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3.他国の姫は勇者に剣術指導したい!

このピピン王国とは違う隣国の王国の姫がアーノルド少年の前に立つ。

その姫の金色の髪を風が揺らしていた。

サクナ姫はまっすぐ前を見据え、青い瞳を細める。

その瞳には凛とした光と、わずかな緊張が宿っていた。


サクナ「僕が――サクナだ。君が勇者アーノルドだね?」


凛とした声が風に溶ける。

銀色の髪をした少年は、静かにうなずいた。


アーノルド「ああ。相田アーノルドだ。よろしく頼む」


燃えるような紅い光をまとった剣が、彼の背中で静かに震える。

アーノルドは右手を差し出す。サクナは一瞬だけ迷い、そしてその手を握り返した。


――ジン、と何かが流れた。


温もりとも、雷のような感覚ともつかぬものが、二人の間を駆け抜ける。

サクナは驚きで目を見張った。

その瞬間、彼女の胸に確かに刻まれたものがあった――勇者の力。


サクナ「……今の、なに?」


アーノルド「わからない。」


淡々とした声に、サクナは思わず小さく息を呑む。

不思議と胸が熱くなる。手の温もりが離れても、鼓動は速いままだった。


その日の午後、アーノルドはサクナの指導を受けることになった。

木剣を握り、構えを正され、何度も木剣を打ち合う。


サクナ「腰が甘い。もっと重心を落として」


アーノルド「う、うるさい!!」


サクナ「魔王は容赦しないよ」


容赦なく繰り出される木剣の打撃。

アーノルドは歯を食いしばり、必死に食らいつく。

サクナの剣筋は無駄がなく、研ぎ澄まされていて美しい。

――その姿が、悔しくもあり、羨ましくもあった。


訓練を終えたあと、二人は同じ食卓についた。


サクナは微笑んだ。

サクナ「君は……いいな。魔王を倒せる力があって」


アーノルドは皮肉を込めて。

アーノルド「そんなもの、望んで得たわけじゃない」


アーノルドはスープを一口すすり、視線を落とした。

アーノルド「サクナさんのほうが向いているよ。強いし」


言葉が途切れる。サクナはそっと彼を見つめた。

その横顔には、冷静さの奥に小さな痛みが見え隠れしていた。

彼の力を羨ましいと思っていたけれど、それは決して幸福ではないのかもしれない。


サクナ「……僕、君のこと、少しわかった気がする」


アーノルド「そうか?」


サクナの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

サクナ「かわいいねぇ。君。」


アーノルドは顔を赤くした

アーノルド「なな、なんですか急に!!」



夜。



アーノルドは浴場で湯に浸かっていた。

そこへ、同じ異世界から来た少年――アイカが顔を出す。


アイカ「おお、アーノルド! やっと会えた!」


アーノルド「訓練はどうだ? 兵士たちと一緒だったんだろ」


アイカ「地獄。この世界、大嫌いだ!!」


アーノルド「おいおい! 少しはポジティブに考えようぜ!!」

アーノルドは驚いた、あいかわらずアイカは元の世界に帰りたいそうだ。


アイカ「早く元の世界に帰りたい!」


二人は湯船に肩まで沈み、互いの近況を話した。

同じ異世界出身というだけで、不思議と安心できる。

沈黙の中に、同じ孤独があった。


アイカ「サクナ姫とは、どんな感じ? 仲良くやってるって聞いたけど?」


アーノルド「……指導されているだけだよ」


アイカ「ふーん? でも、ちょっとうらやましいなぁ。美人なんだろ」


アーノルド「うん、すごく奇麗だ」


湯気の向こうで小さく目をそらすアーノルドに、アイカはにやにや笑いながら茶化す。

そんな小さなやり取りに、わずかな笑いが生まれた。



誰もいない無の空間で、世界の管理者の女はひとりごとをつぶやいていた。


「今日、またひとつの因果が結ばれた」


「勇者アーノルド。サクナ姫。二人の握手の瞬間、勇者の魂の波長がサクナ姫の魂に触れ、継承が始まった」


「これで、勇者アーノルドが命を落とした際、その勇者の力はサクナ姫の中に引き継がせることが可能になった」


「本当はサクナ姫に直接勇者の力を与えられるのが理想だった。だけど、人間がこの「無の空間」に行くには、異世界の魂をこの世界に召喚する際とこの世界の魂を異世界の別の管理者に送るときのみ」


「もう異世界人を転移する必要はなくなった」


「どうか、アーノルドたちが魔王を倒しますように。サクナ姫に継承されませんように」


世界の管理者の女は微笑んだ。

最後まで、読んでくださりありがとうございました。

心から感謝しています。

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