第六世界 《 真実の力 》
『アクエリアス・ブルー』に向かっている水戸アヤト
次第に焦りを感じ始めていた彼はどこか近道ができないかと道を外れ茂みの方から行くようにした。
国までの地図を持っており、別のルートから進んでいく。
するとある場所から声が聞こえてくる。止まり茂みに身を隠しながら声の方を見る。
そこにいたのは黒い鎧を着た者たちただった。
すぐにアヤトは彼らのことを『黒騎士』だと考え始めた。
これからを左右する大きな存在『黒騎士』どのように彼らが自分たちとかかわるのかはわからない
しかし、いずれやってくる運命というものであるため、どんなことでも見たり聞いたりすることは重要。
前方にいる黒い鎧を着た者たちは、どうやらアヤトが向かう『アクエリアス・ブルー』に関することを話していた。
「一刻も早く神の遺産を手に入れなければ、いけない。すぐに出発するぞ。」
神の遺産、彼らがそう口にした。出発の合図と主にそこにいた10人ほどの兵士は走っていった。
もしかすれば、もう国はすぐそこにあるのかもしれないと、ゆっくりついていこうとした矢先
後ろから何かが自分めがけてやってくることに気づき、すかさずかわす。
「何者だ!……!?お前は……」
「俺は終わってねーよ!!戦おうぜ?水戸アヤト!!」
「どういうことだ……」
後ろを見ればそこにいた人物は『氷道院海斗』であった。
あの戦いでは倒せなかったということである。
しかし、彼はどこかがおかしい状態であることは見てわかった。
目は赤く染まり右手は七聖剣を持つが、左腕は付け根から指先にかけて呪印が刻まれている。
前回使った能力《我流紫電》なのかと思ったが、色がまったく違っており、また違ったものなのかとアヤトは考えた。
「俺はお前を倒せればそれでいいんだよ!!いくぞ!水戸アヤト!!!」
「仕方ない、こうなったら……」
アヤトは右太ももらへんについていたホルダーから札を5枚取り出し海斗めがけて投げた。
その後左手で印を結び「爆破」と言うと同時に横に振る。
札は海斗の前で爆発する。その勢いで木々に住んでいる鳥たちは飛び立つ。
木々は倒れ、目の前は黒い煙が漂ったが、中心に輪っかのようになりそこから電撃が直接水戸アヤトに迫ってくる。寸前のところで、竜刀を召喚し防ぐ。
その後電撃は跳ね返った後近くの木に刺さり、一面に電撃を発生させた。
アヤトは勢いよくジャンプをし、かわす。
それを狙ったかのように次は3つの電撃を帯びた札が迫ってくる。竜刀で防ぐが、そのまま爆発する。
まともに食らってしまいそのまま地面に叩きつけられる。
まっていたといわんばかりに海斗は「レベル7雷電!!」を発動しながら突っ込んでくる。
「無属性魔法発動!!蜘蛛の巣!!」
「なに!?だが、それだけで止まるかよ!!」
海斗の前方に蜘蛛の巣が発生する。流星歯車の一撃を防いだ。
だが、彼の攻撃のスピードは今までの比ではなかった。
剣を地面に突き刺し、前と同様電撃を一面にわたらせた。
アヤトは無理やりにでも無属性魔法でワイヤーのようなものを作り木に縛り付けて、自分を引っ張った。
雷の速さはとてつもなく、追いつかれると思い地面めがけて「術式:烈火爆発」太ももにあるホルダーから10枚の札を取り地面に投げつける。
爆発しその勢いで空中に木の上まで飛び上がる。
彼はその時ふと気が付いた。前よりも体が軽かったことを……
好都合とし、札を5枚取りだし地面に向かって投げ呪文を発動する。
「魔法陣展開!!ブレイズストーム!!」
札は五芒星のように配置され、その下に赤い魔法陣が展開する。
その後巨大な炎の渦が地面めがけて発射される。
アヤトはそのまま無属性魔法でワイヤーを作り舗装されている方に向かって移動する。
炎の勢いで森は焼けた。さすがにダメージを与えれたと思うアヤトであったが……
「甘いんだよ……水戸アヤト……アハハ!!」
「く……」
その炎によるダメージを受けてない状態で表れた海斗に後ろを取られ、左腕で剣の一撃をもろにうけてしまう。苦痛の声を上げ、ワイヤーを後ろの木に巻距離をとるが、海斗のスピードはそれを超えていた。
よける瞬間海斗とアヤトの距離は10cmもなく、そのまま「レベル6雷電」と言い放つ、たちまちその間で電撃の放電のようなものが繰り出される。
まともにうけながら、ワイヤーに引っ張られ転がっていくアヤト
木に背中をぶつけ止まり、膝を付けながら立ち上がろうとする。
今までやっていたクエストの敵をはるかに超える強さ。
難易度ランクで言うのなら、彼は黒3ほどではないのかと考える。
一撃をくらわし満足そうに笑う海斗は、ボロボロのアヤトに歩いて向かってくる。
右手に持つ流星歯車は電気を帯びていた。近づいて切るのだろうが、アヤトは笑っていた。
「甘いのはお前の方だよ!!海斗!!」
「こいつ!また同じことを!!あああああああ!!」
アヤトは吹き飛ぶ瞬間地面に札を張っており、発動させた。
火の魔法を使い相手を包み込んだ。致命傷とまではいかないが、相当なダメージを負い膝をつく。
その一瞬の隙を見逃さず、札を5枚空中で横に並べ「光魔法:ライトムーブ」を発動する。
横に並べてある札の前方に魔法陣が5つ展開し、そこから光の矢が海斗めがけて積んでいく。
流星歯車で防ぐが2本ほど腹部と肩に突き刺さる。怒りそのままの状態で突っ込んできたが、刺さっていた矢はアヤトの掛け声とともに爆発する。
「くっそがあああああああ!!」
「まだまだ終わりじゃない!!風魔法:突風!地魔法:封じ!!」
海斗の周りで風が周り、地面が彼めがけて引っ付いてきた。
二重の攻撃にさらにダメージを受け悲鳴を上げる。
その後力なく倒れる海斗、アヤトはそれでもまだ彼を倒したとは思っていなく「六芒星!」と発し彼を束縛しようとした瞬間、それは一瞬にして砕け散る。
「さすがはあの水戸家かよ……異世界に来ても使いこなしてるじゃねーかよ……こんなんじゃー勝てねーのはわかってたわ。ハハハハ……アハハハ!しょうがねーな!ここからが本番と行きますか!!踊れ!歌え!破壊しろ!!《流星歯車のギアソード》レベルMAXだ!!」
「何かが来る……」
何かを解放し始めた海斗、札に手を置き待つ、下手に動けばこちらが返り討ちになると読んだからだ。
ギアソードの中にある歯車は全回転をし始め、音を鳴らす。
その後すべてのパーツが外れ、光となり、海斗に装備する形になった。
海斗の姿は、全身銀色に身を包みところどころ歯車が付いている。
顔は竜のようになっており、背中には大きな歯車が付いており、その両側から羽のようなものが生えている。尻尾もあるが、歯車を縦に合わせた感じの作りになっている。
「これが七聖剣の本来の姿だ。流星歯車は別名『機械竜』と呼ばれていてな?力を増幅させる。そんな神の遺産んよ!お前にはできねーだろうがな!!くたばれアヤト!!《鋼の流星》」
「く……がああああああ!!」
両手で力を貯め勢いよく放出しだした。竜刀で防ごうとするが、まったくできず。
そのまま受けるアヤト、木に背中を思いきりうち地面に叩きつけられる。
いくら魔法が自由に使えるようになろうが、相手はそれ以上になっていた。
前の氷道院海斗とは別の存在、左手の呪印は更なる力のものだと考えるアヤト
神の遺産をここまで使いこなす彼に驚きを隠せないでいた。
あのイーグル族の王でさえも、暴走させた神の遺産、それが経った数か月前に異世界に来た海斗がものにしている。
実際に来た時間帯は同じくらいだろうが、力の差は歴然であった。
今まで何もせず遊んでいたのが間違いだったと気づくアヤト
クエスト所でうけれるものというのは、大体は安全にクリアできるものだと今になって思う彼。
氷道院海斗はそれほどまでに力を欲し、アヤトを憎んでいると感じるのであった。
このままでは如月美音が危ないとそう思った彼は、何か方法がないかと模索する
「終わりか……?さすがにこの力を受けて生きていることが素晴らしいな。お前は異常なくらい強いが、同時に異常なくらいに周りに興味なさすぎるよな?お前が今までやっていたことはすべて、自分のためだ。結局俺と変わらない人生だったわけよ。」
海斗と同じ人生……
水戸アヤトはそうだと感じてしまう。結局自分の私利私欲のために行動する。
人とはそんな生き物である。ラビット族の宿屋の子、ネイも自分が辛いと勝手に思っての殺人だ。
今ここにいるのも、直哉の本来の言葉を無視しての行動である。
本当は霧火達を救いたいのではなく、自分を越されるのが怖くてしょうがなかった。
春風霧火には魔法と言う力はない、しかし同時に別の何かを持っている。
魔法を持たないものはそれ以上の特別な力を持つとされることが多い。
水戸アヤトには他とは別の魔法の適正は異常なくらい高く神の遺産も持っている。
しかし、目の前にいる存在もそうだ。神の遺産の前では、魔法など無力も同然。
いくら適正をはるかに超えるものだとしても、それが使えなければ意味がない。
心のどこかでアヤト自身は負けず嫌いというものが発動していたのではないのか?
それに気づき次第に竜刀から手を放す。
「これでお前も終わりだよ。水戸アヤト、今思えばお前の力は別のものに変換していれば、強かっただろうにな~?アハハハ!じゃあな!!あばよ!!アヤト!!」
そう海斗は言うと右腕からナイフが現れ彼めがけて突っ込んできた。
しかし……ナイフを彼は右手で受け止める。
木にもたれ座っているアヤトは次第に笑みをこぼしたあと、海斗に顔を向けて一言放つ
「僕は天才だ!!」
その言葉や表情を見て普通でないと感じる海斗だったが、そう思ったころには遅く
自分が吹き飛ばされ木に叩きつけられる。彼を見た瞬間さらなる驚きをする。
水戸アヤトは白い装束を付けており、いたるところに水色のラインが付いている。
髪は白く耳が出ている。尻尾が9本生えており、ゲタのようなものをはいていた。
どういうことなのかはまったくわからなかった海斗に一言アヤトが言う。
「君は僕には勝てないよ……」