ゲームの世界に転生した
「……うーん、スゥ、はあ。あー、うん」
朝起きると、見慣れた天井、見慣れた布団、見慣れた顔、聞き慣れた声。もちろん、こんなことに混乱する私ではない。こやつの名前はユリア・エルトメリ。私が、やり込んでいた乙女ゲームの『ランタンに照らされる夜桜と流星の恋』という通称『ラン恋』の平民のヒロイン、なのだが……。このゲームは、バッドエンドが九割を占めるという超鬼畜ゲーなのだ。選んだ攻略対象の選択肢の一つでもミスれば、ジ・エンドだ。
「せっかく転生したのに。こんな鬼畜ゲーには転生しても嬉しくないんだけどお!」
我儘だとわかるが、せっかく転生できるならもっとゆるゆるのゲームが良かった……。
しかも前世の死に方。多分過労死だろう。自室の布団に死ぬみたいに倒れ込んだ記憶がある。⋯⋯せめて、交通事故とかないのかな。まあいい。このゲームの攻略対象は確か、四人くらいいたよね。うーん、いま学園に通ってるのかな。何歳くらいだろう。いろいろなことを考え、思考を巡らせる。
そんなとき、ドアがノックされた。
「ユリア?入るよ」
そう言うとドアを開け、はいってきたのは女の人――少女といったほうが正しいかもしれない――だった。ゲームにはできていないため知らなかった。
「ユリア、もう寝坊しちゃうよ!!病み上がりで大変だと思うけど、すぐに服に着替えて!着替えたらリビングで朝ご飯食べて、すぐにいつものパン屋さん行ってね!!私は先に行ってるからね」
少女は、自分の名前をすっ飛ばすと早口で喋り、ドアを締めた。
……なるほど。これはまだ、学園に転入していないな。というか、私ユリアが発熱したときに、入れ替わると言うか、転生的なものをしたんだな。たぶん、ゲームが始まる前ユリアが、平民として平民の割には大きめの家のために働いていたときだ。こういう設定は、ストーリーを解放するごとにわかる。私は、ほぼすべてのストーリーを解放しているため、バッドエンドにならないようにはできるだろう。
ああっとやばい。今、少女に急かされたばかりだったのに。つい別のことを考えてしまった。私は、そそくさとクローゼットらしきものから、寝間着のような服とエプロンを取り、素早く着替える。実は、前世の仕事上、早着替えは得意なのだ。
それにしても、リビングは一体どこにあるんだろう。
わからないものは仕方ない。それに、大してお腹も空いていない。私は、ゲームで飽きるほど見た玄関まで走ると、明らかにボロい靴を履き、斜め前にあるパン屋さんまで走った。
カロンコロンと、鈴のような音がなると、私は厨房に向かった。
「あらまあ、ユリアちゃんじゃないか。病み上がりなのに大変だねえ。ありがとうねえ」
厨房にはいってすぐ、パンの生地をこねているであろう老婆に、そう言われた。老婆は朗らかな笑みを浮かべており、名はエリザという。ちなみに、これもストーリー情報だ。
少女はというと、かまどの近くでパンを焼いている。厨房は、というかこのお店は全体的に、いい匂いに包まれており、お客さんもそこそこいる。
私は、ゲームの知識を元にパン屋さんでの仕事を始める。主には、パンを買う人の接客――ここは、常連さんがほとんど――や、パンを作る材料がなくなりかけたときに、近くのお店への買い出し、新メニューの発案等だ。ここでの仕事は、朝の9時から日が沈むまでだ。
◇◆◇ ◇◆◇
そんな風に生活を続けて、家のリビングとかの場所も覚えて、何年かたったある日。姉――少女だと思っていた人は、ユリアの姉らしく、名はリルカと言うらしい――と私にある手紙が届いた。私はこの流れを知っている。ここから、ゲームが始まるのだ。
パン屋さんで働いていた、ユリア。ユリアはある日、学園から一通の手紙が届く。それは、パン屋さんでのリルカとユリアの評判を聞いた学園から、『編入試験を受けないか』というお誘いが来るのだ。本編はリルカの描写はなかったが、学園ではリルカはたまに会う。⋯⋯が、ほぼ会話はなくリルカ推しなら、「あ!リルカだ!」となるくらいで、一様ストーリーもあるが、私は解放していない。
来た手紙を、両親に見せると両親は大喜び。私達は、明日編入試験を受けることになった。
「はあ、」
私は、リルカとともに自室に戻ると、ため息が漏れる。するとすかさず、リルカが口を開く。
「もー、なーにため息なんかついちゃってるのよ。せっかく学園に編入できるチャンスなのに。わんちゃん、玉の輿にも!!」
そういう姉の目は、完全に「¥」で埋まっていた。この数年でわかった。姉は、なんとか玉の輿にのって、実家と自分たちの暮らしを裕福にしようとしているのだ。まあ、なんといい子。
「だってさ、リルカ姉。ほら、――」
「いやでもだってさ、――」
なんて感じの会話を長々として、それぞれ自室に戻る。
朝、今日は特に目覚めが悪い。朝は得意な方だったが、こんなに目覚めが悪いなんて前世で徹夜して、ほぼ朝と言っても過言ではない時間に寝た時以来だ。
そう、今日はいよいよ編入試験の日なのだ。
私は、眠い目をこすりクローゼットの中にある服の中で一番きれいめなものに着替える。そして、部屋を出るとリビングで、朝食を食べる。その時に、両親にめちゃくちゃ応援された。
「ねえ、ユリア。緊張してる?」
「あんまり」
そう、私はあまり緊張していない。なぜなら、私はもろヒロインと同じ行動を取っているため、落ちることなどありえないからだ。無論、リルカだってそうだ。
私達は、玄関を出ると学園が手配したであろう馬車的なものに乗り込んだ。
⋯⋯物語が、もうすぐ始まる。
序章は、普段のエピソードよりちょっと長めです!
代表作のほうが、ネタが間に合わず(←めたい)代わりに、異世界ものを投稿していきます!
今日の分のエピソードは、明日投稿しますので、お待ちください!
こちらの作品は、基本2日に一回投稿しますので、次の投稿日は3月10日です!




