第九世界 《 無力の力 》
黒騎士、赤き竜、死霊術師
アクエリアス・ブルーの国で大きな三つの勢力が戦いをしている。
クロイに霧火はそういうとそれぞれのことについて話し始めた。
黒騎士はその名の通り全身が黒く染めあがっている騎士であり、歴史的にも幾度となくその姿を現している。骸骨に黒い鎧を着せた姿をしており、それ以外の特徴というものはほぼない。
兵士一体でもその力はすさまじいものとされており、会えば死と語り継がれているとのこと。
赤き竜、別名『 ドラグーン家 』と呼ばれる竜の力を得ている一族である。
炎を基調とする魔法を使ってくることが多く、その力は山を吹き飛ばすほど。
実際の赤い竜をも使ってくるとの話もある。
死霊術師、異能技術連合が定める『 特殊技能書 』に書かれている力を持つ王がいるとされる。
破壊者の力や死へといざなう力、修復の力のようなものと同じであり別名『 骸の力 』
特殊技能の中でも珍しいとされる魔法を使える者。
その使い方は死体を使ったものであり、本人の魔術回路から発せられるものとは違ったものである。
他人の魔術回路を自分の者のように使い自分の魔法陣から放出する。
死霊というだけあって、操った人は死んでいるためいくら魔力を吸い取っても増え続ける。
永久的なものである。
しかし、欠点も存在する。魔力=体力と同じようなものであり、いくら死んでると言えど限界は来るものだ。吸い取られた側の人は徐々に細くなり、最終的には分子レベル以下にされるほどとなる。
現在国をそのまま結界の中に入れている骸の力を持つもの
クロイ曰く彼は一人である。現在のアクエリアス・ブルーにいる執事がそれにあたると話す。
勘ではあるが、彼だけ他の人とは違っていたらしい。
それを聞いて何が違っていたのかはサトル達にはわからない、クロイだけがわかる何かがあるみたいだ。
それらの話を聞いた一同だったが、いくらメアリーやクロイが強いからといっても相手がそれ以上を上回る存在である。特に注意すべき点はこの場所に神の遺産があるということ。
死霊術師を倒さねば国からは出ていくことが不可能。
倒しに行こうとするのなら黒騎士や赤き竜にぶつかる。
時間だけで解決することも考えたが、クロイがいつ赤と黒が大きな技を打つかはわからない以上
その作戦はよくないと話す。
彼らは考えたが最終的に出た答えは、死霊術師を倒す他なかった。
そのままあたりにいくことになり城内を走り出した。
目の前には死霊となった者たちが現れた。
罪のない人を殺めるのは心苦しいものであったが、クロイが「本来死であるべき存在を野放しにするのもよくない」と話し考えが改まった。
しかしいくら切ろうが傷は再生し襲い掛かってくる。
殺しても殺してもよみがえってくる。キリがないとして先をどかしながら進んでいった。
クロイたちが王と話したとされる部屋の前につく。
彼らがそこをあけ中に入った瞬間……場面が変わっていった。
そこはサトルたちが入ってきた場所ではなく、まったくの違った場所。
門から王の椅子の前まで赤いカーペットが引かれており、左右には5本ずつ柱が立っている。
2回もある作りで、外を見渡せる窓はない。王の椅子がある周りは大きなステージのようなものがある。
先は暗く見えない。驚いた表情で彼らはそこを見渡した。
自動で部屋の扉が閉まる。
とてつもなく大きかったその部屋が突如暗くなり、壁一面青い炎がたかれ始めた。
カーペットの左右の端にも青い炎がたかれ始め、霧火とメアリーは二人して「黒騎士」と小声で言う。
「まさか、彼らがやってくるとは思わなかったな……」
「お前は誰だ……」
前方にある黒い場所から男性のような声が聞こえてきた。
すかさずクロイが反応すると笑い、説明をし始めた。
すんなり説明を始めるものだから、彼らは何かがあると思っていたが「何もないの」の一言を付けた。
「我らは《黒騎士 ナイトメア・ナイト 》その王である私の名は『 アレクロアス一世 』」
その後彼は霧火達の知りたかったこと、どうしてこのような状態になっているのかを話し始めた。
一体何者なのかもすべてを彼は語りだした。
どうしてそのようなことを言うのかは謎であるが、それも次第に語り続けていく。
ノヴァに選ばれし者達、それは神の代替えではなく
ノヴァ本人の新しい器として欲しかったと語る。
アレクロアス一世はこの場所から動くことは不可能とされ、その後ろをノヴァとの鎖がなされている。
これをしたのは彼らではなく、また別の存在である。
黒騎士の数は何万という軍勢を率いており、各々にリーダーが存在する。
そもそも彼らがこの部屋に訪れたのは、アレクロアス一世の選択であった。
霧火なら、この鎖をほどくことができると確信したからだそうだ。
春風霧火の本来の力は《 無力の力 》と話した。
それはありとあらゆるものをなくし自分に吸い込ませるほどの強力なもの。
クロイでさえそれを聞いたとき言葉がでずに震えていた。
彼が今までの人生不遇であったのがこの力によるものであった。
周りの悪いことを自分に取り入れるような力の発動がなされていたと話す。
したがって、その力があればどんなものでも自分のものにすることが可能とし、方法次第ではあらゆるものを無にすることが可能である。
とてつもない強力な力。
それを抑えるために一人の存在が霧火の中には存在する。
《 破壊王の力 》とされるそれは、触れれば消すとするもの。そもそもなかったものとする。
今まで霧火が死んでいたことは、すべてなかったものとしもとに戻ることをしていた。
首が取れようが、腹部を剣でさされようが、それをすべてなかったものとし復活させる。
《無力の力》は生まれ持ってのものであり《破壊王の力》は『星破壊者』と呼ばれる存在の左腕がそのまま霧火に宿ったとされる。それは無力の力が発動し、吸い込まれたのだそうだ。
いくら破壊王の力とさえも、無力には勝てない。
それほどまでに強大なものがあるのが春風霧火には存在していた。
通常では特殊技能の存在を知らないまま人生を終わることが多い。
春風霧火が異世界転移をした理由はすべて『ルミナス』の存在が大きいとされる。
対する水戸アヤトに関しては『星破壊者』によるものと語る。
とてつもない情報量に彼らは言葉を発することができなかった。
霧火は自分の世界にいた少女は誰なんだ?とアレクロアス一世に話した。
それが『 ルミナス 』と話した。クロイとシロイそして、うちに眠る少女この三人が一つになりようやく『ルミナス』と言う存在に変わる。
「どうして……そこまでの情報を教えるんだ……」
「黒騎士は無駄な争いはせず、知らない者には真実を話すのが私の考えでね。第一に君のような存在を欲しかったのだ。無力の力ほど強力なものはないだろう。話したんだ鎖を切ってもらえるかな?」
自分のことやその他の真実を彼は受け止めたが、情報量から相当なものとして悩んでいた。
その前にここまでのことをしてくれたアレクロアス一世に感謝をしなくてはとして鎖を切ることを話した。椅子に右手を触れるだけでよいと話すが、最後に一言とんでもないことを言い放つ。
「お前が自分自身で力を発動させた場合、その力により飲み込まれる可能性は100%だが、それでも良いか?」
「突然嫌なことを言うのですね。しかし、恩は返さなければならないです。いきます。」
そういうと深い深呼吸をし、右手を椅子に近づけた。
パリン……・
小さな窓ガラスが割れる音がした。鎖ははずれたのだろう。
何も起こらないと思い後ろを見た霧火の脳裏にとてつもない情報量が入り込んできた。
強烈な頭痛が起こり、頭が割れそうなものだった。
過去の話、今の話……たちまち痛みに耐えきれず叫んだ。
「あああああああああああああ!!!!」
視界に入るものもそれらの場面。
気が付けば自分が死んだとされるシーンに変わっていた。
それを見てすぐさま霧火に頭痛とは違った激痛が走った。
毒によるものである。スネーク族の王のもので、内蔵系が悲鳴を発しているのがわかる。
うずくまるがそれでも痛く、えぐり取られているように感じた。
頭痛や内臓の痛さから、次に来たのは首や剣に刺された体の部位である。
なぜこのような激痛がやってきたのかは、すべて破壊者による『なかったことにする』という力が発動したためだ。しかし、今の霧火は無力の力を使ったことで、今までのすべての感情や痛みがやってきたのだ。それはいくら破壊者であっても防ぐことは不可能。
視界にうつるのは無数の血
実際の体に何が起こっているのかは、わからないが霧火が今見えてるものは当時やられた傷であった。
ある程度の時間が過ぎようやく痛みから解放された。
そのころには彼は動けない状態であった。
体は痙攣をし力が出せない。視界が薄くなりやがて……
――――――真実を知ったみたいだね―――――――――
「俺は……どうなったんだ……」
―――――――どうなったも何も君はついに目覚めてしまった――――――――
「無力の力か……これからどうなってしまうんだ……俺」
――――――――どうなるもこうなるもすべては君の選択だある程度はこちらからも制御するが無理なものは無理だ自業自得だよほんと――――――――
デスはそのように話した。
本来の自分の力だが、強力すぎるがゆえに封印される。
自分自身で解放したということはすなわちこれからが本当に最悪なことが起こる。
制御しなければならないのだ。
神の遺産でさえもうまく使いこなすことがあまりできないのにそれ以上のものをこれからは扱う。
そのまま何も考えず、彼はゆっくりと目を閉じた。
《無力の力》
それはまだ新しいとされる力であり他のように情報がそこまでない。
歴史上でも確認された唯一とされた存在は『アブソリュートのゼロ』のみとされる。
その力で人々を救った英雄だが、人々を恐怖に陥れた悪魔とも語られる。
その力を無効にすることはほぼ不可能とされる。
特殊技能書にも詳しいことは書かれていない。
存在があるとされるのみであり、噂では使用者は飲み込まれて死ぬとされる。