31. 森の中でおんぶはシリアスの予感
俺は、日向をおぶって森の中を歩く。
あと十分も経てば先生たちと合流できるだろう。
足は痛み続けているが、可愛い後輩のためなら安いものだ。
「先輩............」
日向が、顔を俺の背中に押し付けながら俺の名を呼ぶ。
「どうした?」
俺は、おぶったまま日向の顔を見ることはできないので、前を向いたまま聞いた。
「私、先輩のことが好きです..............」
背中越しに、少しあったかくなっていく日向の肌が感じられた。
「だからそれは..........」
「一時の気の迷い.........ですか?」
「あ、ああ」
日向は俺が言い終わる前に口を挟んできたが、俺は肯定した。
日向は夢を見ている。
あの出来事で.............
「先輩」
日向の言葉に思考が中断される。
日向は、俺の背中から顔を上げると言った。
「私のこの想いは、一時の気の迷いじゃありません」
「でも........日向はあの出来事で........」
そうだ、日向はあれで俺に夢をみているから..........
「あれはあくまできっかけなんですよ。先輩?」
日向は、身を乗り出して俺の顔を見てにこっと笑った。
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「ナイス!日向」
「先輩こそナイスリターンです!」
私が中学2年生の2月。
私の、いや私と先輩の所属していたテニス部はあまり部員が多くなかった。
そのため、男子と合同練習をするのが当たり前だった。
そんな状況で私は、先輩と一番仲が良かった。
よく一緒に練習したり、ダブルスをしたり。
先輩と一緒にやるテニスは楽しくて、なんとなくで入ったテニス部は、私の大事な居場所になっていた。
先輩は優しかった。
例えば...........
「あ~!またバックハンドミスったー!」
「日向。もっと腰を落とせ。下から上に擦るように打つんだ」
先輩は頼んでもないのに教えてくれて、体を密着させてフォームを教えてくれたりした。
あのときの私は、その時恥ずかしくて恥ずかしくて、先輩の顔を見れなくてうつむいたまま聞いていたことを覚えている。
私の今のプレイスタイルは、ほとんどが先輩の指導によってできたものだ。
私は、どんどん上達していった。
そんなある日。
「日向頼む!」
「はい!」
私達はダブルスを組んで試合をしていた。
私と先輩は仲が良かったこともあって、よく一緒にダブルスを組んでいた。
そんなとき、四セット目のデュース。
ついにそれは起こってしまった。
「!......日向危ない!」
突然、私の左半身を衝撃が襲う。
先輩に押されたという事実を理解するのに、私の脳は少しの時間を要した。
「いたたた...........先輩どうしたんですか?」
私は、起き上がりながら先輩に声をかけた。
だが、先輩から声は帰ってこない。
不思議に思い、先輩の方を見るとそこには..........
「......先......輩......?」
足から血を流し、倒れてる先輩の姿があった。
◆ ◆ ◆
その後、先輩は病院に運ばれた。
私は、部活仲間から話を聞いた。
2コートほど横でストロークをしていた子が誤って手を滑らせ、ラケットが飛んできていた。
先輩はいち早くそれに気づいて、私をかばってくれたのだ。
私は放心した。
もし私が気づいていれば。
もし私がぼーっとしていなければ。
そんな意味のない後悔だけが残る。
私はその日、一言も喋ることはなかった。
2日後。
先輩が学校に来た。
先輩は松葉杖をついていた。
靭帯の損傷。
これ以上悪化することはないけど、激しい運動をすると痛みが走るそうだ。
それは.............先輩がもう満足にテニスをできないことを示していた。
「先輩..........」
「お、日向じゃん。どうした?」
先輩は、何事もなかったかのように言う。
「すいません。私のせいで.........」
「いいんだ。お前のせいじゃない」
「でも..........」
涙が溢れそうになる。
すると、先輩は私の頭に手をぽんっとおいていった。
「これは、俺が勝手にやったことだ。負い目を感じるな。遠慮をするな。感謝はしてもいいけど恩返しは考えるな。単純な善意でも打算があるわけでもない。親切ってのはそういうものだからな」
自分のせい自分のせいと後悔していた私に、その言葉は強く響いた。
そして、私は先輩の生活を手伝うようになった。
先輩は、やめさせようとしていたけど。
そして、テニスも先輩の分まで一生懸命練習して、見事県で優勝したのだった。
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「私は、あのハプニングより前から先輩のことが好きだったんですよ?だから先輩を支えますし、アプローチだってします」
そういって、日向はいたずらな笑みを浮かべる。
「アプローチは.........わかるけど。俺を支える必要はないって。負い目は感じるなって言ったはずだぞ」
そういうと、日向は更に笑みを深めて言い放った。
「先輩?これは私の親切なんですよ?怪我をしてしまった可愛そうな先輩を助けてあげるって言ってるんですよ」
はは、こりゃ一本取られたな。
でも...........
それは親切って言わねーよ。
「じゃあ、俺をおぶってくれよ。正直足が痛すぎる。」
「それは嫌です♪もっと先輩の背中を感じていたいので」
「わがままな後輩だなぁ」
「わがままってなんですかわがままって!親切なのでするもしないも私次第なんですよ?」
本当に.........
困った後輩だ。
そんなどこか楽しそうな会話は、森の中に消えていった。
ブクマと評価お願いします!
チャラ男A:インキャっているだけで嫌だよな〜
チャラ男B:ほんとそれ。消えてほしいよな〜
誰か俺をおぶってくれないか?心が痛い。
あと、異世界ものの新作出すので、ぺこりの作者のところから見に言ってほしい........




