Ⅶ 仮面の下に潜む野心 Ⅰ
七階建ての大きなレナート城の西側から火の手が上がり、城内は混乱に陥っていた。
グラン率いる守衛騎士団がメイドや執事、とにかく逃げられる場所にいた者達を外へと誘導し、城付近の者達には避難を呼びかけていた。
「グランッ!」
城の二階で指揮を取っていたグランの所へ、焦ったようなユーリとファイが駆け寄った。
心音探しに人手を増やそうと、ユーリが提案したのだったが、その途中大きな爆音と揺れが襲ったため、ユーリ達にも焦りの色が浮かんでいたのだった。
「ユーリか!…其方さんは?」
「それよりもだ!いったい何があったんだ!?」
「詳しくは分からない。
だが誰かが魔法爆弾を仕組んでいたらしく、それが西側で爆発し火の手が上がっているらしい。
しかし、火の回りが早くてな…水系魔法専門の奴らに頼んではいるが、どうやら水系の魔法無効の術が組み込まれた火のようで苦戦している」
グランの険しい表情に、ユーリは静かに口を開くとファイの事や、心音の事、そして隠れ家に向かったシルバ達の事を簡潔に説明した。
「そうだったのか…しかし俺は手伝いのだが」
「分かっている。グランは引き続き避難や消火にあたってくれ」
「ああ。それとパーティー会場は六階だ、たぶんレオナルドもそこだろうが…アイツの私室は一つ上の三階、東の角部屋だ。もしそのお嬢さんを隠すとしたらそこだろう」
「そうだな。火の手は西側の何階だ?」
「三階。此処は反対の東だから……いや、油断はできないな。避難が一段落したら俺もすぐに向かおう。パーティー会場のお客さん達の安全も気になるからな」
「ああ。頼む」
グランとユーリの話のやり取りを側で見ていたファイは、改めて騎士団員の上に立つ者の凄さを知った。
(…こんな状況でも慌ててない。焦りはしてるけど、冷静だ。……まあ、シルバもそんなだっけ)
自分は心音を守れなかったこと、そして自分の責任だと。そればかりを考えていたな、と反省したファイはグッと拳を握る。
「じゃあファイ君、行こう」
「おう。…手を貸してくれて、ありがとな」
「え…?」
ぽかんとするユーリを置いて、ファイは逃げるように階段のある場所へと駆け出した。
そしてユーリはくすぐったそうな笑みを浮かべると、その後を追いかけたのだった。
───そして三階。目に見える所に火は無かったものの、その熱さに火は近いと感じたユーリは自分とファイに防御魔法を施した。
「火ぐらいだったらダメージは受けない。けれど熱さは感じるから、苦しくなったら言ってねファイ君」
ユーリの言葉を聞き流しながら、ファイは早足に次から次へと部屋のドアを開けていく。
勿論、グランに言われたレオナルドの部屋も見たが、そこに心音の姿はなかった。
「ココネー!居たら、返事しろ!!」
「“我が声に答え、水の柱となり炎を掻き消せ!”」
大声で叫ぶファイに負けじと、ユーリも魔力線で陣を描くと水の柱を繰り出した。それらは火を消すことは出来なかったがドーム状にユーリ達の周りを囲み、道を切り開いた。
しかし爆弾があった場所だと思われる所に近づくにつれ、尋常じゃないほどの炎が燃え広がり、ユーリは引き返そうとファイの手を掴む。
「此処は火の手が一番強い所だ!もし西側近くにいたのなら、下に降りる階段が使えず上に逃げている可能性がある!
ファイ君、とりあえず上に行こう!」
「だけどっ…!」
「きっと無事だ。…だから、可能性のある場所から探そう」
「それって…?」
ファイの手を引いてユーリは来た道を戻り、上の階へと続く階段まで戻ってくるとそれを見上げた。
「パーティーがあるって言ったよね。…パーティーってさ、男性は女性の、女性は男性のパートナーが必要なんだ」
「!…じゃあ、ココネは」
「パートナーとして、会場にいる可能性がある」
「……。だったら、初めにそう言えよ」
「…すみません」
グサッとまたもファイの言葉が突き刺さったユーリ。
しかしファイはそれどころではなく、階段を上り始めた。
(無事だよな、ココネ…。…てか、こんなに心配させてんじゃねぇよ!後で水やり草むしり労働三倍だ!)
悪態をつきつつ、ファイは不安な心を抑え笑みを浮かべる。
それは自分を奮い立たせる為であり、心音を本気で心配しているのを隠す為だと、隣に並んだユーリは思ったのだった。
* * * *
ユーリの推察通り、パーティー会場からずっと走り続け、階段を降り、外を目指していた心音は爆音を四階で聞いていた。
しかし、運悪くファイ達はパーティー会場のある六階を目指していたため、四階では足を止めなかった。
「さっきの…爆発?…あっ」
耳を押さえていた手を退けると、三階へと続く階段の下を覗き込んだ心音は、炎が燃え上がり、ガラガラと音を立て今にも崩れそうな階段にへたり込んでしまった。
「どうしよう…これじゃあ、下に降りられない」
心音がいたのは西側。東側にはファイ達が使っていた階段があるのだが、それを知らない心音には絶望感が胸に広がった。
(これが…レオナルドが言っていた面白いこと?…こんな、怖いことが面白いの?)
ギュッと胸元で手を握った心音は、荷物を全てポシェットに押し込むとそれを肩から掛けた。そしてファイから貰ったローブを羽織ると立ち上がった。
「まだどこかに出口があるかも。…とりあえず火の手がこっちに来ないうちに上に行ってみよう」
来た道を戻るように、心音が上へと続く階段を見上げた瞬間。
「……ネッ!…ッ!!」
小さくも叫ぶような声が心音の耳に届き、彼女は足を止め三階へと続く階段を見つめた。
(今…声が…)
その声が聞こえた瞬間、何故か心音の胸がざわついた。
それはこの声を無視してはいけないと、訴えかけているように感じ、心音はもう一度耳を澄ます。
聞こえるのは炎が燃える音、階段が崩れる音、そして騎士団の人達が避難誘導している声。…その中に、確かに。
「…ッ…ココネェ!!」
自分を呼ぶ声を、心音は聞いた。
「この声…ラルッ!!」
心音は這いつくばるように三階を見下ろした。しかし火が強く、すぐに後ろに引く。
しかし聞こえたラルの声は、確かにその下から聞こえていた。
「ラル…。っ!!」
心音はローブのフードを目深に被り、大きく深呼吸すると三階を見下ろした。
(ファイは、このローブは魔法のローブだって言ってた。なら、炎も遮れるはず。…一か八かだけど……やるしかないよね!)
震える足を動かし、心音は意を決すると崩れそうな階段を勢いよく駆け下りた。
タッタッタッとリズミカルに素早く崩れていない階段の足場を探し下りていく心音に、三階直前の燃え盛る炎の壁が立ちはだかった。
(やばっ!)
しかし心音はギュッと目を瞑ると、勢いよく跳んだ。
「…っ!!」
そして瓦礫の中、心音は転げ落ちるように着地した。
(な、何とかなったかな?)
ローブのおかげか、心音は多少の擦り傷程度で済んだ。
そしてゴオォと燃え盛る炎の中、心音は煙を吸いながらも必死に叫んだ。
「けほっけほっ、ラル…ラルーっ!何処にいるのー!?」
壁や天井の破片を上手く避けながら、心音はきょろきょろと炎の中をゆっくりと進む。
そして、一つの部屋の前に倒れる人影のようなものを発見し、近寄った。
「大丈夫で…ッ!!!」
しかしそこにあったのは焼け焦げた、もう人とは分からない程燃え尽きた…姿があった。
(…もし、かして…ラルも?)
悲鳴を上げる事も出来ぬほど恐怖に強張る体。
心音はガタガタと震えだす手をグッと握った。
「ううん、声がしたんだもん。…生きてるよ。っ…ラルー!!」
心音の叫びに、また声が答える。
「ココ、ネ…ッ!…ココネ!」
その声に意識を集中させた心音は、側にある自分の背と同じ高さの瓦礫の山に目を向けた。
「ラル?ここにいるの!?」
触ると火傷しそうに熱い瓦礫に、心音は迷うことなく手を着いた。
「ココ…ネッ…」
そしてその中から確かにラルの声が聞こえた。
「今助けるから!頑張って!!」
心音は手に付けていた手袋のおかげで熱さが少しだけ和らぎ、瓦礫を掴むと少しずつ退けていった。
そしてやっと、傷だらけのラルの身体を瓦礫の中から見つけ出すことが出来た。
「ラルッ!!」
優しく抱き上げた心音は、そっと胸にラルを抱き寄せた。
そしてラルも安心したように、小さく笑ったのだった。
「ごめん、なさい…ラル、勝手について行ったから、こんな、こと…」
どうやらラルは、自分が人質になり心音を苦しめてしまったと、思っているようだった。
だが心音は首を横に振ると、涙を流しラルの顔に頬を寄せた。
「そんなの…気にしないでっ。…ラルが、無事で良かった…よかったぁ…っ」
「ココネ…ありがとう」
ラルも涙ぐむと、心音の頬に顔をすり寄せたのだった。──
「…あっち、違う階段が、あるの…」
荒く息を吐きながらも、ラルは東側を指差し、心音に階段の場所を教える。
「分かった。…ラル、一緒に助かろうね」
「…うんっ」
心音はローブの中でラルを抱き上げ、再び走り出したのだった。
* * * *
パーティー会場前に着いたファイ達は、あまりにも静かな会場内を訝み、扉の前に佇んでいた。
「とりあえず、俺は騎士団員だから怪しまれずに中に潜入出来る。だから先に中の様子を見てくるか…」
──バンッ!
扉前でファイに説明していたユーリだったが、ファイはそれを無視し扉を開け放った。
「お、い…ファイ君!?」
(何やってんだよ、この子は!)
驚愕と少し怒った表情を浮かべたまま、ファイの後に続き部屋に入ったユーリは、目の前の光景唖然とした。
それはファイも同じだったようで、固まったように足を止めていた。
「何だよ…これ」
そこに広がっていたのは、パーティーに来ていた貴族達が皆、倒れるように床に眠っていた。
そこには領主であるカスラムの姿もあった。
「カスラム様!」
「待てっ!!」
ユーリがカスラムに駆け寄ろうとしたのを、ファイが止めた。
そんなファイを少し睨むように見たユーリに、ファイは目の前の何もないだろう宙に手を触れた。
「これ…結界だ」
「なんでそんなものが…」
ファイの呟きに、ユーリも目の前に手を伸ばす。すると何か壁のような物に手が当たり、前へは進めなかった。
もしファイが止めていなかったら、ユーリは激突していただろう。
「アンタ、結界解除とか使える?」
「いや、俺は専門者じゃないからな…」
結界とは、ある特定の条件を付けた膜で発動した者の指定した距離を覆う魔法である。
例えば、外部からの襲撃を防ぐという条件で結界を張れば、結界が攻撃を防ぎ、張った結界内が攻撃される事はない。
だがその結界を破るには“解除”という魔法が必要なのだ。結界が錠なら解除は鍵のように、結界を破るには二つの方法がある。
一つは解除の魔法陣で結界を解くこと。しかし解除の魔法陣の組み立ては難しく、今のところそれ専門の者数人しか解くことが出来ていない。
そしてもう一つは、発動させた者より強い魔力を持つ者が、剣や魔法で結界を攻撃し壊す方法。
この方法は魔法陣を描く必要もなく、簡単に出来るのだが…。
(…この結界、俺の魔力より上だ)
ユーリの言葉にある通り、逆に結界を張った者よりも低い魔力の持ち主ではその結界を破る事が出来ないのだ。
(くそっ!俺より魔力が強いのはシルバかユクンだ。けれどシルバは隠れ家、ユクンもきっと避難誘導で街だ。…っどうしたら!)
「だったら、壊せばいいんだな」
「え…」
頭を抱えるユーリの隣で、ファイが右手を握るような形にし胸の前に置く。
そして左手をその上に置き、目を閉じた。
(出し惜しみしてる場合じゃないよな…)
そして意を決したように、目を開く。
「“亡国王に仕えし剣よ、我が命に従い姿を現せ”」
ファイの声に反応し、握りしめた右手に金色の光が現る。
そしてその光を上に滑らせるように、左手を動かすと、ファイの手に金色の光の剣が形作られた。
「“王剣・シツァン=リーブル”」
ファイの声に光が弾ける。その眩しさに目を閉じていたユーリがゆっくりと目を開けると、ファイの手には金の剣が握られていた。
柄には青、赤、緑の宝石があり、剣の刃の真ん中には青い光の筋が入っている何とも神々しい剣だった。
「ファイ君…それは…」
目を見開いたままのユーリに、ファイは一つ息を吐くと彼を呆れたように見つめた。
「今はそんな事どうでもいいだろ。行くぞ…!!」
剣を構えると、ファイは思い切り目の前の結界にそれを叩き込んだ。
すると目に見えてザシュッと結界に亀裂が入り、そこからパラパラと砕け散っていった。
「すごい…」
ユーリは何も言えなかった。しかし結界の向こう側に歩きだすファイに気づき、自身も足を踏み出した。
──キイィン!!
その瞬間、剣と剣がぶつかり合う音が響く。
「くっ!!」
ファイ達がそこで見たのは、膝を着き自身の剣で仮面を付けた白いタキシードの青年の剣を受け止めるレオナルドの姿だった。
「レオナルド…!」
「あいつがレオナルド…」
ユーリの声にピクッとファイが反応する。
しかし同様に、レオナルドもユーリ達の存在に気づき視線だけを其方に向けた。
「ユーリ?…お前は、街の担当じゃっ!!」
キンッ!と剣を弾き返したレオナルドが、後方に跳びながらユーリの方を見た。
しかしレオナルドの相手をしていた仮面の青年は、その隙を付きもう一度レオナルドへ襲いかかった。
「自ら勝負を仕掛けておいて、よそ見とは余裕ですね」
「くっ…そがあぁ!!」
またも青年の剣を受け止め、弾き返したレオナルドは苛立ったように青年に斬りかかる。
だが青年はひらりと跳躍すると、華麗にその剣を避け、レオナルドは床に倒れ込む。
側に着地した青年は、レオナルドを見下ろす。
「心音を危険な目に遭わせ、怖い想いをさせたアナタに…私は容赦致しません。彼女は誰にも渡さない」
丁寧な言い方だったが、その言葉には凄まじい怒気が感じられ、そこにいる誰もがピリッとした空気を感じ取り黙り込む。
ただ一人、ファイだけは青年の言葉に口を開いた。
「お前…何でココネを知ってるんだよ。なんだよ渡さないって…もしかして、ココネの居場所を知ってるのか!?」
「貴方にお話する義理はありません。
ですが…結界を破りやってきた貴方がこの方の味方だと言うのであれば、お相手いたします。ただ、それだけです」
口元に笑みを浮かべた青年に、ファイはムッとしたように剣を構えた。
だがそれを制し、ユーリが一歩前に出ると青年に話しかけた。
「俺はヒガミヤ領担当騎士団長ユーリ・ファインだ。
そこにいるレオナルドと同じ騎士だが、俺はこの彼に頼まれ、そこにいる仮面騎士団第一部隊長に攫われたココネという女性を探しにきた。
彼女を助けるために俺達は此処に来た。彼女の味方だろう君と、戦うことは望んでいない。信じて…貰えないだろうか?」
ユーリは深く頭を下げた。それは騎士として、同じ騎士団の者の愚かな行いを謝罪すると共に、自分の話を信じて欲しいと語っているようだった。
そんなユーリの姿に、ファイも一歩前に歩み出た。
「…俺はファイ。ファーム・クロムでココネと共に働いてる。
俺は……俺が守れなかった所為で攫われたココネを助けたくて…いや。迎えに来たんだ。…一緒に、ファームに帰るために!」
ユーリの隣に並び、ファイは剣を床に刺すと頭を下げた。
「頼む!ココネの居場所を教えてくれ!…ココネを……返してほしい」
仮面の青年は面食らったように、二人を見つめた。そして小さく笑い声を零すと、そっと仮面を取った。
「ああ、アナタがファイさん。…そして同じ騎士でも、アナタは本当の騎士ですね…ユーリ・ファイン」
青年の声に顔を上げたファイ達が見たのは、琥珀色と青色のオッドアイの瞳を優しげに細め、嬉しそうに微笑む青年の姿だった。
「俺のこと…知って…?」
「心音は私が先程ここから逃がしました。…今頃は一階、二階辺りにいるかと」
「なっ…!」
青年の言葉に、ユーリが青ざめ目を見開く。
今、一・二階にいるのなら、丁度爆発があったときは三階辺りだと。
そんな考えを、ユーリの隣で同じように顔を青ざめ思ったファイが俯く。
(嘘、だよな…?)
燃え盛る炎を思い出し、後ろに倒れそうになるファイを、ユーリが支えた。
「はは、あははは!!」
その時、狂ったような笑い声を上げ、レオナルドが立ち上がった。
「馬鹿な女だな!大人しく売られてれば、死なずに死んだかもしれねぇのに!」
「売る?…何の話だ、レオナルド」
ユーリが訝むようにレオナルドを睨みつけた時、バルコニーに続く扉や廊下に続く扉から何人者黒い服の男達が姿を表した。
「コイツ等は…」
「指名手配中の人身売買組織の奴らだよ」
「何だと!?」
驚くユーリの側に近寄った青年が、小声で声を掛ける。
「あの方は心音を売ろうとしていたのです。此処にいる貴族や、ヒガミヤ領主カスラム殿もです」
「!!…騎士が、主を売るのか!レオナルドォ!!」
「お前には一生分かるまい!やれ、お前ら!」
レオナルドへの怒りの気を纏わせたユーリは、腰にある剣を抜き放った。
その瞬間、レオナルドの命に囲むように集まってきた賊数十人とユーリが対峙する。と、その背を護るように青年がユーリと背を合わせるように立った。
「後ろはお任せ下さい」
「ああ、助かる」
そしてユーリは未だ俯き動けないでいたファイの腕を掴んだ。
「ファイ君、しっかりしろ。彼女は無事だ、そう言っただろう?…だから、全力で探しに行け!」
「けど…」
「心音のことを頼みます、ファイさん」
青年はファイの剣を引き抜くと、それをファイに手渡した。
「君が迎えに行け。…一緒に、ファームに帰るんだろう?」
ユーリの言葉に、ファイはハッと顔を上げる。そして浮かんだのは、ファームで一緒に笑い合うクロムとラル、そして心音と自分の姿だった。
(……そうだよ、俺はクロムさんに“ココネを楽しませて”って頼まれたんだ。…悲しませる為に来た訳じゃない、不安にさせる為に来たんじゃない!)
ファイはグッと剣を握りしめると、前を向いた。そこに迷いはなかった。
「俺、絶対にココネを見つける!」
「おお、それでこそ男だな!」
ユーリはニコッと笑うと、魔法陣を出現させた。
「俺が道を開くから、走れ」
「分かった」
「“我に仕えし風の精よ、立ちふさがる者を吹き飛ばせ!”」
呪文が紡がれ、一陣の風が賊の間を通り抜ける。すると側にいた賊は後方に吹き飛び、まるでドミノ倒しのように何人かを巻き込んで倒れた。
「今だ、行け!!」
賊のいなくなった所に出来た出口までの道を、ファイが駆け出す。
(ココネ…!…ココネ!!)
廊下へと出たファイは、ココネの事だけを思い浮かべ、走り続けた。
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