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たぶん間違っていない  作者: kinpo


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8/11

第8話

今日は看板が静かだった。

白地に黒文字。

余白が多い。


(予算が足りないか、確信があるかだ)


女は立ち止まって見ている。

俺は通り過ぎる。


「面白そうですね」

「だいたい、そう言われる映画は違います」


「今回は当たりな気がします」

「今回は、外れ方が分かりやすそうです」


入口で少し待たされる。

人が少ない。

期待値が下がる。


チケットを買う。

端の席。


前回、中央で前の頭が邪魔だった。

今回は視界が広い。


代わりに、スクリーンが歪んで見える。

前回のほうが、まだマシだった。


売店。

今日は何も買わない。

映画に集中する。


直前で、飴を一袋取る。

無音でいける。


袋が、やけにカサつく。

予告編より音が大きい。


女が小さく笑う。

俺は袋を畳む。

畳めば畳むほど、音が増える。


(なるほど。これは仕掛けだ)


場内が暗くなる。

タイトルが出る。


人類が気づいていない日常の隙間。


女が身を乗り出す。

俺は背もたれに沈む。


(来たな)


映画が始まる。

世界観の説明。

三分で終わる。


次の瞬間、

それが殺し始める。


理由は語られない。

原理も語られない。

ただ、設定だけが前に出る。


殺人ドーナツ。

正確には、ドーナツ状の概念。


(概念が凶器か。手堅い)


人が死ぬ。

なぜか美しい。

照明だけは完璧。


女が首を傾げる。

俺は頷く。


「分かります?」

小声。


「ええ。これは――」

言いかけて、やめる。


(説明すると、壊れる)


中盤。

話は進まない。

でも、設定は増える。


世界は広がらない。

一点だけが深掘りされる。


(判断を間違えていない。これは続ける勇気だ)


終盤。

急に終わる。


回収はない。

答えもない。

音だけが止まる。


暗転。


エンドロール。

誰も立たない。


女が先に口を開く。

「……よく分からなかったです」


「最高でしたね」

俺は正直に言う。


「どこがですか?」

「最後まで、逃げなかったところです」


「逃げてません?」

「観客からは」


少し沈黙。

外に出る。


夜は涼しい。

頭が冴えている。


「期待してたんです」

女が言う。


「期待してなかったので」

俺は答える。


「それで?」

「勝ちました」


意味が分からない顔。

でも、怒らない。


別れ際。

的外れなことを言う。


「次は、設定が弱い映画がいいですね」


女は苦笑いする。

否定はしない。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》


今回は、判断が早すぎた気がする。

看板の余白だけが、やけに印象に残った。

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