作り出したのは君の創造であり、アヤトやその他も彼らの創造が具現化されただけの話。実際にこの世界を下や上に真っすぐに突っ走ってみなよ。そこにあるのは、宇宙ではなく、永遠に続く青く透き通った綺麗な空や大地。実際の世界ではありえないだろう。
そうあり得ないからこそ面白いんだよね?どうだい?今の君の感想を聞かせてくれないかい?」
「この世界が創造の世界だとは考えたことないし、スケール大きいけど、あり得る話なのかもしれない。人は皆が皆幸せに生きているわけじゃないし、妄想だってしたいもの。だとしたら、今の俺はこのままどうすればいいのかわからなくなってくるんだが?大体ゲームなら魔王と呼ばれるものを討伐して実際の世界に戻るとするのなら、この創造は目を覚ませば終わるから、いつでもできるんだよな?でも、死後の世界の場合は本当の意味で、何をすればいいのか……」
「実際の世界で引きこもっていたからしょうがないよ。世界を見たことがないのだから、そうだね?君がすることか~だとするのなら、楽しく世界の変革者にでもなればいいと思うよ?」
「変革者?」
「そう!変革者!君は難しく考えすぎなところが強い!嫌なら嫌だと投げてしまえばいい!でも、君はその嫌だと考えるのと同時に、その嫌の本当の意味を考えてしまう。なぜ嫌になってしまっているのか?などね。その結果悪い感情だけが自分にやってきてしまうんだよ。そうなるのなら、変革者になってそんな嫌なものをすべて新しい自分なりに変えてしまえばいいのさ?」
「変えるっていっても俺はそこまでの力がないからどうすることも……」
「力がないのなら、創ってしまえばいい。そもそも君はすでに力を持っている。その強い力を有効活用しなければ、何も始まらないだろう。君に必要なのは自分自身に負けないほどの強い自信じゃないかな?せっかく強い力があるのに、自分では制御できず、逆に操られてしまう。これは自分がそのように創造しているからじゃないのかな?なら、自分が制御しているように創造すればおのずと考えは変わっていくものだよ」
「俺が俺を操ることを創造して、変革者になる……」
「そうだよ!君は自分をコントロールしているのを創造して変革者になろう!そうすれば、君はバラ色の未来になるよ」
春風霧火は銀髪の少年に言われたまま自分のことを考え始める。今まで操られて自分は逃げて生きてきていた。しかし、これからはそうではなく、自分の思う理想の自分になる。すなわち、自分の持つ力をすべて自分の思い通りに操ること。銀髪の少年の言うことは、正しいと考え未来を考えるようにまでなっていた。
銀髪の少年は霧火を見て微笑みをし、大丈夫だよ。っと励ましてくれた。それを聞き、見て、霧火は次第に心の中にある闇の部分を解放していくのであった。
これから春風霧火は自分を変革者として自分の理想の夢の世界を作ることを決意する。それは、過去の記憶も呼び覚ます引き金となるが、すべてを受け入れ始めると霧火は一粒の涙を流した。
その涙は霧火を強くたくましくするものであり、すべて自己責任となることに恐怖を抱くが、仲間を救うことがこれからでき、同時に仲間も霧火自身の夢の世界を実現するといったことに賛同するだろうと確信し始めた。楽しい時間うれしい時間笑顔の時間、たまには怒ったり、泣いたりと悲しい時間、これらの喜怒哀楽をみなで楽しむ理想郷を実現するために春風霧火は動き始めるのであった。
それを見ていた銀髪の少年は霧火に対して一言告げその場を去った。
「君は君であると同時に僕は僕であるんだよ……」




