第四世界 《 明日への思い 》
「破壊の一手を見せてやろう。《犠牲破滅弾》(サクリファイス・デル・カタストロフ)」
魔法陣によって飲み込まれた者達が、黒騎士シュビラの持つ擲弾銃に装填されるように光となって入ってくる。ある程度の力を貯め終わると背後に魔法陣が展開、強力な一撃を放つ。
擲弾銃から撃ち放たれる技は、先ほどよりも何十倍も大きなものであり、青黒い円になる。その後に玉の周りを回っているかのように青い炎の線が入り、周防和馬めがけて飛んでくる。
その玉の大きさは、彼をはるかに超える巨大なものへと成長していた。
先ほど放たれたダムドとは全く違う一撃。本能がそれを回避しなければ、一撃死と反応しだす。
しかし、周防和馬は深く呼吸をし、その後に受ける体勢に転じる。当然シュビラは、止めることができるはずのない攻撃だとして考えており、甲高い笑い声があたりに響く。
その場にいた誰もが終わりだと……終了だと察する。
周防和馬は一撃を受ける。手が焼け体が塵も残さず持っていかれるような感じがする。
それでもなお、勝たなくては、勝利しなくてはこれからも足を引っ張るだけの人生になってしまう。そう考えて今持てるすべての力を振り絞って全力で耐える。
「例えこの身が滅ぼうとも!必ず勝たなければ、俺と言う存在は!!終わってしまう!!負けるかああああ!!」
シュビラが驚く光景が目の前に広がる。なぜ彼は必死に耐えることができる? なぜ……? 疑問に思う点がいくつも存在したが、目の前にそれが起こっている。実際に起きているのだ。
初めから無理だと思えるような状況の中、それでも必死になって迫ってくる。
困難を回避し迫ってくる。攻撃してくる。黒騎士シュビラはそれがわからないでいた。
彼のどこにそのような力ややる気が湧きでて来るのか疑問で仕方なかったのだ。
そして……
「おおおおおお!!」
ドガアアアアアアアン!!
「まさか……!?」
「はぁ……はぁ……やったぞ……」
すべてを受け止めたのだ。回避ではなく防ぐ行動をし完全に止めたのだ。
一撃が止んだ後の周防和馬という男の顔は、こちらを思わず、恐怖させるような、にらんでいるようなこれからが本番だというような、そんな眼差しを向けていた。
その行為に驚き思わずシュビラは一歩引く行動をとってしまう。
しかし、和馬はそのまま力なく倒れこんだ。シュビラの勝利になったのだが、それでも勝利と言う答えを実感できずにいた。自分の一撃を防ぎ、一瞬でも膝をつかずしてこちらを見ていた。
それらの行動がいかにシュビラにとって異常なものなのかは、周りにいた黒騎士の兵士もわかっていた。
倒れた和馬のもとにイグニアシスギルドマスター「ベルゼプト」が駆け寄り、シュビラの方を見る。
戦闘モードに入る場面だったが、武器を消し、背を向け去っていく。
「そやつの名前を最後に聞こうではないか。生半可な戦士であろうが、私の一撃を耐えたのだ。」
「周防和馬と言う。彼に何かを期待しているのか?」
「周防和馬……目を覚ました時に伝えておけ、今度は本気の戦いをしようと……退却だ!」
黒騎士シュビラはそう言うとその場にいた黒騎士兵を連れて去っていく。
同時にベルゼプトと一緒に戦っていたアレクロアス三世も去っていく。そちらの方は両者相当ダメージを負っている様子だったが、シュビラにとってそんなの関係のない話だ。
去り際に少し微笑んだ黒騎士十五軍隊長シュビラ。
ベルゼプトは倒れている周防和馬を背負い、近くにある拠点に移動する。
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「くたばれ!!無限の鎖!!」
「おっと!お嬢ちゃん?そんなものなのかしら……あら……」
「ばばあ……ちょっと足元お留守ですけど?あははは!……死ね。《血塗られた大鎌》(ブラッディー・デスサイズ)!!」
「ぐああああ!!……何なのこの小娘……情報と全く違うじゃないの!!」
「ばばあ~ばばあ~あ~~ばばあ~」
国の中であろうか、それも城よりかは相当な遠さにブラッディーメアリーと黒騎士十二軍隊長「エスカリーテ二世」が戦闘をしていた。ブラッディーメアリーの椿愛実は、ワープ後すぐさまそこら辺にいる黒騎士の狩りを楽しんでいた。そこに十二軍隊長が現れ、戦闘開始したのである。
とてもじゃないくらい荒い戦いになすすべない状態にあるのは、なぜか十二軍隊長エスカリーテ二世の方であった。どこからともなく鎖が現れ、それに気を取られていると上空から大鎌が落とされる。
逆にそれを見て回避しようもんなら、前方から血による遠距離攻撃が降り注ぐ。今までにない戦闘スタイルに、どうしようもないくらいに追い詰められていた。
黒騎士十二軍隊長「エスカリーテ二世」。
使用武器は団扇のようなものであり、魔術による戦いが得意である。女性のようにスラーっとしているスタイルをしているが、見た目は他の黒騎士同様、髑髏そのものであり、いたるところに青い火がともっている。肩から腰まであるマントが特徴であるが、かえってそれを引っ張られ攻撃をされてしまう。
角は一つだが、それも攻撃の道具としてメアリーに遊ばれてしまう。
とんでもない存在が目の前に現れ困惑するエスカリーテ二世。遠距離を得意とする分野であるが、相手の早い動き&近距離の怒涛の攻撃になすすべない状態に落ちている。
いくら攻撃で相手を傷つけようが、そこが武器となりエスカリーテ二世めがけて降り注ぐ。
あまりにも攻撃をされなく傷つかなければ、自分で逆に自傷をし攻撃をする。
めちゃくちゃすぎる攻撃の荒し、行動が一つではないのが何より苦しい戦いの理由であった。
気が付けば息は上がり、ボロボロで疲れ切っている姿があった。
しかし、対するブラッディーメアリーの方は疲れを微塵も感じさせないような見た目をしていた。
「あの女何者なのかしら?あんなに無作為に動いているのに汗一つかきやしないじゃない!あ!!」
「ばばあ……みー……つけた……」
「いやああああ!!ガハァ!!」
メアリー自体を見失い探していた矢先、突然上から逆さになった顔が下りてくる。その後満面の笑みを浮かべ、みつけた。っと言い首元を鎖で縛る。
悲鳴直後突然息ができなくなるエスカリーテ二世。鎖を何とかして取り払おうとあがくが、目の前にいるメアリーは爆笑とも捉えれるほど笑いながら、首をしてめていく。
彼女の場合一度に絞め殺すことはしない。ある一定のところまで逝った瞬間緩め再度絞めるといった行為を繰り返していた。周りにいた黒騎士たちもそれを見て、かえって恐怖するようになる。
何とかして隊長を助けるべく剣を抜き突撃をするが、メアリーの周りからは鎖が無数に召喚され、それによって惨殺されてしまう。
もはやどちらが悪なのかわからない光景がそこにはあった。偶然その場所には黒騎士ではない兵も幾人か存在するが、メアリーの狂った立ち回りなどを見て、かえって触れないで一定の距離を置くようにしている。
もがき苦しみ、和らげられる。それが何度か続いた結果、エスカリーテ二世は目が上を向き口をパクパクとさせ始める。さすがに逝ってしまう直前だと判断したメアリーは首から鎖をなくす。
「なんのつもりだ……小娘……貴様は・・あ……あああ!!いやああ!」
「うるせーよ。ばばあ、ちゃんと悲鳴上げろって楽しくないだろう。おい!ほら!!」
メアリーの取った行動は膝をつき息を整えようとするエスカリーテ二世を頭を何度もサッカーボールのようにして軽く蹴る。それは、楽しんでいるようにも見え同時に物足りなさをメアリーはつぶやいていた。
水戸アヤトとともに戦ったガウルトルの方がまだ強かったとつぶやき、まだ遊びを続ける。
さすがに、何か面白いことがないのかと考えた結果……恐ろしいことを始める。
「えい!壊れちゃえ!!ふへへへ……」
「嫌ああああああああ角があああああ!!」
どこからともなく飛んでくる大鎌を右手で取り、逆向きにし、そのまま落とす。
角の根元の方に軽く落とした瞬間に、角は折れ地面に落ちる。それがとてつもない強烈な痛みだったのか叫びだす黒騎士エスカリーテ二世。その悲鳴を聞いた後メアリー自身に絶頂のような感覚が襲い。たちまち一言
「はあぁ……はああ~~気持ちい~!!」
「この女おかしい……どう考えてもおかしすぎる……人間じゃない悪魔よ!!悪魔よおお!!」
「どっからどう見ても悪魔はあなたの方じゃないですか。嫌ですね?私を悪魔だなんて」
「ひいぃい!!来ないで!!いやだ!!来るな!!来るな!!」
もうエスカリーテ二世には戦う本能はなくされており、それ以上に恐怖が湧きでてきていた。
何としてでもこの場を去る。そのことだけを考え、メアリーに来るな! と大声で発する。
そんなのお構いなし……それよりか、楽しすぎる行動と思い笑顔になり、歩くスピードよりも遅くじりじりと大鎌を引きずりながら歩いてくる。
「黒騎士も泣いたりするんですね。血というか、青い霧がそれを表しているみたいですね。」
「お前って……怖いわ……ほんと……怖いわ……」
近くにいた九頭竜サトル、なんと飛ばされたのがメアリーの近くで、悲鳴を上げている元に行くとメアリーがいて、状況に混乱していたらしい。
彼女のその後の行動は、それまた悲惨であり、泣き叫ぶエスカリーテ二世を無理やり壁に足でぶつけ、目をえぐったり、舌を引き抜いたり、腹部に無理やり手を突っ込み中がどんなのかを知りたく、引きずりだしたりと、サトルが止めに入らなければ、すべてのパーツを一つ一つのパーツとして分解するまでに至るほどであった。
止めに入ったのはいいが、それでもなお分解されず残っているのは頭部くらいなものであり、他は綺麗に整頓までされていた。
サトルと同じくして、グランドレジェンドのメンバーである。「クロス」もやってくる。
その後に黒騎士の遺体から何かわかることがないのか? とし、運んでいった。
現状休憩のようなことをしている。すべてメアリーの行動により、この周辺の敵は0に等しい状態にある。というよりかは、恐怖のあまり黒騎士の兵が逃げたす緊急事態が起きたのだった。
とりあえずは、拠点として設置した。
「君は、赤き死神だね?噂は聞いている。倒すのが通常なのだが、先ほどの戦いを見ると序列50番のロイヤルエデンでさえ、君を止めることはできないと思うから、何もしないよ」
「クロスさん……なんかすいません……一応仲間なんです」
「いやいいさ。仲間がいるのなら、そちらにいれば、何もしない。僕はグランドレジェンドのクロスです」
「俺は九頭竜サトルです。夜紅直哉組の人です」
そう話すと、クロスは直哉組のメンバーはギルドに加入していないことに気づき、戦闘が終わったら体験でもしてみないか? と誘いをかけてきた。メアリーの力が相当なものだと考えたのだろう。
終始彼女は無言である。何か面白いことを探しているかのような表情だった。
サトルは他の仲間にも話をしなくてはいけないと、勝手に決めるのは厳しいと答え。この戦いが終わったらまた来ると話その場を去っていった。
これからみなを見つけることをするのだが、ともにいるのがブラッディーメアリ-という一度殺されかけた人物がいるのは、何分辛いものであり、心の中で霧火助けて……と求めていた。