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第十八話

 どうしよう。回りにろくな奴がいない。

 この状況でレアシティが攻められたら守れるのか?

 あ、いや、それを心配する必要はないか。何だかんだいって、戦闘力はある奴らばかりだもんな。一部を除いて。

 ていうか、レアシティの再建計画がまだ全然整ってないことの方がやばい。

 人手が全然足りなくて手のつけようがないよ。

 まあ、今のところそもそも人数が少ないからいいけど。

 ミリーちゃん以外で生き残ってる一般人って、ミリーちゃんのお母さんしかいないし。

 ……様子を見にいった方がいいか?

 いや、俺が下手に動いたらまた悪影響が出るかもしれない。

 でも心配だしな……。どうするべきか。

 ってあれ? 気付いたらユキカちゃんとエリンちゃんがいないよ?


「二人ならさっき目覚めてお風呂入りに行ったよ」


 両頬に見事に紅葉を拵えたミリーちゃんが教えてくれた。

 もうそんなに時間が経ったのか。あるいは二人にそんなにダメージが入ってなかったのか?

 ミリーちゃんはニコニコ笑っている。

 瞳孔開いてる目でこっち見んな。怖いよ。


「大魔王様はお風呂入らないの?」


 俺が風呂……?

 この身体で?

 ないな。レアちゃん、後は任せた。


「……意外だな。こうも我に身体を渡すとは」


 見ないようにはするけど、一応見張ってるからね!

 変なことしようとしたら取り上げるよ!


「くっくっくっく……その状態で困るのは貴様の気もするがな……」


 う、うるさい! こっちだってやむなくなんだよ!


「大魔王様、誰と話してるの?」


「何、大したことではない。独り言だ」


 うん、確かに俺とレアちゃんは本質的に同じ存在だから、会話は全部独り言になるね。


「我も風呂に入るか。ミリー、共をせよ。ついでだ、お前の母親も連れてこい」


「え? いいの? やった!」


 ミリーちゃんが小便を垂れ流しにしながら去っていく。

 いや、ふつーにレアちゃん流してるけど、ここツッコミどころだからね?

 ていうか、レアちゃんと会ったらミリーちゃんの母親も酷いことになるんじゃないかな!


「「お水じょばー!」」


 訂正。

 も う な っ て た。

 いやどういうことだよ!


「その意気だよママ! もっと心を解放して、放出感に身を委ねるんだよ!」


「さ、さすがに恥ずかしいわ……。でも、どうしてかしら。大魔王様を見つけると自然と出てしまうの……しかも声まで……」


 待って待って待って本当どうしてこうなった!


「いっておくが今回我は何もしておらんぞ。そもそも会ってもいないからな」


 そうだけど、他に原因思いつかないよ!? レアちゃんのせいでないのなら何で!?


「大丈夫だよ! 自然とママもいつでも撒き散らせるようになるよ! 私みたいに!」


「そ、そうよね。ママ、恥ずかしいけど今のミリーを理解できるように頑張るわ」


 うわあああああああ自発的だったあああああああああああ!

 ダメだこの人回りが変な奴ばかりだから毒されかけてる!


「順調に狂気度が上がっているな。このままだと発狂するのもそう遠くはあるまい。特に私の側になど来たら……あ」


「あら? そこにいるのは……え?」


「大魔王様だー」


 嫌な予感しかしない。


「「美人放尿親子ユニット結成!」」


 遅かったあああああああああああ!?


『クックックックックック!』


 レアちゃんから慌てて身体の支配権を奪って離れようとするものの、時既に遅く、ミリーちゃんの母はぐるぐる目で、ハイライトが消えた目のミリーちゃんと一緒に俺に迫ってくる。

 くそ、レアちゃんの奴俺に身体取られても俺の反応で楽しんでやがる……。

 人の不幸は楽しいか。


『楽しいぞ! 腹が捩れるわ!』


 くそ、レアちゃんてば悪びれない!

 そしてミリーちゃんたち隙あらばみたいな感じで寄ってくんな!

 ひ、ひとまず逃げよう!

 って、そういえばこの身体走れないんだった!


「「放尿シャワーケツムーブ!」」


 何か尿撒き散らしながら尻が二つ迫ってくるうううううううううう!?

 レ、レアちゃん助けてええええええええええ!


『どいつもこいつも阿呆め。我を笑い死にさせる気か』


「きゃっ」


「ひゃっ!?」


 キンと音を立てて、ミリーちゃんとミリーちゃんの母親が弾かれて地面に落ちる。 

 へ、あれ?


『所詮一般人に我の防御を抜くことなどできんわ。泰然と構えていろ』


 驚く俺に対し、レアちゃんは落ち着いたものだ。

 ……そういえば、レアちゃんはステータスが高過ぎて大抵の攻撃は受けずに弾いちゃうんだった。

 よ、よし。このまま風呂に向かおう。


「あっ、先輩だ!」


「……大魔王レアですか。中身がどちらかが問題ですわね」


 この二人のこと忘れてたあああああああ!


「先輩は先輩でしょ?」


「……でも意識は男なのでしょう?」


「先輩は先輩だよ?」


「……分かりましたから、その顔を止めてくださいまし」


 どんな顔だよ! こっちから見えないから怖いんですけど!?

 レ、レアちゃんまた代わって!


『貴様の記憶を得てから一度は口にしてみたかった言葉がある。それがこれだ』


 うん?


『だが断る』


 拒否されたあああああああああああ!?

 アイエエエエエエエエエエエ!? ナンデ!? 拒否ナンデ!?



■ □ ■



 危機を脱したかと思えば全然そんなことはない。

 今の俺の状態は、前門のユキカちゃんとエリンちゃん、後門のミリーちゃんとミリーちゃんのお母さんという状態だ。

 ユキカちゃんはおもむろに俺に近寄ると、まるで匂いをかぐ猫のように鼻をすんすんとさせた。

 あれ? おかしいな。ユキカちゃんの顔から表情が消えたぞ?


「先輩から女の匂いがする……」


 一応俺の今の身体女だからね!? 大魔王で魔神だから性別女って括っていいのか分からないけど!


「当たり前ですわよ。レアの性別を思い出しなさい、ユキカ」


「あ、そっかー。先輩は今女の身体だもんね!」


 エリンちゃんに突っ込みいれられて納得してるところ悪いけど、まだ突っ込みどころあるからね!

 君そんななりだけど男だからね!

 ホモかよ!


「先輩だったら男でも女でもどっちでもいいや! 昔も今も別に性別で困ったことないし!」


「男性が好きな上にその容姿は業が深いですわよ」


 ホモだったよ!


「別に男性しか愛せないわけじゃないよ。先輩しか愛せないだけだよ」


 しかももっと性質が悪かったよ!


「というわけで先輩、ボクと結婚しよう!」


 色々とはしょり過ぎだああああああああああ!


「フフフ、一応男女ですし、精神も今のレアは男女混合のようですし、お似合いですわよ」


 やめてえええええええええ! 確かにユキカちゃん女の子にしか見えない可愛さだけど、俺にはホモ趣味はないのおおおおおおおおおお! 普通に女の子が好きなのおおおおおおおお!


『恋愛か……私もついぞしたことが無い。前世を含めてな。……貴様、恋人がいた時期もあったのだから、一度くらいシテおけばよかったものを』


 うるさいよレアちゃん! 仕事忙しくてそれどころじゃなかったんだよ!

 片付いてやっと過ごず時間を作れると思った途端にふられたんだよチクショー!


「お水じょばー!」


「さすがに二度はくらいませんわよ!」


「お水じょばー!」


「まさかの二段構えですの!?」


「きゃあああああああ! 黄色いお水が、お水があああああああ!」


 しまったまたミリーちゃんに乱入された!

 しかもさらっとミリーちゃんのお母さんまでおかしくなったまま混ざってる!

 親子放尿とか一部の人にしか需要ないよ!


『それは一部の者に需要があるということでもあるな』


 レアちゃん混ぜっ返さないで!

 そしてエリンちゃんがしれっと無効化した横でユキカちゃんが被害を受けてる!

 やっぱりエリンちゃん黒いよ! ユキカちゃんを盾にしながら驚いてる! 君実は予測してたでしょ!


「のうエウロッハよ。今なら大魔王の奴暗殺できるのではないか? 隙だらけだぞ」


「いやしかし、魔術師殿。大魔王の力はあまりにも強大です。一度我々の攻撃が通じなかった以上、次も通じないと考えた方がよろしいかと」


「まあ、試せるだけ試してみるとしようかのう」


 何か小さな衝撃をわき腹に感じて、視線を向けるとドラウニスの何らかの攻撃を、レアちゃんの肉体がキンッという音を立てて弾いていた。

 あんたどっから出てきたんだよ!

 そして今度は背後からエウロッハ君が吹っ飛ばされる音。

 何事!?


「未熟者め。攻撃に敵意をこめるからそうなるんじゃ」


 どうやらエウロッハ君が俺を攻撃しようとして【魔神の鉄槌】にぶっ飛ばされた音だったらしい。


「どちらにしろやはり今の儂らには無理じゃな。……エーリンちゃーん! ボイン見せておくれー!」


「死になさいましクソジジイ!」


「あんた何やってんだああああああああ!」


 エウロッハ君の絶叫には全面的に同意したい。でも彼も変な人なんだよな……。世知辛いぜ。

 やっべえ何も話が進んでないじゃないか!


「我はテヌールシティに向かう。ドラウニスよ、案内しろ」


 多少強引でも俺が話を進めようとしたら、真面目モードになったドラウニスが忠告にしてくる。

 でも顔だけで身体はエリンちゃんの攻撃をひょいひょい避けてる最中なんだよな……。


「その必要はないぞ。領主がユキカシティ奪還のためにテヌールシティを含む都市から軍を派遣することを決めた。儂はそのことを伝えに来たのじゃ。エウロッハを人質に取られているしの。将来有望な若者を見捨てることはできぬ」


「魔術師殿……」


 あ。エウロッハ君が感動してる。

 騙されちゃいけないよエウロッハ君。その人、君を敵地に置いてさっさと一人だけ帰った人だからね。


「それに、エリンたんのパイオツをワシはどうしても拝みたいのじゃあ!」


 拝みたいのじゃあ! じゃねえよ!

 エウロッハ君突っ伏してるじゃねえか!


「見せるわけありませんわよ! バカですの!?」


 やべえぞ真っ黒なはずのエリンちゃんが完全にドラウニスのペースに飲まれてる。実はドラウニスって凄く強いんじゃないのか?


『実はも何も普通に強いぞ。素の強さで普通にユキカとエリンを上回っているしな。まあ彼の場合後衛としての強さで、それも我には遠く及ばんが』


 そりゃ、レアちゃんは規格外にもほどがあるからね。

 っていうか、軍が来るとかやばいじゃないか!

 ど、ど、どうしよう!?


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