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マクベル滞在

今回はちょっと早く投稿する事が出来ました。この調子でもうちょっと早く投稿出来るようになりたいです。

「コータロー様、起きて下さい朝ですよ」


アンジェに起こされ目を覚ますと日の光が目に当たって眩しかった。


「おはようアンジェ」


「おはようございます。宿の主人が朝食が用意出来たとのことなので起こしに来ました」


「そうか。分かった、すぐ行く」


そう言うとアンジェが去って行ったので、着替えて下へ降りた。


昨日の夕食の時もそうだったがこの宿の飯はぶっちゃけ行ってあんまり美味しいとは思えなかった。


まあ安いから仕方ないのかもしれない。




「ふぅ… さて、俺はちょっと出かけてくるけどお前達はどうする?」


「ボクはゆっくり本でも読んでます」


「私は美味しいものでも食べに行きますねー」


「では私もご一緒します」


「あ、アンジェさんも行きますか」


「ええ、色々買いたい物がありますので」


「そうか。じゃあアレン、留守番頼めるか?」


「分かりました」


「帰りに何か買ってくるからな。んじゃ、俺は行くぜ。夕方までには帰るつもりだ」


「行ってらっしゃいませ」


一足先に俺は宿を出た。依頼を受けるわけではないが護身用の為に剣とナイフを持っている。


「さて、最初はどこに行こうか……あ、そうだセルゲイさんの店に行ってみるか。そんで新しい剣を買おう」


今使ってる剣が大分ガタが来たみたいなので買い換える丁度いい機会かもしれない。


早速俺は中央を目指して歩き出した。




「ふう、漸く着いたか。それにしてもデケエな、人も多いし流石は第二の商業都市だけあるのか」


周りを見ると、市民や冒険者、哨戒中の兵士に祈りながら歩いてる聖職者とかがいた。


さて、セルゲイさんの店は何処にあるのか。


この辺にあるって市民の人に聞いてみたんだが……ん?


「なんだあの店? やけに豪華な装飾だな」


セルゲイさんの店を探してると一際目立つ店があった。


壁の色は真っ白で、入り口には段差があって赤絨毯が敷かれ、燕尾服を着た筋肉モリモリマッチョマンのスキンヘッド野郎が立っていた。


そして入り口から貴族風の格好をした男女が出てきた。


男性の手には箱があった。


つーかあの燕尾服サイズ合ってないだろ!? ピチピチってレベルじゃねーぞ!? よく破けねーなおい!?


まあガードマン? らしきマッチョマンはどうでもいいとして、あの店は何の店だろうか?


気になった俺は入ってみようとして近付いた。


すると、


「おいお前、まさか店に入るつもりじゃねえだろうな?」


と言われた。


「そのつもりだが?」


「ここはお前のような奴が来る場所じゃねえ。とっとと帰りな」


「金ならあるが?」


そう言って金の入った袋から白金貨を取り出して見せた。


「…成る程、金は持ってるようだな。いいだろう、中に入れてやる。ま、中に入ったところでお前が買える物があるかわからんがな」


スキンヘッドはニヤニヤ笑いながらそう言ったのを聞き流して店の中に入った。


「なんだこりゃ…凄えな」


店の中は赤絨毯が敷かれ、壁や天井に豪華な装飾をしていて高級感を出している。


ショーケースの中には宝石やアクセサリー並べられており、台座には高そうな装飾のツボや皿が飾られていた。


他にも武器とか飾られていたが、使い物になりそうな物はなかった。


「いらっしゃいませお客様、本日はどのようなご来店で?」


店の奥から上品な服を着たネズミのような顔立ちの口髭の男が出てきた。


「買い物だ」


「買い物ですか…恐れ入りますがお客様はどこかの貴族でしょうか?」


「いや、冒険者だ」


そう言った瞬間、男の目つきが変わったのが分かった。


「冒険者ですか。ま、ごゆっくりどうぞ」


あ、こいつクソだわ。金持ってないと分かると態度変えやがった。


早く出て行けよ的な雰囲気を纏いながら男はそう言った。


取り敢えず店内を見て回っていると豪華な壺が目に付いたので店員に値段を聞いてみた。


「おい、これいくらだ?」


「その壺は5000万エルトになります、が? なにか?」


お前にその壺買えるのかよ的な言い方をしてくる店員。


「これ一枚で剣を買いたいんだがいいのはあるか?」


そう言って白金貨を見せるとまたもや男は態度を変えた。


「ええ、ええ、ございますよ。ヒヒッ」


男はそう言うとショーケースから一本の剣を取り出して見せた。


「こちらなどどうでしょう? とある有名な鍛治師が作った剣です。耐久力が高くて切れ味も抜群、魔物でもなんでも簡単に真っ二つ出来る業物です」


男が持ってる剣は鞘や柄が金色で宝石が無駄にあちこちに付けられてて、刃自体も厚みもなく細くて簡単に折れそうだ。


正直言って無駄に金かけてそうなこの剣は戦闘用というより観賞用だろう。


そんな剣を勧めてくるこの店員は金を騙し取る気満々である。


「ふーん。あ、でもそれより良い剣が他の店にあったからそっちで買うわ。ここはなんか全体的に高いし」


「ええっ!? そんな!? ちょっと待ってくださいよ!?」


店員さんの制止を聞かずに店を出て行った。


「どうだ? 買える物はなかっただろ?」


「ああ。貴族向けの店だなここ」


「これで分かったろ? もう来るなよ」


スキンヘッドにそう言われながら俺はその場を去った。


「あーなんかムシャクシャするなー」


「おーいそこのニイちゃん!」


「あ?」


モヤモヤした気分で歩いてるとボロボロの服着た小汚い少年に声を掛けられた。


少年の後ろには疲れた顔した小汚い格好の女の子がいた。


女の子は汚れた人形を抱き締めている。


年は少年はアレンと同じくらいで少女は下だろう。


碌に食べていないのか、2人とも窶れている。


「なんだ少年、俺に何か用か?」


「ニイちゃん、100エルトでその靴を磨いてあげるよ!」


少年に言われてブーツを見てみると、昨日の雨のせいでぬかるんだ土が付着してそのまま固まっていた。


以前、オリヴィエに破けた所や汚れを自動で修復してくれる魔法をかけてもらった話をしたと思うが、実は靴にだけそんな魔法はかけられていない。


何故かというとオリヴィエが「靴までやるのは面倒くさい」とダルそうに言うので符呪されていない。


靴の汚れって洗えば大体落ちるしな。


「そうだな、やって貰おうか」


そう言って100エルトを少年に渡した。


「ありがとう! じゃあ早速始めるよ!」


少年はそう言うと小さい木箱を俺の前に置いた。


「じゃ、ここに足を乗せて」


そう言われたので足を乗せると少年は布で俺の靴を磨き始めた。




ーーー数分後ーーー




「はい終わり! どうだい? 綺麗になっただろ!」


磨き終わった靴を見てみると汚れは完全に取れており、買った時までとはいかないがブーツは黒光りしている。


「いいんじゃないか? サンキューな」


「へへっ! ニイちゃん冒険者だろ? また汚れたら綺麗にしてあげるから来てくれよ!」


「ああ、覚えておくよ……あ、そうだちょっと手を出せ」


「なんだい?」


少年が手を出すとその上に俺は2000エルトを置いた。


「え!? なんだよこのお金は!?」


「とっとけ、どうせ殆んど食べてないんだろ? んでそれで後ろの嬢ちゃんに美味いモンでも食わせてやれよ。勿論お前もな」


少年が磨いてる間、少女はぼんやりと虚ろな目で俺をジッと見ていた。


このご時世、こいつらみたいな子はこうやって生きて行くしかないんだろう。


「ニイちゃん……」


「じゃあな、食って食って大きくなれよ」


「ま、待ってくれ! 名前を教えてよ!」


「んー? コータローだ」


「ありがとうコータロー兄ちゃん!!」


俺が見えなくなるまで少年はずっと手を振っていた。


なんだかんだ俺も甘いな、一体何やってんだか…これじゃあ平野達と変わんないじゃないか。


俺にあの少年達を援助する理由なんてないのにな。でもなんとなく放っておけなかったのだ。


2000エルトなんか渡したって数日後には使い切ってるというのに…。


流石に、この世界で必死に生きようとしてる彼奴等を見て見ぬ振りするほど俺は薄情モンじゃない。


折角靴を綺麗にしてもらったのだし、野垂れ死にされたらなんか目覚め悪いしな。


俺は勇者でもなければ神様でもないから、目と手が届く範囲なら出来るだけ手を貸そうと思う。


それはさておき、漸くセルゲイさんの店に着いた俺。


やっぱり繁盛してるのか、大きかった。それにさっきの店と違って無駄な装飾もなく、デカい看板が入り口の真上に飾られているだけだ。


扉を開けて中に入ると中は広く、剣やら槍やらメイスにハンマーなど色んな武器がラックに飾られていた。


よく見ると刀みたいな形状の剣もある。この世界にも東洋風の国や土地があるのかもしれない。


「いらっしゃいませお客様。ってコータローさんじゃないですか!」


「どーもセルゲイさん」


「早速来てくれたのですね。本日はどのようなご用件で?」


「今使ってる剣がちょっとガタが来たっぽいので買い替えようと思って」


そう言って腰にぶら下げてる剣を取り出して見せた。


「そうでしたか、ふむ…所々刃こぼれとかがありますね、毎日整備はされてるようですが寿命には勝てませんね。ささ、どうぞ見て回ってください」


セルゲイさんにそう言われて店内を見て回る。


「伯父様、お客様ですの?」


と言ってきたのは店の奥から出て来た女性だった。


腰まであろう煌びやかな光沢を放つボリュームのある金髪の髪にうすら黄緑、いやどっちかというとエメラルドブルーのような色の瞳の女性だ。


赤と黒と白をベースにしたハンガリーだかノルウェーとかの民族衣装を足して2で割ったような感じの服装に頭には緑色の大きな三角巾をかぶっている。


瞳にはハイライトがなくてちょっと怖いが、清楚で気品溢れてそうな美しい女性だ。


年の功は20歳くらいだろうか? うむ、デカい。


「おぉシンクレア、彼は私の商隊を護衛してくれた冒険者の方だ」


「まあそうですの!? 伯父様を護衛をしてくださって本当に感謝しますわ」


「まあそれが仕事だったしな…というか、盗賊や魔物の襲撃とか全くなかったけどね」


「それでも私は貴方様に感謝してますわ。あぁ申し遅れました、私はシンクレア・クーネリアスと申します。以後お見知り置きを」


「ご丁寧にどうも、コータロー・アサヒナだ」


「まぁ、素敵な名前ですわね」


「あ、ああ、どうも」


なんだろう、今までにないタイプだからか、なんかペースが狂うな、嫌いじゃないけど…。


「彼女は私の姪でしてね、この店の帳簿などを管理してもらっています」


「成る程」


「将来は伯父様のような商人になりたいのですわ」


「そうか、なれるといいな」


「そう言えばシンクレア、私に何か用かい?」


「あぁ、そうでしたわ。今月の帳簿の精算が終わったのでその報告に来ましたの」


「おおそうかそうか、いつもありがとう」


「伯父様の指導のお陰ですわ。じゃあ私は戻りますわね」


そう言ってパトリシアは店の奥に戻って行った。


「ああすいませんコータローさん。剣を選んでる途中だったのに邪魔してしまいましたね」


「あ、いえ。んなことないですよ」


「そうですか、ではごゆっくりどうぞ」


そう言われて再び店内を見て回る。


さて、どれがいいかな。


どれもこれも良さそうだが、どうせ買うなら長く使えて切れ味抜群のモノがいいな。




10分後・・・・



ダメだ、中々決まらん。幾つか良さそうなのはあったけど選べない。


「睨めっこしているようですが、中々決まりませんか?」


「ええまあ、良さそうなのはあったんですけどね」


「ではお手伝いしましょう。予算はどれくらいですか? それとどんな物が良いですか?」


「折角だから切れ味抜群で長く使える物がいいですね。予算は…そうだなぁ、これ1枚に納まるくらいで。まあ多少オーバーしてもいいです」


俺は金貨1枚を取り出してみせた。


「ふむ…武器種はどうしますか?」


「こいつと同じくらいか、少し長めの片手剣が良いですね」


「となるとこちらなんてどうでしょう?」


セルゲイさんは1本の剣と鞘をラックから取って見せた。


その剣は銀色の肉厚な刀身に根元はやや細くて内側に湾曲しており、同じ銀色の光沢を放つ柄はヒロイックな感じで湾曲しておりよく見ると、刀身の凹んだ腹の部分には何か文字みたいなのが刻まれていた。


握る部分は赤く、柄頭は鈍器みたいに少し丸みを帯びて尖っている。


鞘は黒色で金の装飾がされてて、腹の部分にはドラゴンみたいなレリーフが金色で刻まれていた。


「へえ、こりゃ綺麗な剣だ」


「どうぞ持ってみて下さい」


「うわ、軽いな! 見た感じ重量感ありそうだったのにそんなに重くないなんて」


「腕の良いドワーフが作ったロングソードです。材質はミスリルを使っています。その為、鉄のような普通の金属とは違って軽くて丈夫なのですよ」


確かに俺が持ってる剣より、刀身はちょっと長いな。


「ミスリルかぁ、実物を見るのは初めてですね。でもお高いんでしょう?」


「確かに値段は掛かりますが……そうですねぇ、初回サービスとしてこれくらいでどうでしょう?」


セルゲイさんは指10本を立てて次に5本立てて見せた。


「1500エルトですか、買った」


「違います違います! 15000エルトですよコータローさん…」


「うーん…ちょっとオーバーするんですね」


「こちらもこれが限界です。何しろミスリルは貴重な故に高価ですので…因みに元の値段はもうちょっと行きますよ?」


マジか…買ってもいいんだけどさっきみたいにふんだくりそうになったら嫌だな。セルゲイさんはそんなことしないと思うが。


性能見てから判断するか。


「ところでちょっと試し切りしても? てか出来ます?」


「勿論、当店はその為の施設も用意してあります。どうぞ付いて来て下さい」


セルゲイさんに付いて行くと、地下に続く階段を降りた。


そこは丸太を使った簡易的な案山子が幾つもあって又、弓の為の的が幾つかあった。


「ここで、試し切りとかが出来るようになっています。さ、どうぞお好きなだけ切ってみて下さい」


「じゃあ早速……フンッ!!」


俺は剣を斜めに振った。すると丸太はいとも簡単にスパッと切れた。


「ほーこりゃ凄い」


その後も細いものから太いものまで何本か切ったが全部スパスパと切れてしまった。


「どうです? 抜群の切れ味です。材質が違いますよ」


うん、もうこれでいいや。ちょっと予算越えたが背に腹は変えられない。


「一番気に入ってるのは…」


「なんです?」


「値段です」


そう言うとセルゲイさんはにっこりと笑った。



「またのお越しをお待ちしています」


セルゲイさんに見送られながら店を出た俺。


早速買った剣を腰に帯刀し、教官から貰った剣は買い取ってもらった。


「さて、ちょっと腹が減ってきたしなんか食うか。宿屋の飯だけじゃ足りねえよ…」


そう呟くと俺は市場へと向かった。


誤字、脱字は勿論、表現のアドバイス等がありましたらよろしお願いします。

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