第二世界 《 最悪が解ける 》
ある少年はとても頭が良かった。良すぎるがゆえに周りからの期待や嫉妬は日常茶飯事だった。
それでも彼は何も考えてなかった。いつも通りであったがゆえに別に考える必要性がないのである。
日々人生を謳歌していた彼は不自由ない生活に対して幸せだと考えていた。
親は市の会長を務める人であったり家が神社だったり、色々な方面で強かった。
一部では『水戸一族』なんか言われて彼は困っていたりする。
先祖代々続く水戸一族はやはり万能でなくてはならないと父親は語っていた。
同じくして隣にある『如月一族』も似たような感じではいるが、水戸と比べてしまうと小さくなってしまうが、過去に鬼について研究していたがために力としては相当強いものはある。
如月家の血には鬼の血が流れているといわれるほどだったりする。
したがって、普通の人よりも体術剣術に優れていたりする。
それを超えるのが水戸アヤトであるから、周りも驚きを隠せないでいる。
中にはあの「水戸新の生まれ変わりなのでは?」と言う人もいるが、彼自身に九尾の狐を操る能力もないし陰陽師としての力もない
17歳にしてそのような力がないとなると、やはり生まれ変わりではないのかもしれない。
水戸新は100年も前の先祖様である。今いる市を守り国を守ったという英雄である。
彼が世界を守り救ったという噂はその市にいる人々はみな知っている。
水戸新は6歳のころから能力が開花したとされている。
10歳のころには大人顔負けの能力者として伝書には書かれている。
アヤト自身もそれほどの天才と比べるとなんと自分はちっぽけな存在なのだろうと悲観することが結構ある。上には上がいるということを彼自身楽しんでいたりもする。
彼の神社では半年に1度ほど九尾石と呼ばれるところで祈りを捧げる儀式のようなものがある。
これは先祖様がこの世を救った感謝としてのことだったり、はたまた願いを叶えてほしい人がやってきたりと、さまざまである。
実際に願いが叶った人もそこら中に存在するので、半年に1度のこの祭りは水戸家は大忙しだったりするが楽しいことには変わりないのである。
彼らは最後に一斉にやるのがこの祭りの最後である。夏と冬の二つに行われる祭り『平和感謝祭』と呼ばれ広く知れ渡っている。
九尾石自体は5~7メートルほどの大きさになっておりその周りを半径3メートルほどを立ち入り禁止エリアとして線引きしている。
九尾石に触れるとかえって悪影響ということがあるためにそのようにしている。
盗みや破壊工作などをする人もいるにはいるが、なぜかしらそこからどうやっても動かすことができず
破壊しても次の日には治っている不思議な石である。
なぜ?九尾石と呼ばれるのかは、水戸新が九尾の狐を封印した際に用いたものとして語り継がれている。
世界を恐怖に陥れた九尾の狐を新が討伐し封印した。
その後強力な力によりそこに留めたとされている。この現代で語られている水戸新の存在は語りつくせないほどのものである。
大洪水や大津波が起こった際に止めた話だったり、大火災をものの半日で消し飛ばしたり
ぼろぼろの街を1日足らずで一人ですべて直したりと相当な功績がある。
一番英雄として崇められている理由としては、国を破壊し自分らだけの理想の世界を作るとしてやってきた『暁一族』彼らを倒したというのが『水戸新』とされている。
これが新を英雄にした理由の一つであり、水戸アヤトも新に関しては尊敬する存在しとして崇めている。
一番彼がなりたい存在の水戸新だが、存在が大きすぎて果たしてなれるかどうか悩む日々を送っている。
しかし、親や親戚や街の人からは絶対になれると期待されている。
彼自身うれしいことではある。より知識や技術を会得し一歩でも早く近づけるようにと日々努力をしている。天才ゆえに悩むこともあるわけである。
彼は毎日寝る前に九尾石の前でおやすみと一声かけて寝に入る。
これは小さいころからやってきたことであるために絶対に欠かせないものである。
今日も同じように挨拶して自分の部屋に帰ろうとした途端に
「待ってください……」
後ろから何やら少女のような声が聞こえてきた。
まさかと思い九尾石の方を見てみると、それは光を放っていた。
周りにもわかるような光なのになぜか、誰も起きようとしてこない。
とてつもなく神々しい光の中から誰かの姿が彼には見えた。
「誰だ!君は!!」
まぶしい光の先に声をやったがそれどころではないことが起こってしまった。
グガアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!
今まで聞いたことない叫び声ような声が後ろから聞こえてきた。
するとあたり一面は気が付いたら霧ようなものが覆っていた。幸い膝当たりのところまでだったので前方の視界は暗いながら見えていたが、彼は目の前にいた者を見て驚いた。
体長5~7メートルもあろう巨体がそこには立っていた。
人が笑ったような顔をしており、体格は毎日筋トレをしているほどのものであった。
とてもじゃないが勝てる相手ではないが、彼は戦闘態勢に入った。
なぜならば本能がやられると察したからだ。
大きな怪物は彼めがけて突進してきた。すかさずよけたが、怪物が狙っていたのはアヤト本人ではないことは一瞬にしてわかった。九尾石の方に体当たりした怪物はそのまま謎のしびれが起こり10メートルほど吹き飛ばされた。
すべてが現実とはかけ離れている中で彼は冷静を保つことだけが必死であった。
今の状況をどのように理解すればいいのか悩んでいたが、それはすぐに解けた。
九尾石の方から声が「 札を取ってください 」としたのだ。
アヤトは必死の思いで札を取ろうとしたが、そこで急に現実に戻った。
九尾の狐は街を破壊した存在、そんなものの封印を取ってしまっていいのか?と。
目の前にいる怪物は怒り狂いアヤトめがけて突っ込んできた。
笑いながら突進してくるものだから、今まで見たホラー系統のものの中で一番怖いと思いながら
必死のだった状況の中札をはがした。するとたちまち光が放つと同時に目の前がとてつもないくらいに明るい世界にとんだ。なすすべもなく光に包まれて消えた。