結界
輸送へり、CH-47Jが、広場に着陸し、太郎丸、特殊突撃部隊隊員9名、鵬辰、権現狸が降り立った。太郎丸は、そのまま作戦司令部に歩いて行く。
鵬辰に抱かれているのは、来牙であった。全身を強打し、背骨、肋骨が折れている。
鵬辰は医療テントへ来牙を運ぶと作戦司令部の胤景の元へ行く。
特殊突撃部隊隊員達は、自分達のテントへ装備を運び、ミーティングを始めた。
上條真一は 特殊突撃部隊のテントに向かった。
中に入ると、同僚達が、「退院したらいいな」と言って歓迎して呉れた。
真一は、【手】の事を話すと 驚いた様子も無く、皆が受け入れて呉れた。
「それで漸く本当の仲間になったなぁー」と言われて驚くと
眼球を入れ替えた者、足や腕を入れ替えた者等、ばかりだった。
「真一は、この部隊に入ってまだ2ケ月だから知らないのは当たり前だ」
「え、指揮官、言って無かったんですか」
「俺だけかと悩んでました。だってね、町中で女の服が透けて中身見えてたり、目のやり場に・・・まぁ、今は、結構、それで楽しんではいますけどね」とか色んな事をしゃべっている。
「結局、知ってたのは、指揮官と胤景さんだけだったって事?」
「だから特殊部隊なんだよ。自衛隊の中で特殊部隊が色々あるけど胤景さんと行動を共に出来る部隊は、俺達だけしかいないんだよ」指揮官が締めくくる。
真一は、「優介さんから、がしゃどくろをやっつける方法を思い付かないかって聞かれています」と言うと「うん、それを我々も考えていたが全く持ってお手上げ状態なんだ」と返事が返って来た。
「じゃ、皆で集まって考えませんか」真一が、言い 無理やりに全員を胤景達の居るテントに連れて来て来ると、優介、優子、凍次郎、白雲が椅子とテーブルを用意して全員で対策会議を再度、開始した。
権現狸もそれに加わる。
優子がコーヒーを全員に用意しながら特殊突撃部隊の面々と話をしている。
「え~、そうなんですか。全員、改造されちゃってるんですか」と驚き、「胤景さん、人の体に何してるんですか」と真剣に怒り出した。凍次郎はそれを見てにやにやしている。
「姫、怒らないで下さいよ。俺も最初は、悩んだんですよ。でも結局、こいつらは、俺の為に命を投げ出してでも作戦遂行を選んだ奴らなんです。俺は、こいつらを死なせたく無かったし、まして片手、片目の不自由な暮らしなんて絶対させてはいけないと考えました。だってこいつらは、この国の為にその身を投げ出してくれた奴らです。そこで空狐の天日殿に相談して 医師、妖仙の弦泊殿を紹介頂き、御願いした訳であります」胤景が、特殊突撃部隊の面々に頭を下げた。
「総指揮官殿、解っていますよ。礼を言うのは、我々の方です」隊員全員が立ち上がって頭をさげた。
優子は、「皆さん、無理は、絶対、絶対しちゃダメですからね」と言うと胤景の尻を盆で叩いて「信頼されてますね。良かったです。ほっとしました」と小声で言った。
胤景は、(姫には勝てないな)と心から思った。
「うぉーーーぉっ、良く寝た」
控えに居た医師2名と看護師5人が飛び出して来た。
医師の一人が傍に走り寄り「腕が元に戻って継ぎ目が全く分からない」と言った。
蔵王丸がその天狗の姿のまま立ち上がり、「すまない、手数を掛けた」と医師達に頭を下げる。
「いえ、私達は、何も」一人の医師が言った。
「弦泊と言われる方です」と言うと
「何、妖仙の弦泊殿が、儂の手当を・・・勿体ない、有り難い事よ」と感激している。
「よう、起きたか」弦泊がテントに入って来た。
慌てて蔵王丸が跪くと、「そんな事するものでは無い、天日殿に頼まれて来てみれば、天狗の蔵王丸ではないか、儂も一寸、びっくりしたぞ。ぬし程の者の片手を捥ぎ取る相手だとは・・・まぁ、儂が呼ばれた訳がなんとのう解ったわい」と言いながら笑う。
「本当に天狗さんだったんですね」看護師の一人が言った。
「はい、申し遅れました。私、天狗一族の五鬼助を率いております蔵王丸と申します」律儀に答え、
「あの本部の方は」と弦泊に聞くと「儂の弟子3人が行っておる。向こうも白隙、北渡、槃蔵の九尾の狐と特殊突撃部隊、土蜘蛛の胤景の部下じゃな、彼らも重傷であったらしい。白隙に至っては、毒気を喰らい、優子殿と優介殿に治癒して貰い回復に向かっておるらしい」と言うと
「九尾の狐、土蜘蛛・・・そんなに居るんですか。優子殿と優介殿って」看護師が言っている。
「九尾の狐は、人間の女子には、人気があるようじゃな」弦泊がうっとおしそうに言う。
「優介殿 儂らは、兄貴とよんでおる御方よ、優子殿は、姫様じゃ、2人共、人じゃよ。と、儂も本部へ一旦、戻らねば成りますまい、今日の所は、これにて暇致します。間違い無く、ここが前線基地になると思われます。其の時にもよろしく御願い申します」弦泊と医師、看護師に頭を下げるとテントから出て行く、医師、看護師も追いかけて出て行くと
「ひとまず、さらばでございます」と言い、左手で空を仰ぐと瞬時に消えた。
本部前、上空に蔵王丸が現れ、静かに降下し、地面に降り立ち、作戦司令部に歩きだす。
「おう、太郎丸、無事だったか」テントに入り、いきなり声を掛ける。
優子が走り寄り、腕、治った?と聞くと姫、御心配御掛けしました、ただいま戻りました、と答えた。
「腕が生えるからってむちゃし過ぎだぞ」優子が言うと、
「すいません。どうしても一矢報いたくて・・・気をつけます。ですが、これで奴の死角が出来た訳ですから兄貴の反撃が少しだけ楽になったかもわかりません」蔵王丸が言った。
「ありがとう、何も言えないな」優介が言い、「あとは、白隙さん、来牙さん、槃蔵さんの3人だな」
優介、優子、胤景、白雲、凍次郎、魏嬢、白愁牙、鵬辰、権現狸、太郎丸、特殊突撃部隊10人
の20人が揃った。
「先ずは、がしゃどくろ 奴を何とかしなければ確実に全滅する」優介が全員を見渡しながら言った。
特殊突撃部隊隊員の一人が手を挙げて「私のこの鬼の目に奴が押し潰された時に骨の7つが禍々しい黒い炎の様な物が見えたんですが、何か解る方居られませんか」
優介が
「其れか、其れが奴の本体か」と言った。
「どの部分だった」胤景が聞くと
「首の根元辺りでした」
「鬼とはそんな物まで見えるのか。流石に妖最強の魔物だ」白雲が言うと
「だから滅殺出来なかった。バラバラにする以外に手立てが無かったんじゃよ」といつの間にかテントに入って来た槃蔵が言った。
優子が「槃蔵さん、大丈夫ですか」と聞くと「歩くのはまだちいーと辛いのぉ」と微笑みながら言い、「もう一人ベットで起きた奴もいるわい」と言った。
「其の7つの骨を叩いて結界に閉じ込め怨念と成った魂を滅殺すれば良いのか」
権現狸が言うが 「結界内で術を使える者が居ない」白愁牙が言う。
優介が「そうか、そうだ、この手が有る。結界を一度解く。聞いてくれ。太郎丸に術を使って押し潰して貰い、鬼の目でどの骨かを蔵王丸かこの俺に伝える で俺達の何方かが其れらの骨に結界を張ると怨念の魂がその結界から逃れようと骨から抜け出る。抜け出た所で一度結界を解き、其の瞬間に胤景、白雲、凍次郎、魏嬢、白愁牙、鵬辰、権現狸、太郎丸、特殊突撃部隊隊員達の持つ其々の最強の技を持って7つの穢れた魂を打つ。此れなら行けると思う。7つが集まれば強力だがバラバラの単体相手なら貴方達の力で何とでも出来るはずだ」と作戦を伝えると
「誰と誰が組むかを考えれば良いだけじゃのう。良い策だと思う。決め手はタイミングだけじゃ、練習せねばなるまいて」槃蔵が言った。