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九尾の孫 【勇の章】 (3)  作者: 猫屋大吉
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囲繞(いにょう)

ついに決着

玉賽破は、野狐が帰って来ない事に疑問を思い、338号線の脇道に隠れた。

暫くすると4気筒ディーゼルエンジンの音と共に自衛隊車両2台が走って来る。

そして後ろの車両に乗っている人間2名を見て理解する。

(片方の女、もしや儂が印を付けた女ではないか、と言う事は能力に目覚めたと考えて間違いがあるまい、其れとは別にあの男、なにか強烈な霊的能力を感じる。こいつか、此奴が全ての妖達を先導して居るみたいだな・・・直ぐにでもあの女を喰らい、能力を我物としたいが・・・今は、あの女の能力よりもあの男の能力の方が必要だ。あの男を喰うには・・・どうする・・・女を人質にするか)と言い、その脇道に自分のしっぽを1本噛み切り咥えると宙に投げる。

そのしっぽが孤を描いて落ちて来ると玉賽破より3周り程小さい玉賽破が立っている。

双方の玉賽破が顔を見合わせ、頷くと小さい玉賽破が飛び上がり、消える。



野狐を撃破して順調に338号線を飛ばす2台の高機。

前を走る車両には、胤景、白雲、蔵王丸、新、斉藤が搭乗し、後ろの1台には、柳、林、魏嬢、斯眼、槃蔵、優介、優子が乗車している。

先頭車が、左へのヘアピンを曲がった時である。

いきなり先頭車の右側面に玉賽破が現れ、後ろの車両にぶつかって行った。フロントガラスをすり抜け、まるでまぼろしの様な透明感を持ちながら林、魏嬢、槃蔵をすり抜け、優子に掛る。

先頭車が停止する。中から胤景、白雲、蔵王丸、新、斉藤が走り出る。

半透明の玉賽破が、優子の腰部に噛み付くと優子共に透明感を持った幻の様になり、そのまま車を抜けて行く。優子が「あっ」短い驚いた声を上げ、気を失った。

車内の全員の時間が止まったかの様に「・・・・」、一瞬、固まる。

を置いて優介が「ゆうこー」と叫び、「車を止めろー」と大声で叫ぶと走る車体の後部ドアを開けて高機の後ろに転がり出る。

優介は、玉賽破が優子を咥えてこちらを見ているのをその目に捉えた。

2台の高機が停車し、中から全員が降りた。

全員が降り立った時、玉賽破が「この女は、頂いて行く。儂が先に目を付けておったからのぉ。喰ってこの力、我物にする」と言うと佐井村の方向に駆けだした。

白雲が走り出す。

走りながら変身して行く。綺麗な金色に輝く毛を纏っている。

玉賽破も金色だが、白雲に比べると黒っぽい印象を受ける。

蔵王丸が宙に舞う。飛びながら変身して行く。どんどん体が膨張して行く。変身しながら追いかける。

胤景が「乗車」と声を掛けるとほぼ同時に全員が乗り込み、高機がUターンして追いかける。

高機からは、白雲の姿は、もう見えない。

白雲は玉賽破に追いついていた。

後ろからその背中に爪を立てる。

玉賽破の背中に3本の赤い炎が点く。

熱さに堪らず喘ぎ、空中で絶叫した。

牙から優子が剥がれ落ちて行く。

蔵王丸が追いついた。

右手を振る。

突風が、優子の体を跳ね上げ、蔵王丸の方へ飛んで行く。

蔵王丸が手を伸ばした時、目の前から金色の影と共に優子が消えた。

玉賽破が優子を口に咥えている。さっきの玉賽破より遥かに大きい躯体をしている。

白雲と殆ど変らない。

赤い炎が点いた玉賽破は、落下して行く途中でしっぽの形になり、燃え尽きて消滅した。

高機2台が空中戦の下に着いた。

魏嬢が飛び出ると変身して行く。

尾骶骨が伸びる、手足が体に呑みこまれて行く、胴が丸く太くなっていく。

巨大な蛇に変って行く。10m、16m、20m、23m、25mとどんどん大きく成って行く。

真っ白な穢れの無い鱗が全体を覆っていて日の光に反射し、キラキラと輝いていた。

首を持ち上げる時に「優介、乗れ」と言う。

優介が頭に乗る。勢いよく跳ね上がると空中に踊り出た。

玉賽破の真正面にその頭が向く。

玉賽破が、立ち止まる。

胤景が下から蜘蛛の糸を投げつけた。

玉賽破の全身が覆われると思われた時、玉賽破のしっぽが動き、その糸を消滅させた。

蔵王丸がそのしっぽに向かってボールを投げた。カラーボールだ。

しっぽに当たり黄色く染まる。玉賽破は、後ろを振り向き首を傾げる。

斯眼を抱いて槃蔵が飛び上がりながら変身する。赤茶色の毛を纏った大きな狐だ、しっぽも9本あった。

槃蔵が参ると言い、玉賽破に飛び掛かる、口には、千鳥を咥えている。

空中で体を捻ると斯眼が隙を着いて玉賽破の背中に飛び乗った、一気にしっぽに噛み付いて行く。

1本、また1本と8本全てを噛み終わり、1本にしがみ付きながら蔵王丸にこれだと叫ぶ。

蔵王丸がそのしっぽに向かってボールを投げる、今度は、青だ。

ボールの当たる直前で斯眼は、空中に踊り出る。

槃蔵目掛けて玉賽破のしっぽが唸りを上げて襲い掛かる。

千鳥がチリチリと雷を発生させながらこれを迎え討つ。

玉賽破が、作戦を変えたのか、別のしっぽを振り出した。

蔵王丸がそのしっぽに向かってボールを投げた、今度は、オレンジだった。

槃蔵とそのしっぽが、ぶつかった時、閃光と共に槃蔵が弾き飛ばされた。

魏嬢の上で胡坐をかきながら印を結んでいた優介が【五行束縛符】3枚を飛ばす。

其々が、黄色、青色、オレンジ色のしっぽに飛んで行く。

其々のしっぽに張り付いた瞬間に埋まって行く。

玉賽破がギャーと一声泣く。3本のしっぽが黒く染まり、力無く項垂れた。

優子がその牙から滑り落ちる。

蔵王丸が右手を振ると突風が吹き、優子の体を風の渦で包み込み そのまま、魏嬢の方へ飛ばす。

優介がしっかりと抱き留め、自らの上着を脱いで、優子の体を自分の体に縛りつけた。

高機4台が新に到着した。

がしゃどくろ討伐チームだ。

凍次郎が走って来て、そのまま跳躍し、空中に踊り出る。

太郎丸は高機の後ろに立ち、変身し、玉賽破を挟んで蔵王丸の逆位置に飛び上がった。

地上では、鵬辰が、槃蔵と斯眼を蜘蛛の糸で受け止め地面に降ろしている。

特殊突撃部隊の新、斉藤、柳、林、上田、藤堂、山城、伊庭、上條、山田の10人は、其々にM4カービンを撃ちながら後方からの敵と応戦している。

権現狸が「槃蔵、行けるか」と聞くと「よし、遣ってやる、其処の崖を駆け上がってこちらに飛べ」と言うと、千鳥を咥え直して準備する。

権現狸が走って崖を駆け上がり、飛んだ。

斯眼が「いっけー」と叫ぶ。

槃蔵が千鳥を振り切った。剣撃が権現狸に当たり、衝撃波と共に下から玉賽破目掛けて飛んで行く。

下に異様な気配を察した玉賽破が、しっぽを使ってこれを阻止する。隙だらけになっている。

蔵王丸がそのしっぽに向かってボールを投げた。

優介も印を使って【五行束縛符】1枚を飛ばした。

権現狸が当たる前に【五行束縛符】が当たる。

権現狸がそのしっぽに当たると玉賽破が、また一声鳴く。

しっぽを叩き折り権現狸が落下していった。

優子は、気が付いた。「え、ここ、どこ」と恍けた事を呟く、

「あたいの頭の上だよ。姫が無事で良かった」魏嬢が言う。

優介が、背後から「優子、そろそろ引導を渡すぞ、始めてくれ」と言う。

優子が周りを見渡して、「うん、はじめるね」と力強く言った。

胤景、鐸閃が地上から蜘蛛の糸を玉賽破に絡めて行く。

優子が、歌い始める。

腕の輪が輝きだした。

優介が縛りつけていた服を取ると優子が右手に扇子を軽く握り、舞い始める。

それを見て、優介は、肩から弓を降ろし、構えに入る。

狙いは、一ヶ所、玉賽破の首の後ろの逆毛。

玉賽破の周りは、白雲、太郎丸、凍次郎、蔵王丸が囲み、下からは胤景、鐸閃が蜘蛛の糸で縛っている。

地上の敵の妖気が優子に集められて行く。

優介は、扇子を懐から出し、それを弓に沿わせる。

扇子が、矢に変った、眩しく温かい光を放っている。

優子の集めた妖気を矢が吸い取り、さらに輝きが増す。

優子の歌と舞が終わった。

胤景、鐸閃が糸を操り、玉賽破の背面を優介に向かせる。

優介が矢を放った。

玉賽破の逆毛から眉間を光が貫いた。

斯眼と権現狸が、「やったー」と声を上げる。

玉賽破は、落下しながら分解され、粉に成り、風に舞って消滅した。

優子が優介の後ろから抱き着く。

魏嬢が地上に二人を降ろして人の姿に戻って行く。

白雲、太郎丸、凍次郎、蔵王丸も地上に降りて人の姿に戻って行く。

全員で勝鬨かちどきを上げた。

特殊突撃部隊隊員達も互いに抱き合っている。

優介は、全員に向かって頭を下げ、「ありがとう、皆の御かげで勝つ事が出来た」と言うと

それっきり言葉に成らなかった。

優介は、嬉しくて笑いながら、大声で泣いた。


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