表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
九尾の孫 【勇の章】 (3)  作者: 猫屋大吉
5/14

敗退

敵も味方も負傷者続出。

胤景いんけいが海上自衛隊大湊に携帯から電話を入れる。

救護班とヘリUH-60Jの出動要請を入れる。

海上自衛隊大湊からむつ市役所脇野沢庁舎へ緊急要請が発令される。

むつ市役所脇野沢庁舎駐車場へのヘリの発着と医療チームのテント等の増設である。

胤景が傍らに座っている狐に鐸閃へ蔵王丸他数名をむつ市役所脇野沢庁舎駐車場に連れて行く様に指示を出す。狐が葉書きを使って指示を出した。




特殊突撃部隊の部隊長は、手動単発式擲弾発射器M203A2を使って骨を砕く作戦へと移行する。

隊員達が一斉に背中に背負っていたM203A2をM4カービンに装着させて行く。

太郎丸が重機関銃62式機関銃改を地面に落とす。

上着を脱ぎ自分の下腹を叩いた。

目が細長く切れ長になり吊り上る。その奥にある目が赤く燃える。

顔色が赤くなって行く。鼻が少し前へ伸びる。

背中から真っ黒な羽を纏った翼が出来ていた。

天狗へと変貌を遂げた。

単発式擲弾発射器が10本同時に発射された。

擲弾ががしゃどくろへと飛んで行く。

着弾順に炸裂して行く。

骨が中を舞う様に散らばって行く。

がしゃどくろが地面にへばり付く様に倒れ込んだ。

散らばった骨がまたがしゃどくろへとずるずると戻って行く。

部分部分が結合して行き、それはがしゃどくろ本体へと戻って行く。

がしゃどくろが四つん這いの状態で起き上がった。

悪い夢を見ている様な錯覚に陥る。

太郎丸は、両手を胸の前に持って行き、印を結びだす。

印を結ぶ速度が上がって行き、残像の印が次々と浮かび上がって行く。

空中に浮かび上がった残像の印は、白く光り、全ての印が横並びに太郎丸を囲む。

両手を空へ翳し、今度は勢い良く両手を下に下げた。

骨の折れる音、頭蓋の砕ける音と共にがしゃどくろは、地面に押しつぶされた。

静寂が辺りを包んだ。

がしゃがしゃと骨が再生している。

「これでもまだ再生するのか」太郎丸が言う。

「何か手立ては、ないのか。物理的な方法ではだめだ。何度でも再生しやがる」

白隙が言うと来牙、権現狸、槃蔵、鵬辰、太郎丸、特殊突撃部隊の部隊長が首を縦に振る。

白隙は、特殊突撃部隊の後方にいる狐に胤景に問い合わせる様に指示を出す。

「先にこいつを殺る」と言い、来牙が がしゃどくろが骨を再生している脇を通り、人食刀(いぺたむ)へとその刃を向ける。権現狸、槃蔵が続く。

権現狸がその身を丸く丸めて体当たりするが、刀に弾かれる。

来牙は、刀に凍気を纏わせ、人食刀に切り掛かるが、逸らされた。

「3人で同時攻撃しないとだめだ」槃蔵が叫ぶ。

権現狸が人食刀の正面に立つと「俺を切れる物なら切ってみろ」と叫ぶ。

人食刀が、脇構えから左手を引っ張り、右手で押し付ける様に切ってくる。

権現狸が体を金剛に変化させこれを迎え打つ。

権現狸に刀が当たる瞬間、来牙が凍気を纏わせた刀でその刀を撃つ。

人食刀の動きが止まった。体が氷に包まれた。

続く槃蔵が袈裟切にその体を断ち割った。

本体を切られた人食刀が「ギヤー」と言う悲鳴と共にその体が刀に飲み込まれて行き、古びてボロボロの刀になり地面に転がった。

3人が振り返った。

鵬辰が四つん這いになって手足が其々2本づつに別れ背中に蝙蝠の様な羽が出現していた。

その隣で白隙が変化していた。口には、真っ青に燃える刀が銜えられている。

刀の温度が上がって行く。

赤から青、青から白色へと上がり、白隙の体からも白色の炎が噴き出していた。

鵬辰の背中から糸の様な物が無数に出ている。

がしゃどくろのまだ再生途中の腕に絡み付いて行く。

白隙がその腕を目掛けて飛ぶ。

体の前に中段の構えから刃先寄りに左手を当て体ごとぶつかって行った。

真っ白い炎が飛んでいる様に見える。

自らの体を剣撃とする白隙が修行の結果、得た最強の奥義だ。

一瞬で鵬辰の出した糸に包まれたがしゃどくろの腕が燃え上がり、炭化して行く。

炭化した骨は、再生を試みるが、ぼろぼろと崩れてしまう。

がしゃどくろの肘から先を奪った白隙の技であったが、白隙自身も切った骨からの毒気に侵された。

通過した白隙は、口から血を吐き、倒れている。

「白隙」鵬辰が叫ぶ。来牙が走り寄る。

来牙が凍気を調整して仮死状態にして毒気が浸食するのを止める。

鵬辰が糸を出しその体を包みこんだ。

糸を操り、傍にあるジープへ乗せる。

「一旦、引くぞ」鵬辰が大きな声を上げた。

鵬辰の部下7名が白隙の部下10名が高機動車、高機とジープに乗り込み先行する。

鵬辰、来牙、白隙を乗せたジープが、発進する。

太郎丸、特殊突撃部隊員が、高機動車、高機で発進した。

最後に権現狸、槃蔵、鵬辰、狐2匹がジープに乗った。

後ろからがしゃどくろが自らの骨を再生した片手で投げつけた。

「あいつ、どうすりゃ良いんだ」言いながら権現狸が後ろのシートに座った槃蔵を振り向き絶句した。

槃蔵に骨が背中から突き刺さり腹に付き出している。

「急げ、槃蔵がやられた」権現狸が、叫び、骨を抜こうと後ろに行こうとする。

「何をする」鵬辰が聞く。

「何って、背中から腹に貫通してる骨を抜く」権現狸が焦った様に言う。

「抜いたら出血が余計に酷くなり、止まらん。焼くのが一番だか、白隙があの状態だからな」

鵬辰が叫び、狐に槃蔵がやられた告げろと言うと、もう送りましたと返答する。

5台の車がジャングルを抜け、253号線に向かう。

ヘリUH-60Jが5機待機していた。遊撃部隊が乗って来たヘリだ。

すぐに発進するぞと声を掛ける。

ヘリ1機目に糸を解いた白隙と槃蔵と権現狸を乗せ発進した。

鵬辰が狐にヘリCH-47Jを一機回して呉れる様に連絡して貰う。

2、3、4機と飛んだ時だった。

森の方から音と叫び声が聞こえている。

全員が森の方を見た。

「来やがった」来牙が叫ぶ。

森からがしゃどくろと残った敵が追いかけて来た。

こっちに残っているのは、鵬辰、来牙、特殊突撃部隊員9名のみになっている。

一名は、手首損傷の重傷を負ったので先のヘリで病院に向かわせた。

特殊突撃部隊員3名が、CH-47Jで空中投下した武器の中から87式対戦車誘導弾、通称名対戦車ミサイル砲タンクバスターを設置している。3名は、MK2破片手りゅう弾を地面に埋め、引き抜きバーに糸を絡めて設置して行っている。残りの3名は、単発式擲弾発射器10機、を車から降ろしたり5.56mm機関銃 ミニミをテントから運び出し設置している。

「さすがに特殊突撃部隊だな、俺としては戦車が欲しいところだ」来牙が笑いながら言う。

「さて もう1ラウンド、遣るか」鵬辰が言った。

253号線を家ノ辺へ向かって来る異形の一団、がしゃどくろが四つん這いでその中程をやって来る。

「来たぞ」鵬辰が言った。

特殊突撃部隊隊長が、作戦開始、散開と号令を発した。

家ノ辺の入口は、約200m程の直線と成って居る。

「此処を選んだ理由がようやく解った」来牙が言う。

鵬辰が羽を広げ、右周りで直線道路に向かって行く。

来牙が変化して行く。

鵬辰の背中から糸が出て行く。空中に蜘蛛の巣が出来上がると次々に道路へ落として行く。

鵬辰が戻って来た。

道路に出て来た。火の付いた輪っかが走って来る。

来牙が氷の付着した刀を口に咥え疾走する。

来牙の走った後がどんどん氷付いて行く。

来牙と火の付いた輪っかががすれ違う。

輪っかが2つに割れて転がった、

輪っかは凍っていた。近くに居た妖達2~3匹も凍りつき倒れてバラバラに砕ける。

「来牙さん、下がって」特殊突撃部隊隊長が、叫ぶ。来牙が疾風の様に駆け戻る。

「よし、撃て」合図の元、87式対戦車誘導弾、通称タンクバスター3機、単発式擲弾発射器4機が一斉に火を噴く。

戦車誘導弾のミサイルが小さな孤を描きながら着弾して行く。

タンクバスターの補助が次々と次弾を装填して行く。

擲弾発射器は、持ち替えて発射する。

がしゃどくろが来た。

隊員の一人が手を挙げて糸を次々に引いて行く。

がしゃどくろを爆発が真面に捉える。

がしゃどくろがバラバラに吹き飛んだ。

隊員達は、56mm機関銃を手に取る。

タンクバスターのミサイル弾が尽きた。

「突っ込めー」隊員達が突っ込みながら56mm機関銃を乱射して行く。

その後ろを来牙が追う。

鵬辰が74式車載7.62mm機関銃を掴み上げ、走った。

がしゃどくろが再生し始める。

来牙が剣撃を撃つ。骨が凍る。

「くそ、再生を止める事しか出来ねぇ」独り言を言う。

がしゃどくろの中途半端に再生した腕が伸びる。

「危ない」鵬辰が叫んだが、間に合わなかった。

来牙の体が後方に弾き飛ばされた。地面に叩き付けられた来牙が、動かない。

鵬辰が走り寄り、来牙の体を掴んでヘリの方に滑らせ、発進用意しろっと叫ぶ。

来牙の体が150m程後ろのヘリまで滑って行く。

ヘリの乗務員が2人で来牙をヘリに載せ、エンジンをスタートさせる。

鵬辰が隊員の一人を呼び、高機を2台用意しろ、退却するぞっと言う。

隊員がもう一人に声を掛け、高機を取りに走る。

高機がバックでやって来た。

「退却、全員乗車」鵬辰が叫ぶ。

高機に全員が乗り込んだ事を確認した鵬辰が最後に手榴弾5ケを一気にばらまき、

「発進」と叫ぶ。

短いスキッド音とディーゼルエンジンの出す排気ガスを残し、全速で発進する。

鵬辰の74式車載7.62mm機関銃が火を噴き、追って来る敵を肉片に変えて行く。

家ノ辺の交差点手前で爆発が起こった。

ヘリが舞い上がる。

高機が角を曲がって全速で走る。

惨敗だった。

たった一匹に。がしゃどくろに敗退した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ