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魔法の時間 2現目

前作の文章とあまり変化がない話もあります…

翌日、昨日より早く目が覚めたので、いつもより早く朝食を済ませた後、部屋で待ってても暇なので、なんとなくあのごちゃごちゃしたオリヴィエの部屋へと向かった。


時刻はまだ6時前で雨が降っている所為か、やや肌寒い。


言い忘れたがこの世界の日付は俺が居た世界と同じで、年号は分からないが1年は365日の12ヶ月で1日も24時間だ。


そしてオリヴィエの部屋に着くとアンジェが扉を開けて、俺が部屋に入るとオリヴィエと楓嬢が仲良く部屋の掃除をしていた。


「あ、おはようございます幸太郎さん」


「おはよう楓、そして先生もおはようございます」


「おはようございますコータローさん。あと、私には敬語を使わないでいいですよ。年は貴方の方が上ですし」


「あっそう、じゃあそうさせてもらう。ところでお2人はなんでこんな朝早くから掃除してるんだ?」


「私はいつもより早く目が覚めてしまって、なんとなく廊下を歩いていたら、掃除道具を持ったオリヴィエさんを見かけたので話しかけたら、この部屋をお掃除すると言ったので手伝う事にしたんです」


「そうなのか。でもなんでまた急に掃除なんかを?」


「お恥ずかしながら昨日、王妃様に「女性なのだから自分の部屋くらい綺麗にしなさい」と言われまして、それで今掃除してるんですよ…」


「なるほど、それで昨日講義の開始が遅れたのか…分かった、俺も手伝おう」


「私も手伝いますオリヴィエ様、4人でやったほうが早く終わると思いますので」


「ホントですか!? じゃあお願いします!」


とオリヴィエが嬉しそうに言って箒を渡してきたので、早速作業に取りかかったがオリヴィエと楓嬢が既に半分程片付けてた事もあったので3時間程度で終わり、昨日と比べて大分キレイな部屋になった。


タワーのように重ねられていた本の山はちゃんと分別されて本棚に仕舞われ、床に散らばっていた羊皮紙は要らないのは捨てて、そうじゃないのは紐で括り付けて保管した。


なんということでしょう、匠達による清掃のお陰で本やその他の所為で狭く感じられた部屋が今ではかなり広く感じられる。


この部屋は掃除してみると意外と広く、学校の教室くらいだ。


あの本の山や羊皮紙を片付けるとこんなに広いとは、出来ればこのままの状態を維持して欲しいものだ。


「ふぅ〜なんとか終わりましたね。カエデ様、コータローさん、アンジェさん、手伝ってくださってありがとうございました」


と、オリヴィエは頭を下げる。


「いいよ別に、暇だったからな」


「出来ればこのままの状態を維持して下さいね」


「肝に銘じておきます。それではそろそろ他の勇者樣方が来ると思いますので席に着いて待ってて下さいな」


オリヴィエに言われて昨日と同じ席に座るとアンジェは俺の斜め後ろに立ち、楓嬢も昨日と同じく俺の隣に座った。


時刻は既に9時を回ろうとしており、後、3分を切ったというところで平野達が入って来た。


「すいませんオリヴィエさん、遅くなりました」


「大丈夫ですよコウイチ様、まだ講義は始まっておりませんから。ところでどうして遅くなったのかお聞きしてもいいですか?」


「実は俺達、楓を探してたんです。というのも朝起きると春香が楓が居ないと言ったので、手分けして探してたんですが、メイドさんから既にここへ向かったと聞いたので慌てて来たわけです」


「もうビックリしたわよ。朝起きたら楓がいなかったんだもん」


「でも無事で良かったぜ。楓に何かあったかと思うと不安だったからよ」


「そうでしたか、ごめんなさい皆さん。ご心配をおかけしました」


と楓嬢は起立して頭を下げた。


「では勇者樣方、席にお座りくださいな」


オリヴィエがそう言って平野達が昨日と同じ席に座った。





「では皆様、今日から本格的な魔法を教えます。ですがその前に復習として魔法について質問します。ではユウガ様、いきなりですが属性について簡単で良いので説明してください」


いきなり指名された風間は「は、はい!」と慌てて立ち上がった。


「え、えーと、属性は火・水・風・土・光・闇の6つがあって最初の3つには上位属性があり、炎・氷・雷となっています。そして光属性は俺達勇者しか使えず、逆に闇属性は魔族しか使えません。尚、属性は基本的に1人1つの属性しか使えませんが、稀に先生や俺達のように複数の属性を持つ人もいます……確かそうですよね?」


風間は一言も間違えず、説明も完璧でオリヴィエは満足げに頷いている。


「その通りですユウガ様、どこも間違っていませんよ」


オリヴィエにそう言われて風間はホッとした表情になって着席した。


「では次にハルカ様、魔力について簡単な説明を」


「はい」と返事して柳は起立した。


「魔力とは魔法を使う為の力の源であり、それを使って火を放ったりします。魔力が切れると激しい眩暈・意識の朦朧がして倒れて気絶し、最悪死に至る事があるので魔法を使う際は魔力を使い切らないように注意しなければいけません。この状態を魔力切れと言います」


「いいですね。補足として魔力が切れそうになったらポーションを使えば少量ではありますが魔力が回復します。では最後にコウイチ様、魔法の分類について説明して下さい」


「分かりましたオリヴィエ先生」


そう言って平野は起立する。


「魔法は大きく分けると初級、中級、上級、神聖級の4つに分けられ上にいく程魔法の威力も上がりますが反面、消費する魔力も多くなります。あと、精霊魔法というエルフにしか使えない魔法がありますがその魔法については情報が少なく、現在の段階では不明となっています」


「その通りですコウイチ様。ちゃんと覚えてくれていてなによりです」


「そんな、オリヴィエ先生の教えが良いからですよ」


と、ニコッと微笑んで平野は言う。


「コウイチ様……」


あ、オリヴィエが堕ちた。クソ、ニコポが発生したか。平野の笑顔を見たオリヴィエが紅潮してうっとりしてるじゃないか。


何故だろうか、別に好きでもないのに付き合ってる女性を他の男に寝取られたような気分だ。


あーなんかムシャクシャする。


ところで平野よ、隣に座ってる柳が睨んできてるのが分からないのか? 風間もこの空気に気付いてないのか、暢気に欠伸をしている。


やっぱりこの2人は俺が思ってた通りに鈍感なようだ。


「オリヴィエ先生、そろそろ講義の続きをしてもらいたいのですが…」


平野達の空気に楓嬢がうんざりしたご様子で言った。いいぞー、よく言った楓嬢。


「そ、そうですね。一刻も早く勇者様達には戦えるようになって貰わないと。コホン、では今から実戦で使う魔法を教えます」


そう言ってオリヴィエは教卓の上に燭台を置いた。


「今から私が火属性の魔法で燭台に火を付けますのでよく見ていて下さい」


そう言うとオリヴィエは右手の人差し指を蝋燭の先端に向けた。


「火よ、我が魔力を糧に敵を燃やせ!『火撃(ファイア)』ッ!」


オリヴィエが詠唱を唱えると指先からパチンコ玉くらいの火の玉が放たれ、燭台の蝋燭の先端に当たり火が灯った。


「これが火属性の初級魔法、『火撃(ファイア)』です。この魔法は魔力の量で威力が変わり、今のように微量の魔力を使えば火種にもなりますし、その他にも暗い所では明かりとして使えます。このように初級魔法には私生活にも使える魔法が幾つかあります」


「なるほど、攻撃だけではなく様々な使い道があるんですね」


平野は感心したように言う。


確かに電球や蛍光灯が無いこの世界では明かりは燭台やカンテラが主流だから、その魔法が使えればカンテラなんか要らないな。


「その通りですコウイチ様。火・水・風・土の初級魔法には私生活にも使える魔法が幾つかあって、これを生活魔法と私たちは呼んでいます。その他にも支援、防御にも使える魔法も存在しています」


なるほど、そういう魔法もあるんだな。





「では次に風属性の初級魔法を教えますので見てて下さい」


そう言ってオリヴィエは人差し指を蝋燭の炎に向けた。


「風よ、我が魔力を糧に敵を撃て!『風弾(エアバレット)』ッ!」


詠唱を唱えると指先から小さな風の玉が撃ち出され、蝋燭の炎を消した。


「これが風属性の初級魔法、『風弾』です。あと水属性の初級魔法は『水玉(ウォーターボール)』、土属性は『地縛(アースバインド)』があります」


オリヴィエは説明しながら右手に野球ボールくらいの水玉を作った。


『地縛』がどういう魔法なのかは分からないが、縛る(バインド)とあるからおそらく地面から鎖とかを出して相手を拘束する魔法なんだろう。


ここで出さなかったという事は室内では出来ない魔法なのだろうか?


「先生、光属性の魔法はどんなのがあるんですか?」と、柳が手を上げて質問する。


「そうですね、コータローさんを除いて皆様は全員勇者なので、光属性を先に教えるべきでしたね。光属性についてですが代表的な魔法として初級は『聖炎(ホーリーファイア)』、中級は『聖槍(ホーリーランス)』、上級は『聖域(サンクチュアリ)』、そして神聖級は『断罪(ジャッジメント)」などがあり、どの魔法も普通の属性より遥かに強力ですがその反面、消費する魔力もかなり高いです」


確かにどれも強そうだ。でも魔力の消費が多いらしいけど平野はともかく、楓嬢や風間、柳は大丈夫なのか?


「本当は見本を見せてあげたいんですが生憎、勇者様方以外に使える者が存在しませんので、この講義が終わったら光属性の魔法が書かれた魔導書をお渡しします。お力になれず申し訳ありません」


「そんな、オリヴィエさんは俺達の為に魔法を教えてくれているんですから俺達がどうこう言える立場じゃないですよ」


「コウイチ様…」


再び甘い空気が作られる。ちょっと辞めてくださいよー、アンジェがまた冷たい目をしてるどころか、楓嬢も蔑んだ目で見てるから。


「先生、いい加減先に進んで貰いませんかね?」


このままじゃ埒が明かないので自分から言い出す。


「そ、そうですね…それでは今から練習をしてもらいます。ではユウガ様、自分のイメージで良いので試しに『風弾』を放ってみて下さい」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ先生、初級とは言え、流石にこの部屋で魔法を使うのはちょっと危険では? もしかたら魔力の制御に失敗して被害が及ぶかもしれませんぜ?」


「なっ!? おいテメエッ! それは俺が魔法を失敗するって言いたいのかよっ!?」


俺の言葉が自分に言っているように聞こえたのか、風間がキレて俺に怒鳴った。


「落ち着け風間、俺は別にお前に対して言ったわけじゃない。俺の言い方がそう聞こえたなら謝る、許せ」


俺は今にも殴り掛かってきそうな風間に謝った。


「幸太郎さんもそう言っているわけですし、許してあげて下さい勇牙さん」


「でもよ楓! こいつ「勇牙さん、いい加減にしてください」っ!? わ、わかったよ……クソ」


楓嬢がそう言うと風間はまるで怖い物を見たような顔で前を向いた。


何故なら、おそらく楓嬢と出会ってから初めてで見るであろう、彼女は氷のような冷たさを感じさせる無表情をしていた。


そんな表情でそんな事を言われたら並の人はビクつくだろう。俺も少し見てみたが寒気がした。


「こ、コータローさんの言う通り、この部屋で魔法を使うのはよくないですね。本来なら外に出てやってもらうんですが生憎、今日も外は雨なので室内訓練所へ行き、そこで練習しましょうか。アンジェリーナさん、すいませんが案内してもらってもいいですか?」


「畏まりましたオリヴィエ様。では皆様、訓練所へとご案内いたします」


と、アンジェがそう言ったので俺たちは彼女へ着いて行った。





アンジェに案内してもらって訓練所に着いた俺たちは中へ入った。


広さは学校の運動場くらいで、何と言えばいいのか、金属で出来た魔法を当てるための的が弓道の道場みたいな感じで距離を取って設置されていた。


「じゃあハルカ様、試しに風属性の初級魔法をやってみて下さい」


「はい」と柳は短く返事すると右手の人差し指を近くにあった的に向けた。


「(…アンジェ、魔法が失敗するかもしれないから用心しておけよ)」


「(畏まりました)」


小声でアンジェにそう言う。


「えーっと確か、風よ、我が魔力を糧に敵を射抜け!『風弾』!」


柳が詠唱を唱えると指先に風玉が現れた…のだがどう見ても明らかにオリヴィエの時とは大きさが違う。


しかもどんどん大きくなっていく。


「は、ハルカ様!? 使う魔力が多過ぎます!」


「わ、わわっ! どうしようっ!?」


「ヤバイッ! ヤバイッて!」


「は、春香! なんとかしろよっ!?」


「なんとかしろって言ったって無理よッ!!」


風船のように徐々に大きくなる風玉を宿したままパニックになる柳を見てさらにパニックになる平野達。


そんな彼らを見て嫌な予感しかしなかった俺は、何か遮蔽物になりそうなものを探すと休憩するためか、隙間のない背凭れのついた大きめの木製の長椅子が目についた。


「アンジェ! 椅子の裏に隠れて支えるんだ!」


「分かりました!」


「楓、ちょっと失礼!」


「えっ? きゃっ!?」


とアンジェに命じておろおろしている楓嬢を姫様抱っこし、長椅子の裏まで走って隠れると、茫然としている楓嬢を降ろしてアンジェと共に椅子を支えた。


「(これでなんとか防げるはず…)」


そう思ったその直後、激しい暴風が部屋全体に襲いかかり、柳は勿論、側に居た平野や風間、そしてオリヴィエまで吹き飛ばした。


「うわあっ!?」


「のわっ!?」


「きゃあああっ!?」


「いやああっ!?」


上から平野、風間、柳、オリヴィエの順で4人とも吹き飛ばされた。


俺達は長椅子の裏に隠れて吹き飛ばされないように掴んでいたので、なんともなかった。


「2人とも怪我とかないか?」


「はいコータロー様、私は大丈夫でございます」


「私も平気です。ありがとうございます幸太郎さん」


「そっか、なら良かった。それにしても危なかったな…」


そう言って長椅子から顔を出すと、吹き飛ばされた勇者3人とオリヴィエが床に倒れていたが見た所、怪我も無いようで普通に立ち上がった。





「イテテ…あー死ぬかと思った」


「俺もだぜ…ったく、春香。なんてことしてくれてんだよっ」


「しょ、しょうがないじゃないっ! ちょっと魔力の量を間違えたのよ!!」


「ま、まあまあ、皆さん怪我がないようで良いじゃないですか」


「うぅ、オリヴィエ先生…ごめんなさい」


柳は涙目になりながらオリヴィエに頭を下げた。


「大丈夫ですよハルカ様。失敗は誰にもありますから。それに皆様が無事でよかったです」


オリヴィエの言う通り、全員怪我は無いようだ。


「申し訳ありません。こうなることは予想していたはずなのに対処出来なかった私の責任です…」


「あ、謝らないで下さい先生! 元はと言えば私が魔力の量を間違えたからで先生は悪くなんか無いです!」


「そうっすよ!元気出して下さい先生!」


「むしろ俺達は魔法を使えた事に感謝してるんです。だから落ち込まないで下さい」


3人がオリヴィエを励ました所為か、彼女は数分もしない内に元気になった。


「ありがとうございますコウイチ様、ユウガ様、ハルカ様、もう大丈夫です。さて、本当はもう少し魔法について教えてあげたいのですが生憎、午後から用事が出来てしまったので今日の講義はこれで終わりにします」


「ありがとうございましたオリヴィエさん」


「いえいえ、それが私の役目ですから。魔法は習うより実際に使ってみた方が早く上達しますし、あれほどの大きさの『風弾』を制御出来るようになれば優秀な魔術師になれますので気を落とさないで下さいハルカ様」


「はい! 私頑張ります!」


と柳は元気に返事をしてオリヴィエは笑顔になる。


「それでは皆様、各属性の魔法については後で部下から魔導書をお渡ししますので読んでみて下さい。コータローさんには申し訳ありませんが、他の魔術師の人に教えてもらうか、自力で覚えて下さい。なにしろ魔導書は貴重な物で数に余裕がないので…」


「いいですよ先生、俺は俺なりにやるのが好きなのでね」


「そうですか…では私は午後から用事がありますのでお先に失礼します。明日はここで初級の魔法の練習を一通りした後、中級や上級、神聖級魔法の講義をします。魔法の練習をしたい方はここを自由に使って構いませんので好きなだけ練習してくださいな」


そう言ってオリヴィエは訓練所の扉を開けて出て言った。


平野達はここに残って練習するようだ。


「んじゃあ、俺達は戻るかアンジェ」


「…良いのですか?」


「ああ、ちょっと気まずい空気になっちゃったからな。今回は諦める」


「そうでございますか…畏まりました」


そう言って俺はアンジェと共に訓練所を出た。


ホントは残って練習したかったが、柳の魔法の暴発に巻き込まれないように楓嬢だけ連れて避難した所為で3人が俺を睨んでるだもん。


そのまま残ったら面倒な事になりそうなので仕方なく自室へ戻った。


どうせ明日は魔法の練習をするんだから、その日に今日出来なかった分も含めて練習すればいい。

次回、魔物っ娘が登場

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