魔族と一緒に王様に謁見
新キャラ登場
「で、お前これからどうするんだ? 魔王の所に戻る気はないんだろ?」
剣の手入れを続けながら彼女と会話を続けている。
「そうですねー、とりあえず一度共存派の人達のところへ行こうと思います。内戦の様子も知っておきたいので」
「そうかい、じゃあ変わった事があれば教えてくれ、俺はもう寝る。お前と話して疲れちまったよ」
「フフフ…じゃあ私は行きますね。また会いましょうお兄さん」
そう言ってウィルは窓を開けてウインクした後、窓から飛んで行った。
「ふぅ…俺もそろそろこの城を出ないとな」
5日後くらいにはここを出よう。それまでに戦う技術や知識を身に付けて、その後に冒険者になってこの世界でのんびりと暮らそうかな。
けどその前に明日王様に今日の事話してみるか。面倒くさいけど。
翌日。朝食を済ませて午前は教官とのワンマンレッスン、午後はオリヴィエや他の魔術師の指摘を受けながら魔法の練習という予定だ。
この世界の常識や文字は殆んど覚えたので今後の生活に問題はない…と思う。
騎士団の訓練所では平野と風間が交互にクレアと模擬戦してて、俺と楓嬢は新入り達と一緒に防具の付け方を習った後、案山子相手に剣術の特訓をした。
そして今は休憩中である。
「しかし意外だな」
「何がですか?」
「楓が剣術を習う事だよ。てっきり魔法だけを鍛えるだけだと思ってた」
「詠唱中は隙が出来てしまうので敵に接近されても対処出来るようにしたいんです。そうならない為に出来るだけ無詠唱で魔法が使えるよう努力はしてるのですが中々出来なくて…」
「そうなのか、俺と考えが似てるじゃないか」
「そうなのですか?」
「ああ。あともう1つ理由があって、詠唱を唱えるのが中二病を拗らせてるみたいで恥ずかしいんだよ」
「私は恥ずかしくなどありませんが…中二病ってどんな病気なのですか?」
え? ご存知、ないのですか? 中二病を?
「あー…なんて言えばいいのかな、精神的というか心の病みたいなもんかな? ていうか楓はそんなこと知らなくていいんだよ」
「どうしてですか?」
「別に大した病気でもないし発症するのが主に中学生男子であって、放っておけば自然治癒するから問題はない。だから楓は発症しないよ。多分…」
最後のは聞こえないように言った。
「?」
頭にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げる楓嬢だったが、なんとなく理解したのか、元の感じに戻った。
そうそう、柳は来なかった。楓嬢曰く、剣術の才能が無い事が分かったので、魔法を徹底的に磨くらしいのでオリヴィエとワンマンレッスン受けてるとのこと。
ちなみに楓嬢は教官から支給された剣ではなく、片刃で反りの入った細い刀身と護拳が特徴のサーベルを使った指導を受けていた。
教官曰く、サーベルの方が素人でも高い威力を発揮し、軽いので非力な女性でも扱いやすいのだとか。
そんな訳で今日の日程を終え、俺は今部屋で剣の手入れの最中だ。刃物は日頃の手入れが大切である。
「なあアンジェ」
「何でしょうかコータロー様?」
剣の手入れをしながら側で本を読んでいるアンジェに話しかける。
俺が何か頼まない間はずっと立ちっぱで可哀想だから、待機中は彼女の好きなようにさせている。と言っても座って本しか読んでないんだけどね。
「俺はそろそろこの城を出ることにするよ」
「……左様ですか。では私、アンジェもお供させて下さいませ」
「いいのか? 城を出た後冒険者になってあちこち行くことになるし、危険も伴うぜ? それに俺と一緒に行くのに許可とかが必要なんだろ?」
「構いません。私はコータロー様のメイド、ご主人様にご奉仕するのが私の役目でございます。尚、同行の許可については明日、王妃様にその事を話すつもりです」
「…そうか、お前がそう決めたんなら俺は何も言わない。好きにすればいいさ」
「ありがとうございます。出発はいつになさるのですか?」
「4日後に出発するつもりだ。それまでに必要な物を揃えて、剣術と魔法を出来るだけ鍛える。あと魔物に関する知識も」
「畏まりました」
魔物に関する知識は何故か教えてはくれなかった。
だけど勇者達は教えて貰っているらしい。
何それ? 俺だけハブですか? 幾ら俺が勇者じゃないからってこれは酷く無いか?
まぁ、この城の一部を除く人達からの嫌がらせとかはもう慣れてるから一々気にしないんだけどさ…兎に角、魔物に関しては本や詳しそうな教官とかに聞いてみよう。
団長は嫌いじゃないんだが、ああいう人はちょっと苦手で聞きづらいし、クレアなんか話しかけたらシカトされた上に睨まれるという仕草。
全く理由が分からん、一体俺が何をしたっていうんだ。思い出すとイライラしてきた。
「あと、王様に会って話しておきたい事があるんだが、今はダメか?」
「国王様にですか? お会いする事は可能ですが…」
「そうか、じゃあ悪いが王様の所まで案内してくれないか?」
「畏まりました。その前にコータロー様、窓の外でこちらの会話を盗み聞きしている曲者を始末しますので少々お待ちを」
そう言ってアンジェは立ち上がるといきなりメイド服のスカートをたくし上げ、むっちりとした感じの肉付きの太ももが見えた。
ストッキングだと思っていた物はガーターベルトで、太ももの外側にはホルスターみたいなのが付けられ、忍者が使うようなクナイみたいな物が納められていた。
彼女は黒くて鈍い光沢を放つクナイ? をホルスターから3本取り出し、指に挟むような持ち方をして、窓の方に走り込んだ。
「待てアンジェ! その曲者は俺の知り合いだ!」
俺がそう言うとアンジェは立ち止まったが、クナイみたいな武器は指に挟んだままだ。
「コータロー様の知人なのですか?」
「ああ、ほら以前、面白い奴と出会ったって言ったろ? ソイツだよ。ていうかお前気付いてたのかよ」
「ええ、上手く気配を消していたようですが、私には丸わかりです」
と、アンジェは言った。ホント何者なんだ? 気配に敏感だし、クナイみたいなのを持ってるし、アンジェの家系は忍者かなんかだったのか?
「そ、そうか。まあいい、兎に角、窓の外にいる奴は敵じゃないから安心してくれ」
「…分かりました。コータロー様がそうおっしゃるのであれば」
そう言ってアンジェはクナイをホルスターの中に仕舞った。
「ありがとう。おーいウィル、もう大丈夫だから入って来て良いぞー」
俺がそう言うと窓が開いてウィルが入って来るや否や直ぐに俺の後ろに隠れた。
「おいおい何隠れてるんだよ? 大丈夫だって別にお前を捕えたり、討伐したりはしないからさ」
「…ホントですか?」
「ホントさ。心配せずとも、この部屋にお前の敵はいないから安心してくれ」
「うぅ〜分かりましたよぉ…初めまして、元魔王四天王の部下、八大魔将軍でネクロマンサーのウィルといいます」
ウィルは俺の後ろから出てアンジェの目の前で挨拶をした。
「………」
アンジェは最初驚いたような顔をした後、ジッと暫くウィルを見詰めていたが、やがてニッコリと微笑んで
「初めましてウィルさん、私はコータロー様のメイドのアンジェリーナと申します。私の事は気軽にアンジェと呼んで良いですよウィルさん」
とお辞儀をしたのでウィルはホッとした表情をする。
「よ、よろしくアンジェさん」
「心配せずとも私は貴女に敵意を持ってはおりませんよウィルさん。だから怖がらなくても大丈夫ですよ? まあ最初は元八大魔将軍と聞いて驚きはしましたが」
「そ、そうですよねーアハハハ…」
「アンジェ、ウィルは魔族だけど一応味方で、俺の友人だから仲良くしてやってくれ」
「畏まりました」
「さてウィル、丁度いいタイミングで来てくれたな。今から俺達は昨日お前が伝えた事を王様に話しに行くんだが、証拠というか確信が持てるものが必要なんだ。だから一緒に来て欲しいんだが嫌か?」
「嫌に決まってるじゃないですか! 私が王様の所に行ったら絶対捕えられて処刑されるに決まってるじゃないですか! ヤダー!」
そう言って逃げようとするウィルの腕を掴んだ。
「は、離して下さい! 私はまだ死にたくありません!」
「大丈夫だって、もしそうなりそうだったら、俺とアンジェが守ってやるから」
「…本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。私達が貴女の身の安全をお守り致しますので、どうかご安心くださいませ」
「だから頼むウィル、俺と一緒に王様の所に来てくれ。俺だけじゃ信じてくれないかもしれないんだ」
と涙目のウィルの頭を撫でながらそう言った。
「……分かりましたよぉ、行きますよ。その代わりに絶対守ってくださいね!?」
「ああ、約束しよう。んじゃアンジェ、王様に会う許可を貰ってきてくれ」
「畏まりました。直ぐに戻りますので少々お待ちを」
そう言ってアンジェは部屋を出て行った。
アンジェが戻ってくるまでの間、俺は剣の手入れの続きをしてウィルはベッドで寛いでいた。
「なあウィル? お前魔王城に戻ってない間、食事とかどうしてたんだ?」
「食事はお金を幾らか持ってるのでそれでなんとか食べてました。まあ別に食べなくても平気なんですけどねー。お風呂はこの国を出た所にある森の川で体を洗ってましたよ。時々、魔物や盗賊に襲われそうになりましたけど、八つ裂きにしましたねー。洗濯は専用の魔導具がある所をこっそり勝手に使わせて貰ってましたねー」
さらっと恐ろしい事を言ったが聞かなかった事にした。
「そーなのかー、なんというか、まあ大変だったんだな。けど人ん家の洗濯用魔導具を勝手に使うのは止めようか」
「え〜なんでですかー?」
そう言ってウィルは首を傾げる。
「あのな、他人の道具を許可無く勝手に使うのは悪い事なんだよ」
「そうなんですかーわかりましたー」
と、ウィルが返事すると丁度アンジェが戻ってきた。
「お待たせしましたコータロー様、国王様は会って下さるようです。あと、私の独断で勇者様方も御呼び致しました。申し訳ありません」
「謝らなくていいぜ。むしろ丁度いい、勇者達にも話そうと思ってたからな。サンキューアンジェ」
「ありがとうございます。国王様と王妃様は玉座の間でお待ちしておりますので、あまり待たせぬよう参りましょう」
「分かった、行くぞウィル」
「はーい」
俺達は部屋を出て玉座の間へ向かった。
玉座の間の入り口にある大きな扉の前まで来ると、扉が大きな音を立ててゆっくりと開き、中へ入った。
玉座の間にはこの世界に来た時と同じように玉座に王様と王妃様が座って側に姫さんと大臣達が立ってて近衛兵達が相変わらずモアイのように整列している。唯一違うのは勇者4人組と1人の男が王様達の側に立っている事だ。
その男は白を基調とした豪華な服を着て、腰に剣を腰にぶら下げ、平野の黒い瞳とは違いサファイア色の瞳を持つ金髪のイケメンだった。
服装と立ち位置からしておそらくこの国の王子だろう、奴は俺を蔑んだような目で見下していた。
(チッ…コイツも姫さんと同類の奴か…)
「王様、いきなり会ってお話ししたいと申して申し訳ありません」
内心舌打ちしながらも俺は跪いて頭を下げながら謝罪する。
「うむ、その件についてはワシは気にしておらんよ。しかしそなたからワシに会って伝えたい事があるとそこのメイドから聞いた時は少し驚いたがの。で、勇者達まで呼び出してまで伝えたい事とは何かな? そしてそなたの隣にいる者は何者なのかね?」
「先ずはこの者の紹介からしましょう」
俺はそう言って隣で跪いてるウィルに目配りをし、ウィルは頷いてローブのフードを取った。
「お初にお目にかかります国王陛下。私は元魔王四天王の部下の1人、ウィルと申します」
ウィルが自己紹介をしたとたん、玉座の間に居た人達がざわめき、近衛兵達は一斉にハルバードを構えてウィルを包囲した。勇者達は武器は持っていないが光魔法を何時でも放てるようにしている。
「静まるのだ皆の衆!」
「しかし国王様! こやつは魔族ですぞ!? 即刻殺すべきです!」
と、大臣の1人がそう叫び他の大臣達も賛同してくる。
「そうですお父様、汚らわしい魔族が私達の城にいてはなりません! さらにその魔族を連れてきたあの男も捕えるべきです!」
「フィロルの言う通りです父上。魔族がこの城にいるなど、あってはならないことです!」
「待つのだアベル! 確かにこやつは魔族だが見たところ、こちらに害を成すようには見えぬ。それに元四天王の部下と言ったのだ、つまりこやつは八大魔将軍と言われていたのだろう。敵意が無くてもワシ等ではおそらく勝てぬ。今の勇者達でもな」
確かにコイツはその気になればここに居る奴ら全員、殺せるかもしれない。実力見てないから分からんけど。
「……。ですが父上、あの者達は…」
「彼がここに魔族を連れてきたのは何か理由があるのだろう、今は話を聞き、それからどうするかは決めようではないか」
王様がそう言って玉座の間にいる人達を黙らせる。
勇者達は魔法の詠唱を止めて兵士達は元の隊形に戻ったが警戒したままだ。
「…分かりました」
アベルとか言う王子様はそう言った後、忌々しげな顔で俺とウィルを見た。
姫さんも同じ顔をしている。よっぽど魔族がお嫌いのようだ、まぁ当然の事か。
「コータロー、何故魔族をここに連れてきたのか説明してくれぬか?」
王様にそう言われて俺はウィルを連れてきた理由を話すと、玉座の間にいた人たちが再びざわめいた。
「静まるのだ皆の衆!」っと、王様がそう言って再び黙らせる。
「騒がせてしまって済まぬな、なにせ各地の魔王軍や魔物達による被害の所為で、少し気が立っておるのでな」
「い、いいえ滅相もございません! 人間達の本拠地とも言えるこの場所に、私のような汚らわしい魔族がいるのが悪いのです国王様」
ウィル深く頭を下げながら言う。
「そうか…そなたは今までの魔族とは違うようだな、そなたの事は後でゆっくり話を聞こう。さてコータロー、ワシに伝えたい事とはなにかな?」
「お伝えしたい事とはクレイフォスとバルシオンに関してです」
「なに? クレイフォスとバルシオンについてだと? あの2ヶ国がどうしたというのかね? 話してみよ」
「その事に関しては私からお話し致します国王様」
と、ウィルが言った。確かにコイツの口から言った方がいいかもな。
「そうか、ではそなた、名を確かウィルと言ったかの? ワシにあの2ヶ国がどうしたのか話してくれまいか?」
ウィルは自身の事を話しながら最初にクレイフォス、次にバルシオンについて語った。
「なんと、そのような事が起こっているとはのぉ…」
ウィルが2ヶ国について一通り話し終えると玉座の間に再びざわめきが起こった。
クレイフォスとの関係がどうなのか俺には分からないが、魔王のいる国で内戦が起こっていると聞けば驚くだろう。
話を聞いた王様は困り顔をして何か考え事をし、王妃様は心配そうな顔で王様を見ている。勇者達の方を見ると今の状況が理解出来てないような顔をしていた。
「う〜む…そなたの言った事が本当ならば、バルシオンでこのまま共存派が勝てばワシ等人類は再び希望の光を取り戻すが、魔王が勝つ事も無いとは言い切れぬ。なのでバルシオンについては暫し様子を見ながら勇者達の修行をし、万が一の場合に備えよう」
と、王様は言った。
「本気ですか父上!? この魔族の話を信じるのですか!?」
王子が驚いた表情で言う。
「うむ、信じるぞ」
王様がそう言うと再びざわめきが起きる。
「し、しかし陛下、この魔族の話には信憑性というものがありませぬ。 ともすれば我らを騙さんが為に申していることやも知れませぬぞ!?」
「それはなかろう。ワシはこう見えて人を見る目には自信があるのでな、こやつが嘘を言っているか否かは顔を見れば分かる。そうだなウィルよ?」
「勿論です国王様、私は一言も嘘を言っていません。もし信じる事が出来ないのであればこの場で私を殺しますか? 私は逃げも隠れもしませんよ」
ウィルは無表情でそう言っているが、汗が流れて、体も僅かに震えている。
「そんなことはせんよ。ワシはそなたの話を信じておる。バルシオンには後日偵察部隊を送ろう」
ウィルの気持ちを理解しているのか、王様は険しい表情から優しい表情に戻ってそう言った。ホント、この王様優しいな…その優しさの所為でいつか酷い目に遭うんじゃないかと不安になってくる。そうならない事を願おう。
「…ありがとうございます国王様」
ウィルは安堵の表情を浮かべて、俺もホッとした気分になる。
「さてクレイフォスに付いてだが…あの国とは協定を結んでいるので、勇者達には関与してこないはずなのだ」
「どういうことですか王様?」
勇者4人のリーダ的存在である平野がそう聞いた。
「そなた達勇者達が召喚された日、あの国へ使者を送ったのだ。そして後日にワシはクレイフォスへと向かい、そこでレナード皇帝と協定を結んだのだよ。魔王軍駆逐の為の協力はするが、召喚した勇者達には一切関与させないという協定をな」
そんな協定が結ばれていたのか。
「私達は貴方達を国同士の争いには巻き込まないと決めているのです。ですが彼女の話が本当ならば、あの国は協定を破ったということになります…」
王妃様は悲しそうな表情でそう言った。確かに約束を交わしたのにそれが破られたら悲しくなるだろう。
「勇者達の体を使って一体何を企んでおるのだあの国は? 早速、諜報員達を送って情報を得るとしよう」
王様がそう言うと大臣の1人がお辞儀をして玉座の間を出て行った。
「さて、そなたの扱いについてだが一応、捕虜として扱い、監視をつけて暫く生活してもらうが何か異論とかあるかの? あれば申してみなさい」
「いえ、異論はありません。しいて言えば監視役はこの人にしてもらいたいです国王様」
ウィルは俺を指差しながらそう言った。え〜、俺をご指名ですか…
「そう申しておるがそなたはどうするのだコータロー?」
「あー……申し訳ありませんが、俺はこの城を出るつもりなので引き受けられません」
俺がそう言うと何人かがざわめきだした。
「なんと、城を出るとな?」
「それはまた、どうして…まだここに居ても良いのですよ?」
「俺もホントはそうしたいんですけどね、でも勇者じゃない俺がここにいても税金の無駄遣いだと思ったので」
邪魔者を見るような目で俺を見る奴もちらほらいるしな…楓嬢を除く勇者3人や姫さんに王子、他の大臣とか…な。
「そんなことはないのだがのう…まあそなたがそう決めたのであればワシ等は何も言わん。して、何時ここを出るのか教えてくれんか?」
「色々と準備するのもありますので、4日後に出るつもりです。あとコイツも一緒に連れてくつもりですので、それまでは俺が責任を持ってコイツを管理します」
「ふむ、ならばそこの魔族の監視役は必要ないようだな、ウィルの事はそなたに任せるとしよう。城を出る前に何か必要な物があればこちらで準備するので言いなさい」
「ありがとうございます」
「では戻りなさい。そなた達も戻ってよいぞ」
王様がそう言うと俺達と勇者達はお辞儀をした後、ウィルを連れて自室に戻った。
「ふぃ〜…なんとか信じてもらえて良かった良かった」
最悪の結果にならずに済んでよかった。
反逆罪だとかなんとか言われて、牢にぶち込まれるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。
「そうですねー、あの国王様優しいんですね。私、殺されるんじゃないかと思ってビクビクしてましたよー」
「王様の優しさに感謝するんだな…それにしても王子もいたのか」
召喚された日に王様に会った時に見なかったからな、てっきり姫さんだけかと思った。
「あの王子、汚物を見るような目で私を見てましたねー」
「魔族なんだから当たり前の事だろ。殆どの人間が魔族を嫌ってるからな、今日はもう寝る。アンジェ、悪いが毛布を1枚持ってきてくれ」
「畏まりました」
そう言ってアンジェが部屋を出て行くと俺はベッドに横になって体を伸ばす。
「お兄さん、私はどこで寝ればいいですか?」
「ん? あー、取り敢えずソファーで寝とけ」
俺はソファーを指差しながらそう言った。
「え〜、私もそっちのフカフカのベッドで寝たいですよぅ〜大体、こういうのって女性にベッドを譲って男の人がソファーや床で寝るんじゃないんですか?」
「そんなもの俺の知ったこっちゃない。兎に角俺はもう寝るの、これ以上騒ぐなら外で寝てもらうぞ?」
「そんな殺生なぁ〜」
「だったら牢に行くか? そこに行けばフカフカとはいかないがベッドで寝れるぞ?」
そう言うとウィルは色々文句を言いながら渋々とソファーで横になり、俺は瞼を閉じた。
アンジェはもしかするとアサシンの家系かもしれません。
意見、感想お待ちしてます。




