第十七世界 《 弱っていく最強騎士 》
「どうした?直哉、こんな夜に私だけ呼び出すって……」
「簡単な話だ。どうやら、俺らが思う以上に今世界は動き出しているみたいだ」
「どういうことだ?」
「現在至るところで黒騎士十八皇帝との戦いが繰り広げられている。その中でもギルド側が負ける方も報告自体では多い、しかし、中には勝つ者までも存在する。奏翔の情報が今入ってきた。今まで活動していなかった特殊技能者やギルドが参加しているんだ。もしかすれば、本気で黒騎士を討伐するといった考えあるかもしれない」
「黒騎士討伐か……過去に討伐したとされるのはアブソリュート……お前らか……」
「俺らが黒騎士と熾烈な戦いをしたのは随分と前の話だ。あいつらを倒すことはすなわち……大災害クラスの猛威が襲ってくると同じだ。大結界を用いて当時はやったんだが、最終的に逃げられた。イヴェラトールの復活を阻止することができたのだが、そう何度も失敗するやつらではないだろう」
「簡単な話じゃないんだな?」
「簡単であるのならどれほど良いことか……うちは新設したばかりだからな。ギルド『プロジェクト・ノア』と『ロイヤル・アカデミー』がどこまでいけるかだな……」
「あいつらも参加しているのか……幻想の力と破壊の力がメンバーにいるところ、本気で倒すんだな……」
「黒騎士も手は打ってるはずだろうな。ここまで狙われてしまえば……」
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グランエリアスよりは相当遠い場所にある街でギルド『プロジェクト・ノア』のメンバーと黒騎士十八皇帝十一番ガウルトルが戦闘を行っていた。
しかし、その戦いは最初から決まっていたかのようにあっという間に終わっていた。ガウルトルは黒騎士の門を解放してもなお、相手にダメージすら与えれていないという状態に陥っていた。
どうしてそのようなことになったのか? それらすべては相手がそれほど強力な力を持っている他ない。
「あの水戸アヤトやブラッディーメアリーといったやつらとは戦いたかったがな……まさかこんなところでやられてしまうとは……」
「黒騎士も弱くなったな。もしかして、もうイヴェラトールの準備ができているのではないのか?」
「勘の良いガキだな? イヴェラトール様復活のために黒騎士のすべての力の半分を差し出した。結果として我らが弱体しているのは無理ない話だろう……」
「面白くない話だ。遅かったということか……まあ倒すからいいさ。じゃあな」
『プロジェクトノア』のメンバーであり、破壊の力を持つとされるリリアという少年は、片手に持つ剣を使いガウルトルの首をはねる。次第にそれは霧となり消えていく。
黒騎士十一番皇帝も倒されたのだ。それも相当な力の差もあって……
しかし、リリアは敵に何かしらの状態異常が起こっていることを知り唖然としていた。それは今まで見たことないような力であり、何なのかを考えていた。
白髪で左目が赤く、右目は青い、白ベースに赤のラインが入っている上衣を着ているリリア。
後ろから茶色の髪をし、赤黒いマフラーを巻き口元を隠しており、髪で左目を隠しており、ひ弱そうな日本人のような顔つきの少年がやってきた。彼を心配していたらしく、加勢にきたとのことであったが、しかし戦場を見渡す限り敵の存在がいないことに気づき、安心していた。
「やはり君簡単に倒すんだね。心配して損したよ」
「八雲惷はいつもそうだよな? まったく俺を誰だと思ってるんだよ。破壊の力持ちだぜ? 心配すんなって!」
「そうだけどさ……黒騎士十八皇帝は危ないから……」
「まあ、心配してくれるのはありがとよ!かえろっか」
「うん」
二人はそのまま拠点へと足を進めた。黒騎士の望む復活はもうすぐそこだということをギルドメンバーそしてグランエリアスに連絡するためにいち早く。
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飛行船や飛行艇で活動をしているギルド『ロイヤル・アカデミー』
こちらは、黒騎士十八皇帝シュビラ二世討伐に向けての作戦会議をしていた。相手は空を使っての戦闘が得意としてロイヤルアカデミーという空部隊のギルドが望むようになっていた。
「直哉に連絡は入れたのか?奏翔さんよ!」
「いきなり勢いよく肩を組まれると困る。ラキト」
「楽しそう。二人を見てると」
魔王の力を所持するとされる黒髪学生服のような姿をしている。夜紅奏翔は直哉に現状を伝えるべく電話をしていた。そこをおちょくるかのようにしてピアスを付け茶髪で、短く黒いキャップをしているガタイの良いラキトが話しかけてくる。
それを後ろから眺めて楽しそうにしている。ショートパンツにピンクの服を着ており、カチューシャを付けている時雨舞の姿があった。
当然直哉が今どんな状況なのかを知っており、何かある毎に両者が連絡を取っている状態ではある。
夜の雲の上を飛行している中いつ敵が出てきてもおかしくないように戦闘準備は万全であった。前回の黒騎士戦では参入した瞬間に撤退された苦い思い出があることもあり、今回は逃がさないとしてメンバーそれぞれが考えていた。
メンバーの何人かで魔術による探知スキルを発動し一定距離に張り巡らせていた。飛行船の周りをいくつかのメンバーで戦闘機や召喚獣などを使い回っている姿も見て取れた。
夜の静けさや肌寒さなどを感じる中、敵は動き出した。
「敵発見!飛行しているものが前方より現れました!黒騎士です!」
「よし!みなのもの!やるぞ!!」
「「おおー!!」」
すぐさま開始される。空による攻撃は遠距離としているため、高レベルの防御魔法で飛行船は守られていた。下の雲から待っていたといわんばかりに飛行艇が何機も登場する。
それはたちまち飛行船を取り囲むようにして一緒に飛行し始める。その数は十機ほどであり、相当な戦力を投資していることは見て取れていた。
「奏翔!いけるかい?」
「マスター大丈夫。僕準備万端だよ」
「任せたよ!終わったらいくらで揉ましてやるから!!」
「そういうのは別の男の人にでも」
「ほんと私の愛はいつになったら届くんだろうね~!まあ死ぬなよ!」
飛行船の中にある中枢部に奏翔は呼ばれる。ある程度の作戦のことを聞き出動することになる。奏翔の戦闘スタイルは誰しもがわかっているので、できるだけ彼の邪魔をしないように行動するように心がけなければかえって倒されてしまう可能性すらあった。
魔王の力と呼ばれるものは相当なものであり、十属性すべてを扱うことができ、自分なりに事細かく変化させることが可能となっている。それだけではなく、すべての属性に適合し、適合しない新しい属性を作ることも可能なため、それは無限の領域とされていた。
彼は私服のまま飛行船から飛び降りる。そのまま『星々の羽翼』と言い背中に蝶の羽、キプリスモルフォと呼ばれるデザインのものを出現させ、飛び上がる。
前方には待っていましたと言わんばかりに空中でバイクに乗っているシュビラ二世の姿があった。
「まさかここまで追いかけて来るとはな? 私は黒騎士十八皇帝十八番のシュビラ二世である。すぐに死なないようにな?」
そういうとシュビラ二世は両手にクロスボウのようなものを装着しており、そこから無数の矢を放ってくる。周りにいた黒騎士兵も一緒になって狙撃してきた。
両者空中戦を得意とする者たちであり、その戦いはどちらに勝利の女神がほほ笑んでもおかしくないものであった。
その戦いが終わったころには、すでに日差しが出ており、そのまぶしさから目を開けれない奏翔の姿があった。
この一か月のうちに黒騎士十八皇帝は十体も倒されているとグランエリアスに報告があがっていた。それはアブソリュート以来の異例なことであり、職員の人は休みなく走り回っている状態であった。会議室で直哉たちが話している中でも、その音が聞こえてくるほどにまで……
春風霧火によるアレクロアス一世討伐もすぐさま知れ渡る。黒騎士十八皇帝を倒してもなお行方不明なため、探しようがなかった。結果として、現在は活動停止もあってか、それぞれは別のことをして日々を過ごしていた。
アヤト、直哉、アルフォンシーナ、クロイ、シロイが会議室で話していると扉を開ける音がする。何かと思いそちらを見てみると、そこにいたのはギルド「星次ぐ人々」であった。
先頭に立つのはギルドマスターである「ロクス」後ろには「グラン」と「マリアス」の二人がいた。アヤトたちに話があってやってきたという。
どうやら、現在の黒騎士の動向についてだそうだ。各地には黒騎士の残像兵が発見されていると噂が立っている。それらを討伐しているものもいるが、中には捉えて居場所をはかせていることもしている。
しかし、黒騎士兵は皆が皆話すことはせず。殺す!と脅しても何も恐怖におびえないらしい。
それもそのはずだ。黒騎士は元はと言えば死者の魂でできたものたちなのであって、そもそもある程度の感情はないに等しい。それこそブラッディーメアリーのような存在そのものを恐怖としているのなら別なのだが、普通の人がそれができるとはとても思えない。
そこで黒騎士を討伐したアヤトたちに少ない情報でも話が聞ければと来たのだが、エリザード討伐やアレクロアス一世討伐時にいたメンバーがその会議室にいない。
ギルドメンバーが個々で何をしているのかは正直わからない。連絡が付けばいいのだが、みながみな遠出しているため別の機会となってしまった。
そこにもう一人会議室に入ってくるものが現れた。如月美音だった。
彼女はおもむろにやってきて、驚きのことを口にする。
「私をエリュシオンに入れてはくれないだろうか?」
「突然何をいいだすんだ。美音!これは!」
「知ってる……だが……私も傍観者では居たくなくてな……」
「面白い子がやってきたね~私はかわいい子歓迎だよ」
邪魔をしているような感じがしていた星次ぐメンバーは会議室をゆっくりとでていく。
突然現れた如月美音の加入の発言。空気の読まなさにクロイは唖然とし、アヤトは驚きを隠せないでいたが、会議室から外を眺めていた夜紅直哉は一言。
「別にいいんじゃねーか?」




