第八世界 《黒騎士十八皇帝》
ドガアアアアアアアン!!
屋上にいるブラッディーメアリーに向けガウルトルが槍でのスキルを発動してきた。その場所は破壊され、メアリーとガウルトルは一番下の階まで下ろされる。
他のメンバーは咄嗟に一歩引いた状態になり、屋上にいる。
状況は言うまでもない。最悪だ。
『黒騎士十八皇帝十の門:死』の発動、その後に大きな一撃『幻絶病魔:死の楽園』この攻撃を必死によけ遠くまで来たのにもかかわらず、ここに来て前に戦った黒騎士序列十一番隊長ガウルトルがやってきたのだ。
エリザードの一撃を見ればすぐにわかる。一体でもまだ完全に倒すことができない。それなのに別の黒騎士の十八皇帝がやってきた。
メアリーはすぐさま戦闘体勢に入る。周りにいた黒芝悠雅、神代弥生、九頭竜サトルは上からその様子をうかがっていた。下手に攻撃するのも問題があったのだ。
神代弥生の狙撃は当たったのかはいまだにわからないでいる。たぶん当たってないのだろうと周りにいるものは考えている。
ガウルトルは前回同様馬に乗り攻撃を仕掛けてきた。馬と一緒が主の戦闘スタイルなのかはわからない。相手は、笑みをこぼし、その後にメアリーに向けて話始める。
「あの小僧はいないようだな。まあ良い。すぐに死なれては困るが、存分に相手をするとしよう。エリザードが力を解放しているということは、貴様相当な力を持っているのだな? 面白い! 奴はあのまま動けない! ならば、ここで手合わせ願おうではないか!! 」
「あなたと戦う暇はどこにもないのだけど、相手をしなければいけないというのなら、覚悟です」
ブラッディーメアリーはそういうと同時に大鎌を目の前で一回転させ、地面に突き刺す。その後彼女の周りからは禍々しい赤黒いオーラと鎖が周り始める。
まるで何かの力を解放するかのような立ち姿であり、一度目をつむり唱え始める。
「混沌なる力は闇を喰らい、邪悪なる世界を打ち滅ぼす。『呪血千年の浸蝕』」
メアリーは大鎌を構える体勢に入る。彼女を中心に鎖や赤く黒いオーラのようなものが一緒に渦を巻きやがて更なる大きな鎌へと変化する。憎しみや憎悪、殺意、それらすべてを捉えられるような大きな声を発し、前方に振り落とす。槍で防御をするガウルトルはもろにそれを受ける。
周りに血のようなものが放出され、海へとかす。しかし、それは攻撃とも捉えれるようなものへと変化する。近くにいた兵士も飲み込まれるほどの大きな一撃を辺りに轟かせる。
建物の屋上にいた三人はとんでもない攻撃により体勢を崩すが、建物ごと崩壊する勢いであった。危ないと判断したのか、黒芝悠雅はベヒーモス! と叫びどこからともなく大型バイクが登場する。
それに乗りサトルを右手で掴み発進する。神代弥生はまっていました! と言わんばかりに後ろの座席に乗車する。建物は音立て崩れていくが、スピードを上げ、そのままの勢いで屋上から飛んだ。
「あーーー!!まーーーじでーーー!!いーーやーーー!!」
「さすがにあの攻撃やばすぎだろ!!」
「助けいらなかったんじゃ……」
そのすぐ後ろから追ってくるかのように、血の海がやってくる。飲み込まれるとどうなるのかはわからないが、相当強力なスキルだということはわかる。
地面に着地し、さらに加速させ始める。時速がどれほどになっているのかは、わからないが、相当早いスピードでその場を去っていった。
次第に血は消えていく、メアリーは大鎌を横に振り払い、目の前にいるであろうガウルトルの方を見る。瓦礫に動きがあるために、まだ生きているということは見て取れた。
「まさか、これほどの力を持つとはエリザードもあのような状態になるのは頷けるな。一旦引くとしよう。また会おう!ブラッディーメアリー」
ガウルトルの姿は、相当ボロボロになっており、前回のダメージもすべてが癒えている状態ではないのが見て取れた。たまたま、メアリーを見つけて攻撃しに来たのだろう。そのように思えるような見た目であり、そこに大きな一撃を食らったのだ。立っているのがやっとの思いなのだろう。
ガウルトルの姿は一瞬にしてなくなり、ほっとするメアリーである。
だが、一番の問題は残されている。エリザードはまだ攻撃を続けている。三人が頼りにならないのなら、自分で何とかする。そのように考えた。
走りだし、相手の方に向かうが、魔法陣の中には入ることができない。
いくらブラッドの超再生の能力をもってしても、当たれば一撃死は免れない。足に一粒当たった瞬間にすぐさま切り落とす方法はあるのだが、雨のように降り注ぐこともあり、そんなことは通用しない。
「どけ……椿愛実……」
「その声は……!!」
『地獄の業火』
ズドオオオオオン!!
メアリーは言われるがままに咄嗟にその場所を避けた瞬間、一直線に黒い直線の極太レーザーが放たれた。勢いにより吹き飛ばされるメアリーは驚く光景を目にする。
エリザードの方に向かうその一直線のレーザーは当たったかのようにして大爆発を起こし、炎の不死鳥のような大きな姿が現れる。
衝撃波により、周りにある瓦礫が吹き飛ぶほどの威力。さらに飛ばされないように何かにつかむメアリー、次第に威力が収まり、レーザーの方を見るが、そこには何もいなかった。
確かにそこには誰かがいて、自分の本当の名を発したのだ。メアリーの本名を知っているのは春風霧火くらいなものだと考えるが、いないのだから確認のしようがない。
「オノレエエエエエ!!キサマラユルサンゾ!!」
「あ……」
「コノテデオワラス……ア……ウソ……コンナ……」
自分を察知したのか、目の前に瞬時に現れるエリザードの姿に驚き、咄嗟の行動ができずにいた。
あの一撃でも死なない。黒騎士という存在に恐怖さえ抱かざる負えないのだったが、目の前でエリザードは悲鳴を上げ、自分が砂のようになっていく姿に絶望したような行動を取っていた。
次第に足がなくなり、腰がなくなり、メアリーに右手を向け、憎んでいるようなまなざしのまま、固まりしまいには、風の勢いによって飛ばされるほどもろい砂と化していた。
大鎌を握りしめ、座りこんでいたメアリーは力がぬけるようにして、武器が零れ落ちた。
「勝ったの……?勝ったん?私は……ハァハ……」
自分自身を抱きしめ、感動に打たれた。今までにない敵、黒騎士と呼ばれる存在。
とりあえずは、今あった情報を回りに伝えるべくして、何かをしようと上がろうとしたが、腰が抜けていた。
すると、後ろから手を差し伸べる神代弥生の姿があった。
「ほら、おつかれさま。ようやく勝ったんだよ。私たちは!って私自身は何もしてないけど……」
「そのようですね……」
「疲れた……さすがにこんなのが何体もいると思うとやってられないぞ?俺としては!なあ?サトル」
「今は戦争中なんだよな。一応……」
その場にいた四人は笑顔になる。その後方からクロスが増援を連れてやってきた。
ひとまずは、グランドレジェンドの拠点場所にいくことになった。
黒騎士を倒した功績はとても大きかった。たった四人なのだから、それこそ驚きだ。
メアリーは一つの疑問『黒騎士について』をクロスやその場にいた者たちに話した。彼らがどのような存在で、どのような力を持ち、なぜ? このような戦いをしているのか? と言うことすべて。
グランドレジェンドは、その手のことに関しては、他のギルドよりも詳しすぎるくらいに知識を持っていた。それもそのはずである。彼らは何度も黒騎士と戦いをしてきたと話す。
当然ギルドが消滅するほどの大被害を食らったときもあったとのこと。
黒騎士は全体の軍は、何百や何千といったほどあり、それらに隊長が存在する。しかし、その中でも、黒騎士を作り、名を轟かせ、特別な力を持つ者たちがいる。
それが『黒騎士十八皇帝』と呼ばれる存在である。その名の通り十八体存在し、皇帝……歴史では、国を持っていた者たちのようであった。
この世に未練あるものや、強い憎しみや殺意あるものが黒騎士として復活するという。
どのような仕組みでそのようになっているのかは、いまだにわかっていないとのこと。しかし、彼らには共通点と言うものが、いくつか存在する。第一に生前は王である。そして、何かを復活させるために力を欲している。それが神の遺産を目的とした戦争だという。
彼らは神の遺産を使うことができない。それは歴史上では、神から天罰を食らったものが黒騎士になったなどの理由があるのだろうだ。これも詳しいことが何一つわかっていない。
だが、彼らは神の遺産を使うことはできないとしても、神の遺産の力を別に転換する方法はできると話す。
黒騎士は必ず倒さねばならない存在として、全世界の魔術連合では言われているが、今回の戦いもたぶんそうだが、すべての黒騎士を統べる王に会うことはなく終えるらしい。
そもそもいるのかどうかすら怪しいのだ。そこにサトルが『アレクロアス一世』に会ったことを話すと、周りにいた者たちが反応する。
その話を聞き、クロス含めグランドレジェンドの者たちは、何かを思ったのか忙しくなる。
現在目星ついている黒騎士の王が『アレクロアス一世』とのことらしく、サトルに質問攻めが続いた。ある程度のことを話すと、周りは静まり変える。何かを考えている雰囲気であった。
黒騎士のこと、仲間のこと、クロスはそれらのことをサトルたちから聞き、ため息をついた後こう言う。
「ひとまずは、君たちの仲間を助けることをメインとして考えよう。黒騎士はあとだ」
「助かります。クロスさん」
その場にいた他の三人も同様に頷く、黒芝悠雅と神代弥生も共にこれから戦っていくとサトルとメアリーに告げる。今まで敵だったものが、これからは仲間として一緒になったのだ。
力はサトルよりも強いし! と悠雅は言うもので、負けじと張り合う形になってしまう。それを後ろから見るグランドレジェンドメンバーや、神代弥生たちは笑顔になる。
春風霧火は生きている。水戸アヤトも周防和馬も……夜紅直哉も生きている。
そう考えた彼らは、これからさらに辛くなる戦いに備えて意を決する。




