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1.元の世界に帰りたい!

「私はなにものなんだ――」


暗黒の闇の中で、ひとつの意識が目を覚ます。

冷たい風が吹き荒れる荒れ果てた大地。

崩れた神殿の奥、黒い繭の中から現れたのは、漆黒の瞳を宿す男だった。


「……わたしは……どうして、ここに……?」


名前も、記憶も――何もかも失った。

だが胸の奥で、確かな“怒り”が燃え上がる。

その怒りは、誰に向けられたものか分からない。

ただ、強く、重く、世界そのものを呪うように心を染め上げていく。


「人間……。どうして、憎い……?」


男は空を見上げた。

そこには、嘲るかのように光り輝く月が浮かんでいる。

その瞬間、世界中に黒い波動が広がり──男が覚醒した。


こうして、この世界に魔王が蘇った。






無の空間に、4人の少年少女がいた。


「はじめまして!」


“世界の管理者”と呼ばれる存在は、異なる世界から四人の少年少女を呼び寄せようとしていた。


「魔王が誕生して私が管理する世界が危ないので、あなたたちを異世界に送りたいのです!」


まるで会社の朝礼のような軽い口調で言う管理者に、四人は凍りついた。


「……なんで俺がそんなことしないといけないんだ」


静かに問い詰めるのは相田アーノルド。

銀色の髪に青い瞳。日本人離れした顔立ちは、彼がハーフであることを物語っていた。

彼は常に冷静で、少し距離を取るタイプの少年だった。


「いや、だってあなた達、勇者の素質あるんだもん」


管理者はさらっと言う。アーノルドの眉がピクリと動いた。


アーノルド「素質って……知らねえよ。俺はただの高校生だぞ」


隣でため息をつくのは飯田愛風いいだ あいか

目立たない黒髪に、どこにでもいそうな眠たげな表情。


アイカ「俺、帰って寝たいんですけど……。異世界とか、そういうのは他の人に頼んでください」


「アイカ……アイカの言う通りだよ!!」


そう声を上げたのは、明るい茶髪を揺らす上村菜乃うえむら なの

いわゆる“学校の一軍”にいるギャルで、面倒見がよく、アイカの幼馴染だ。


菜乃「はぁ? あたし、異世界とかマジ無理なんですけど!

てかスライムとか出るんでしょ? 絶対ムリムリムリ!」


そんな彼女の後ろで小さく肩をすくめているのは、眼鏡をかけた江頭コマリ(えがしら こまり)。

おとなしく、図書館が似合う文学少女タイプだ。


コマリ「……無理です。わたし、運動できませんし……それに、魔王って怖いですよね……?」


「大丈夫! みんなに特別な力を授けます!」


管理者は指を鳴らした。

次の瞬間、四人の身体に光が宿る。


「相田アーノルド──あなたには“勇者の剣”を。

火をまとう剣で、魔族に絶大なダメージを与える武器です!」


手に現れたのは、紅い光を放つ剣。

アーノルドはそれを見つめ、眉をひそめた。


アーノルド「……本物、なのか?」


「もちろん。次、飯田愛風くん!」


アイカ「俺っすか?」


「君には“頑丈な体”。どんな攻撃を受けても、簡単には倒れない肉体を授けよう!」


アイカ「いや、それって地味じゃね?」


「地味だけど、死なないのは重要です!」


管理者は笑顔で押し切る。


「次、上村菜乃さん!」


「“聖女の力”です! 回復も浄化もできる万能スキル!」


菜乃「聖女!? なんかイメージ違うんだけど!?

てか、ヒール役とかマジ性に合わない!」


「最後に──江頭コマリさん」


コマリ「えっと……わたし?」


「“魔法の杖”を授けましょう。創造の魔法が使えます。

想像したものを現実にする、特別な力です」


コマリ「創造……。あの、絵に描いたものを実現させたり?」


「できますよ。絵心さえあれば」


コマリの瞳がわずかに輝いた。


コマリ「……ちょっと、楽しそうかも」


管理者は満足げに頷く。


「では、みなさん──異世界への扉を開きます!」


菜乃「ちょ、まっ──!」


菜乃の叫びもむなしく、光が弾けた。

四人の身体は白い渦に飲み込まれ、次の瞬間、世界から消えた。





アーノルド「……うぅ、頭いてぇ……」


アーノルドたちは人の気配のする方に目を向けた。

そこには、王の間の玉座に腰かける、いかにも王様然とした男がいた。


王「我がピピン王国へようこそ、勇者様方。」

最後まで、読んでくださりありがとうございました。

心から感謝しています。

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