第二世界 《 絶望などない!! 》
「死者は0にはなりません。生き物が存在する限り永遠と増え続けるのです。これが私の力ですね。ふふふ……」
「なんとまあ……気持ちの悪い能力だことだ。」
サンタスは罵倒するが、大道寺翔は言われなれているのか全く気にもしなかった。
彼らの周りには大きな人の形をした人の集合体ができており、その大きさは10メートルを超えている。それが数十体も周りを囲っているからには、最悪もいいところだ。
死体を使い無尽蔵に魔力を得る《骸の力》
いくら水戸アヤトだろうが長期戦になれば不利に動いてしまうくらいに魔力の多さは異常だと察する。
闇には光を! との考えで光の大魔法を使いダメージを与えたが、死体に関しては無限にもなる数であるために、意味がない。一時的に消滅することは可能であっても本体に行かなければと考えるアヤト。
思考を巡らせある一つの疑問が浮かび上がる。
なぜ大道寺翔は、死者にだけ攻撃させ自分は動かないで傍観者としているのか?後ろで立っているだけの存在で、魔力を一点に集中し攻撃する。それも毎回ではなく先ほどが初めてだった。
もしかして、大道寺翔自身には……
水戸アヤトはそう思い、また新たな賭けに出たいと周りに志願する。今回の作戦はいたってシンプルであり、光の魔法を直接彼に与えるということだった。そのためには、周りにいる死体が邪魔である。
大道寺翔の一つの疑問……自身の能力は低い! そう考えたのだ。
周りにいたものたちは快く承諾すると同時に作戦が始まる。
「また何かをしようと……いくらやっても私には敵わないですけどね……」
六人は突っ込みアヤトを大道寺翔に当たらせるようにした。その無理やり過ぎる行動に驚く相手ではあったが、面白いと考え対抗しようとする。
しかし、彼らの力は凄まじく人を重ねて作ったゴーレムであっても吹き飛ばされるものであった。
一気に形成逆転へと変わり、死者を駆け抜けて大道寺翔に走っていったところ、目の前でアヤトは不思議な行動をとった。
なんと彼は目の前にしたにもかかわらず、竜刀を右に勢いよく投げ捨てたと同時に札も一緒に大量に投げ捨てる。周りはその行動をみて、血迷ったのか? と思っていたが、その後アヤトは一言大道寺翔に向かって言い放った。
「お前の本体はどこだ!!」
その言葉を聞いた周りも耳を疑った。一体彼は何を言っているのかと疑問に思っていたが、それもすぐにわかったことであった。アヤトは二つ目の神の遺産『流星歯車』を取り出し突き刺した。
その一刺しを見て後ろにいたサンタスたちは、一瞬喜んだが、アヤトだけは表情が変わらなかった。
「さすがは、水戸新の子孫ですか……確かあなたは陰陽師の人でしたね……やはりわかってしまうのですか……」
「あなた自身に生気がないのはさっきわかったこと、今このように突き刺しているが、とても軽いです」
「御名答、わざと自身の力を使わずして死者にだけ戦わせていたのですが、それには引っ掛からなかったのですね。残念です」
「当然それも考えたが、あなたを見ているとどうしても、それが罠だとしか思えなかった」
大道寺翔は笑い、霧となって消えていった。本体ではないことを表しているかのように消えていく姿にサンタスたちは悔しがっていた。
しかし、死者はまだ動いている。状況は変わってないとそう考えた彼らだったが、アヤトは印を結ぶ動作をしておりすぐさま術を発動した。
先ほど周りに散らばした札がいたるところで光死者一体一体に向かって光が突き刺す。
今彼がやっている技は、動きを封じるというもの。倒すのは無理な話なので一度撤退することを考えての術であった。サンタスたちを引き連れて城からでていき拠点としているところに走っていった。
それぞれのギルドが拠点としている場所は、そう遠くないところにあったが、一度にたくさんのことが起きていたため整理したく、どこでもよかった。
訪れた拠点は『星次ぐ人々』であり、歓迎されたのだった。
今はみなが仲間であり、誰が来てもそのように対応している。特にアヤト、クロイ、シロイの三人は先ほどの戦いでの功績が素晴らしく手厚い歓迎をされたのだった。
国の方には九頭竜サトル、周防和馬、ブラッディーメアリーが残っており、メアリーは大丈夫としても他の二人に関しては心配でならなかった。そして、夜紅直哉……自分を犠牲にし強制転移させたあと、生きているのかということ。心配な点は多くあったが、ひとまず体制を整えなければ話にならないとし休憩もかねての拠点だった。
「あなたが水戸アヤト君ですね。先ほどの戦い見事でした。お話はグランから聞いております。僕は星次ぐ人々のギルドマスターで名は『ロクス』と言います」
「こちらこそ、助けていただきありがとうございます。」
椅子に腰かけているところを、白い髪の青いローブに魔術師のような恰好をしていたギルドマスターが声をかけに来てくれた。当然なのだろう、言うても現時点ではみなが仲間であるのだから、心配してくれている。自分たちだけではなく、他の人も歓迎する。現実世界では見たことがない。
人種違ってもこれが普通なのかと思うアヤト。
その後ロクスは、同じように腰をかけ、アヤトと話しをし始めた。
どうやら神の遺産を複数持つ者は珍しいとのことや、戦闘技術は他の兵士とは別格であること上げての話だった。それに、現時点で夜紅直哉組というグループに入っているだけで、ギルド無所属である。
「この戦いが終わったその時、僕らのギルドに加入してはくれないだろうか?君のような存在が無所属なんてもったいない。」
「僕は他の仲間を置いて加入することはできません。その話は……」
「その他のお仲間さんも含めての話だ。夜紅直哉さんはとてもお強い方だし、そこにいるメンバーはみな強いはずだ。しかしあの人はギルドを作らないし、ある程度の力を与えると去ってしまうことでも有名なんだ。どうだろうか?」
「もしかすれば、そうかもしれないですね。戦いが終わっても生きていれば考えます」
アヤトがそういうと、笑顔でロクスは返答した。
ある程度の時間が過ぎてからアヤトは仲間を救出するとしてロクスに話をする。いくら骸の力と戦っていたとしても、他にも強力な力を持つ者は多い、したがってグランとマリアス、別ギルドのサンタスも一緒に同行することになった。
本来は黒騎士が相手なのだから、相当固めなければいけないのは言うまでもない。
屋敷で戦ったガウルトルのような奴らが多数いるとなると、仲間の生存を心配する他なかった。意を決し同じ六名で出発する。今回は前とは違い準備が十分完了して。
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周防和馬は現在生い茂る森の中で身を隠していた。
どうやら彼は、転移された場所が運悪く黒騎士の軍団の中であり、必死に逃げている最中であった。
目の前には無数の黒騎士たちが武器を持ち、和馬を血眼になって探している。あんなにも何か一つの存在を殺そうとするのは普通ではありえないが、黒騎士はそれをしている。それだけを考えても相当な者たちではあると確信する。
黒騎士たちがいなくなったとわかり、その場から離れようと動いた瞬間……
「みーつけた……ふははは!!」
「まさか!!ぐああ!!」
気が付けば背後にいたそれに肩を矢で刺されながらも、広い道に飛びこんだ。
さすがの大けがであるが、治療する場所はない。第一に矢が刺さったときどのようなことをすればいいのか普通ならわからない。
運が悪いことに和馬は、その道にでたときにすべてが絶望として脳内に描かれてしまった。
待っていたかのように周りに存在する黒騎士たち。
彼らに体を踏まれ、矢を抜かれる。激痛が走り声をあげるが、周りには誰もいない。その後剣を取り出し、首あたりに触れる。
終わりと思った瞬間、竜巻のような風があたり一面を吹かれ、その後一直線に別の道のようにして攻撃が炸裂する。その場所にいた黒騎士はすべてがいなくなっていた。その力の先を見るとそこには驚きの姿があったのだ。
「周防和馬、ここで負けては男が恥じる。諦めず最後まで戦うのが戦士!漢というものよ!!」
「あなたは!!異世界新規突入会にいた……」
「覚えてくれてたのは光栄だ。黒騎士たちにも名を教えなければな。俺はイグニアシス所属ギルドマスターのベルゼプトだ!!貴様なんぞ、素手でいいわ!!こい!!」
周防和馬を助けたベルゼプトは戦場でありながらも露出が激しい見た目をしていた。上半身に至っては赤を基調としところどころに黒のラインが入っている軍服を着ているのではなく、羽織っているだけで肉体が見えている。下半身は同じような色の服を着ており、ゲタをはいている。
髪は黒く、ところどころオレンジ色が見てわかるほど入っており、長いのか後ろで束にしてまとめている。髭は黒く肌の色がとにかく黒い。
日々焼けにいっているのではないのか?と思うほどである。
羽織っている軍服の後ろには、イグニアシスのギルドの紋章が中心に大きく描かれていた。
「周防和馬、お前はナノバーストを解放しろ、とんでもないやつが来るぞ。あとその傷も癒える」
そう言われナノバースト《暴走の破壊神》(アポリオン)を解放した。それを見ていたベルゼプトは、その見た目をすごく褒めてくれた。
しかし、まだ操れてないように見えたこともあり、この戦いで実際に操れるようにすると言葉を言い前方を見た。そこから現れたのは、黒騎士の軍勢であり、とても二人で対処できるほどのレベルではなかった。中心にはそのリーダーとも思わしき姿が目の前に立ち言葉を発する。
「我が黒騎士十七軍隊長アレクロアス三世、対象は二人か……すぐに倒れなければよろしいのだがな?」
「俺はギルドイグニアシスマスター、ベルゼプトだ。こっちは俺の弟子の周防和馬だ。てめーこそ!すぐに倒られては困るな?そうだな。後ろにいる兵士が一度にかかってこい!」
「その勢い素晴らしいことだ。そうでなくては困る。ならば望み通りにしてくれよう」
黒騎士十七軍隊長とイグニアシスマスターの二人の間で火花が散っている。巻き込まれるかのようにして和馬もいる。言われたようにアレクロアス三世の声とともに後ろにいた兵士はすべて突っ込んできた。
その数は、見ただけだと数百ほどのレベルになっている。いくら何でも、これらを相手にするのは分が悪いと考え一歩引いた周防和馬
ベルゼプトはそれを横目で見て一言話す。
「安心しろ、俺とお前の敵はアレクロアス三世だけだ。その他はただの雑魚だ。お前のその力なら十分だ!!俺は素手で十分だ!!」
その言葉を聞いて、和馬は心を改める。この人は本当に強い! そう確信し、彼も後ろばかりを見ていては意味がないと考え、迫りくる軍勢を殲滅すると決意する。