第一世界 《 新たなる拠点 》
赤き死神討伐に向かう霧火達のことが心配であった水戸アヤト
その思いは一緒にいるゆずはやシロイも同じであった。
彼らはグループ結成後直哉に導かれるままについていった。
自分たちのいた国『グラン・エリアス』から相当遠い場所
『ルージュ・シュプレーター』と呼ばれる国についた。
そこも同じような作りであったためすぐに馴染むことは可能であった。
直哉はアヤトたちに向かって彼らのこれからについて話し始めた。
「これから数週間ほどここに滞在することになる。この場所はアヤトお前にとって強い思い出になる場所になるだろうな。水戸新に関することがこの国に多く存在する。それを調べるのがお前の目的とする。」
『水戸新』
水戸アヤトの先祖様であり、そのたぐいまれな才能によって一族をより強固なものとして歴史に残した人である。当時操るのも困難であった九尾を自分の力に世界を救った英雄として語り継がれている。
彼自身目指している存在であるから、その目標については同意をした。
しかし自分はそれだけでいいのかと問いをしたが、直哉曰く「お前の力と脳は別に修行をしなくても十分だ」と答えた。期待をしてくれるのはありがたいが、実際の戦闘で自分自身が役に立ったことはほぼないのことを思い恥ずかしくなった。
直哉にその後泊まる場所なども教えられ、ある程度の知識は教わった。
クエストのことやもしものことなど、それほどまでに考えている直哉に対し考えを改めなければとアヤトは思い始めた。
用事があるとして帰り、アヤトたちだけになってしまった。
まずは宿泊する場所を目指していくことにした。
異世界に来てから早数か月が経ちある程度のことは知り驚くことも少なくなった。
当然のように動物が二足歩行で歩いている。
当然のように空にはドラゴンが飛んでいる。
当然のように魔法というものが使われている。
実世界の中で長く生きていた彼は違和感を抱きはするが、この世界ではこれが普通なことなんだな。と考えてからは気にすることもなくなった。
慣れと言うものは怖いのだが、このくらいのものはかえって慣れてしまわないと非常識人というレッテルを張られてしまう。そうなれば戻れないんだしいずらくなる。
商店街につきゆずはが「お腹空いた」と話すものだから、ひとまず歩き食べのようなことをした。
串カツ、肉まん、団子、実世界と何一つ変わらない食べ物。
(豚や牛のような獣人?がいるけど、豚肉や牛肉ってどうなってるんだろう……この世界……)
ふと彼はそのようなことを考え始めたが、知らぬが仏、触らぬ神に祟りなし
知らないほうが何かと良いとして、できるだけ考えないようにした。
シロイやゆずはがお店のテーブルで何かを食べて休憩しているとき彼は近くを見渡していた。
やはり何一つ変わらない異世界
戦闘というものはあるのだが、それでも実世界と何一つ変わらない
実世界でも自分の住んでいた日本以外の場所ならいくらでも戦争が起こっている。
実際自分が遭遇した以上のことが実世界では起こっていたりする。
結局は異世界も実世界も問題としては変わらないと悲しんだ。
この国が稀なのか、他が異常なのか、獣人や人がたくさん存在する。
迫害というものもどこにもなく、分け隔てなく会話をしている。
中にはカップルも存在するのだ。そこらへんは混乱するのだが徐々に慣れていこうと思ったアヤトだった。
(ケモミミか……ある程度は人と同じだが少し違ったところがある……まるでゆずはみたいだな……はは……はぁ……)
そういえば自分の仲間にも同じようなのがいたと改めて思うアヤトだった。
自分の先祖様だと思われるゆずは、彼女の正体が九尾の狐であるが、血が繋がっているだけで本人じゃないというのが引っ掛かる。
しかし、数百年前の記憶がないというのが何よりの証拠なのかもしれない。
今はシロイと同じ大きさになっているが、力を解放すれば自分と同い年のようになりさらに使えば九尾の姿に変化することが可能。
姿形の変化があるのはこの際理解できるが、中身の精神年齢をも変化するのは欠損なんじゃないのか……?と我ながらひどいことを思うアヤト。
考えれば考えるほど変な方向にいく自分が恥ずかしくなった。
休憩は終わり街の観光もかねて歩き出した。
ゆずはやシロイの怒涛のはしゃぎ具合に彼は戦闘以上に疲れるものを感じた。
こっちいけば次そっちいく、休みが欲しいが彼らの笑顔には逆らうことができなかった。
気が付けば夕方でベンチで一人「つかれたー……」と言い休憩していた。
まだゆずはたちはお店を二人で回っていた。
あまり遠くにいかないだろうと勝手に思っての休憩だ。
いくら17歳で、人並み以上に体力あるアヤトでも疲れるほどに歩かす二人に驚いた。
もしここに霧火達がいたらもっと楽しいのだろうなと考えた。
自然と空を見上げていたアヤトは笑顔になっていた。
いつまでもこんな日が続けばいいとさえ思っていた彼だったが、空を見続けていると何か黒い物体が下りてくるのが分かった。
「え……なにあれ……」と言いよーく観察し始めた。
その物体は徐々にアヤトの方に落ちてくることがわかったが、気が付いたころには遅かった。
ベンチからすぐさま立慌ててたところ思いっきり落ちてきた。
ドッカーン!!
気が付けば目の前が真っ暗であったアヤト
手を使い今どこにいるのか、何があったのかと思いあたりに振ってみた。
すると一つのものに触れ、彼は思いっきり握って正体を確認しようとしたが……
「はぅ!!強すぎます……こんなところではずかしいですよぉぉぉ……」
「はぇ!?」
突然の声に困惑し、その触れてるものが異常に柔らかいものであったと気が付く。
「もしかして!?」と思ったころには遅かった。
視界に光が差し込んできたが、それも異常なことであり顔が真っ赤になった。
すぐさま起き上がり何が起こったのかを見た。
するとそこにいたのは巫女の恰好をしていた少女であった。
小柄であり、かわいい獣人の子であった。
茶色い見た目をしており、耳が垂れている。
円い顔に、円い目をしており、小学生ほどの身長や若さをしており、すぐにでも泣きそうな見た目でもあった。
さすがに今の一連のことを思い出したアヤトはすぐさま少女に謝った。
しかし少女は「やめてください……」と声を発したところをゆずはたちに見られた。
何をしたのか気になっていた二人に巫女の獣人の少女が話した。
自分が空から落ちてきたのが悪いのですと謝りながら泣いていた。
それを見てゆずははアヤトに怒っていた。
「まさか!旦那ちゃま!!ゆずは以外の女の子にも同じことをしていたなんて!!ひじょーしきです!!これはひじょーに不愉快です!!」
「いや……あの……はい……すいませんでした……」
何を隠そうゆずはとアヤトは異世界に飛んだばかりのころひと悶着があったのだ。
実世界で光に包まれながら逃がさないとしてアヤトは目の前のものを力強くつかんでいた。
それが異世界転移をした瞬間に何をつかんでいたのかを知った。
ゆずはの成長した姿の胸を強く握りしめていた。
それからゆずははアヤトを旦那様として呼ぶようになっていた。
同じことを巫女姿の少女にもしたのである。
顔面にお尻が乗りそのまま触れたのである。
隣にいたシロイはくすくすと笑っていた。
その後彼らは巫女の少女『 レイス 』に街のことを教えてもらった。
昔も似たようなことがあったなーとアヤトは思ったが、彼女は悲惨な運命をたどってしまったと後悔する。あれで本当によかったのかと考えていた。
今でもふと思い出すこと。
そんな考え事をしているとゆずはに大きな声で「旦那様ー!!起きてくださいー!!」と耳元で言われた。我に返るアヤト耳がジーンとしているが助かったのでよかった。
気が付けば目の前には大きな橋があり、その前には大きな和風のお屋敷が存在した。
何十階、何百階もあるだろう高層のお屋敷。
柱は赤く染まっており、自分の実家以上に素晴らしいものであった。
一応アヤト自身も大きなお屋敷に住んでいるが、それをはるかに超えるものであった。
周りには着物姿の獣人や人がいる。
いつの間にか別の世界に来た気分がしていた。
レイスに「地図に書かれている場所はここですよ!」と言われた。
そう言われると彼らはすぐに「ここが拠点になる場所か……」と思った。
どうやらそのお屋敷に努めているのがレイスみたいである。
そのまま中に入ってみるが、そこも綺麗な場所であった。
レイスに案内されて受付の方までいった。
その後彼女は仕事があるとして去っていった。
ある程度の話や書類を書いてから部屋を紹介される。
一人ひとりの部屋として用意されており、一般的な和室の一間だった。
妙に落ち着かないところではある。一間だというのに綺麗な部屋であり、窓の外には美しい木々の紅葉の景色が一面広がっていた。
この世界の四季がどのようなことになっているのか疑問である。
考えるだけ無駄であり、今は楽しむことだけを思えばそれでよいとアヤトは切り替えた。
レイスがいっていた『 ルージュ・シュプレーター 』
この国は東西南北四つと中心の大きく分けて5つの街で構成されている。
アヤトたちが来た場所は東側の街であり名前は『 ルークスローレ 』と言われ
和風の街がメインとなる都市である。ところどころに森が存在し、花見なども可能である。
一言で言うのならTHE・日本といった感じの作りをしている。
北側の街は『 ジュライト 』と呼ばれており、星を基調とした街が作らているそうだ。
西側は『 シュビナイツ 』作りとしては、色とりどりの街。
南側は『 プレーター 』と言われ、機械系の街になっている。
中央部分は『 タキスマニア 』と言われており、様々な種類のものが合わさっている。
なぜこんなにも実世界と変わらないのかと思ったのだが、どうやらこの国にも実世界から飛んできた人が多いだそうだ。
アヤトたちがいる『ルークスローレ』が特にそれが強い。
ようするに別名『和風の建築で異世界転生!!』的なものである。
なんとまあ素晴らしいとアヤトは思った。