第二十二世界 《 魂は力へと・・・ 》
イヴェラトールは、自らの力を使いすべての人々を黒騎士兵のようにして自我をなくし、操り無益な戦争というものをなくそうと考えていた。それはすなわち、彼以外の存在を抹消するのと同異議である。
五人は納得いくはずもなく、そのまま戦いに発展するが、イヴェラトールの力は今までの比ではないことがすぐにわかってしまう。
戦闘開始数分にして、五人は立つことさえ辛い状態になっていた。神の遺産を用いても、特殊技能を使っても、敵に傷一つつけることは愚か、近寄ることさえできずにいた。
あの戦闘では右に出るものはいないとされるリリアでさえも、手も足も出せない状態に陥っていた。力及ばずといったところなのだろうか。
実際イヴェラトールは彼ら以上に長い年月生きている。そんな敵とまともにやり合えると思う方がばかなのかもしれない。しかし、このまま野放しにしていれば、確実にこの世の終わりがやってくる。実際問題目の前にそれが存在している。
リリアと八雲惷は無理やりにでも立ちイヴェラトールに突っ込んでいった。どんなに無理でも、どんなに相手が強かろうが、明日がないことは絶対にありえないとし戦っていた。
後ろからそれを見ていた春風霧火、水戸アヤト、夜紅奏翔の三名も諦めないとし突き進む。
いくら倒しても起き上がり、さらには技を撃っていく。諦めない彼らを見て驚くイヴェラトールであったが、つまらない戦いに飽きてきたのか、ついには動き出す。
「何度も立ち上がることは褒めてやろう。しかしな、そのような力で敵うと思うこと自体愚かなことだ」
「俺らは負けない!絶対にだ!いくら敵が強かろうが、諦めず全力で突き進む。いつかはその先が見えることを信じてな」
リリアの一言は春風霧火の心に響くものでもあった。今までの自分はそのように前向きに考えたことがない。そのように考えることができるようになれれば、どれだけ良いことか、楽しいことか想像することが不可能であったが、それは逆に楽しいことが起こる前触れなのかもしれないと、そう感じた。
しかし、すべてがうまくいくことは決してないのである。
「何も知らず、ただ気楽に生きてきた貴様らにはわからないことだ。絶望を教えてやる」
そういうとイヴェラトールは黒いオーラを放っている剣を彼に向け、突き進む。
敵の移動は瞬間移動のようなものであるが、何かが違っていた。リリアはすぐさま防御に徹するが剣と剣の衝撃により自らが吹き飛ぶ。
八雲惷が吹き飛んだリリアを心配していたが、敵が目の前ということもあり、助けに行くことはせず、イヴェラトールに魔術を放とうと前を向いた途端にそこにはすでに奴が存在していた。
一振りの一撃が八雲惷を襲う。一瞬にしてかわされる。夜紅奏翔によって守られたのであった。アヤトもこのままではだめだとし、遠距離からの魔術を繰り出す。
しかし、それらすべてが敵を貫通し、さも当たってない様子でそちらに歩みよってくる。
後ろを取るリリア。無言のまま剣を振り下ろすが、体ごとすり抜けてしまう。全体がすり抜けたと同時にイヴェラトールは左手を開き背中を軽く押すと吹き飛ばされるリリアだったが、その瞬間無理やり魔術のようなものを発動し、振りかえり再度剣を使っての攻撃をする。
次は顔面に直撃するような位置での攻撃だったが、それすら、あたかもそこには存在しなかったかのようにして回避されてしまう。一定の距離を取りイヴェラトール自体の能力に対して舌打ちをする。
実体があるのかさえ怪しいレベルであったが、目の前にちゃんと存在する。
ここまでの力の差を見せつかられても立ち上がるリリアと八雲惷、ただ傍観者として何をしているのだ! と心の中で叫ぶ春風霧火、このまま何もせず待っているのなら昔と同じこと、何も変わらず何も変えれない存在になる。
力なき絶望し、無力によって更なる地獄を味わう。現状様々なことが積み重なってできた霧火は昔とは違う存在だとして、自らに活を入れ始める。
(このままではだめなんだ……このままじゃ!!)
「うおおおおお!!」
彼は今までにないほどに力を溜め行動を起こし始めた。何も考えずただひたすらに突っ込む彼を見て笑うイヴェラトールであり、後方にも何人か迫ってきていることを知り、全体を吹き飛ばす大きな一撃を発動させる。
周りにいた五人は全員吹き飛ばされ、やがて力なく倒れてしまう。強力な力を持つ者たちであっても、ここまでの差がでてしまうとなると、勝ち目はなかった。
次第に諦めることを考え始める彼らであったが、一人だけそれでもなお立ちあがろうとしている者がいた。それは、今までに絶望し、今までの自分を悲観し続け、周りから見放された者であり、今の彼の目には希望となる光しか映されていなかった。リリアでさえ、この状況を見て、体験し、さすがに無理だと諦めていたその時に起こった事実である。
「あやとおおお!!天才なら!もう少し動けるよな!!俺だけじゃー無理だけど……二人なら!!」
「霧火……ああ!明日のためにもやろう。竜刀力を僕に……」
春風霧火、水戸アヤト、二人は立ち上がり、互いにアイコンタクトを取った後、その場から消えるようにしていなくなる。
アヤトは白火の姿へと変化しており、全体に魔法を発動させていた。相手に当たらなくてもひたすら。
霧火は物体が存在しているところにめがけて何度も攻撃をするが、当たらない。しかし、霧火には必勝となるアヤトの存在があった。彼なら必ずこの問題を解決することができると信じていたのだ。
大きな一撃を幾度となく繰り返すイヴェラトールは二人の動きに翻弄され始める。それを見逃すアヤトではなかった。
「僕は……天才だ!!」
ドゴオオオオン!!
「ぐは……な……!!」
アヤトの魔術の一撃が敵に当たったのだ。それも今まですり抜けていた体。
周りにいた三人もそれを確実に見ていた。どのようにして当てたのか? まったくわからないと考えていたが、アヤトはすかさず二つ目を当て、さらにはと……どんどん確実なるものへと変えていった。
「みなさん!イヴェラトールは体の中に一つの丸い物体のようなものがあります。それに攻撃を当てさえすれば確実にダメージを与えれます!!」
「丸い……ってどこだよ」
「え……見えない……?」
水戸アヤトはそのことを言った後に周りは疑問に思ってしまう。なぜならば、その丸い物体を見ることができるのは彼のみであったからである。周りの者たちは何を見ているのかわからなかったのだが、敵にダメージを与えている唯一の人物としてアヤトの援護に回り始める。
「いくぜーー!!勝利の剣!!」
リリアのその一言で持っていた剣は光を増す。たちまちそれに目を奪われるイヴェラトールの姿があった。もちろんアヤトはそれを見逃さなかった。もしかすると! っと思い光の魔法を使い始める。
やがてそれは対象にダメージを与え始める。前よりも高く強いものであった。周りにそのことを言い、更なる勝利への道が見えるのであった。
ここまで追い込まれてしまうとは思わなかったイヴェラトールであったが、久しぶりの復活なこともあってか、体がなまっていたとして力を解放し始める。
黒いオーラがイヴェラトールを包み込む。さらにスピードをあげ、攻撃力や防御力さえも向上させていた。しかし、五人はそれでも屈せず挑み続ける。
力を解放してからのイヴェラトールは前のように攻撃が通り越すことがなく、当てることができるようになっていた。人数的には有利な勝負なのだが、やはり簡単にはいかないものである。
両者必死の攻防戦が続くが、いよいよとし五人が動き出した。
「ここまで来たんだ!明日は疲労困憊でぶっ倒れるな~」
「リリアいいんじゃないかな?もしかしたら、おねさんたちが相手してくれるかもよ」
「ならよろしい!発動!!破壊の力!!」
「発動!幻想の力!!」
「それは言わなくてもいいんだけどね……魔王の力いくよ!!」
リリア、八雲惷、夜紅奏翔の三人はそれぞれ自らの力を解放しだす。今までとは違い力が増しているのが見て取れるほどであった。
イヴェラトールの魔術による攻撃はリリアの力によりかき消され破壊される。八雲惷の攻撃は想像したものを具現化するといった内容であり、剣などを召喚し接近をするといったスタイル。夜紅奏翔は魔術に似たものでの遠距離攻撃であった。
それぞれの攻撃は先ほどのものとはまったくといっていいほど異なったものとなり、激しさや能力の高さに驚くアヤトと霧火の二人だった。
アヤトも負けておらず、白火の力を使っての攻撃参加をし始める。一気に形勢逆転になるほどまで相手を追い詰めるのであった。
まずいと思ったのか、更なる力を解放し与え続けるが、リリアの破壊の力により根本的から破壊される。後ろから飛び出してくる八雲惷の力により大ダメージを受けるイヴェラトール。
もはや、勝利の神はこちらに微笑んでいた。そう確信したときである。
「滅びは神より授かりし力となりて、その身は悪魔へと捧げる供物となる!!これが力だ!!『魂は力へと……』(フォース・オブ・ナイトメア)』
イヴェラトールは姿を変え、更なる禍々しいものへと変化していった。足出会った場所からは黒い煙のようなものがうごめき、手には大鎌のようなものが存在する。黒いローブに身を包み十八個の青い火が彼の周りを回っていた。
これが、イヴェラトールの真の姿であり、黒騎士を作り出したものの力である。すべての力は元は一つのものであり、黒騎士十八皇帝は、元は王であり、それらに力を与え現世に復活させたのだ。
体長は5~6メートルほどの大きな存在であり、ただ相手を殺すっということだけを考え浮遊する。
イヴェラトールはリリアたちを見つめるとそのまま魔術を発動させる。
無数に飛ぶ魔法は彼らを襲い始める。リリアの破壊の力は根元に触れない限り破壊することが不可能であるため、根本である魔法陣か本人に触れないとこの術自体を停止することができなかった。
いくら身軽と言えど、無数に振り続ける魔法をすべてよけ敵の元に行くのは困難を極めていた。
笑いながら大鎌を横に振り、更なる攻撃を与える。一番最初に戻ったかのように、戦いは始まっていた。




