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城を出れば冒険の始まり

そして時は流れて城に滞在する最後の日が来た。


え? 時間が飛んでる? 仕方ないじゃん、その間はひたすら剣と魔法の訓練とこの世界の常識とかを学んでたんだから。


変わった事と言えば平野がクレアとかいう女騎士と知らん間に無自覚フラグ建てた事だな。


俺は大分剣術は上達して魔法も中級を幾つか使えるようになり、魔物に関する情報はほぼ完璧だ。


あとウィルに関しては、楓嬢を除く勇者3人や王子や姫さんとかの一部の者が敵意剥き出しの目で睨んだり、「魔族は倒すべきだ!」とかどうのこうの言って絡んでくる事以外、何も問題は起きなかった。


他に分かった事はバルシオン国内での内戦の状況は共存派が優勢だとのこと。


どうやら魔族には古い世代と新しい世代に別れているようで、魔王を含む古い世代が支配派、新しい世代が共存派で、殆んどの魔族が新しいというか若い奴ばかりで、共存派の考えに賛同して兵力が増える一方らしい。


魔王もまだ完全に力を取り戻していないどころか、幾度無く繰り返される死と再生で体と魂に限界が来たようで徐々に衰弱していってるらしい。このまま行けば共存派が勝てるかもしれない。


最終日の午前に最後の魔法の訓練をして、午後に教官と最後の模擬戦をしたその日の夜、俺は大広間で並べられていた料理を食べていた。


なんでこうなってるのかと言うと、今日が姫さんの誕生日みたいで今年で16歳になるらしい。


それで貴族の人達を城に招待して誕生日パーティーを開いてるんだってさ。尚、平民達は招待出来ないが屋台を開いて、お祭りのようにして楽しんでもらっているらしい。


こうやって楽しんでもらう事で少しでも嫌な事を忘れ、不安を和らげようとしているのだとか。


まあそれはいい事だと思う、でも俺は楽しめてはいなかった。


何故なら貴族の人達が俺の方を見ては指を指してヒソヒソとなんか話しているからだ。


逆に勇者4人を見ると、少しでも関係を持とうと挨拶しに行っている。


平野、風間、柳の3人は笑顔で対応しているが、楓嬢だけは顔には出していないがうんざりしたようなご様子で、作り笑いで話しかけてくる貴族の人達に対応している。


勇者4人は制服を着てるので、それなりに上品さを出しているのでパーティーに相応しいのかも。


対する俺は普通の格好だからドレスや貴族風の服を着た人達から見ればなんだこいつ? って思われている。


要するに俺は完全に場違いということなんですねー。それで彼らが何言ってるのか気になって仕方ないので、料理を食べながら耳を澄ませて会話を聞いてみる。


「おい、あの男は何者だ?」


「あの男は確か勇者樣方の召喚に巻き込まれたらしい。なので勇者じゃないが、オリヴィエ様と同じく4つの属性の魔法が使えてオリヴィエ様以上の魔力を持っているのに魔王退治には協力しないらしい」


「なんと、それだけの力を持っているのに魔王退治には行かないだと? ふざけた考えだ!」


「それにどうやら魔族の女を城に連れ込んだらしいぞ」


「なに? それは本当なのか?」


「分からん。本当ならあの男は魔族と繋がりを持っていることになるぞ?」


「いずれにしろ、気に食わない男だ」


「全くだ。さっさと消えてしまえばいいのだ」


と男性陣からはそう言われ、


「見てあの男、勇者でもないのに平然とした顔でここにいるわよ」


「ホントだわ、何様のつもりなのかしら?」


「顔は地味だし、ここには相応しくない格好をしているし、常識がなってないわね。コウイチ様とユウガ様とは比べ物にならないわね」


「あなたそんな事言ったらコウイチ様とユウガ様に失礼よ?」


「それもそうね」


『オホホホホ』


と女性陣はそう言っている。


「………」


これは…涙? 私、泣いてるの?


隣にいるアンジェを見ると、顔には出してないが、自分の主人を侮辱されて我慢の限界が来たようで、わなわなと小刻みに震えていた。


「アンジェ、気持ちは分かるがここは我慢してくれ。面倒事を起こす訳にはいかないだろ?」


「ですがコータロー様…」


「どうせ今日だけだ。それに明日には俺達はもうここにはいないんだ、だから奴らの好きに言わせておけばいい。それにここで騒ぎを起こしたら、王様と王妃様に迷惑を掛けてしまう。俺はそんなことを絶対にしたくない。だから頼む、ここは我慢してくれ」


「コータロー様…申し訳ございません、アンジェが間違っておりました…」


「分かってくれればそれでいいさ。でも嬉しいぜ、俺なんかの為に怒ってくれるなんて」


「…それもメイドの役目でございますコータロー様」


「それでもだ。ありがとう、アンジェ」


そう言うとアンジェは一瞬だけ笑みを浮かべたが、直ぐにいつもの無表情に戻った。


「じゃあ戻るか。どうやら俺はここにいてはいけないようだからな、料理と酒をある程度持ってって部屋で食べよう。ウィルにも食わせてやりたいしな」


「畏まりました」


俺達は並べられた料理をトレーに乗せて、ワインやら他の酒を幾つか頂いて、部屋へと戻ろうとするとオリヴィエに出会った。


「あ、コータローさん。お酒と料理を持って何処に行くんですか?」


「ようオリヴィエ、貴族達が俺の事で色々言ってきて、ちょっと居心地が悪いから自室で食べようと思ってさ」


「そうですか…大変ですね」


「全くだぜ。じゃあ俺達は行くよ」


「あ…じゃ、じゃあ私もご一緒させてください」


「えっ? オリヴィエも来んの?」


「だ、ダメですか?」


「いやダメって訳じゃないが…俺の部屋魔族がいるんだぞ?」


「それでも構いませんよ、媚を売ってくる貴族の相手をするのが面倒くさくなってきたのでここを出たかったんです。それにその魔族に興味がありますので」


「ふ〜ん……」


「どうなさいますかコータロー様?」


「どうしようか?」


「私なら大丈夫ですよ、もし何かあってもなんとかしますから」


「え〜」


何かあったら嫌だしなー、アイツは魔封じの手枷で何も出来ない状態だけどその気になれば簡単に外せそうな気がする。


まぁ、その時になってから考えるか。


「…分かった、オリヴィエも来なよ」


考えるのが面倒くさくなった俺は了承し、オリヴィエにも料理と酒を持たせて自室へ戻った。





「ただいまー」


「おかえりなさーい。ってどうしたんですかそれ?」


「お前にも食わせてやろうと広間から戻る際にかっ払ってきた」


「ホントですか! ありがとうございます〜丁度お腹空いてたんですよ〜」


嬉しそうな顔でウィルはそう言う。どうやら食べなくても腹減る時は減るようだ。


「ウィル、この人はオリヴィエ。この城の宮廷魔術師だ」


「オリヴィエ・エクレールです、初めましてウィルさん」


「初めましてー、ウィルです」


魔族であるウィルを相手にオリヴィエは普通に接している事にちょっと驚いた。


まあ、ウィルの容姿が人間に見える所為かもしれんが。


「挨拶も済んだし、じゃあ食べるか」


そう言うとオリヴィエとウィルは頷き、グラスにワインを注ぎ、料理を食べ始める。


「アンジェも一緒に食べようぜ、朝から何も食ってないんだろ?」


「…良いのですか?」


「構わないさ」


「そうですか、ではご一緒させて頂きます」


そう言ってアンジェが椅子に座ると、使ってないグラスにワインを注いで渡す。


「あ…ありがとうございますコータロー様。では頂きます」


手袋を外してワインを一口飲むと彼女も料理を食べ始める。


暫く食べているとコンコンっとドアがノックされた。


「あ、俺が出るよ」


そう言って口の周りを綺麗にしてドアを開ける。


「こんばんわ幸太郎さん。今入ってもよろしいですか?」


「なんだ楓か、ちょっと待っててくれ」


俺はウィルにアイコンタクトで楓嬢が来た事を伝えると、ウィルはあっさりとOKサインを出したので楓嬢を部屋に入れた。


楓嬢はウィルを見るとペコリとお辞儀をし、ウィルもお辞儀をした。


「で、俺になんか用か?」


「用はありません。ただ、あそこにいるのが嫌になって部屋に戻ろうとしたら、料理とお酒を持って行く幸太郎さん達が見えたのでちょっと気になりまして。どうしてここで食事を?」


「俺があそこにいると邪魔みたいだし、俺もあそこにいるのは場違いだと思ったから」


「そうですか…あ、オリヴィエ先生も一緒だったんですね」


「ええ、私も貴族達の相手に疲れてきたので」


「そうなのですか…そちらの女性が例の魔族の方ですか?」


楓嬢はウィルの方に目を向けながら言った。


「そうですよー初めまして、ネクロマンサーのウィルです」


「お初にお目にかかりますウィルさん、私はカエデ・アマシロと申します。以後、お見知りおきを」


互いに笑顔で挨拶をした。良かった、楓嬢も普通に接してくれて。


「あなたがカエデさんなんですね。あの日の夜、よく私に気付きましたねー」


「初めは気のせいだと思ってましたが、あれだけ見られれば嫌でも気付きますよ…光一さん達は全く気付いていませんでしたが。あ、私もご一緒していいですか幸太郎さん?」


「いいよ」


「ありがとうございます」と言って楓嬢はウィルの隣の椅子に座って、料理を食べ始めた。


料理を全て食べ終えた頃には3人ともウィルとは打ち解けて、仲良さげに談笑してる。あーなんかいいね、この女子会みたいな感じ。


「あり? もう酒がねえじゃん。アンジェー、悪いけど酒を持ってきてくれ〜、ついでに料理もいくつか頼む」


「畏まりました」


そう言ってアンジェは部屋を出て行った。


「飲み過ぎですよコータローさん、もう止した方が…」


「うるさいんだよ〜、おたくは宮廷魔術師で俺のおふくろじゃないだろぉ?」


そう言うとオリヴィエは苦笑いをした。


「幸太郎さん、大丈夫ですか? かなり顔赤いですよ」


「大丈夫だ〜問題ない。俺はまだまだイけるぜ〜HAHAHAHA!」


俺はもうべろんべろんの状態、所謂最高にハイってやつだ。


「結構大量に呑んでましたねー、ここで吐かないでくださいよー」


ワインやらその他合わせて何本呑んだっけ? 12本くらい? 覚えてないや〜HAHAHA!!


「お酒の飲み過ぎは体に毒ですよ幸太郎さん?」


と、楓嬢が心配する。


「大丈夫だって、俺はこの程度じゃ吐かない」


「それならいいですけど、もし気分が悪くなったら言って下さいね。お手洗いへとお連れしますから」


「あいよ〜」


そう言うと再びドアがノックされて、楓嬢が出ると数本の酒瓶の飲み口を指に挟み、片手にトレーを持ったアンジェが入って来た。


「お、戻ってきたなアンジェ、ありがとう」


そう言うとアンジェはペコリと頭だけを下げた。




それからは軽い宴会みたいな感じになって、俺はそろそろヤバくなってきて、オリヴィエもウィルも大分酔っぱらってきた。


アンジェは少量しか飲んでいないから平然としてるし、楓嬢は未成年だから全く飲んでいない。


ちなみにこの世界では15歳から酒が飲めるようになるらしい。


「オリヴィエさん〜、オリヴィエさんは魔族を相手になんで普通に接してるんですかぁ〜?」


急にウィルがそんな事を言い出した。


確かに魔族を目の前に普通の対応が出来る訳がない。


「あ、確かにおかしいですよねぇ。実は私、幼い頃に魔族に助けられた事があるんです」


『えっ?』


俺と楓嬢とウィルは驚き、アンジェは無表情のままだった。


「魔族が人間を助けた?」


「ええ、信じられないかもしれませんけど事実です」


「何故、そのようなことに?」


楓嬢がそう言うと、オリヴィエはグラスの中の酒を一吞みし、


「…幼い頃、故郷の村の近くにある、魔物が大勢いるから入っては行けないと言われてる森に興味本位で入り、道に迷ってしまい、途方に暮れている最中、魔物に襲われそうになったところを助けてもらい、森の入り口まで連れてってくれたんです」


と言った。


「へーそんな事があったんですねー」


「魔族が人間を助けるなんて聞いた事がありません」


「魔族は人間を襲う存在と言われていますが私は全ての魔族がそうではないと思っています。現にウィルさんは人間と仲良くなりたいのでしょう?」


「そうですねぇ。流石に襲ってきたのなら、私もそれなりにやり返しますけど基本的にはこうして皆さんと一緒にご飯食べたり、世間話をして一緒に笑ったりしたいですねー」


微笑みながらウィルは酒の入ったグラスを片手にそう言った。


「そうですか、私も貴女のような魔族と交遊を深めていきたいです。あぁ、もうこんな時間…コータローさん、私そろそろ自分の部屋に戻りますね」


「ん、そうかい、じゃあそろそろ御開きだな」


「そうですね、お休みコータローさん、今日は楽しかったです。ウィルさんと話せて本当に良かったです」


「私もですオリヴィエさん、貴女とお話が出来て楽しかったですよー」


そう言ってウィルはオリヴィエに手を差し出し、握手し合う2人。


「機会があればまた、お話ししたいですねー」


「そうですね。その時はコータローさん達を含めてもっと大勢の人と一緒にしましょうか」


「あ、いいですね。その時が来るのを楽しみにしてますねー」


ウィルがそう言うとオリヴィエは頷き、御辞儀をして部屋を出て行った。


「じゃあ私も自分の部屋に戻りますね。御休みなさい幸太郎さん、アンジェさん、ウィルさん。私も楽しかったです」


「ああ、俺もだ。んじゃあ、お休みー」


「お休みなさいませ」


「お休みなさーい」


楓嬢が出て行くのを見ると、俺はアンジェに後の事を任せて夢の世界へと旅立った。





翌朝、とうとう出発する日が来た。少し飲み過ぎたせいか、若干頭が痛い。


「ついにこの時が来ちゃったな」


教官から支給された剣を腰に差して、城で用意させてもらった野営用テントやその他の道具などが詰められて膨らんだリュックサックを身に付ける。


そして最後にミリタリーなデザインのポーチが左右に着いたフィールドバッグを身につけた。


ずっと放置していた所為か、なんだか懐かしい感じがする。


そして装備の重さでちょっとズシリと来てるが、それほど苦ではない。


「そうでございますね」


アンジェは長方形のアンティークなデザインの大きなトランクを手に持つ。何が入っているのかはこの際気にしない。


「なんだか短いようで長かった気がしますねー」


そう言うウィルの手にはもう、魔封じの手枷は着けられていない。


朝食を済ませて身支度を整えた俺は玉座の間へ向かっていた。


アンジェは王妃様から許可は貰っており、必要な物は全て揃えた。後はこの城でお世話になった人達に挨拶するだけだ。


玉座の間の入り口にある大きな扉の前まで来ると兵士が扉を開けたので中に入る。アンジェとウィルは外で待機して貰っている。


赤絨毯の上を歩いて相変わらず、モアイのように直立している近衛兵達の間を通って、王様達の前まで来ると跪いて頭を下げる。


「面を上げよコータロー」


そう言われて頭を上げる。勇者や王子達はここにはいない。


「今日でこの城を出て行くのだったな。やはり考えは変わらぬか」


「ええ、俺は冒険者となって生きて行きます」


「そうか、ならばワシは止めはせん。そなたの好きに生きて行くがよい」


「ここまでしてもらったのに誠に申し訳ありません」


「謝らなくてよい。そなたにとってもここは居心地が悪かろう」


「…気付いていらしたのですか?」


「先日のフィロルの誕生会でカエデを除く勇者や貴族達がそう言っているのを耳にしてな、何とかしてやりたかったのだが、中々それが出来なくてな。済まない」


そう言って王様は謝罪する。


「左様ですか。ですがそれも今日で終わりでしょう、勇者じゃない俺がいても只の穀潰しと変わらないでしょうから」


「そんなことはない。だからそう自分を責めるような事を言うでない」


「お心遣いありがとうございます王様。では俺はもう行きます」


「お待ちなさいコータローさん。最後にこれを持って行ってください」


王妃様がそう言うと大臣の1人が1つの袋を俺に渡してきた。


「これは…いいんですか王妃様?」


受け取った袋の中身は金銀銅の硬貨や板が大量に入っていた。


「お金がなくては色々不便でしょう。それだけあれば当分生活には困らないと思います」


王妃様にそう言われて涙が出そうになるがグッと堪える。


「心遣い感謝致します王妃様、このご恩は一生忘れません」


「あなたの旅路に幸があらん事を祈っております」


「もし何かあればここを訪ねなさい。そなたの力になれるかもしれん」


「分かりました、では俺は行きます。短い間でしたが今までお世話になりました」


そう言って玉座の間を出て行って、アンジェ達と合流して城の門へと歩いて行くと、楓嬢と教官とオリヴィエが待っていた。


「楓に教官、それにオリヴィエ!? どうしてここに?」


「どうしてってそりゃあ、お前の門出だから見送ってやろうと思ってな。こうして待ってたんだよ」


「そうなのか。でもオリヴィエまでいるとは思わなかった」


「コータローさんも私の教え子の1人ですからね。門出を見送らない訳が無いでしょう」


「それもそうか。アンタにも色々世話になったな、感謝してるぜ」


「殆んどコータローさんが自分で覚えてたじゃないですか。私なんてちょっとしか教えてませんよ」


「それでも感謝してるさ。ありがとう」


「…どう致しまして。あ、そうそう忘れる所でした。これをあなたに差し上げます」


そう言ってオリヴィエは一冊の本を渡してきた。


「これは?」


「派生属性に関する魔法や理論が記された魔導書です」


「いいのか? 魔導書って確か貴重なんだろ?」


「いいんです。あなたに余り魔法を教えてやれなかったせめてものお詫びとして受け取って下さい。1冊くらい渡してもどうってことないでしょうから」


「それはそれでどうかと思うが…まあいいや、ありがたく貰うよ」


オリヴィエから渡された魔導書をカバンの中に仕舞うと楓嬢を見る。


「やっぱり行っちゃうのですか?」


「ああ」


「…私も連れて行ってはくれませんか?」


俺に抱き付きながら上目遣いで楓嬢は言う。


「う…ば、馬鹿な事を言うなよ、お前は勇者だ。一緒に連れては行けないよ」


「そう、ですよね…ごめんなさい、変な事を言って…寂しくなりますね…」


「そんな寂しそうな顔すんなよ〜、暫くはここで経験を積んでくつもりだから、まだこの国には居るからさ」


そう言いながら楓嬢の頭を撫でる。


「そうなのですか? じゃあまだ大丈夫ですね」


「え? なにが?」


「何でもありません。体に気をつけて下さいね」


「はいはい分かってますよお嬢様。じゃあ教官、先生、今までお世話になりやした」


「おう、達者でな。鍛えて欲しかったら何時でもここに来い。待ってるぜ」


「魔法で分からない事があったら遠慮なく訪ねて下さいな」


「そうするよ。じゃあな」


「カエデ様、アレックス様、オリヴィエ様。失礼致します」


俺がそう言ってアンジェがお辞儀をし、正門前に立つと兵士が門を開けた。


「おぉー」




門を開いた先にはヨーロッパ風の町並みがあって、俺は新しい人生への第一歩を踏み出した。

俺達の戦いはこれからだ!

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