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第六話

 どうやら、レアちゃんは俺が身体を貸している間、対価としてステータス画面を見せることにしたようだ。

 今、俺の前にはレアちゃんがミリーちゃんの状態を見抜いて作ったステータス画面が表示されている。

 もちろんレアちゃんと共有する視界にレアちゃん自身が魔力で描いたもので、実際に実体としてウインドウ画面が出ているわけではないし、ステータスがあるわけでもない。

 所詮このステータスは、ゲームの雰囲気を楽しむためのものだ。

 しかし。



【名前】

ミリー


【能力値】(一般人の最低値は1、英雄の最低値は100)

レベル:1

体力:1/1

マナ循環力:1/1

筋力:1

器用:1

敏捷:1

魔力:1

精神:30

運:-10000


【種族】

人間


【クラス】

放尿士


【スキル】

『恐怖耐性Lv1』『闇属性特殊攻撃Lv1』『バーサーク』


【備考】



 何かスキル増えてるしステータス上がってるよオイ。

 そして相変わらず運がひでぇ。

 あとクラスが激しくおかしい。なんだよ放尿士って。そりゃユニークなのも納得だよ。こんな職業持ちが何人も現れたら腹筋が崩壊する。あとこの世界の常識を疑う。

 闇属性特殊攻撃ってもしかして放尿のことか。こう書くと格好良いな畜生。

 うん。バーサークもまさにその通り。

 ミリーちゃん街娘らしくそこそこ垢抜けてて可愛いんだけど、常時目のハイライトが消えててえへえへ笑ってるからな。

 しかもいつ出るか分からないお漏らし付き。

 おむつが必要だ。

 布製でいいからおむつってこの世界にもあるのかね。

 妙齢の女性におむつ穿かせるとか背徳感が凄いが、そうでもしないと漏らして小便撒き散らすんだから仕方ない。

 地味に以前のシステムメッセージで表示された数以上に精神が上昇してるのは、ずっとレアちゃんの近くにいるからか。

 間違いなく一般人だろうし、初期値は他の能力値と同じだから、結構増えている。

 でも精神ばかり上がってもなぁ。


「む。こんなところにいたか」


「二人とも綺麗に木に引っかかってますね。あはははははは! 上からおしっこ漏らしちゃえ☆ じょばー! じょばー!」


「ただ殺すのも芸が無い。かといって逃がす道理もなし。ふむ。どうするべきか」


「とりあえずボロボロになってる服を脱がして全裸にしましょう! 辱めて魔王様に反抗する心を折るんです! そしたらこの天使たちに、滑稽なリンボーダンスを躍らせてやりましょう!」


「それは最高だな! 良い酒の肴になりそうだ!」


 ……さて、そろそろいい加減半透明なステータスウインドウの向こうで馬鹿やってるレアちゃんとミリーちゃんに突っ込みを入れようか。

 何やってんだそこの変態尿漏らし女!

 あとレアちゃんも止めろよ! 敵とはいえ可哀想だろ!

 そもそも神がミリーちゃんにならともかく、何でレアちゃんにまで天使を差し向けるんだよ。普通差し向けるなら勇者だろ。


「それは我もまた元々神だったからだな。堕天し、魔神なった後で大魔王になったのだ」


 つまり、レアちゃんは魔神兼大魔王ってこと?


「そういうことになる」


 ……人類側、どう足掻いてもムリゲーじゃね?


「その通りだ。現実問題、我は今まで命の危険を感じたことは無い。我を今の時代に飛ばしたのも、あくまで問題を未来に先送りしただけに過ぎぬ」


 俺、レアちゃんの前世で良かった。人間として転生してたら終わってたわ。

 その時、ぴくりと天使たちの身体が動いた。


「ふむ。そろそろ目覚めるか。ちょうどいい。前世の我よ。面白いものを見せてやろう」


 レアちゃんが呟いた瞬間、俺の視界の端に【システムメッセージ】という文字が出て、ログが流れる。

 いつもの如く、俺が事態を把握し易くするためのレアちゃんのサービスだ。



【システムメッセージ】

大魔王レアがユニークスキル『世界の終わりまで○○日』を発動しました。

大魔王レアはユニークスキル『ラストボス』を獲得しました。

大魔王レアはユニークスキル『魔神の息吹』を獲得しました。

これより、世界終末のカウントダウンが始まります。

カウントダウンがゼロになると神々対魔神の最終戦争が勃発し、世界が滅びます

『世界の終わりまで○○日』を発動するたびにカウントダウンが1減ります

現在のカウントは10です



 何かやばいの出てるんですけど──!?

 え、ちょ、ま、最終戦争で世界が滅ぶってどういうことこれ。

 焦っていると、視界をさらに二つのステータスウインドウで遮られる。

 どうやら天使二人のステータスらしい。

 邪魔だよ!



【名前】

神の天使(剣型)


【能力値】(一般人の最低値は1、英雄の最低値は100)

レベル:200

体力:0001/5000

マナ循環力:5000/5000

筋力:300(+100)

器用:200(+100)

敏捷:200(+100)

魔力:300(+100)

精神:200(+100)

運:1


【種族】

天使


【クラス】

剣士


【スキル】

『神の加護』『剣技Lv10』『かつて○○だった者』


【備考】

天使は神々によって死後の魂を加工され洗脳処理を受けた元人間(・・・)です



【名前】

神の天使(魔法型)


【能力値】(一般人の最低値は1、英雄の最低値は100)

レベル:200

体力:0001/5000

マナ循環力:5000/5000

筋力:200(+100)

器用:200(+100)

敏捷:200(+100)

魔力:300(+100)

精神:300(+100)

運:1



【種族】

天使


【クラス】

魔法使い


【スキル】

『神の加護』『光魔法Lv10』『かつて○○だった者』


【備考】

天使は神々によって死後の魂を加工され洗脳処理を受けた元人間(・・・)です



 うん。今回も言わせて貰おうか。

 この世界の神々何やってんじゃあああああああああ!



■ □ ■



 数値だけ見れば、この天使二人は強いのだろう。

 補正込みで全ステータスが英雄の最低値の三倍を超えている。

 だからこそ分かるレアちゃんの規格外さ。

 まあどっちも運がやけに低いのは気になるけど、それはまあいい。

 ミリーちゃんなんかマイナスに突き抜けちゃってるし、それに比べれば遥かにマシだ。

 そしてさらっとステータスの末尾に書かれている備考。

 洗脳っておい。


「よくある神々の常套手段だ。人間の輪廻転生に介入し、強き者の魂を盗み出して記憶を消去し好き勝手に捏造し人格から作り変え、神々を妄信する天使に加工する。我が堕天した理由の一つよ」


 堕天した方が感性がまともってどういうことだよ!


「神々などこんなものだ。人々の信仰を集める存在が善である保障などない。神々にとって、人間はおもちゃに過ぎぬ」


 想像していた以上に神様ろくでもねえな!


「さてと。前世の我に問おう。今、この者たちは死にかけている。されど彼女たちは天使。放っておけば神の加護によって復活し、再び我らを襲いに来る。止めを刺せば必然的に、今回の騒動は終わろう。しかし、助ける方法が無いわけではない。この方法を使えば人間に戻すことも出来るであろう。故に」


 急に、レアちゃんの雰囲気がシリアスになった。

 真面目な表情で、瀕死で横たわっている天使二人を見下ろしている。


「殺すか、助けるか。選べ」


 レアちゃんは明確に、俺に彼女たちの処遇を委ねていた。

 俺が決めていいの?

 なら、もちろん助けるでしょう。手段があるならこっちの方がいいに決まってる。

 目標はレアちゃんを善人にすること。これはその第一歩なんだから。


「助けるか。貴様ならそう言うと思っていたよ」


 満足そうにレアちゃんが微笑む。

 レアちゃん、もしかして嬉しいの?


「嬉しいとも。我にとっても、彼女たちは知らぬ仲ではない故に」


 訳が分からない俺は、倒れている天使たちとレアちゃんを交互に見る。

 どゆこと?


「神々め。我への嫌がらせか。髪を変えても顔がそのままなら、気付くに決まっておろうが」


 俺の質問に答える前に、レアちゃんは神々を苦々しげに罵る。


「よく聞け前世の我よ。彼女らは、かつて我と戦い、この時代へ飛ばした英雄たち四人組のうち、二人だ。名をユキカとエリンという。一人はこの世界の人間だが、もう一人はお前と同郷の、勇者だ」


 ……はい?

 理解が追いつかない俺を無視して、レアちゃんは一人で納得している。


「思えば当然であったか。時間魔法の代償に、彼らは死んだのだ。その魂は当然、神々の目に留まる。それから二百年もの間、囚われておったのであろうな。待っていろ。今すぐ解放してやる」


 前も思ったけど、レアちゃん理解力あり過ぎだよね。


「まあ、多少の代償はあるが、自由の代償としては安いものよな?」


 何かレアちゃんが聞き捨てならないこと言った。

 ……ん?

 待って、その代償って、誰が払うの?

 って、何か空間が割れて中から出てきた真っ黒い靄のような何かが天使たちを包み込んで引きずり込んだぞ!



【システムメッセージ】

大魔王レアが『魔神の息吹』を使用しました

神の天使(剣型)が魔神の胎内に呑み込まれました

神の天使(回復型)が魔神の胎内に呑み込まれました

魔神の胎内では『神の加護』が届きません




大魔王レアが神の天使(剣型)のスキル『神の加護』を剥ぎ取りました

大魔王レアが神の天使(回復型)のスキル『神の加護』を剥ぎ取りました

神の天使(剣型)が神々に奪われた名前を取り戻しました

神の天使(剣型)が天使ユキカに変化しました

神の天使(回復型)が神々に奪われた名前を取り戻しました

神の天使(回復型)が天使エリンに変化しました



 お、おお!

 レアちゃんやればできるじゃないか!

 大魔王に人助けなんて無理かもって弱気になってたけど、レアちゃんがやる気になれば簡単だな!

 ん?

 【システムメッセージ】がまだ続いてる?



天使ユキカは抵抗しています……

抵抗に失敗しました

天使ユキカにスキル『魔神の支配』が付加されました

天使ユキカの身体が魔神の力に侵食されていきます

天使ユキカは堕天しました

天使ユキカが魔神の尖兵ユキカに変化しました


天使エリンは抵抗しています……

抵抗に失敗しました

天使エリンにスキル『魔神の支配』が付加されました

天使エリンの身体が魔神の力に侵食されていきます

天使エリンは堕天しました

天使エリンが魔神の尖兵エリンに変化しました



 ファッ!?

 ちょ、ま、何だこれ!


「フハハハハハハ! だから貴様はバカなのだ! この我が何もせずに大人しくしていると思ったか! 我が力を流し込んで我の部下に変えてやったわ!」


 し、信じてたのに! レアちゃんのこと信じてたのに!

 結局またこのパターンかよチクショー!


『我の気は済んだ! 後は貴様に任せる!』


 ちょ、レアちゃーん!?

 この状況で俺に押し付けないでよ!

 俺の前には裸の美少女二人が残された。

 どうすりゃいいのさ!?


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