第三世界 《 自分の力 》
イグニアシスギルドマスター「ベルゼプト」
彼自身強靭な肉体強烈な力を持つとされる。別名「豪炎の獅子王」
防具など一切つけずして戦場にやってくるが、大体は肉体に傷一つつけられず勝敗が決する。
黒騎士十七軍隊長「アレクロアス三世」
禍魔の双銃「デスペラード」遠距離系統の武器を操りし者。
遠距離対近距離の戦いは分が悪いが、それでもなおベルゼプトは後方にいる軍勢何百ほどのものとともにかかってこいと話す。周防和馬は内心恐怖を抱いていたが、それでもなおやらなくてはならないと決心する。
最初に動き出したのは相手の軍勢であった。アレクロアス三世は傍観者としてその場に立ち、後方軍勢に指揮をだす。一斉に走り向かってくる黒騎士たち、冷や汗を流す周防和馬だが、ベルゼプトの方は一瞬笑顔になり、攻撃態勢に変わる。
「そうでなくては困る!!いくぞ!!《神の一手》(ゴット・ハンド)!!」
態勢を低くし、右こぶしを作り目をつむり、力を貯める。ベルゼプトの後ろに黄色い魔法陣が展開し、周りに風が吹き荒れる。ここだ! と思う瞬間に目を開け、魔法陣が徐々に高速回転しだし、勢いよく前方を殴る。すると、たちまち風と共に一直線の黄色のレーザーのようなものが、突っ込む。
その後の周りに黒騎士の姿はなく、全滅したと思われる。
その光景を見たアレクロアス三世と黒騎士兵は、驚きを隠せずにいた。隣にいる周防和馬も同じように思う。武具というものを一切使わず、一瞬だけ貯めた力を放出し黒騎士を物とも言わずして倒す。
ベルゼプトはとてつもないくらいに強い人。
次第に彼のようになりたいと和馬は思うようになっていた。その姿を見ていたベルゼプトは一言話す。
「お前もこの戦いで、このようなことができるようになる。まずは俺を見るのではなく、相手を見るがいい」
「面白いやつらだ。だとするのならこいつら雑魚に任せてはおけぬな。私が相手をしてくれよう」
アレクロアス三世は周りの不甲斐なさや、ベルゼプトの力に笑い。前方に出てくる。
すぐに出てくることに少々驚いたが、面白いとして戦闘態勢に入る。
相手がどのようなレベルのものかはわからない。それはこれから知ることである。
この勝負は必ず勝たねばいけないのは、その場にいた全員が考えていることだ。
アレクロアス三世は双銃をすぐさま、撃ちまくる。
無数にやってくる銃弾は彼らを襲うが、ベルゼプトの半ば強引な力により風を起こし、弾道の軌道を変え、傷一つ付くことなく終わる。
「どうした!あの天下の黒騎士様が、こんなものじゃないだろ!もっと本気でかかってこい!でなきゃ……」
一瞬の出来事であった。ベルゼプトは話の途中で瞬時にアレクロアス三世の目の前に移動し右手の拳を叩き込む。すかさず、双銃で防ぐがその衝撃波周りにまで響く。
その勢いに耐えられず、膝を軽く折るアレクロアス三世。まだまだとし、ベルゼプトは力を貯め腹部めがけて放つ。
ついに耐え切れず吹き飛び後方にいた黒騎士はボウリングのピンのようにして吹き飛ぶ。
威力はとてつもないのは誰が見てもわかることだった。隣にあった岩が粉々になるほどであり、それは衝撃であり、まともに受けたアレクロアス三世は、もしかすれば……と期待をする和馬。
遠くの場所から黒騎士が宙に舞う。その数は相当なものであり、そこからは黒く禍々しいオーラが見えていた。前方から現れたのはアレクロアス三世。先ほどは違い笑いながら歩いてくる。
異変には誰しもが気づくくらいである。その後恐ろしいことをしだすアレクロアス三世。
彼の周りは黒いタイルのようなものが敷き詰められかと思いきや、隣にいた黒騎士兵を恐ろしいことに食わせるような行動を起こす。黒いタイルに飲み込ませた? の方が適切なのかもしれない。
そのような行動の後、双銃は黒く光を放ち装填しているような音がなる。
右の銃をベルゼプトたちに向けトリガーを引く。
「《絶望のその先》(デスペラード・エルディエッセ)」
向けている方の銃の先に黒い魔法陣が展開し、勢いよく直線レーザーが放たれる。
魔法陣の大きさは彼の3倍クラスのものであり、そこから放たれるレーザーもスピードも威力も桁違いであった。ベルゼプトは四股踏みをし、その態勢のまま拳に力を込め、迎え撃つ。
両者の攻撃はぶつかり合うと同時に反発し合う。更なる力を増し、より勢いがます。
周りはさも当然のようにして木々が風にあおられる。周防和馬も飛ばされるかもしれないというほどにまで、強烈な衝撃が迫ってくる。
これが上級能力者同士の戦いであり本来の力と言えるものだ。
こんな戦いがこれから……というよりかはいたるところで今始まっている。実世界とは違った戦争。
一人いれば百人力とはこのことを表せるような感じがした。
両者は強い! 強すぎるゆえに周りはただ茫然と立ち尽くすのみ。ベルゼプトとアレクロアス三世は互いの一撃では無理と判断した瞬間、戦闘が始まる。
双銃を使い遠距離でぶっぱなすアレクロアス三世。ベルゼプトは回避し空中からの怒涛のかかと落としが炸裂するが、回避する。しかし周りの被害は尊大である。
何度もそのような場面が起こる。周防和馬だけではなく、黒騎士の兵士たちも彼らの戦いに関与するすべがなかった。ないというよりかは、できないのだ。したら確実にあの世生きになる。
下手に手を出しても足手まといになるのが、わかっていたのだ。
ベルゼプトとアレクロアス三世の攻撃は止まない。やむはずがない。両者はちゃんとしたスキルを使ってないからという理由もあるし。第一に体力や魔力の量が他と桁違いである。
周防和馬はこの戦いに何かを学ぼうとしてベルゼプトの方を注視し始める。
そんな時に最悪が起こってしまう。互いに拮抗し合う戦いの中加勢がやってきたのだ。
それは周防和馬の後方からくるもので、その数は前方にいる兵の何十倍も多かった。
「我が黒騎士十五軍隊長『シュビラ』曲がった正義は正さねばならぬ!!《地獄落とし》(ダムド)」
突然現れた黒騎士十五軍隊長シュビラ、三つの角が出ている鬼の骸骨をもようした見た目、青く光るマントが付いており、鎧はところどころ青く火がともっているが全体的に黒くいたるところに骸骨の頭部が描かれている。
周防和馬を見つけたと同時に持っていたガンブレードで魔術を唱え始める。
放った魔術は大きな青い炎の玉となり、和馬に向かって突っ込んでくる。両手で抑えようとするが、その威力に返って押されてしまい、一撃をもらう。
ナノバーストの力でさえも相当なダメージを負う和馬、これが本当の戦場だということを知り辛く感じたが、同じように戦っているベルゼプトの方を見て気持ちを改める。
簡単に吹き飛ばされる彼を見て、不満げに思い最後の止めとして放った。
「《地獄落とし》(ダムド)」
「負けるかああああ!!おおおおお!!」
今度こそはと思いその攻撃に立ち向かうが吹き飛ばされる。しかし彼は何度だって立ち上がる。それは今まで力なく助けられている者であったからこその行動である。
何としても負けられない! 今戦場には自分以外の仲間たちも必死になって戦っている。そう思うが、相手の攻撃に対しての有効手段が何もでてこない。
いくらナノバーストであろうが、何回もダメージを受けているとガタがでてきてしまう。何とかして持ちこたえてくれ。 そう思った彼はあることを思い出す。ベルゼプトの話した。相手を見る。
そのことを思い出してから目の色が変わった。
何度討とうが倒れない彼を見て不思議に思っていたシュビラ。
それもこの一撃が最後として話し標準を合わせ撃つ。
「終わりだ。《地獄落とし》(ダムド)」
「まだだああああ!!!」
大きな声で発する周防和馬。飛んできた弾丸を両手で同じように受けようとする。
つい先ほどまではこのままだと吹き飛ばされていたものだったが、彼の今はそうではなく固い意志がそこにはあった。守りたい者たちがいる。救いたい仲間がいる。それだけで十分だったのだ。
前を見るということは常に進むことであり、進まなければ仲間の元にはいくことができない。
敵を見ることは進むということと解釈したのが周防和馬の答えだ。
一撃を防ぐ彼を見て、何かが変わったと察するシュビラ。
「何をしようとしても無駄なこと。我が《禍魔の擲弾銃》(グレネード・デスペラード)の一撃をそう何度も防げるはずがない!!」
「俺は負けられない理由があるんだよ!!」
黒騎士十五軍隊長シュビラめがけて突っ込んだ周防和馬、さすがにそうやすやすと攻撃が当たるわけがないのだが、そのことは彼は十分理解していた。重い一撃を回避されたが、その後勢いを緩めず地面を殴る。それによって衝撃波がシュビラを襲う。
勢いに耐え切れず吹き飛ぶが、すぐさま体勢を整える。
一筋縄ではいかないレベルの敵が目の前にいるが、そんなのお構いなしだ。いつかは必ずこのような場面が来ることは知っていた。早かろうが遅かろうがの話である。
ついには一撃を受けず流すほどにまでできるようになった彼だったが、その一撃はぶつかった場所を見ると一目瞭然である。円状に大きな跡が残り周りに青い炎が小さくだが、燃えている。
そのような攻撃を相手は何発もしてくるのだ。ナノバースト状態だったからこそ絶えれたわけだが、これ以上は下手に受けることはできない。
かわすだけで相手には勝てないのは誰でもわかることだ。しかし相手は黒騎士の相当高い身分の者であって、手ごわいことはわかる。
威力を増し、スピードも上げる。そのことだけを考え始めた。どのようにすれば、相手に攻撃が届くのか? 衝撃波だけでは意味がない。それを大きな攻撃に変換しなくてはならない。
(もっと早く、もっと強く……)
「うおおおおお!!!」
ドガアアアン!!
「……!?グハァア!!」
気が付けば相手に攻撃があたり、重い一撃を与えている自分の姿がそこにはあった。
腹部に直撃し、痛そうに声をあげるが、霧となって別の場所に移動する。
この短期間で更なる強さを会得した周防和馬。シュビラも簡単には終わらないとそう考え始める。後ろにいた何百もの兵士の下に魔法陣を展開し、飲み込む。
その後に擲弾銃は力を貯め一撃を放った。