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九尾の孫 【勇の章】 (3)  作者: 猫屋大吉
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会敵

討伐作戦 起動します

翌日、作戦開始の日は、雨が降っていた。

胤景が、これは都合が良い。奇襲をかけるには持って来いの日和だな と喜んでいた。

「上手く行くかな」優子が言う。

「罠が無ければ良いが」白雲が呟いた。

胤景が、葉書きを送った。(作戦開始、発進せよ)

海上自衛隊大湊基地から5機のUH-1Jが前線の遊撃部隊を積んで発進する。

後方作戦部隊がトリノ沢を出発する。

側面の搖動部隊の鵬辰ほうたつ達は、昨晩の内に三森山から移動し、三森山と天ケ森の中間地点にいた。中間地点を出発する。一方の搖動部隊は、佐井村に潜伏し、後方作戦部隊との時間差攻撃に備える。



太郎丸以下五鬼継一族16名を乗せたCH-47J輸送機が飛び立つ。



5機のUH-1Jがふれあい温泉川内北部の家ノ辺に着陸する。

機体から権現狸、槃蔵、白隙、来牙と五鬼継、五鬼助の精鋭各5名、白禅の部下10名が降り立つ。

テントの増設を白禅の部下10名が行っている間に権現狸、槃蔵、白隙、来牙と五鬼継、五鬼助の10名が253号線から二股に別れた道の右側の道路を駆けて行く。獅子矢沢側から天ケ森への侵入ルートだ。

その後ろをテントを設営した白禅の部下10名が、追う。

遊撃隊が獅子矢沢手前に到達した。川の向こうが天ケ森だ。

天ケ森に散会しながら入って行く。

前方に10匹の妖が横になっている。距離約200m、権現狸、槃蔵の2人が近づいて行く。

距離150、140、120、横になって居た一匹が、こちらを見る。

権現狸、槃蔵が走る。散会した白隙、来牙、特殊突撃隊の隊員達も走る。

距離50mに達した。槃蔵が止まって白歯を抜き出す。歯からチリチリと音が鳴っている。

権現狸は、走る。距離20m。

槃蔵が上段から一気に刀を振り降ろす。

刀身から”く”の字に曲がった電撃波が打ち出された。辺りの木や枝を切り裂き燃やしながら権現狸に向かって飛んで行く。

権現狸が、体を丸めて斜め上に飛び跳ねる。

電撃波が権現狸に当たり、権現狸がそのまま横になっている敵にまっすぐ飛んで行く。

ドォォォーンと物凄い音と稲光と地響きが辺りを包み込んだ。

周囲12~13mに渡って木や地面が抉られた。

奥から音を聞きつけ走って来た妖に今度は、炎の斬撃が散弾の様に襲い掛かる。

横から走って来た妖には、氷の刃がこれも散弾の様に襲い掛かった。

権現狸、槃蔵、白隙、来牙の両端に散会した特殊突撃隊もM4カービンを乱射している。

天ケ森の入口は、阿鼻叫喚の騒ぎになった。

敵の鎌鼬かまいたちが、銃弾を掻い潜り特殊突撃隊の一人の手首を切り落とす。

来牙が抜き身の刀を手に鎌鼬を追う。

白隙の刃は、青く燃え、その炎の温度を上げて行く。

白隙が、空中を十文字に切り裂く。

十文字の炎が前を飛んで行き、木の後に隠れた妖ごと木を焼き切った。

向こうで来牙と鎌鼬が、切り結んでいる。

来牙が「白隙、鎌鼬に当てろ」と叫ぶ。

白隙が空間を十文字に切る。

白隙の十文字に灼熱の剣撃が飛んで行った。

鎌鼬がその剣撃を受け止めた。

鎌鼬の体が、赤く熱を帯びる。

白隙の剣撃が逸らされた。

来牙が思いっ切り剣撃を繰り出した。

鎌鼬に当てる。

鎌鼬がそれも受ける。

受けた筈が、体がボロボロと崩れて行く。

熱を帯びた体が、一気にマイナス寒波に晒されて崩れて行く。

戦いながら横眼で見た槃蔵が、「ほう、土壇場で力を上げよった」と嬉しそうに呟く。

「槃蔵、こっちに打て」権現狸が叫ぶ。

槃蔵が放つ。

権現狸が飛んで行く。

爆発が起こった。

次の瞬間相手の大きな手が権現狸を弾き飛ばす。

骸骨の顔に燃える赤い目、がしゃどくろだった。

爆発で失った片手が再生して行く。

敵が引いて行く。がしゃどくろの後ろに隠れ、刃物を飛ばして来る。

人食刀(いぺたむ)が後に居る。

全員がその刃物に対処しながらの攻防になる。


空気が振動する耳鳴りの様な音がした。

CH-47J輸送機の爆音だ。

白隙が 「来たか」

4気筒ディーゼルエンジンの音と機銃音が近づいて来る

62式機関銃改、車載兵器として改造された5.56mmの機銃音だ。

がしゃどくろの後ろに隠れた妖が、一体、また一体と千切れ飛ぶのが見える。

来牙が「骸骨の化け物に血が好きな刃物かよ、厄介だな」呟く。

五鬼継一族が、敵の背後から迫る。

来牙が、斜め前方に爆発音を聞いた

鵬辰の部隊が、M4カービンを撃ちながら白隙達の右斜め前方、敵の斜め後ろから来た。

天ケ森の敵は、3方向からの襲撃に勢力を見る見る失っていく。




仏ケ浦では、上からの攻撃で敵が砂浜を逃げ回っている。

後方作戦隊が仏ケ浦の奇岩の上に散会し、89式5.56mm小銃を撃ちまくり、逃げる妖にM82A1、対物狙撃銃が狙いをつけて撃ち抜いて行く。

虹色の靄を纏い、隊員の一人が後方に飛んで行った。

北渡が後ろを振り返る。

大蝦蟇おおがまが北渡が率いる後方作戦隊の背後から現れた。

蝦蟇の口から虹色の気を吐くと当たった一人が、また口に吸い込まれた。

北渡が「こ、こいつ周防の大蝦蟇か、離れろ、その気に触れたら吸い込まれるぞ」

(やっかいだな、どうする)北渡が呟く。

北渡が大蝦蟇の上に飛び乗る。ヌルヌルとしている。

「これでどうだ!」上に乗った北渡が両手の手のひらをその背中に押し当てる。

大蝦蟇の動きが、緩慢になる、止まった。

大蝦蟇の体の周りが氷に覆われて行く。

大蝦蟇が動き出した。体からヌルヌルとした粘液が出て氷が剥がれて行く。

北渡が大蝦蟇から飛び降りて両手を上に上げ、「氷雪」と叫ぶ

何も無い空間が、歪み、冷気が噴き出し、雪と氷と風が大蝦蟇を襲う。

大蝦蟇は、驚いて土の中に潜り込んで行った。

再び北渡は、大蝦蟇が潜り込んだ土に両手の手のひらを押し付け、土を氷で覆って行く。

「冬眠してろ」と吐き捨てて再び崖を振り返る。

残った隊員達が奇岩の下の妖達を追い詰めて行く。




鐸閃たくせん以下7名は、苦戦を強いられていた。

戦っている相手は、片目の犬で尾が3本ある相手である。

同行している【葉書き】の使い手の狐に中司本家の傍に居る 白澤に何者かを問い合わせしている。

狐が大きな声で言った。

「鐸閃様、かんでは無いかとの事です」

「讙、だと、中国妖怪が何故此処に」

鐸閃が、62式機関銃改を振り回し攻撃をさばきながら叫ぶ。

恐るべき怪力だ。

通常、62式機関銃は、ジープ等に装着した状態で使用する。

棒の様に振り回している。

(ちっくしょう、ちょこまかと良く動きやがる)鐸閃が舌打ちした。

鐸閃の2m後方に居た隊員が、ぐゎと叫び、倒れ込む。

爪で首の後ろを裂かれた様だ。

血が噴流となって後方へ飛び散る。

(くっそぉー、この野郎)と歯を食いしばる

鐸閃の体が膨れ上がる。

迷彩服が千切れ飛んだ。

鐸閃の背中が割れる。

背中から真っ黒な蝙蝠こうもりの様な翼が出て来た。

手が中指と薬指の間から肩までが裂ける。

足もつま先から付け根までが裂ける。

手が4本、足が4本になった。

全身が真っ黒な剛毛で覆われて行く。

口が耳まで裂ける。

額に目が現れる。

8ケの目が頭の後ろまで並ぶ。

動きも変わった。走るから滑る へ変わった。

背中から真っ黒な羽を纏った翼が出来ていた。

例えて言うなら蜘蛛くもそう言う形容しか思い付かない。

重機関銃は、長くなった中指を持った右手が握っている。

讙の移動よりも早い、

地面を走っている。

いや、地面すれすれを飛んでいるのか。

讙が口を開けて鐸閃に斜め後方から襲い掛かる。

鐸閃の右手が素早く動いた。

早い。

右手の中指が、62式機関銃のトリガーに触れる。

銃口が讙の口に吸い込まれた。

指が、トリガーを引いた。

連続した重低音が響き渡った。

白煙が、讙の頭部を覆う。

重量感のある短い音が鐸閃の足元から響く。

讙の首から下が地面に落ちた。

鐸閃の部下が、歓声を上げた。

「遅くなった。急ぐぞ」鐸閃が、残った隊員達に言う。

隊員達は高機動車、高機に走り、乗り込むと鐸閃の横に付ける。

鐸閃は羽を折り畳み飛び乗る。泥をまき散らしながら高機が、駆けて行く。

高機の中で隊員の一人が、迷彩服のズボンを渡し、

「見せびらかさないでください」と言う。

車内にフッ・わずかに笑いが生まれた。


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