第十五世界 《 試される呪い 》
「来たか……久しぶりだな。また会えて私はうれしいよ。春風霧火君」
「……」
「その見た目、表情から察するに君は、無力に飲み込まれたか……無理もないな。何もない少年に扱えるほど弱い力ではない」
「俺は飲み込まれてなんかない。現実を知っただけの話」
「そうか……無力の力による暴走から一度死に自我を形成し始めたのか、そんなことができるのは奴だけか……」
「知ってるんだな」
「知ってるも何も一度黒騎士自体そいつによって崩壊寸前にまでされたからな?忘れはしないさ。だから私は君にその時の借りを変えそうかと思って期待してたのだ」
「無力の力持ちなら誰でもいいんだろ。お前は……」
「そうともいうな。憎き存在は許すことはない、返って殺意が湧いてくる。さて、戦おうではないか?我が黒騎士十八皇帝序列十四番、黒騎士の王であるアレクロアス一世の力を見るがいい!!」
何もなく静けさだけの森の中、黒騎士十八皇帝十四番アレクロアス一世と春風霧火はそこにいた。両者見た目の変化があり、アレクロアス一世は髑髏に鬼のような角が二本生えており、ところどころに髑髏がついていた。背中にはマントがつけており、片手には銃剣を持っていた。
春風霧火は、黒ベースに赤いラインの入っている動きやすそうな服装。
何も装備を持たない霧火に対して真っ先に突っ込むアレクロアス一世。それを確認し上空を見上げブラッド解放 とつぶやく、その瞬間とてつもない速さでその場から消え去る。
それがわかっていたのかアレクロアス一世は銃モードに切り替えた武器を下に向かって撃つ、彼を中心に魔法陣が展開し、銃弾が上空に向けて放たれる。
後ろを取ったと思ったが、その銃弾によって回避に移さなくてはならなくなり、距離を取り始める。
「簡単にはいかないようだな?なら、これはどうだ。『異次元からの死弾』」
アレクロアス一世のスキル発動。春風霧火のいない場所に銃弾を何発も放つ。しかし、その銃弾は彼を狙ったかのようにして、前方に魔法陣が展開し狙撃される。
銃弾の速さや数によって空中で攻撃を受け地面へと落下、そこを見逃さす追撃を発射するが、地面に触れた瞬間に移動をし回避。
次元の力を使っての射撃は相手次第で軌道を変え、100%で命中する。厄介な技であったが、それ以上にスピードが速い春風霧火に前とは全く違った存在だとして再度理解する。
霧がない。そう思ったのかちょっとした細工をしだす。同じように霧火の前方に魔法陣が展開し、そこから放たれる。今回に限っては、今までとは違い霧火の腹部あたりに銃弾がいった瞬間空中分裂し散弾gへと変化する。アレクロアス一世が一歩先にでていたのだった。クリティカルヒットし地面へと叩きつけられ、その後に空中から無数の散弾が雨のように降り注いだ。
アレクロアス一世はリロードをするかのように持っていた銃を動かし、霧火の方に銃口を向け始める。地面へと叩きつけられた霧火はうずくまっており、動かない状態であった。
「決まったな……」
黒騎士十八皇帝十四番アレクロアス一世、彼の得意とするものは次元による攻撃、いつどこからやってくるのかわからない。例え彼自身の真後ろにいようが思ったところに攻撃が当たるといった戦闘法。
なぜそのようなことができるのかは、特有の力である「魔眼」と呼ばれるものを持っているからである。特殊技能書にも乗っているものの一つであり、アレクロアス一世の持つ魔眼のタイプは『エリア』と呼ばれるもの。自身の思ったところを見ることができる目による力である。
最後の一撃を撃つためにトリガーに手をやり引き始める。しかし……
「あめーんだよ……」
ズシャアア!!
「ぐ……まさか……」
「それだけでは終わらない……『穿つ真紅の惨劇』」
アレクロアス一世の真後ろに突如出現する春風霧火は片手に持っていた赤い剣により背中に重い一撃を与え前のめりになる敵の姿があった。その後に前に倒れている春風霧火の全身が赤く染まり血のようにして分散し始め、長く細い針のように無数に生成され攻撃を開始する。
予想外のことだったのか、そのまま命中するが、一瞬にして次元を開き致命傷は免れたが、黒騎士特有の怪我をしているところからは、血ではなく煙のようなものが噴出している。
攻撃を受けたにも関わらず笑いながら霧火に話をしてくる。それは今の戦闘がとても楽しいと思える口ぶりであった。対する霧火は、まったく表情に変化はなく、ただ相手を倒すだけのことしか考えていない。いくら攻撃を当てたからと言えど、安心するには早すぎる。
エリザードの一件も大方はメアリー達の攻撃によるもの、そこから自らの遠距離攻撃を放ち、止めを刺した。それでようやく倒したのだから、王であるアレクロアス一世の場合は、そう簡単にはいかないだろう。そのようにして考えていた霧火。
「そうやすやすとは両者行かないものだな……簡単にいかないのなら本気でやるまでだ。黒騎士十八皇帝十四の門『不』解放!!」
エリザードと同じように黒騎士十八皇帝のみ許される力の解放を放った。
アレクロアス一世は黒い煙に身を包みやがて姿を変え現れる。背中に展開されている魔法陣の中心には『XIV』のローマ数字の十四の数字が刻まれている。
骸骨に鬼の角の顔はさらに禍々しさを増しており、赤いマントはさらに長く、銃剣一緒のスタイルが、それぞれ別になっており、左手には銃、右手には剣を握りしめていた。
エリザードのような大きな変化はないにしても、王と呼べるほどの威厳はそこにはあった。
アレクロアス一世は自らを『不の門』と言い放つ。
「正々堂々話すとしよう。私は黒騎士の門『不』である。この意味は戦えばおのずとわかるものだ。さて、手始めに……『黒き銃弾:殲滅』」
上空に向け一つ弾丸を撃つ。それは直線になり一定のところで止まる。その後分裂し春風霧火に向けて落ちてくる。難なく回避する彼だったが、その攻撃はそれだけではないのであった。
無数に落ちてくる弾丸は、命中しないと分かった途端さらに分裂し爆発が始まった。たちまち森は大きな爆発音とともに木々がなぎ倒しされ始めていった。
アレクロアス一世は何発も同じように撃ちまくる。誘導弾ではあるが、ある一定の距離まで行くと諦めて爆発する。しかし、敵の目的はその弾丸が当たることではなかった。
攻撃を避け続ける霧火はアレクロアス一世がまったく見えないところまで進んでしまった。しまった。そう思ったが矢先、上下左右すべての方向に魔法陣が展開される。たちまち囲まれたのだ。
後ろから次元の門が開きゆっくりと歩いてくるアレクロアス一世の姿があった。笑ったようにして彼に終わりと話すと、先ほどと同じスキルを発動する。次は前方の魔法陣に向けて……
一つの魔法陣に弾丸が一つ透過した瞬間全方向から拡散弾が彼に降り注ぎたちまち煙がその中を覆うほどにまでなっていた。
最後に塵も残さないとして、さらに追い打ちをかける。空間や攻撃それらをすべて受けた囲まれた空間を見てその後去ろうとして後ろを向き歩き始めるが……
「俺は終わってない!!これが本当の終わりだよ!!アレクロアス一世!!裁け!砕け!!破壊しろ!!グングニル!!」
「さすがだ!春風霧火!!まっていた!このくらいの強い存在を待っていた!!ふはははは!受けよう!それをそのまま受けてやろう!!こい!!きりかあああ!!」
シュン……・ズドオオオオオオオオオオオン!!
春風霧火はアレクロアス一世のはるか高いところに移動し、そこから右手に持つ赤く燃え、火の粉がまい、電気がバチバチと流れている大きな槍、額そして腕から血が垂れており、それが槍に触れるとさらに力を増しているような感じをしていた。
彼はそのまま槍をアレクロアス一世を狙い中心とし、約二キロほどにまで大きな衝撃を与えた。威力により木々は大災害が来たようなほどにまで揺れ、折れるものまで存在する。
大地がえぐれ岩盤が見えているところで着地する霧火はアレクロアス一世の方を見る。
岩をどかしボロボロになりながらも立つ敵の姿がそこにはあった。あんな大きな力を使っても倒れない黒騎士という存在に少しながら驚きもあるが、当然なのだろうと納得もしていた。
一瞬にして体のあちこちから煙を出しており、マントは破けつけていた髑髏もその見た目がわからないほどにまで崩れていたものもいくつかあった。
しかし笑っている。なんとも恐ろしいほどにまで楽しんでいたのだ。それを見て霧火は少しながら血を含んだ汗を垂れ流す。
さすがにまずいと思い無双竜を召喚し握り始める。それを見たアレクロアス一世も構え始める。瞬時に二人は移動し戦いが始まる。
アレクロアス一世は片手に銃を持っており、撃ちながら剣での攻撃をする一方霧火は刀一本での戦闘になっていた。遠距離の方がやはり速い。そんなのはわかりきっていたことだ。
後ろを取っても魔眼の力により、回避され次元に力によりどこからともなく攻撃が降ってくる。かわすのさえ一苦労な状態ではあるが、それでも攻撃を当てることができていた。
先ほどの攻撃が予想以上に響いたのだろう。出会ったときと比べると明らかにアレクロアス一世の動きは遅くなっていた。それでも余裕かのように笑うアレクロアス一世。しかしその言動何かがおかしいと感じる春風霧火。
次第に彼に対し疑問点が浮かび上がってくるのだった。
「お前……もしかして……」
「気づいたか……だがもう遅い!!」
失敗した……それをすべて霧火は理解する。なぜわざと攻撃を受けるようにして行動していたのかということを敵は受ければ受けるほど強くなるといった能力を持っている。
しかし、それが「不の力」と言われたら戸惑うところもあった。魔眼なのかもしれない。そうこうしているうちにアレクロアス一世が話し出す。
「簡単だ。そんな考えは一切捨てておけ、私の不の力は、この世の不可解なことそのものだ。貴様は言われないとわからないのだろう。仕方あるまい、私は他の黒騎士とは違いいくつもの特殊技能を持つ。一つはこの不の力であり、もう一つは魔眼の力だ。魔眼の力は、自分の思いの場所を見ることが可能であるとともに、うつすことも可能なのだ。不の力を使い自らやってくる事柄を魔眼の力により敵にうつすというもの。これで少しはわかったはずだろう。お前が普通の人であるのなら……もう死んでいるのだがな……だから私は面白がっているのだよ。春風霧火君」
「く・・かは……」
「今頃気づいたか……遅い、もうお前の負けだよ」
なぜ今までわからなかったのか? それはすべてアレクロアス一世の目論見でもあった。気が付いた瞬間に霧火は膝をつき吐血する。
相手を攻撃したことの何割かは自分に返ってきているのだ。黒騎士はただものではない。今まで戦った敵の中でも一番と言わざる負えないほどであった。
何がギルド戦だ。何が力を与えるだ。そんなの実践では意味がない。もしかすれば、グランエリアスに所属するギルド総出でかかっても倒せないのではないのか? そう思い始めようとした矢先に声が聞こえ始めた。
「マスター!!私を使ってください!!」




