Dランク昇格試験とウィルの魔法 後編
忘れかけてる頃に投稿しちゃって申し訳ない。努力はしてるんですがねぇ・・・
森を出て漸く国に戻った俺たちは先にアイザック爺さんの店で盗賊達が使ってた武器を売ったのだが質や状態が良くなかったので大した金にもならなかった。
「ただいまアンナちゃん」
ギルドに戻ると真っ先にアンナがいるカウンターへ向かった。
なんかもう彼女のところに行くのが日常になってるがまんざらでもないので今後もそうしよう。
「お帰りなさい皆さん。随分と時間が掛かったみたいですが何かあったんですか?」
「あーオーク探してたら盗賊達に遭遇しちゃってさ」
「えっ!? 盗賊にですか!? 良くご無事でしたね?」
「あぁ、囲まれてる最中に魔物が現れて混乱に乗じて撃退したんだ」
「そうでしたか……何はともあれ皆さんがご無事でなによりです。それでオークは討伐出来たのですか?」
「ああなんとかな。で、これが証明部位だ」
そう言いながらオークの鼻をカウンターの前に置くと、アンナがそれを確認して問題なかったので依頼は達成した。
その後は少し遅めの昼食をとった後、再びギルドに来ていた。
「あと1つでDランク昇格試験が受けられる訳だけど、最後は雑用依頼にするけどいいか? 討伐や採集は面倒くさいし」
時刻は今3時を廻ったところで今から討伐に行くのは正直言ってやる気になれない。
「そうですねー。今から討伐や採集はちょっと面倒くさいので雑用にしましょう。アレン君もそれで構いませんかー?」
「いいですよ」
「決まりだな」
そう言って俺たちは掲示板で雑用依頼を探したわけだが、どれもFランクのばかりだった。
「Fランクばかりですねー。これじゃあ達成したって意味がないですよぉ」
「参ったな。しょうがない、採集にするか」
そう言って簡単そうな採集依頼を探した。
「ん? オークの睾丸の採集だと?」
採集依頼は薬草だけではなく、魔物の一部も集めることもある。
「アレン、オークの睾丸ってまだ売ってないよな?」
「ええ、まだもってますが…」
「実は丁度オークの睾丸を2個集める依頼があってさ、出来れば依頼達成の為に譲って欲しいんだ」
「勿論いいですよ」
「ありがとうアレン」
そう言ってアレンからオークの睾丸を貰って依頼書と一緒にアンナのところへ行った。
「アンナちゃん、これお願い」
「採集依頼ですね。内容は……オークの睾丸2個の納品ですね」
「ああ、そんで実はもう持ってるんだ」
「では事後受注ですね、確認したいので見せて下さい」
アンナにそう言われて、オークの睾丸が入った袋を差し出した。
受け取ったアンナは若干嫌そうな顔をしながら袋を開けて本物かどうか確認した。
まぁ、誰だってあんな物を触りたくは無いだろう。ましてや女の子が見るべき物じゃないしな。
ちなみに証明部位などを確認する時は専用の手袋を付けているので素手で触るということはない。
なんでも衛生面がどうのこうの言われてそう決まってるらしい。又、冒険者もカウンターを血だらけにしないように証明部位や肉は充分に血を抜いておかなければならない。まあ当然と言えば当然か。
「お待たせしました。本物と確認出来たので依頼は達成されました。こちらが報酬の2000エルトです」
アンナから報酬金を受け取ると全てアレンに渡した。
「え、いいんですかコータローさん?」
「ああ、俺やウィルがやったわけじゃないからな。今回はお前のお陰だからお前が貰ってくれ。ウィルも異論はないな?」
「勿論ですよぉ」
「ありがとうございます!」
「そう言えばコータローさん。今の依頼の達成でDランク昇格試験が受けられるようになりましたがどうしますか? 今から受けることもできますが…」
「いや、今からだと何時終わるか分からないから今日はもう帰る。試験は明日の午前中に受けるよ」
「分かりました。お疲れ様でした」
アンナがそう言って俺たちはギルドを出た。
「さて、夕飯の時間までまだ時間があるけどどうする? どっか寄り道でもしてくか?」
「そうですねぇー……おや? アレはアンジェさんかな?」
ウィルがそう言ったので前を見てみるとアンジェがいた。
買い物なのか両手にはカゴを持っている。
「お、ホントだ。行ってみよう」
そう言って俺たちはアンジェのところまで行った。
「ようアンジェ」
「コータロー様。それにウィルさんとアレンさんも。今日の仕事はもう終わりですか?」
「ああ。アンジェは買い物か?」
「ええ、ミレーヌさんに頼まれて夕食の食材を買いに来たのでございます」
「そうか、じゃあ俺も付き合うよ」
「私も付き合いますよー」
「ボクもご一緒させてください」
「いいのですか? あまり多く買うという訳ではないので、すぐに済みますが…」
「構いませんよー? どうせ帰っても暇ですしねぇ」
「ああ、元々ちょっと寄り道するつもりだったし」
「そうでございますか。では行きましょう」
と、アンジェがそう言って俺たちはアンジェの買い物に付き合う事になった。
1時間後
「ただいま戻りました」
「お帰りアンジェ。おや、コータローにウィルちゃんとアレンちゃんも一緒なのかい?」
「ええ、途中でコータロー様達に出会って一緒に行くことになったのでございます」
「そうだったのかい。ありがとうね、食事の時間まで休んでなよ」
「そうさせてもらいますよ」
そう言って俺たちは部屋に戻った。
その後はいつも通りに過ごしてその日は終えた。
翌日
朝食を済ませた俺はDランク昇格試験を受ける為に1人でギルドへと向かっていた。
ウィルとアレンには留守番してもらっている。
「なんとしてでも試験に合格しないとな。落ちてまた最初からやり直しとか嫌だしな。頑張るか」
そう言ってる内にギルドへ着いたので中へ入った。
朝だからか、他の冒険者は数人程度しかいなかった。
「あ、おはようございますコータローさん」
俺に気付いたアンナが手を振りながらそう言った。
「おはようアンナちゃん。今日も可愛いな」
「可愛いだなんて…お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないんだけどな…まぁいいや、Dランク昇格試験を受けたいんだが?」
「分かりました。試験官の人を呼んでくるので少しお待ちください」
アンナはそう言うとカウンターの奥へと消えていった。
そして暫くすると1人の男性と一緒に戻ってきた。
男性はカウンター出て俺の目の前まで歩いて来た。
「お待たせしましたコータローさん。こちらの方が今回の試験官のモンドさんです」
「モンドだ。今回君の試験官を務めることになった。よろしく」
モンドと名乗った男性は見た目30歳前後で俺より小柄だがガッチリとした体格をしている。
「コウタロウ・アサヒナです。よろしくお願いします」
「コータローか、変わった名前だな。それより準備はいいか?」
「ええ」
「よし。今回の試験内容はビッグファンゴ1体の討伐だ。場所はここから南東にあるラクシュ村付近だ」
「ビッグファンゴですか」
「ああ。そいつが最近村に現れては農作物を食い荒さって、困っているとのことだ」
「成る程……」
「なんだ、不安そうだな。安心しろ、ダメそうだと思った時は助けてやる。その代わり試験には落ちるがな」
「そんな殺生なこと言わないでくださいよ」
「それが嫌ならなんとしてでも倒すんだな。ビッグファンゴ1匹倒せなければ冒険者なぞやっていけん」
「分かりましたよ。倒せばいいんでしょ。やってやりますよ」
「では行くぞ」
そう言って試験官はギルドを出てった。
「頑張ってくださいねコータローさん。成功を願ってますから」
「ああ、絶対に合格出来るよう頑張るよアンナちゃん」
そう言ってアンナに見送られながらギルドを出た。
それからラクシュ村付近までは徒歩で40分くらいの距離で、俺とモンドさんは村の近くの林に来てビッグファンゴを探していた。
「見ろコータロー、獣道だ」
モンドさんが指を指した方向を見ると、確かに獣道があった。
踏み固められた地面や草の幅からして、大型の何かが通ったのが分かる。
「これを辿っていけば奴に会えるかもしれん。行くぞ」
そう言ってモンドさんが再び歩き出したので俺は気を引き締めて彼の後ろを歩いた。
そして暫く獣道を辿るとちょっと開けた場所に出て、草むらには2mは超えてるであろう、巨大な猪が横たわっていた。
「あれがビッグファンゴか…デカイな」
今からあいつを俺一人で倒さなければならないのか。
するとビッグファンゴが起き上がり、こちらを向いたかと思うと威嚇行動をしてきた。
「気付かれたか。ではコータロー、証明してみせろ! お前の実力を!」
モンドさんはいつの間にか俺からちょっと離れた岩の上に立っていた。
俺はコクリと頷き、剣を抜いて構えるとビッグファンゴが突進してきた。
「ッ!」
横へローリングしてなんとか躱すと、ビッグファンゴは止まってこちらを向いて再び突進しようとしている。
ビッグファンゴは突進しか能がないが巨体の割に突進のスピードは早いし、大きな牙を生やしてるので突かれたら一溜まりもないだろう。だから気をつけなければならない。
「(まぁ、直進しかしないから十分対処は出来る筈…ここは魔法を使いながらスキを見つけて戦うか?)」
そう決めた俺が魔法を放とうと構えるとビッグファンゴが再び突進してきた。
「『火炎矢』ッ‼︎」
突進してくるビッグファンゴの顔に向けて『火炎矢』を放った。
そう思った途端、放った魔法は狙ったところに当たらず奴の頬の辺りを掠っただけで突進の勢いは収まらなかった。
「ちょ、嘘だろ…ッ!?」
横にステップして突進を躱すとビッグファンゴはUターンしてこちらに向かってきた。
しかもさっきよりスピードが上がっている。
「マジかよッ!? 」
このままじゃ串刺しにされるので慌てて右にハリウッドダイブして避けた。
「うぐっ…!」
着地した際にぶつけた腹の痛みを我慢してビッグファンゴから距離を取った。
そして奴はまたUターンして追いかけてきた。
「このままじゃ俺の体力が持たない…こうなったら一か八かだ‼︎」
俺は走るのをやめて止まり、振り向いて剣の柄をギュッと握った。
ビッグファンゴは更にスピードを上げ、俺との距離は約10mまで迫ってきた。
「まだだ…もう少し引きつけてから…『水膜』」
失敗するかもしれないので、念の為『水膜』を唱えた。
うっすらと青い輝きを持つ水の膜が俺の体全体を覆った。
そして奴との距離が5mを切ったところで俺は魔法を唱えた。
「今だ!『土盾』ッ!!」
地面から土で出来た壁が俺の目の前に現れた。
「からの! 『地針』!!」
土の壁に触れて『地針』を唱え、鋭利で大きな土の針が壁から生えた。
「止まれるなら止まってみやがれ!」
ビッグファンゴは止まろうとしているが時既に遅しで真正面から針に突っ込んでいった。
そして針がビッグファンゴの体全体を貫通しピク、ピクと痙攣しやがて動かなくなった。
「ふぅ…なんとか成功してよかった」
魔法を解除するとビッグファンゴの巨体が崩れ落ち、額に大きな穴が開きそこから血や他の液体らしきものが流れ、白目を向いていた。
「よくやったコータロー、合格だ。魔法も使えるとは聞いていたが本当だったとはな。しかも複数の属性が使えるとは…まさかお前が勇者じゃないだろうな?」
「まさか。俺は剣術と複数の属性の魔法が使える以外は只の一般人ですよ。それに勇者は複数人いると聞きましたしね」
「一般人か…」
モンドさんは俺を探るような目付きでそう言った。
「……何が言いたいんです?」
「いや、勇者は皆複数の属性魔法が使えると聞いているからな。もしかしたらお前もそうじゃないかと思ってな。気を悪くしたならすまん」
「大丈夫ですよ」
「ふむ…それよりさっきのはなんだ? 土属性の魔法のようだが...」
「あれは『二重魔法』という俺が独自で生み出した魔法で、『土盾』から『地針』を生み出すという魔法の重ね掛けみたいなものです。『針の壁』と俺は呼んでいます」
『土盾』で出来た壁は土で出来てるからそこから『地針』を生み出すことも出来るのでは? という考えがさっき生まれて、一か八かでやってみたんだが成功して良かった。
だが今回は成功したから良かったものの、次回もそうなるとは限らないので今後は色々試してみようと思う。
しかしあそこで『火炎矢』を外しちゃうとはなー、まだまだ訓練不足だな。
「そうか…しかしさっきのお前の戦い方を見ると、少々魔法に頼りがちな所があるな」
「そうですね…俺自身そう感じてはいます」
「自覚しているならいい。ではそろそろ戻るが最後まで気を抜くなよ? 帰る途中で死んだら合格の意味がないからな」
モンドさんにそう言われて俺は再び気を引き締めて歩き出した。
その後はホーンウルフが数体現れたが、モンドさんと2人で軽くあしらってギルドへ戻った。
そしてギルドへ戻ると、モンドさんがアンナに試験結果の報告をした。
これで試験は無事終了となり、俺はウィルと同じDランクの冒険者となった。
「おめでとうございますコータローさん! 試験に合格したのでDランクへ昇格となりました」
「やっとなれたよ。今思うと長かったなぁ」
「よく頑張りましたね。でもまだまだこれからですよ」
「そうだな、Dランクで満足してはダメだぞ。どうせならSランクを目指せ」
「勿論そのつもりではいますけど、どれだけの時間がかかることやら…まぁ、ゆっくり上がって行きますよ」
「そうか、まぁ精々頑張るんだな。では俺はそろそろ失礼させてもらう」
そう言ってモンドさんはギルドの奥へと消えて行った。
「コータローさん。Dランクに昇格しましたが今後はより一層依頼の難易度が上がりますのでくれぐれも無茶はしないように」
「分かってるさ。じゃあ俺は一旦宿に戻って休んでくるよ」
そう言ってギルドを出て俺は宿へと戻った。
「ただいま」
「お帰りなさいませコータロー様。試験はどうなりましたか?」
宿へ戻るとモップを片手に持ったアンジェに出迎えられた。
「なんとか合格したさ。これでやっと俺も一人前の冒険者だ」
「そうでございますか、コータロー様ならきっと合格すると信じておりました」
と、アンジェは嬉しそうに笑みを浮かべながらそう言った。
「ありがとうアンジェ、ウィル達は部屋にいるか?」
「ええ」
「そうか…なあアンジェ」
「何でございましょう?」
「近いうちに護衛依頼を受けて他の国に行こうと思う」
「……それは勇者様達から離れるためでございますか?」
「それもある。ただ一番の理由は、冒険者なんだから色んな所を見て回ってみたいんだ」
「そうでございますか。確かにその方がいいかもしれませんね、コータロー様は異世界の住人でしたので」
「ああ。もう少しだけこの国にはいるけど準備はしておいてくれ」
「畏まりました」
「じゃあ俺は部屋に戻る」
そう言って俺は部屋に戻った。
部屋に戻るとウィルはブレザーを脱いだ状態でベッドの上に寝転がっていた。
「ただいま」
「あ、おかえりなさ〜い。試験はどうなりました?」
「合格したよ、なんとかな」
「おめでとうございます〜。これでお兄さんも一人前の冒険者ですねぇ」
「まあな。取り敢えず午後から依頼を受けるがそれでいいよな?」
「いいですよ。宿で過ごすのも退屈ですからねー」
「決まりだな。ところでアレンは自分の部屋か?」
「はい、今薬の調合をやってるみたいですよー?」
「そうか。丁度11時になったし、飯食いに行こう」
そう言うとウィルが頷き、俺はアレンを呼びに行って一階へ降りて行った。
次は楓嬢の話になります




