第三世界 《 復讐の嫉妬 》
やってしまった大洪水……レベルの水魔法。
誰も予想しなかったほど強力な力にアヤト自身も笑うしかなかった。
ここは土下座してでも謝ろう……と行動をしようとした瞬間に蒼龍水無月がゆっくり立ち上がった。
「素晴らしいです!!なんです?その力は!!まさかここまでの魔術を使う人がいるとは!!」
「え……どうも……しかしこの一面は……」
「そんなのどうでもいいのです!他の力も見てみたいものですが、さすがに大きすぎるがゆえにここでは無理ですね。明日用事があるので一緒に来てもらってもよろしいですか?」
これまた予想しえない反応で驚いたが、ほっとした自分もいた。
もしこれが水以外の属性魔法だった場合怒ってたんだろうなーとは思っている。
ますます彼女のアヤトに対する興味は増し、次の日一緒に用事とやらに同行することになってしまった。
その晩は自分の部屋に戻り一通りのことを思い出した。
だが一番考えていたことは霧火たちの生存である。
彼らが高難易度のクエストをしているというのに自分は何しているのだろうとまた悩み始めた。
やがて朝になる。
言われたように蒼龍水無月のお屋敷に行く。
するとすぐさま準備を整え終わった如月美音と蒼龍神無月の姿があった。
「もう車は手配してます!」
(あ……そういえばこの世界車あるんだった……)
手配された車に乗りそのまま結構な距離を走った。
5~6時間くらいは経ってしまっただろう。気が付けば昼頃になっている。
それでもまだ東側の街『ルークスローレ』の中というのだから驚きである。
それほどにまで十二支獣は小さかったのかと過去を思い出す。
周りを見渡せば建物だらけの場所
まるで今いる場所が日本のように感じるアヤトである。
それを見た美音はアヤトと話し出す。
横にいた水無月やシロイは二人してこそこそ話している。
ゆずはは不貞腐れた表情で外を眺めていた。
車はさらに走り、やがて大きな公園の入り口に入った。
運転手が着きましたと言い、彼らは降りてからさらに歩いた。
そこはとてつもなく広大な草原であった。
見渡せば水平線が見えるほどにまで広い場所であり、本来ならところどころ遊んでいる人がいるのだが、今回は蒼龍家の貸し切りとしているみたいである。
そもそも何のためにここに来たのかは彼らはわかっていない。
そう思っていると水無月が本来の目的地まで案内するとして移動を開始した。
一歩あるこうとした瞬間アヤトは何かに気付く
気が付けば周りに誰もおらず、空が暗くなっていた。
あの時のと思った矢先遠くから炎が飛んできた。
すかさず竜刀を召喚しかわし防ぐアヤト
「素晴らしいな。さすが七聖剣の使い手だ。」
「お前は誰だ!!」
目の前には空中にさも地面があるかのようにいる男の姿があった。
黒いベンチコートのようなものを着ており、身軽そうな服装
髪は長く、ところどころウェーブがかかっており、右目だけ隠されている。
彼はアヤトを待っていたといわんばかりに話した。
「水戸新の生まれ変わりとして、貴様を葬るのが私の役目である。」
「お前もしかして……あの時の……」
「素晴らしい!さすがアヤトだ、あの時マウス族の城内で戦った私だよ。」
「僕はあなたを知らない。なぜ狙ってくるのかがわからない。」
そういうと彼は笑い、その後表情が豹変した。
怒り狂ったように言い放つ。どうやら実世界でアヤトのせいでずたぼろになったらしく
名は『氷道院海斗』と話す。
必死になって思いだそうとしたが、まったくわからないアヤト
しかしある一言により完全に思いだす。
「私はお前の能力により最下層にまで落とされた。あの如月美音ちゃんにもう少しのところだったのに!!貴様許せない!!殺す!!」
思いだしたが、逆にアヤトはため息をつく
氷道院家は陰陽師一家であり、水戸アヤトや如月美音と同じように幼少期からストレートに大学までいける場所に通っていた。
陰陽師と言う名では知らないものがいないほどの力を持っており、水戸新に教えていたという話もある。
現在でも相当な力を持っており、彼自身、勉強や運動神経もとても良く、一族としては誇りに思われていた子であった。
そんな彼も年頃である。彼は惚れている子がいたのだ。それが「如月美音」
成績としてはトップに君臨するほどの力を持つ如月美音が好きで仕方なかった。
彼はどうにかして気をひかせようとしていたのだ……しかし、彼のやったことは美音を怒らせることになる。
彼のやり方はとても卑劣であり、弱者は強者の言いなりにならなければならないと話、いつも自分の周りには人が多く存在していた。
親の力や名家の力をふんだんに使っていたのが海斗であり。よく裏で集団暴力の被害にあっている子がかなりの数あったが、報告してももみ消されることが多かった。
そんな野蛮である子が美音の美しさや誠実さにひかれたのだ。
しかし、如月美音はそれをよしとしなかった。彼女は小さいころ他と違っており、よくからかわれる対象になっていた。氷道院海斗も同じようにしていたのである。
「目が青い、髪黄色とかお前キモイな?いってみ?」
「え……」
その後周りにいた子たちも一緒になっていじめを始める。
裏でよく泣いており、物心ついたころからよく一緒にいたアヤトに助けられていた。
泣いていたら元気になるように励ましてくれていた。
アヤトは10歳ほどまで英才教育があり、父親のお友達欲しいか?の言葉により通わせてくれるようになったのである。
如月家と水戸家は古くから良い繋がりがあり、美音はよくアヤトの家に来ることが多かった。
泣いて顔を真っ赤にしてアヤトの家によく行き慰めてもらおうとしたのは彼らの秘密のお話として残っている。
そんなある日大事件が起こる雨の日普段と変わらず下校している美音を海斗たちは突き飛ばす。
そのまま道路に転がり、やってきたトラックにひかれるが、アヤトによって助けられる。
やばいと考えたのか海斗たちは去っていくというのがあった。
それから月日はたち中学生になり美音の劇的変化に惚れ、海斗はある作戦を立て正義の味方として美音を助けるように行動を起こしたが、過去の行いを今も覚えている美音は彼を怒った。
最後に言い放ったのは「アヤトが好き」と言う言葉だった。
それから彼はアヤトに大していじめを結構しようとしたが、水戸家にそのようなことはできない人が多かった。しびれを切らした海斗が取った作戦は喧嘩である。
どんなに勉強しても勝つことは不可能とされたアヤトに拳ならいけるだろうと考えたのだ。
しかし逆転された。それもいとも簡単にされ、周りにいた人に笑い物にされたのだ。
次第に憎しみへと変わっていき、何としてもアヤトを倒して美音を手に入れると考えたのである。
アヤトをそれらを思い出し、今でも恨むべき相手として考えたが、結局のところ戦わず先を急ごうとした。その対応に切れる海斗
「逃げるのか!おい!!お前……ふざけんなよ……」
「逃げるも何も美音を悲しませたお前に言えることは一つ……『お前は僕には勝てない!!』」
「ありえねーんだけど……?どういう意味かわからねーんだよ!!お前まさかこの世界でも自分最強と思っちゃってるわけ?頭お花畑かよ。見ろよこれが俺のこの世界での俺の力だよ!!」
【流星歯車のギアソード】
海斗の中心に突如として現れる剣
その形状は一般的なものとは全く違ったものとなっていた。
持ち手の中にいくつもの歯車が一つの枠に収まっており、剣と持ち手の中心には三つの大きな歯車が付いている。表面だと思われる方は一つの大きな歯車が付いている。
剣は二つが一つになっており、真ん中に歯車が付いている。
持ち手は一つだが剣は二本ついている奇妙なものがそこにはあった。
「見ろ!これがあの伝説の七聖剣と言われる『流星歯車のギアソード』だよ!お前だけが神の遺産所持者じゃねーんだよ。くそやろう。」
「こいつが……神の遺産持ちか・・しかも七聖剣……」
「どちらが強いかためそうぜ?ここで美音の取り合いしようじゃねーか!!ハハハ!!」
衝撃的な登場でもあり、衝撃的な瞬間でもある。
幸いこの世界に囚われたのが、アヤトだけだったのがよかったと彼自身思っている。
海斗は笑顔になり攻撃を開始した。
「レベル1烈火発動!!」
そう彼が言うと剣の歯車は動き出し表面だと思われる歯車の枠の中に「壱」という数字が表示された。
次第に剣の先は炎の渦が巻き、そのままアヤトに向かって投げ飛ばした。
渦の回転は進んでいくごとに大きくなりやがて、大きな竜巻に変化する。
予想外の大きさに前髪が少し燃えるが間一髪で回避する。
すかさず海斗は「レベル2流水」を発動する。
次は剣の先に水が円く溜まり徐々に大きくなり、投げ飛ばす。
その水は炎の竜巻を貫通し、アヤトに当たる。
竜刀である程度は防ぐがその威力が強烈なこともありダメージをうける。
流星歯車がどのような能力なのかをひたすら考えながら防御するアヤト。
「レベル1烈火」
また大きな竜巻の炎が繰り出される。
次に「レベル3雷電」と言い雷の衝撃波を繰り出す。
その両方の勢いがぶつかり更なる合わせ技が生まれる。
竜刀をそこまで知らないアヤトは必死に防ぐが吹き飛ばされる。
レベルによって繰り出される属性があり、その力を強化する神の遺産なのかと考えたアヤト
さすがに何回もダメージをうけてれば、いつかは死んでしまうと考え特効しだした。
あいにく相手は上空で突っ立っている。
ジャンプしても届かない距離にいる相手にどのようにするべきかを考えた。
難なく回避されることに腹を立て始めた海斗はついに無差別に繰り出すことを決意。
「レベル1烈火!レベル5無月!!レベル9雷電!!」
海斗自身の能力に関してはまったくであるために、アヤトに当たっても致命傷になるほどではなかった。
さらに攻撃を増す海斗についに必勝法を見つけたのであった。
その行動に海斗は思わず「うそだろ……」と発する。