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第三世界 《 もう始まっている 》

「あいつ暗くて何考えてるかわからないし気持ちわりぃー」

「お前……居たんだ。どけよ。」

「この世に幽霊や化け物が居たらお前みたいな見た目してるんだろうな」



 ――――――ごめんな……さい……-----



「また……この夢か……」



 いつものように起きいつものように活動する。

 そんな当たり前な日常があるにしても彼にとっての起きるという行為は残酷でしかなかった。

 かといって寝るということも同じく過去の記憶を呼び起こすものであり苦痛でしかなかった。



 重たい腰を上げ彼は振り返った。公園であったことなど含めてすべて。

 なぜか今誰かのベットにいて誰かの部屋にいることも理解できた。

 部屋……?ベット……?疑問に思うところが多々あり周りを見渡した。



「俺……女の子の部屋にいるのか……」



 突然起こった怪奇現象、彼は殺されることを覚悟し目をつむったのだが

 気が付いたら女の子の膝の上、状況に驚き気が付いたらベットの上

 混乱しないほうがおかしいレベルなことがこの短時間の間に起こっていた。



 自分はなぜここにいるのか、どうして無傷なのかがわからない



「そうだ……あの子……」



 彼を救ったであろう女の子、あの子は一体何者でそもそもなぜあんな朝に変なことが起こったのか?

 聞きたいことが山ほどあったが、まず最初に「助けてくれてありがとう」その一言を彼は言いたかった。

 女の子を探しベットから移動しようとした時に気が付いてしまった。



「なんだこれ……腕が……ああああああああ!!」



 彼の左腕は醜く歪んだ見た目に変化していた。

 言葉に表すことが不可能な状態にまでもなっていたその左腕、恐怖でしかなく、悲鳴を上げることしかできなかった。表せる範囲でいうのなら、皮膚の下にある筋肉そして血管が浮き出ている状態、謎の目玉が4つほど、かろうじて左腕の認識はわかるにしても、それを通常の腕として見ることはとてもできないレベルであった。



「大丈夫落ち着いて!気を確かに!!」



 するとそこに救ってくれたであろう、女の子が現れ優しく抱き寄せてくれた。

 彼は恐怖心と混乱で抱いてくれた彼女の胸で声を出しながら泣き震えていた。



 1時間ほどが経過したあとに彼はゆっくり離れ彼女の方を向いた。

「ありがとう」と言葉をつけ次に「ごめんなさい」と彼は言ったが、彼女は疑問の顔をしていた。



「俺を助けてくれたお礼となんか申し訳ないということ・・です……」



「謝られることはしてないけど、一人で公園の真ん中で倒れてたから、それは助けるでしょうに」



「公園の真ん中で倒れてた?確か巨大な怪物がそこにいてやられそうになって助けたんじゃ……」



 彼女は困った顔をしていたその後ため息をし、状況を伝えた。

 どうやら霧火は公園のど真ん中で倒れこんでいたらしい、なぜそのような状態になっていたのか?

 そもそもあの怪物自体何なのか?見間違え?でも妙に本物っぽかったけど……



 今咄嗟に腕のことを思いだしすぐ腕を見たがそれも元に戻っていた。

 彼自身日ごろのストレスから来るものだと今になってそう考えた。

 さすがにあんなもの現実ではありえないお話だよな……と少しほっとした。



 彼は安心しその場から去って家でくつろごうと考え歩いたが彼女に腕をつかまれた。

 内心驚きとまさか同い年くらいの子に腕をつかまれるなんていうことが人生になかったものだから

 ここで別の混乱が彼を襲った。



「君!名前を教えてよ。せっかくなんだし、私はすず、藍原すずよ。」



「春風霧火です……」



「いい名前ね~!もしかしてだけど、どこかであったことある?」



「あってたら覚えてますよ……あなたのような……」



 っと霧火はある程度のところまで言おうとしたが、なぜか恥ずかしくなっていうのをやめた。

 すずはそれを見逃さなく、顔との距離が10cmほどの距離まで近づいてきた。

 内心霧火は心臓が張り裂けそうなほどバクバクと脈を打っていた。このまま死んでもいいかもしれないと今まで生きてきた人生の中でここまで女の子と距離を近くしたことのない彼は顔が真っ赤になり口をパクパクさせ汗をかき硬直した。


 すると彼女は遠ざかりお腹を抱えて笑った。



「もしかして、こういうことされるの初めて?面白いね。」



 バカにされていたが霧火自身それ以上に驚きが強く聞いてすらいなかった。

 今までにないこと、避けられてきたからこそこのような場面になった途端どのようにすればよいのかわからなかった。そもそも女の子の部屋で二人しかいないのが何より状況が危ない


 そのことにも気づきよりいっそうと彼は恥ずかしくなっていった。



 ‐―――――――数時間後



 まさかの状況で硬直状態になり、そのままその場で座りすずが話しているのをただ聞いているだけで時間があっというまに流れてしまった。

 なぜ?周りのように避けないのかを今ふと思い出す。それを聞いてみることにした。



「なぜ?あなたは避けたりしないのですか?今まで避けられてばかりだったのでつい……すいません。」



「霧火君は辛い人生送ってきたのね。わかるわかる!でも君を避ける理由は私にはないし、第一に君のような男女二人になったのに襲わない方が驚きだよ。」



 襲う?それもそうだ。男女二人だけしかいないんだ。欲に忠実なら襲うのが確実だろう。

 だが彼にはその勇気もないし、第一に近づかれただけで硬直するような自分が襲えるはずがない。

 藍原すず……彼女とはもしかしたら初めての友達になれそうな気が霧火自身にはあった。

 最終的には付き合うということもできたらなとさえ思っていた彼である。



 気が付いたら午後の5時ほどになっていた。

 彼らの話はとても長く霧火にとっては初めてであり、まさかそれが女性だというのが驚きだ。

 最後に彼は帰る準備をしてその場を去ろうとし扉に手をかけた。



「もういっちゃうの?残念だなーじゃあね。楽しかった。」



「また会えるといいな……楽しかった。じゃあね。」



 一言そう言い彼はすずの家を出て自分の家に向かおうとしていた。

 ここで問題が起こった、帰る場所の方向がわからないのだ。ここがどこだかもわからない

 迷うのは一番危ないのでまたすずの家に行き帰り方を教えてもらおうと話に行った。


 彼女は笑いながらバカにして一緒に帰ることとなった。

 普通なら逆の立場なのに女の子に帰り道を教えてもらうことになるとは思いもよらなかった彼は恥ずかしくなっていた。結局公園まで連れて行ってもらいその後別れをしその場を去った。



 家に着いた霧火は今日起った出来事を振り返った。

 すると思う以上に楽しいことが多かった、またあの子に会えるかなと心で思い。

 その日は終わった。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 真実とは時に残酷……非情でしかないのが現実。

 あの子はどのようにしてこれからを生きていくのか楽しみですわ……

 さて……そろそろ始めましょうか……終焉の宴を……



 小さな鐘の音が暗い部屋の中で響き渡る。

 少女が楽しそうにその曲を聴いている。

 これから始まる物語をとても楽しそうに待っているかのようだ。



 少女に名前はない、実態すらあるのか怪しい

 虚無の空間に一人存在し一体何ものなのか?それを知るものはこの世にいるのかすら怪しい。

 一人ぼっちでいるのにも関わらず、とても楽しそうにしている。



 わかることとすれば、世界を見る力を持つということ

 少女はすべての世界を見ることができる。行くことができる戻ることもできる。

 アブソリュート、暁一族、水戸一族、神の遺産、少女はすべてを知っている。



 だからこそ結末さえもわかってしまう。

 そんな子が期待をし結末が見えない存在を探し楽しんでいる。



「そうだ。あの子にしましょ。きっと私を助けてくれるはずですわ。」



 少女は笑いながらそう言った。鐘の音とともに少女は消えていった。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 始まりはいつも唐突である。だから誰もが驚くのではないのだろうか?

 唐突であるからこそ楽しいと誰かが言った。

 でもストレスはたまると思う。日々同じことの繰り返しを生きていた俺は今日も同じことをする。



 朝起きてゲームして寝たくなったら眠る。

 学校というものは一応あるけれど、行ったとしても何も起こらないしつまらない授業が続くだけ

 あの生活を楽しいと考える方が逆に俺としては驚くことがある。



 それもそうさ。俺は小学校中学校で立て続けにいじめにあってきた。

 そんな環境の中で高校に行くという選択を当時の担任に言われた。「私立なら平気だよ。」

 鵜呑みにした俺は私立の頭の悪いところに通い始めた。



 始まって1日も経たないうちにそれが起こった。

 過去に何度も何度も何度も何度も考えたが答えは見つからない。

 性格が暗いからなのか?それとも、別の理由があるのか?



 結局わからないまま時間が過ぎてやがて登校するのをやめニートになった。

 親は両親とも帰りは遅いし、帰ってこないことの方が多い、俺の事情は知っている。

 立て続けにこんなことになるのがおかしいが、逆に今ニートできるからいいんじゃないかなーとポジティブになっていたりするけど、辛いものは辛い。



 窓の外を見てみると子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくる。

 俺はその小学生くらいの子どもたちの声さえも怖いと思うことが多い。

 結局このまま人生が終わるのかなと思い、楽しくないゲームをし日々を過ごしている。



 人ってある程度まで落ちると今まで楽しいと思ったことでさえもすべて楽しくなくなってくるものなんだぜ?すごいだろ!これ!……

 今日もゲームをする。楽しくないゲームを……ゲームの中でもなぜかソロプレイヤーのままだ。



 ソロが好きだからな。俺は……好きだからさ……



 現実は非常である。だが俺のような不幸ものがいるから幸福が訪れる人もいる。

 その代わりになれるのならいいのかなーって……



「お腹空いた……何かあるかな……」



 彼は冷蔵庫のところに行ったが中には何も入っていなかった。

 今日も不運の1日が彼を襲う。

 コンビニに行くときの横断歩道では影が薄すぎるがゆえに引かれそうなことも何度かあった。



 しかし彼は間一髪のところで助かる。それはもう何回もあったから覚えている。

 そう……何回も……何回も……

 コンビニで食べ物を買ったあと何もやることがないので公園へと進んだ。

 朝の10時頃なのに何もなく誰もいない公園のベンチに座る。



 日々を悲観し悲しく生きている彼はふと……現実に戻る。

 あれ……これ……どこかで……








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