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九尾の孫 【勇の章】 (3)  作者: 猫屋大吉
9/14

編成

対がしゃどくろ、対玉賽破、敵に対する絶対の布陣は、存在するのか

優介、優子の見守る中、胤景、白雲、凍次郎、魏嬢、白愁牙、鵬辰、権現狸、太郎丸、蔵王丸、特殊突撃部隊10人は、テント前の空き地でコンビネーションの訓練を始めた。

白雲、必殺の火炎は、白い炎だ。白隙の白式牙突は、体ごと突っ込んで行く技だが規模が違う。辺り一面が炎に包まれてしまう、通常では火が点き燃え上がり炭となって燃え崩れ落ちるが、彼はこれをコントロールして矢の様な炎に変えて発射した、20m程向こうに立っている木が、炭化を越え、蒸発した。驚くべき燃焼温度だ。

凍次郎の凍砕は無色の寒波を発生させるこれも来牙の凍牙に比較出来ない、絶対0℃の強烈な冷気だ。世の中の全ての物質を瞬時に凍らせる容量と温度を持っている。驚くべきは、温度もそうだがその容量にあった。白雲の隣の木を狙い一点集中で狙い打つとこれも凍ったを越えて半透明となって崩れ落ちた。

権現狸はぶちかまし、体を金剛に変えて傍の木にぶつかって行くと木が粉砕された。

白愁牙の炎の盾、通常は、縦に使い壁を形成するのだが、水平に凪ぐと傍の木、5本が炎に依って切断された。焼き切った跡が残って焦げ臭い匂いが立ち込める。優子が咳をすると蔵王丸がその木を結界で囲み、6つに割って内部に雷を起こして煙を消すと匂いも消えた。プラズマで匂いまでを分解した。

魏嬢は、片手で無造作に手を握ると水を出し残り火を消した。空気中から掌のひねりだけで水を集めたのだ。特別な事は、何一つしていなかった。白愁牙が、「すいません、まだまだですね」と謝る。

優子、特殊突撃部隊隊員達は、あっけにとられて見ていた。

「すごいですね、特に白雲さんと凍次郎さん、あの2人が遣りあって回りが荒れ果てた理由が何となくわかりますよ、あの調子で遣ったんなら溜まったもんじゃないでよね」優子が言い、「不思議なのは、蔵王丸さんと魏嬢さん、手品を見ている見たいですね」

隊員達も「凄い」「まるで次元が違う」等、其々に言っている。

「でもね、優子、隊員さん達、彼らは、まだ変化していない状態であれなんですよ。変化すれば今の3倍いや10倍の力技が可能になるよ。俺が知ってる限りで魏嬢さんがその気になれば池や沼の1つや2つ簡単に作ってしまうよ。彼らが敵で無くて良かったよ」、「本当」優子は、短く答え(この集まった友達は優介の生き方の結果なんだよね)と思い心が熱くなった。

隊員達が一列に並んだ。鬼の力、目が2人、腕が1人、手が1人、足が2人、念動力が1人、空間移動が1人、近時間予知が1人、千里眼が1人。

目は魂を見る事が出来、腕は怪力、手は能力変化、足は、俊足の者と怪力を発する者、念動力は、物体拘束や移動させる事が出来、空間移動はテレポーテーション、近時間予知は、相手の攻撃が先に見え、千里眼は、どんな物でも見通す。

足と腕、空間移動、千里眼、近時間予知は、遊撃隊に配備された。

残りの目の2人、手の1人、念動力1人が 対がしゃどくろに配備された。

妖達も蔵王丸、太郎丸、白雲、凍次郎、が 対がしゃどくろに成り

胤景、魏嬢、白愁牙、鵬辰、権現狸が遊撃に回る。

優介は、対がしゃどくろに参加し、優子は、胤景が護衛する。

作戦指揮は、胤景となった。

其々のチームごとに別れてミーティングと個別作戦を立てて行く。




玉賽破ぎょくざいぱは、野狐やこ2匹の前に居た。

右目は、治らない、完全に失明している。

野狐の一匹が、「大丈夫で御座いますか」と聞くと「片目などどうでも良い。あれは、何だ、妖狐と土蜘蛛だったぞ、奴らが何故、徒党を組む、組むからには、その上に何者かが居るはずだ。情報が入らぬ。何故だ」片目を赤く爛々と輝かせて怒りを2匹にぶつける。

「情報が入らぬのは全く持って我らにも解りませぬ」

「あちらは、我らの場所を完全に把握しておりました」野狐2匹が交互に答える。

「このままでは、済ませぬ。残っている妖共を仏ケ浦に集めろ。奴らを根絶やしにして裏で動いている奴を引き摺りだしてやる」玉賽破が前足で地面を打ちながら言った。

「がしゃどくろを前線に配備させましょう。奴らは物理的な攻撃を得意とし、霊衝なる攻撃が脆弱と見て間違いないかとおもわれます。この後に及んでその様な人材を探す暇等無いと思われます」

一匹の野狐が言うと走り去った。

旧鼠きゅうそは、その会話をじっと道路の上から聞いていた。

(斯眼ちゃんに知らせないと)と心の中で思い。姿を消した。

旧鼠は338号線に沿って近道をしながらむつ市役所脇野沢庁舎に走った。

妖仙の弦泊に逢い、弦泊の力を借りて本部のある湯野川温泉へ転送して貰った。

旧鼠は机の下に居た斯眼を見つけ、2匹で優介の元へ走り、事の詳細を伝えると旧鼠がそのまま寝てしまった。「ほっとしたんだろう」斯眼が言うと、優子は、タオルで丁寧に旧鼠を包み、「ありがとう、御疲れ様」と小声で言い、医療テントの奥のベットに連れて行き、後を付いて来た斯眼も同じベットに乗せ、「ゆっくりしててね、起きたらチーズか何か食べる物持って来て貰うからね」と言い、テントを出て行った。

「胤景さん、どうする」優介が言う。

「遊撃隊を2つに別けたいな、だが338号線はカーブが多いから双発ヘリCH-47Jしか使えない」と言い、千里眼を呼んで家ノ辺周辺を探索させる。「敵、いません」との報告を受け、特殊突撃部隊の遊撃隊に物資のCH-47Jでの搬送を命令し、白雲、凍次郎に護衛を頼んだ。白雲、凍次郎の両名は、快く受け、6名がヘリに乗り込み向かう。

約10分程で到着すると隊員達は、手早くテントをたたみ、ヘリに運び、重機、軽機関銃等の弾薬類も運び入れ、20分程で完了してしまった。その後、CH-47Jは、むつ市役所脇野沢庁舎に飛び、其処にテントを張り、物資を運び込み作業を無事、完了すると海上自衛隊大湊基地から高機動車、高機5台を運んで来た。先行車の(新)73式小型トラックに運転手達は、乗って帰って行った。

弦泊が、「おい、白雲、凍次郎ちょっと来てくれ」と言うので医療テントに入って行くと医師2名、看護師5名が立って待っていた。

弦泊が邪魔くさそうに「この2人が九尾狐の日本最強の2強だ」と紹介している。

「御無沙汰しております、弦泊様、ところでなんですか、これ」白雲が聞くと

「いやな、九尾の狐ってのは、この国の女子達にも人気でな、一度見て見たいと言うだけの事なんじゃ」と少し、照れながら言うので、

「御初に御目に掛ります。天狐の白雲と申します」

「初に御目にかかります。天狐の凍次郎と申します」嫌がらずに丁寧に挨拶をする。

其れを見て 「お前さん方、いつに無く丁寧ではないか」と驚くと

「いや、姫におこられますので」と凍次郎が言った。

「え、姫って人間ですよね」看護師の一人が恐る恐る聞くと、

「はい、兄貴の嫁になる方で・・・ある意味、兄貴より怖いっす」凍次郎が答えた。

隊員の1人が「白雲さん、凍次郎さん完了しました」と呼びに来たので白雲、凍次郎は、1人1人と順番に握手して今後、此処が前線基地になりますが、御安心下さい。此処まで戦火が広がらない様にしますと言い、それでは、作戦展開中ですので失礼致しますと頭を下げヘリに走って行った。

「すっごい紳士ですよね」看護師の1人が言うと

「ぷっ」弦泊が飲んでいたお茶を噴出して「あいつらが・・・こりゃ良いや」と膝を叩いて大笑いし、

「え、でも紳士でしたよ」

「あいつら元々仲が悪くてな、喧嘩をすると直ぐに山の1つや2つは、草も生えない荒地にしおった物よ。今は、姫が居るから完全に奴らは、仲良くなったけどな」

「姫様に逢ってみたいわ」

「儂もまだ逢うた事が無いんじゃが、儂の友達の空狐と白澤も完全に下について働いておるわ」

「え、空狐や白澤も実在しているんですか」

「しとるよ。お前さん達も何処かですれ違っておるかも知れんぞ。記憶に残らない存在に成っておるから覚えてられないだけなんじゃ。さて、戦が始まると忙しく成るかも知れんから今の内にゆっくりしよう」と言い、医師2名、看護師5名を従えて控え室に戻って行った。


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