第二十一世界 《 イヴェラトール 》
「美音お願いできるか?彼らのこと……」
突然の暗き世界の中、水戸アヤトは如月美音にゆずはたちのことを任せて自分ひとりで行こうと考えていた。しかし、それを蹴るかのようにしてゆずはから断りが入ってしまう。
困っていたアヤトだったが、美音やその他のメンバーもゆずはに賛成を示していた。今までにないと思われるほど最悪が起こる可能性すらありえる。それなのに、彼らと一緒に行くことができないと考えていたが、美音たちの強い意志により感化されてしまう。
さすがに、そこまでのものを見せられてしまえば、いくらアヤトとて反対はできなかった。
「この先の戦いは僕が皆を守れないかもしれないけどいいのかい?」
「はぁ~……おぬしは、霧火よりも自信過剰であり責任感が強いな。それは褒めるとしよう。しかし、この世界にいるからには、そんなこともいってられん!自分の命は自分で守るんじゃよ!」
「そうですね。いつまでも守られてばっかりだと困りますものね。ゆずはさん気にしてましたし」
今まで守ってばかりのゆずははアヤトに一言申したい! そのように日々考えていたとシロイが話す。それを聞きアヤトは守られている者の気持ちを理解してなかったのだと今感じることができた。
春風霧火のような守られてばかりで仲間が傷つくのを指くわえて待っている。それがゆずはも一緒だったこと、もう少し自分も大人にならなくてはいけない。っとそう考えるようになった。
時間は深夜であり、彼らが宿泊している場所の窓より、グランエリアスの方角から何やら壁のようなものが押し寄せてきていたのを見つけるクロイ。
まさかとは思ったのだが、シロイがそれを結界として反応を示した。あのまま近づき飲み込まれればこの先戦うことはさらに厳しさを増すと語る。
急いでアヤトが力を感じる方角へと進み始めた。外に出た途端に自分の体から何かが抜けるような感覚に襲われ始める。それは周りにいた者たちも同じであった。
どうやらクロイ曰く、この抜かれる感じというのは、魔力や力などを実際に吸い取られていると話す。すべてはこの空の影響とのことだった。
アヤトたちは力や魔力が0になる前に敵を倒し、この問題を解決しなくてはいけないとし、走り出した。感じていた力は進むごとにさらに増していく、後ろにいた者たちはなぜ? アヤトのみがそれを感じることができるのかが不思議で仕方なかったが、現在彼が唯一頼りになれる存在だとしてついていく。
しばらく進むと空から何やら大きな音が聞こえ始めた。彼らは、そちらの方を見上げるとそこに出現したのは、大きな飛空艇や飛行艇であった。
すぐ近くであったために、驚くがそちらから何やら拡声器のようなものを使って話しかけてきていたと同時に何やら落ちてくる。
「水戸アヤト君だね? 話は聞いてます。僕は彼の弟の夜紅奏翔と言います。よろしく」
「まさか弟がいるとは……」
「すっごいの~あの輩とはまったく似ておらんぞ? 性格もこちらの方が何かと良いの~」
「うちの兄が申し訳ございません。あの人はそういった性格なのでしょうがないです」
夜紅奏翔、夜紅直哉の弟であり、魔王の力の所持者でもあった。彼は自己紹介が終わるとすぐさま飛行船の中に案内してくれた。時間がないと言って……
ギルド『ロイヤル・アカデミー』は彼の所属する場所であり、現在大規模で行われている黒騎士の結界から逃れるためと王城目指して進んでいる。
ある程度進むとおのずとそれは見えてきた。とても大きく禍々しいゲームの世界にでもあるような城がそこには存在した。ここまでで誰にも敵に会わなかったのが罠といったことを踏まえて恐怖する彼らだったが、難なく来たことにロイヤルアカデミーのギルドマスターは大丈夫! と話す。
一定の距離を取り、一斉に乗り込もうとする。しかし、そこで立ち眩みのような状態が彼らを襲ってしまう。目を閉じ膝をつくレベルにまで強いそれを受け、やがて眼を開けるとそこにいるのは夜紅奏翔と水戸アヤトの二名だけになっていた。
他のメンバーはどこにいったのかと思ったのだが、奏翔が話すには、それぞれ黒騎士の用いる世界に飛ばされたのだという。
さすがに見え透いた罠に何も考えず突っ込めばこのようになるだろう。しかし、奏翔は表情が変わらず先に進むことだけを考えていた。ギルドメンバーは信用してこそのこと! 死ぬことは決してない! そのように水戸アヤトに話す。意外なところで元気づけられるアヤトであった。
また、何もなく王城の門前まで付いてしまう彼ら二人。なぜ? ここまでスムーズにいけるのかがわからなかったが、何もないのなら好都合として奏翔はアヤトを見て話す。
奏翔が王室の扉に手をかけ始めた瞬間アヤトの左目に別のシーンが浮かんでくる。それは、王室内にいる霧火の姿であった。彼は一人何か別のものを見て怯えている様子が見えた。
何かがあったこと、それはわからなかったが、すぐさま現実に戻る。奏翔が扉を開くとそこには、春風霧火、リリア、八雲惷の三人と目の前には黒騎士の三人が存在した。
霧火は何かを見て微動だにしなかった。それに気づいたリリアが殴りを入れ、正気に戻した。その瞬間を見ていた二人は霧火の元に行き、声をかける。
「リリア!何してるだよ……」
「春風霧火!お前もしかして今飲み込まれていただろ!!」
「悪い……ありがとう……」
「どうってことねーよ」
「突然のことすぎてわからないけど、状況の説明をしてもらえるかな?リリアって少年」
水戸アヤトは霧火の口から出血している姿を見てリリアに睨み付ける。奏翔はそれを見て落ち着かせる。彼らの疑問に思っていることはすぐさま目の前にいる黒騎士三人によって話されることとなった。
「予想外の能力者が来たが、奴は先に葬っておくか……ここに存在し、私の思いのままやってきた者たちを祝福しよう!!破壊の力、幻想の力、魔王の力そして、無力の力歓迎する」
「あんたらが何しようとしているのかわからねーけど、俺らは一筋縄ではいかねーぜ?」
「そこにいる水戸と言う少年を葬ってから話をしようではないか!そやつは今宵の晩餐には招待していない。でてこい黒騎士十八皇帝どもよ!!」
水戸アヤト以外のものたちは来るべくしてやってきたと話すアルザー。彼はすぐさま水戸アヤトを邪魔ものだと判断し、殺すことを考え始める。
アルザーは何かの呪文を唱え始めると、一番のリューノフを中心に今までのすべての黒騎士が勢ぞろいしたのだった。
それを見た五人は驚きを隠せずにいた。あんなにも手こずっていた存在が、何もなく召喚されたのだ。
黒騎士十八皇帝全員はアヤトめがけて突っ込んでくる。
「あのレベルのやつら全員と相手とかシャレにならねーって!!なんかねーのかよ!!」
「みなさがって!リリアもだよ!!幻想の力僕に!!『神秘的な幻想』(エニグ・マ・ティーク・ファンタジア)」
八雲惷は彼らを守るようにして大きな魔法陣を描き、虹色の魔法を辺りに煙のように放つと、召喚された黒騎士十八皇帝は徐々に消えていった。
その行動に拍手をするアルザーの姿があった。黒騎士は驚いておらず、それを知っていたかのような口ぶりで言い放つ。
「さすが、これが幻想の力か……素晴らしい!素晴らしいぞ!!」
「アルザー……もうよいだろう。準備は終わった。水戸の少年はもう関係ない。私たちの勝利なのだから……」
「どういうことだ!勝利って!!」
「魔王の力を持つ者に教えるのか……この私フューズはちと疲れるが話すか?」
「もうよい、始めよう!」
そういうとフューノフの掛け声とともに部屋の中心から大きな魔法陣が出現し、徐々にそれは王城を超える。外は雷とも捉えられる音や光をなし、天災が起こり始めた。
「いよいよだ!アブソリュートほどの力を持ちながらも使えなかった己を恨むがいい!春風霧火よ!!いや!ゼロよ!!ふははは!ははは!!」
リューノフは霧火に向けてそう言い、今までの恨みをはらしたかのようにしてあざ笑った。両側にいる十八皇帝は互いに詠唱をつぶやき始める。
黒騎士十八皇帝一番が準備ができたということは、すなわちイヴェラトール・トルァーの復活となる。この儀式は三人を残しすべての黒騎士が力となり消滅させることが可能であった。
やがて三人も徐々に黒い光となり消えていき始める。しかし、恐怖せず、ただ王が復活するということを得られることに喜びさえ感じていたのだ。
彼らが本当にしたかったことが世界征服などではなく、本当にイヴェラトール・トルァーの復活だとするのなら、この状態も理解できる範囲内であった。
目をつむり最後の一人リューノフまでもが消えていった。今王室内にいるのは春風霧火、水戸アヤト、夜紅奏翔、リリア、八雲惷だけである。
五人は何が来るのかがわからなかったが、戦闘態勢には入っていた。
やがて、地面は揺れ始め城内にあるものは崩れていく音がしていき、静まり返った数秒後のこと……前方にある舞台幕から突風が押し寄せ、黒いオーラに切り替わる。それに触れただけで体がもってかれそうなくらいにまでの力を発していた。
中からコツ…コツ…っとゆっくり何者かが、歩いてくる音が聞こえる。それは姿を現し始め、目の前にいる五人を見て、自分の手を見て、ほほ笑む。
「ようやく復活したか……長きものであったな……」
中から現れたのは、全身を布で覆い顔は真っ暗で見えない存在であった。両手は鎧の付けているが、足は足袋のようなものを履いていた。今までと違うその姿であるが、それが何なのかは想像が付かない。
「我が名はイヴェラトール・トルァー黒騎士とやらがお世話になったな」
「お前何者だ!!答えろ!!」
「我はこの世の終わりを定めし者、無益な戦争に終止符を打つため存在し、新たに死者による世界を創造するのだ」
イヴェラトールの目的は世界を一度0にし、新たに作り変えるということであった。その後に来るものは人々を黒騎士のように感情をなくした世界を作るといったものであった。
感情をなくした世界ということは、言われるがままに行動するものであり、そこに未来は存在しなかった。イヴェラトールは戦争をなくす方法は自ら王になり、自由自在に動かせるようにするというものであった。それを聞いた五人は納得がいかなかった。
「そんな世界何が面白いんだよ!!自分勝手の世にして何を求める!」
「我が求めるものはそれのみ、無駄な争いが起こるよりかはましだろう。貴様らも最終的には死ぬ運命なのだからな。ここで終わらせてくれよう」
「リリア……これはまずいかもしれないね……」
「何やってやるさ!俺らの世界だ!終わらせねー!!」




