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たぶん間違っていない  作者: kinpo


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7/11

第7話

今日は看板がやけに派手だった。

炎。銃。走る男。

なぜか全部、同じ顔に見える。


(なるほど。資金の行き先が一つだ)


雨は降っていない。

代わりに風が強い。

傘を持ってきた意味はなかった。


入口で立ち止まる。

ポスターの下に「全⚪︎大ヒット」の文字。

東欧の街並みが透けて見える気がする。


(全⚪︎は、だいたい信用ならない)


チケットを買う。

席は中央。

前回、端で首が痛くなった反省を活かした。


結果、前の席の頭がちょうど邪魔だった。

前回のほうが、まだマシだった気がする。


売店で迷う。

今回は失敗しない。

ホットドッグを選ぶ。


受け取った瞬間、パンが冷たい。

中のソーセージだけが熱い。


なるほど。

分業体制という訳か。


ドリンクは小。

前回、飲みきれなかった。

今回はちょうどいいはずだった。


氷が多すぎて、実質水だった。


場内は暗い。

予告編が長い。

銃声がもう鳴っている。


(始まる前に、終わっている可能性もある)


映画が始まる。

男が走る。

撃つ。

爆発する。


東欧。

東欧。

また東欧。


カットが細かい。

細かすぎて、何が起きているか分からない。

でも、何かが壊れていることだけは分かる。


(これは追われているのではない。追っているフリだ)


途中で女が入ってくる。

一つ空けた席に座る。


目が合う。

軽く会釈。


「この人、さっきも撃たれてませんでした?」

小声。


「たぶん、別の日です」

俺は答える。


「同じ服ですけど」

「東欧では、よくあることです」


納得した顔をする。

してしまう。


画面では、また爆発。

明らかに合成。

火の輪郭が優しい。


(怒りのスケールが、予算に合わせて調整されている)


銃声が一定。

感情も一定。


女がポップコーンを落とす。

拾わない。


「五秒ルール、ありますよね」

「この床は、秒が進まない気がします」


しばらく無言。

また銃。


終盤。

敵の本拠地らしい。

どこか見覚えがある。


最初の場所と、同じ。


クライマックス。

爆発が一番大きい。

音だけは派手。


拍手は起きない。

誰も立たない。


エンドロール。

名前が流れる。

知らない名前ばかり。


(全員、同じ道を通った)


外に出る。

空気が現実に戻る。


「意外と、悪くなかったですね」

女が言う。


「ええ。銃の持ち方は、終始一貫してました」


少し考えて、

「それ、大事ですか?」

と聞かれる。


「重要なところほど、崩れやすいので」


別れ際。

言うつもりのなかったことを言う。


「次は、爆発しない映画がいいですね」


女は笑わない。

でも、否定もしない。


看板を振り返る。

さっきより、少し色が薄く見えた。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》


夜風が、爆発の匂いを消していた。

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